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表題作貴人の鳥

ラファエル,20代後半,「ヴェルデ・グランデ」の称号を持つ鳥人
レイナルド・ドゥアルテ,ドゥアルテ子爵名代

あらすじ

翼持つ種族が闘う賭け競技。最強の鳥だけは飼い主を選べる。レイナルドは自らの体と引き換えに最強の鳥・ラファエルと取引し…!

作品情報

作品名
貴人の鳥
著者
宇喜田紅 
イラスト
子清 
媒体
小説
出版社
リブレ
レーベル
ビーボーイデジタルノベルズ
電子発売日
4

(4)

(1)

萌々

(2)

(1)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
1
得点
16
評価数
4
平均
4 / 5
神率
25%

レビュー投稿数1

短編とは思えない密度

燃えるような緋色の長い髪に、緑柱石のような緑の瞳。
人間でありながら、鳥に似た大きな翼を持つ美しい存在。
この国には、ウエルドの民と呼ばれる特別な種族がいるという。

入植者によって侵略された、白い肌と黒い肌、ウエルドの民が共存する大陸が舞台となるお話。
先住民と入植者が入り混じり、差別や偏見があふれる複雑な世界観です。ジャンル的にはファンタジーかなと思いますが、剣や魔法は登場しません。
どちらかというと架空の国のお話という感じが強いかも。面白かったです。

まだ幼い弟子爵の名代として、決して裕福とはいえない家を守るために資金繰りに苦しむレイナルドは、ある日、美しい緋色に彩られたウエルドの民・ラファエルと出逢う。
翼を持つ異形として畏怖と蔑みの対象となっている彼らは、迫害を受けては数を減らし、残った者は人間に飼われ、闘鶏に似た「ペサディージャ」と呼ばれる賭け競技で闘わせられる…と、人扱いをされていない様がなかなかに胸糞なのですが…
ラファエルはペサディージャの常勝者。
命がけの闘いを勝ち上がった"鳥"は、グランデという称号を与えられ、自ら飼い主を選ぶことが出来るという。
もし、一晩で大金を稼ぎ出す彼の飼い主となれたのなら?
差し出すものがないレイナルドが、家を守るために自らを差し出してラファエルに取引を持ちかけて…

いやすごい。
こちらの作品、短編とは思えない密度でした。
設定がしっかりとしているので、このまま長編でたっぷりと読みたくなる世界観なんですよ。
甘さはあまりなく、ビターな味付けもまた良くて。
今まで虐げられてきた貴族に対する怒りをぶつけるかのように、レイナルドへ愛のない行為を強いるラファエル。
ただ、共に暮らすこととなったドゥアルテ家の人々は今まで接したどの貴族とも違っていて、どこまでも自然体であまりにもあたたかかった。

レイナルド視点のお話なこともあり、ラファエル側の気持ちは分からないんです。
けれど、彼の行動や言動のあちこちからさり気なく本当の彼が見え隠れする。はっきりとこう、とは語らずに想像させる。ここが上手かった。
冷たさを感じる行為が少しずつ変化していく様子、2人の感情の静かな揺らぎ、日常のワンシーンの微笑ましさ、お互いを理解していく姿。どれもとても読み応えがありました。
あっさりと甘い関係になるわけではなく、余韻が残る結びだったのも作品の世界観とキャラクターに合っていて良かったな。
うーん。続編があればすごく読みたいけれど、このままその後を想像して楽しむ形の方が綺麗な気もする悩ましさ。

好みは分かれるかもしれませんが、私は好きなお話でした。
読み終えてから改めてタイトルを読んでなるほどと納得。センスのあるタイトルだなあ。

3

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