「HUG 30」に収録の「恋の片道切符」のコミカライズ。上巻です。
どうしてこんなに高額なんだろうと思ったら全ページフルカラーでした。紙本はどうなのかな。電書はそうでした。フルカラーと書きましたが実際には3色刷りでしょうか。セピアカラーの落ち着いたトーンで、絵柄にとても合っています。元はタテ読みだったのをヨコ読みに改稿しての出版のようで、時々コマ運びに戸惑いましたが全体的にはあまり気になりませんでした。
キャラクター造形としては、千光寺さんが想像していたよりもずいぶん若々しい(いくら俳優とはいっても40代半ばには見えない)のと、マネージャーの増井さんがシュッとし過ぎている(もっと見た目にこやかな丸顔中背のイメージでした)ことはありますが、改めてあのお話がコミックで読めることのありがたさを感じます。
上巻を読んだだけですが構成など原作に忠実に再現されていると思いました。
小説をそのままコミックにするとやはり刺々しかったり読みづらくなったりするため、たとえば千光寺さんは原作の方がもっとだめ大人でだらしなかったりしますが、可愛い人だなあとの印象を持てるように描かれていると感じます。増井さんが車の中で共演者(ドラマ主演)をみそくそに言う場面がとても好きなんですがこちらもやはり原作よりマイルドですね。こうした表現の違いはあるものの読みやすくなっていると思います。
木原音瀬先生のデビュー30周年記念企画の第2弾です。3冊連続刊行予定。
本書には、雑誌掲載後単行本には未収録だった3作と、それぞれの後日談SS(書き下ろし)が収録されています。
・「ハッピーライフ」2004年 小説ビーボーイ
・「CURSE」2002年 小説ビーボーイ
・「大人の玩具」2013年 b-BOYアンソロジー
あー来た来たこれこれ、と思いました。
掲載されているお話のメインキャラが木原先生らしいといいますか、ものすごく嫌な奴だったり、まいっかーと全方位的に適当に生きている人だったり。そしてその相手が一見まともなようでいて実はそれを凌ぐキャラクターというのも更に良し。面白かったです。
まずはとても強烈だった「CURSE」から。自己肯定感とプライドがそびえ立つ塔のように高い医師・時田は、研修医を馬鹿呼ばわりし常にイライラして大声で怒鳴るなど、病院での鼻つまみ者。その時田が実はオカルト系に弱いことを隠す余りつい口車に乗ってネットの占いをしてしまったことから、自身に降りかかる「お前の死まであと○日」に怯えるようになる、というお話。もうそろそろ気が付くんじゃないの?と思うのに時田は結構頑固に占い(呪い)を信じ切っていて、手のひらの上で転がされるようにいろいろなことをするのですが、終盤のセックスセックス連呼には腹を抱えて笑いそうになりました。続編である「その後のCURSE」まで読んでお話は完結すると思います。で、その時田の相手である研修医の廣巳の執着がすごくて、全然好みじゃないってお互いに思っていながら多分二人はもう離れられません。
「ハッピーライフ」は、自己管理も何もできず家もお金もなくなってふわふわ生きている高梨と、なりゆきで一緒に暮らすことになった君島のお話。清掃業が高梨に向いているとは思えなかったけれど少しずつ仕事も覚えていって、生活能力も少しずつ付いてきて、雛がすくすく育つのを見守るような気持ちで読んでいきました。こっちは完全に傍観者だから穏やかですけど、君島の心中を思うと察するところ余り有ります。お気に入りのラグをダメにされた時点で私なら怒り心頭で口も利かない(それ以前にも何度もそういうタイミングがあったけれど)と思うのに、君島は辛抱強く高梨に向き合っていて、こちらも(傍観者の立場から)偉すぎると感心しきりでした。読んでいてだんだん高梨かわいそうという気になっていくのがずるいというか、君島が一見まともそうに見えるけど結構きみも変わってるよねと分かってきて、そもそもダルメシアンがとても可愛いので、二人が元サヤにおさまったときには幸せな気持ちになりました。
「大人の玩具」はホラーチックなエロです。とても短いお話なのにエロしか詰まってません。で、これらは元はなんだったの?の経緯とかそういうのは一切なく、エロかった。若い二人。
楽しゅうございました。次巻で最後かー。それにしても雑誌掲載のまま本になっていない作品、他にもあるのではないかと思うのですが、勿体ないので全部公開して欲しいです。
木原音瀬先生のデビュー30周年記念企画の第1弾です。3冊連続刊行予定。
本書には、雑誌掲載後単行本には未収録だった3作と、それぞれの後日談SS(書き下ろし)が収録されています。
・「恋の片道切符」2003年 小説ビーボーイ
・「うつる」2013年 小説ビーボーイ
・「レザナンス」1999年 マガジンZERO
書かれた年代も異なりますがその内容も、作品のテイストが見事に異なっていて、幅広さを窺えます。読み終わった後、ただただ唸りました。どの作品も素晴らしく良くて、どうしてこれらが本にならなかったのか。「レザナンス」はまあ商業だと難しいのだろうかと思わないでもないですが(99年だし)、でも「恋の片道切符」は書籍化しても良かったのでは。主人公の年齢が高いからかなー。千光寺さん、すごく可愛い人で、確かに45歳だけどでも心洗われるタイプのピュアさが良いと思うんですよね。真面目ですしね。マネジャーの増井さんが苦労性でしっかりしていてすごく好き。「その後の恋の片道切符」が増井さん視点なのが嬉しかったです。
「うつる」は読みながら色々考えまして、最初のうちはドラッグ?などと思ったことは内緒です。確かに病院は色々あるといいますね。こちらも「その後のうつる」を読めたことが嬉しいです。ここまで読んで初めて作品が完結する感じです。
「レザナンス」は、ベトナム戦争に従軍した兵が主人公。戦争の理不尽さ、残酷さをきっちりと描いているからこその世界観であり、今現在このような情勢の中、こちらを読めて本当に良かったと思っています。
なお、書籍タイトルの「HUG」にはあまり意味はないように思えます。共通点があるとしたら、メインキャラ2人ともまっすぐまともな人達、ということでしょうか。続く2冊もとても楽しみです。
「黄昏アウトフォーカス」シリーズ。菊地原仁×市川義一の3冊目、完結巻です。
シリーズだからまた続きがあるかもしれませんが、「おわり」と書いてあったので一応完結巻。
3巻を読み終わった後もう一回1巻から読んでみたのですが、改めて面白いですね、この二人。
出会いは小学生時代、高校生になって再会。片方は鮮烈な印象で胸に刻まれて、もう片方は完全に当時を忘れていたけれど、映画部でバチバチしながら、たまたま一時的に寮の相部屋になったことをきっかけに急速に距離が縮まって。その後高校を卒業していった仁と3年生になった義一は環境も生活も違ってしまったものの、好きな気持ちは変わらないし、不器用だったりもどかしかったり、総じて甘酸っぱくてどこか懐かしくもあるのが良いです。
3巻は義一たちが3年生の新体制になって新入生を勧誘するところから始まります。
思ったように物事が運ばない、自分の力が及ばないことが悔しくて、でもプライドの高さからぎりぎり歯を食いしばりつつ打開策を練ったり気持ちを立て直していく新部長の義一の強さが眩しくもあります。小学生の時に最優秀賞を取ったのに悔し泣きをしていたころと変わらない魂が愛しくもある。仁もきっと同じような気持ちで彼のことを見ているのだろうと思いました。
大学まで来たのに会わずに帰ろうとするから先回りして待っている仁と、ぴゅっと逃げ出す義一。駅での二人の行動がとても彼ららしくて、逃げるのを追いかけて急行に飛び乗るのも良かったです。
それと表紙。あの場面だったのか、と読んで気付く仕掛けが心憎いですね。
高校生が熱中して真剣に好きなものに取り組む姿が輝かしく、ましてや部活の和気藹々とした雰囲気がとても良いこのシリーズ。身に着けている服装や靴、小物も、キャラクターに合っていて、見ているだけでわくわくします。
