• 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作愛し過ぎた至福

歯科医 朝川大樹・29歳 
プロサーファー2男 大空千尋・20歳

同時収録作品愛し過ぎた至福

大空涼、義弟(17)
大空深海、長男、歯科大生(22)

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

「愛してるよ、…だから自由にしてやる」
海のそばの大空歯科医院の次男・千尋が子供の頃から片恋していた相手・大樹と恋人関係になって数ケ月。ふたりの関係は微妙なものになっていた。体の関係もこのところ途絶えている。大樹がおれの気持ちに応えてくれたのは、恋からじゃないのかも…大樹が大切だからこそ別れなくてはならない。そう心に決めた千尋だが…⁉︎
一方、大空家の長男・深海と血の繋がらない弟・涼の恋はさらに絆を強めていくのだが、思いがけないことが起きて…
熱い男たちのディープラブ‼︎

作品情報

作品名
愛し過ぎた至福
著者
剛しいら 
イラスト
新田祐克 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHYノベルス
シリーズ
愛され過ぎて孤独
発売日
ISBN
9784813000976
3.4

(7)

(0)

萌々

(4)

(2)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
23
評価数
7
平均
3.4 / 5
神率
0%

レビュー投稿数2

愛は海のように深く、波のように鮮やかに弾ける

「愛され過ぎて孤独」の続編。
元の設定に大いなる秘密がありますので、絶対に前作から読まないと、です。

さて本作は、次男でプロサーファーの千尋(チィ)と自宅歯科医院の勤務医・大樹の恋物語が中心です。
そこに弟・涼の実父が行方不明になって…という話が絡む。
千尋は子供の頃から大樹が大好きで、前作にてやっと大樹に抱かれて恋が成就したんだけど、そうなると今度は愛情が益々深く、本物になってくる。
元々鎌倉の有名菓子「鳩ビス」の老舗和菓子店の三男である大樹だけど、社長である父親が急に倒れて兄たちがお家騒動をしている。大樹も巻き込まれて、鵠沼の雇われ歯科医など辞めて家業の役員をやってくれと言われているわけです。
それを千尋が知り、例の「マーの呪い」が大樹を自分たちに縛り付けてる、大樹に幸せになってほしい、だから自分が離れるんだ…と思いつめるようになっていく。
オーストラリアに半年渡ってサーフィン番組を作る、という話に乗って大樹と別れようとしている…

そんな時、刑務所から出所して涼に会いにくる、涼を引き取る、と手紙をよこしておきながらそのまま行方不明になっていた涼の実父の遺体が海で見つかった、という連絡が届きます。
深海と涼はそれは「涼のマー」が父を殺してくれたのかもしれない、と感じている…

父親のいない家庭で偉大な母に育てられたマザコンでファザコンの兄弟たちの恋愛、現実の肉親愛、それらが分かち難く絡まり合って、優しくて濃厚で、離れられなくて、同時に見守るように大きな愛で。
そこに今は亡き大いなる母「マー」が幻影のように現れる。
感受性の豊かな千尋はいつでもマーの気配に敏感で、愛を手放そうとしてやはりマーの幻影に連れ戻されるのです。そしてそれは大樹も同じ。
一度はマーに男女の愛を求め、叶わずにマーの子供のような位置を選んだ大樹。大樹も千尋を失いそうになった時に思わず天のマーに助けを求めるのです。
今でも、いつでも、マーはいる。マーは子供たちを護っている。呪いではなく。

前作と本作の2作は、BLというだけでなく、形を変えた幾つかの愛の形が海と太陽と共に描かれるかなり文学的な作品だと思いました。そこに若い衝動や逆に成熟した愛の感情も加味されていてすごく面白い。おすすめです。

0

潮の香りと鵠沼の風景が浮かぶ

地元サーファーのあこがれだった女性「マー」を母親に持つ兄弟達の話の続編。
1作目では、養子で末っ子の涼と長兄の深海が結ばれ、次兄の千尋が実家の歯科医院で働いてくれている大樹に想いを告げる迄でした。
前作でも盛んに出てきた「マーの呪い」
プロサーファーとして活躍しながら、一番マーに似ている千尋がその呪いに敏感で、何かとそれにこじつけてしまう。
そんな彼の奔放なのに臆病な姿が大樹との恋愛を前進させないでいる。
それを克服させるのが、今回のお話のメイン筋でしょう。

このお話は前作もそうでしたが、見知った湘南の風景が出てきます。
だから人物に萌えを、キャラに萌えを感じるというよりは、その風景と波と土地に自分の記憶を掘り起こさせるものがあり、それで身近な感覚を呼び起こすといった部分が大きいような気がします。
前作でも問題になっていた涼の本当の父親の出所後の行方とか、この兄弟の父親の複雑な事情とか、そんなに含め、大樹が抱える悩み(実家は鎌倉の老舗、鳩ビスの製菓会社)もありながら、千尋の呪縛からの脱却の様が小説のように・・・
いや、小説なんですが、ラノベより小説っぽいっていう感じ?で若干雰囲気系の流れで進んでいます。

やんちゃで自由奔放なようでいて、一番欲しかった大樹の愛を手にいれたはずなのに、大樹が実家の跡継ぎの件で悩んでいるのをしると、卑屈に大樹はマーが好きだったからここで歯科医として働き、自分はマーに似ているからその代わりなんだと思いこみ、そのせっかくもらった愛を失うのが怖くて自分から逃げようとする。
でも、本当は手放したくないのが本心で解りきっているはずがそれを後押ししてくるのを、またマーの意向だと思いこむあたり、
本当にマーの霊が見えているのかもしれないが、マーにこじつけたマザコンの表れだと思います。
大樹もちょっと本気が見えないんだよね~そこが千尋を不安にする要因。
身体だけでは不安になる。

一方、涼の父親の遺体が発見されたことで、それが殺人か?はたまた自殺か?ということで刑事が訪れるという展開を見せますが、
それはそれで、深海達の本当の父親であるもう一人のマーの存在は、今回は登場せずに、謎のまま、真相は不明のまま、
ただ、父親が亡くなったことでもう涼に恐れるものは何もなくなったという結末を与えました。
深海が、涼は実はもう一人のマーを好きで(前作でも嫉妬している)彼に似ているから涼は自分を好きなのでは?という不安をまた抱きはじめましたが、こちらは年下の激しい執着愛に守られていますから、問題がありません。

彼等は、いつまでも湘南の海で波を愛し、マーを愛し、互いを哀しながら穏やかに過ごしていくんだなと思います。
思うに、、、多分歯科医院の隣には近い将来洋菓子店がオープンするのかww

1

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP