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この作者様は基本的に、一人の目線で書かれるようで、今回は富海の目線で進んでいきます。表題作と続編の、中編2本が収録されています。
「その花の馨しき色…」
ぱっとしないモデルの富海(18歳)は、新しいマネージャーの敷島に引き合わされる。敷島は小汚く不遜な男で、心中は反発ばかりしていたが、表面は言われるがままに従っていた。だが、ある日の撮影で、敷島に色気のある顔をするためにマスターベーションをしろと言われて…。
できるわけない、と答えた富海に、口の中に指を入れて感じさせた敷島がエロかったです。富海は、敷島が元トップモデルと知り、事故で引退した敷島「セイジ」の身代わりに自分はされているんだ、もっと俺自身を見てくれ、と詰め寄ると、敷島はため息をつきながら説明をします。
この、富海に散々迫られて、敷島がようやく説明をする。このパターンは続編でも同様です。敷島は口ベタというか、説明不足というか。そんな彼の無精ひげでちょっと長い髪形イラストがやけにピッタリでくらりとしました。
「花弁に寄せる唇」
甘い生活を期待していたのに期待はずれ。敷島は富島に仕事はとってくるものの、富島に付き添ってくれない。二人ともそれぞれの仕事で忙しくて、話をする時間もない。そんな中、敷島は自分を差し置いて、新人・原口のマネージャーをしていると聞き、不安になる。カメラマンの清水にセクハラされたと訴えても、敷島は笑って相手にしてくれない。富海が心の支えにしていた「自分だけの華」だと言ってくれたセリフも敷島は覚えていない。挙げ句の果てに、欲求不満なんだろうと自分だけイカされた後、敷島は背中を向けて部屋に鍵をかけて閉じこもってしまい…。
この、敷島に必死で言い募るのに、笑って流されてしまう。身体を求めて欲しいのに、ため息をついて鬱陶しがられてしまうという場面なんですが、富海の目線で語られているためか、読んでいるとつい感情移入してぽろぽろ泣いてしまいます。最後まで読んで敷島の心情を理解した後で、冷静に読めば、敷島なりに宥めたり応えたりしており、そんなに酷い仕打ちではない(むしろ富海の幼さが分かる)のですが、言っても言っても伝わらない、というのが切なかったです。
敷島は頼れる男なのでしょうが、「察しろ」というより、自分では十分話しているつもりなのがまた始末が悪いと思います。なので、まだ関係が短く18歳の富海にとっては不安が残るのは当然であり、だからこそ清水のセクハラ事件を乗り越えて、富海が自信を持って敷島に甘えるようになったラストが微笑ましかったです。敷島の「モデルの命は短い。恋は長くてもな」も素敵でした。
富海は仕事より敷島が大好きで、敷島が見てくれるからモデルをしているような印象は最後まで拭えなかったので、敷島がこれと惚れこむような新人が登場したら、もしくは富海がモデルを引退したら、二人の仲はどうなるのだろうかとちょっと心配になりました。しかし、それは先の話であり、そこまで推測しなければ、ラブな関係のままラストを迎えた二人でした。
あと、イラストがいいです!作者様のあとがきの後にある写真のような二人も良いですが、終盤に登場する敷島が富海を片腕で抱っこしたイラストがなんとも言えません!清水はもうちょっと富海の顔が見える角度で撮影したんだろうなとか想像するとついコーフンしてしまいました。
よくある展開の話なんでしょうが、私は妙に気に入ってしまいました。
モデルとマネージャー、無愛想な年上攻め、生意気な年下受け、年の差カップルがお好きな方にお勧めです。