旧3年生のみんなが再び集まって今後どんな映画を作るのか楽しみだし、披露した際にはきっと義一は罵倒して他の後輩達はにこにこ見守るのだろうと、もう目に浮かぶようです。
2巻を待っていました。1巻の終わりが、ここで終わりなの?という衝撃的なものだったからです。
ちなみに次巻の3巻が最終巻のようです(9月発売予定とのこと)。気になる方は完結してからまとめて読んでもよいかもしれないです。2巻の終わりは1巻ほどそこまで衝撃は受けませんでしたが、続きが大変気になるのは確かです。
1巻ではうっすらぼんやりと語られたナギの正体について、2巻ではかなり明瞭です。昔話などでも、人間と人外は約束したり約束を違えたりして今の世の中が成立しているのが常ではありますが、ここ湯富日も例外ではありません。しかもかなり卑劣なやりくちを何度か目の当たりにすることになるので、元から幸也に寄り添って読んでいるこちら側としてはお祖父さんや温泉協会によい感情を持てるはずもないのですが、前述の来し方を踏まえると、なるほどなあと同情も禁じ得ないという。主人公の敵対側であると同時に、人外に対する人間側という両面を持っているからなのですが、その辺りの描き方に唸りました。
もうBLという範疇は二の次で、このお話がどういう風な着地点にたどり着くのか見届けたい気持ちです。
巻き込まれた恰好の依田くんが、幸也の声に従ってハンドルを切ってくれたことにお礼を言いたいです。(でも後で怒られるんだろうなあ)
幼馴染みの再会もの。
子供の頃、家庭内暴力に苦しみ不眠症でもあった凪が可哀相で可愛くて、家に泊めて一緒にお風呂に入ったり抱きしめて眠ったりしていた圭一。家の都合で引っ越しすることになり凪と離れて10年、会社員となった圭一が偶然再会を果たす、というお話。
調べて訪ねたわけでなく、本当の偶然の再会です。
絵柄も丁寧ですが、とても理性的で終始落ち着いたトーンで展開します。
子供の時と同じ感覚でぎゅっとする、というところから、だんだん少しずつ気持ちに変化が出てきます。特に圭一の方ですね。凪は明確に「好き」という気持ちがあって、これがグルーミングなのかナントカ症候群なのかはもう分からないですが、少なくとも凪にとって圭一は最初からずっと絶対的な存在。
それまでは圭一の家で、子供の頃の続きのように眠っていた二人でしたが、初めて凪の家に泊まったときに圭一が感じた戸惑いがスイッチだったのかなと思いました。とはいえ年上の圭一に罪悪感が芽生えるのは自然なことで、その葛藤の解消には時間が必要かもしれないです。ましてやこんなにべったりになってしまったら、組んで一緒に働くのは難しいんじゃないのかなと老婆心です。
それと影を落とした暴力父の存在が中途になっているのが恐怖でもありました。
1巻で思いが通じ合って(というか元から両思い)恋人同士になった二人のその後。
お互い仕事で忙しい中、時間を作って家に行ったり外でデートしたり、それでも思いは募るばかり、というある意味ラブラブな日常なのですが、終始漂う寂寥感。自分のことを本当に相手は好きなのか。結婚しているわけじゃないから何かあったときに自分は蚊帳の外なのではないか。また、去られたら自分は一人で生きていけるのか。そういう思いが溢れているので、え、このあと何かあるの?と思いつつページをめくり、いや何もないわ、変わらない両思いでむしろ感情重くなってるわ、と認識した一冊でした。
1巻との違いは、絵が丁寧になったことと(背景のせいか画面が盛られている)、崇晴が素直になったことでしょうか(これでも)。あと文が経営者の手腕を発揮してもっと金持ちになっている。
崇晴の相棒である染谷がいいキャラなので、1巻よりも出番が少なくなって個人的には少し淋しかったです。
刑事の崇晴とホスト店店長の文は高校の同級生で元恋人、現セフレ。本当は今でもお互いが好きなのに言えないまま身体の関係だけ続けている、というお話。
