イラスト入り
『そのキャラが好きで好きで、もうすべてを追っかけていたら、当然のごとく中の人まで好きになってしまった』という経験をお持ちの姐さま方は多いかと思います。
このお話は『それ』です。
ああ!まさしくドリームではないか!
大手広告代理店(社名が『白凰堂』って……笑)に勤め、仕事も出来る男、木野一は軽い接触恐怖症です。両親が多忙なため寂しかった子ども時代、大切にしていたクマのぬいぐるみを母親に捨てられた時から、人に触れられることを苦手としています。そんな彼の現在の愛の対象は人間ではなく、着ぐるみ。ある出来事を切っ掛けとして三津鷹市非公認キャラクターのモルモルに夢中になり、追っかけをしています。愛が高じて、ビールの試飲会の仕事にモルモルを登場させる企画を提案。これが取り上げられ、木野はモルモルの『中の人』加賀谷と親しくなっていくのですが……
前半の『着ぐるみに対する愛』を描いている部分はたいそう面白かったです。
オタクの末席を汚す者として「あーわかるわかる。こうなるよね」というのは勿論なのですが、木野の『着ぐるみ愛』は、両親から愛してもらいたいのに愛されていると感じられなかった結果であることが納得できる書かれ方なので。
他人は、たとえ恋人であっても自分の思う通りにはなりません。
それはちょっと悲しいことでもあるけれど、だからこそ、そういう他人と関わった結果として自分も豊かになっていくと私は思っているんですね。
このお話は、そういう意味で木野の成長物語なのですけれど、加賀谷との関りが結構すんなり行ってしまうものですから、ちょっとだけ喰い足りない感を感じてしまいました。
でも、その分『ドリーム感』は高いです。
「大好きだったあのキャラの『中の人』とどうこうなってしまったらどうしよう。うふっ」っていう感じ。
読み終わって振り返ると、自分の中に『夢女子』がいることを発見して、ちょっとびっくりしました。