イラスト入り
『小説b-Boy 2015年秋号』掲載作の電子書籍版です。イラストあり。
ちなみに、私は根っからの犬派です。
現在、我が家には4匹目の愛玩犬系のワンコがいるのですが、我が家初めての愛犬はドーベルマンでした。
で、ここからネタバレしますのでブランクを空けますね。
その犬がね、今作の攻めさんとそっくりだったんですよぉ!
そうなったら、もう『萌え』とかの範疇じゃないじゃないですか!
律をじっと見つめるアオの眼差しとか、容易に想像出来ちゃうんです。とっくの昔にいなくなってしまったあの子を思い出して悲しい、悲しい。
思わぬ所にあった落とし穴(決して地雷ではない)に落ちた感じです。
大型犬を飼ったことのある姐さまは、気をしっかり持って読んだ方が良いと思います。
ベルク爺に見守られて育って来た『俺』は、自分たちの寿命の長さや感情の豊かさなどからその他の群れの仲間と自分は違うと感じて来ました。ベルク爺の寿命が尽きる時、自分たちは半獣の最後の生き残りであることを知らされます。『俺』は群れに戻らず、人間のいる『街』に出て来ます。そこで出会った律という『俺』を恐れない男性に他の人間とは違う魅力を感じ、アオという名前を付けてもらい、律の家族と暮らすことになります。失恋した律の寂しげな様子に彼を独占したいと感じている自分に気づいたアオは自分が『人型』になっている事に気づくのですが……
何はともあれ、アオの律に対する想いは『盲信』と言っても差し支えないほど。
なので、どっちかって言えば『恋』っぽくなくて「まさしく犬」と感じてしまいました。
この『犬感』が「たまらん」と思う姐さまは面白く読めるはず。
でも(何度も書いて申し訳ないのですが)恋物語を読んだ気にはなれなかったんだよね……
半獣種最後の生き残りとなった主人公が、心優しき人間・律に出会って飼われることとなり、幸せを見つけるお話。最後まで一貫してアオ視点で、飼い犬目線を楽しめたのが良かった。
律の家で過ごすうち、理由の分からない体の反応に戸惑うアオ。人間だったら恋に落ちる描写になっているところが、感情でなく獣としての反応のように描かれているのが面白い。
そしてはっきり欲情すると人型化。いろいろあってくっついたけどどうなんだ?と思っていたら、最後にアオのモノローグで恋人という言葉が使われていて、やっとほっとしながら読み終われる感じ。アオ視点なので全体的に獣成分強めかも。
起きる事件は結構胸糞。犬に濡れ衣を着せ石を投げる女や、小動物を手にかけ喜ぶ男が出てくる。前者には罰もなく被害者が泣き寝入り状態でスッキリしない。
メインカプに関しても、今後のアオが犬として過ごすのか人型をずっと保てるのかが分からず、モヤモヤが残る。普段は犬で夜だけ人型の恋人になるのかな。
あらすじから人型化の決着をどうつけるかが気になって読んだため、そこが解決されずに終わって残念だった。
あえてなのか、律の描写も曖昧なままだったりと、この作者さんの他の作品のようなスッキリとした伏線回収がない。それなら心理描写を増やし、律の孤独とアオの孤独の重なりを強調してもらえると感動できたんじゃないかと思った。ここが一番読みたいポイントだった。
まあ、アオが律の抱える闇に共感するところに、傷の舐め合いのような要素が加わるとすごく萌えるという、個人的好みの問題。ただし、それを抜きにしても印象が薄いというか、BLとしての萌えが乏しいように感じた。