両片思いでセフレの場合、思いを告げて晴れて恋人同士になるのがゴールとして、そこまでの紆余曲折を楽しみたいという気持ちがあります。紆余曲折でぐいっとのめり込んで大団円で盛り上がりたい。
それが本作はあまり盛り上がれなかったです。読みながらお互いがお互いのことを好きだというのは分かるけれど、刑事の崇晴が今の関係をやめようやめようとしている理由があまり伝わってこなくて、もしその理由が、振られたら自分が傷つくからだというのであれば、共感はし難いしで、無邪気に追いかけている文が気の毒にすらなりました。
文は分かりやすいです。無邪気と書きましたが、実際には分別をもって色々抑え、崇晴の前で無邪気を装っている、というのが正確でしょうか。苦労性かもしれません。それだけに感情移入はしやすかったです。
物語の鍵になる事件についても、最初から匂わせていたりすればもう少し印象は違ったかも。
(初出を見ると、元々は単発で、その後1~3話と4~5話の掲載年が離れているので、1冊にまとまっていても連載時期が異なっているようなので、そういう仕掛けはしづらかったかも知れないですが)
面白かったです。お仕事BLでありヒューマンドラマです。
コンビニ本社で商品開発を担当している佐伯は、レストランで食べたデザートに感動し、コンビニの新作スイーツでコラボレーションをお願いしたいとパティシエに依頼する。その男が自分の離婚原因である、妻の浮気相手だと発覚するところから始まるお話。
なのです。主人公と、元妻と、元妻の浮気相手、この3人がメインキャラです。元妻がメインキャラなんて珍しくないですか。わりとBLは女性キャラはメインに立たないことが多いですが(BLで女性キャラは色々な意味で難しいと思います)、本作の元妻・千夏はバリキャリで、大酒飲みで、性格も大ざっぱ。BLにおいて主人公の妻がほかの男と浮気するというシチュエーションがある場合、いやな女、むかつく女として描かれることが圧倒的に多いと思うんですが、千夏については全く苛々することはなくて、読み進む分だけ好感が増していきました。自分でもとても不思議です。みつけてしまったある物についてストレートに切り込んだり、言動のいちいちが可笑しくて、離婚したあとも普通に佐伯と友人づきあいが出来てしまうのも納得。
千夏に限らず、この作品に登場するキャラ、脇キャラも含めて、人物がとてもきちんと描かれていると感じました。生まれてから今ここにいるまでの人生も想像できるというか、キャラに厚みがある。普通に生活して、仕事や恋や家庭に悩んで、前を向いて進んでいます。そのことにとても共感しますし、励まされます。
お仕事BLと前段で書きましたが、それだけではなく、佐伯がこれまで向き合うことを避けていた実家の問題についても、社会に出て築いてきた年数分だけ大人になっているからこそ今この段階で立ち向かえたのだと思えました。また、お父さんもお母さんもお姉さんも皆よかったです。表立って描かれていないですがみんなあの老舗と周辺の土地や親戚その他に囲まれて、どんな風に過ごしてきたのか、長男である佐伯をどう思ってきたのか伝わってきました。
ずっと書いてきて思ったのですが、ドラマとか映画に向くかもしれないですね。とても読み応えがありました。
東京で慈英と照映が酒を酌み交わす、ある日の夜のお話。
本編がずっと臣視点で、慈英側の状況が明らかではなかったので(想像は可能)、御褒美のようなまさに特典といったところです。
内容は、本編2本目の「彼らの周辺で起きていたさまざまな事柄」の中に混ざっていてもおかしくないような小品ですが、主役の一人である慈英視点というところで特別感があります。
全然長野に帰ってこられなかった状況や、当初の慈英の思惑も詳らかになり、本編が少し厚みを増した感じです。本当は彼が誰よりも臣のそばに居たいはずなので、一番ストレスフルなのかも知れません。ということに思い至った作品でした。
冗談で言っていたトークショーがもしも開かれたら倍率すごそうですね。