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女性千寂さん

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素敵なヒューマンドラマ

上下巻ともにずっと積んでいたのを、この度ようやく読めました。
作者さんの思い入れが強いだけあって、ものすごくメッセージ性の強い作品。自分がこのキャラの立場ならどう考える?どう動く?何を選択するのが正解なんだろう、等色々と考えさせられました。
特に感情を縺れさせながらも、着実に成長して強くなっていく子供組に感動…BL小説としての「萌え」というより、ヒューマンドラマを読んだ満足感があります。

ただ一点、歯痒く感じた点を挙げるとすれば、高砂にあまり魅力を感じられなかったことでしょうか。他の3人と比べて心情の描写が浅く、作品を通して大きな成長や変化、決断も感じられず。ごく普通に大人として恋に悩んで、ごく普通にちゃんと考えて手を引いたらまさかの龍之介が会いに来てくれた、ラッキー、みたいな…
メンタル乱高下な他と比べて、安心感はあるものの読者としてはあまり感情移入ができませんでした。
(また、上巻の感想になりますが、ジェシーを窘める為とはいえ龍之介の生い立ちを他人にさくっと話してしまった場面。気分が悪くなりました。)

個人的には、鼎と万座の関係性…お互い愛情を持ちつつも相手より優先するものが明確にあり、切り捨てることができる、というのがとても好きでした。なので終盤の万座の鼎戦線復帰は、むしろ少し残念だったり。笑 国生に頑張ってほしいものです。

良くも悪くも複雑で、難解、繊細なお話。

表紙の草間さかえさんの絵に惹き込まれて手に取りました。
ひらすらに内省的で、そこはかとなく重苦しく、とにかく作者さんの思い入れが強いことがよく伝わってくる小説です。

成り行きから年下の男の面倒を見ることになり、その痛々しい愚かさ稚さに、己の過去をも突きつけられていく受け。次第に受けに心を開き、いっそ盲目的ながらも、世界というものを知っていく攻め。
傷付いた幼い子どものままの心を抱えた2人は傷を舐めあい、2人での仕事を通じてそれを少しだけ乗り越えて、少しだけ明日を向いて大人になる、という物語。

序盤で明け透けな性生活についてのやり取りが為され、そういうテーマの物語なのかと思いきや全然、それだけで収まるような話ではありませんでした。
好きという気持ちとセックス。団地という箱庭、そこでしか生きられなかった馬鹿な子ども、彼らが得た罪。そんな世界を終わらせたい、という願望と、それを象徴する炎。終わらない明日への不安。
文庫一冊の中にそんなテーマが複雑に渋滞して、とにかく作者さんの熱意は伝わるのですが…正直、結局何に焦点を当てて読めば良いのか、がいまいちはっきりしない。
筆が先走ったような、とでも言うのか、文章も晦渋な言葉を使っている訳でもないのにやや描写が分かりづらく、読みにくい。
登場人物の過去に関わる人間もエピソードも多すぎて、とっちらかって散漫な印象。

それでも、複雑さは奥の深さでもあり、内省的な心理描写はとにかく繊細で、本当に色々なことを考えさせられるお話でした。
2回、3回と読んだらもっと得るものが大きいだろうな、という一冊。

また、ヒューマンドラマ的要素が強いためあまり"萌える"という作品ではなかったですが、それでも
物事を知らず視野が狭く依存心の強い子ども、それでいて仕事に対する責任感、矜持は確固たるものを持っている年下攻め
あけすけでドライ、図太い様で、本当はとても神経質で繊細で臆病な、綺麗な年上受け
(…などという、分かりやすく記号的なキャラクター性ではない、もっと複雑な2人なのですがともあれ)
そんな2人の関係性はなかなか美味しかったです。笑

そして噛み合わないなりに、とりあえず今一緒にいよう、明日どうなるかは分からないけれど。という彼らが、この先どういった人生を歩むにせよ、それぞれ幸せに生きて行ければ良いなあ…と思う。
そんな作品でした。

大好きな作家さんなのですが

この作品は個人的にはいまいちかなぁ…と。

基本的に、ひたすらカジノで賭博なお話です。
家長が海外を飛び回るギャンブラーで、滅多に家庭に寄り付かず収入は恐ろしく不安定。苦労する母を見て育った受け・逸はそんな父にもカジノにも欝屈した思いを抱えている。対照的に、幼い頃に養子として引き取られた攻め・一哉はポーカーに魅了され、伯父の愛弟子として賭け事の世界に生きる。
そんな二人がポーカー勝負を通じて再び心を通わせ、家族の絆を再構築してゆく訳ですが――。

父と従兄弟の、自分と父よりずっと父子らしい関係からの疎外感だとか、父だけでなく弟までも自分を置いて飛んでいってしまう、恨みがましい淋しさだとか。その辺の描き方は丁寧で繊細で、流石だなぁと感じました。
ただ、そこからもう一歩踏み込んで心にぐっとくるものが無かったように思います。

一つは心理描写がかなり物足りないこと。「家族」がなぜ「その中での男同士の恋愛」に発展するのか、逸が本当に恋愛的な意味で一哉を好きなのか、読んでいていまひとつ分からない。
それから、ポーカーゲームに全部を持っていかれてしまった感があります。一哉を手に入れる為に全てを賭けた勝負は圧巻、私はゲーセンですら殆ど遊んだことがないレベルで賭け事からは縁遠いのですが、思わず賭けポーカーをやってみたくなる程でした(笑
ただ何と言いますか…心理面での説得力に欠ける所で、勝負の勢いで何となく話が転がっている、という印象を受けました。結局なぜああいった展開になったのかもよく分からない――あくまでそこの盛り上がりありきだったかな、と。

なので読み終えてみると、カジノ以外の印象が特にありません。
期待してただけに、うーん……不完全燃焼な感じです。

ガラスの破片

旧い版(未読です)にドラマCD収録の「young swallow」と書き下ろしの「さなぎ」、二本のSSが新たに加えられたこの作品。
もの凄くハラハラしながら初読を終えました。

滅茶苦茶な家庭環境に疲弊して、上っ面だけの交友関係に虚しさばかり募らせていた高校生・瀬名は教師である阿南が差し伸べてくれた手に救われます。
冷たく鋭く、綺麗なナイフみたいなのに生徒を放っておけない優しい阿南。欝屈した世界に差した唯一の光に、瀬名はどんどんのめり込み一途な想いを募らせて暴走していくのですが――。

この瀬名が、見ていてとんでもなく危なっかしい。反面それがこの作品の一番の魅力です。
高校生という半端な年頃特有の脆さと鋭さ、繊細で傲慢で、自分の力ではどうしようもない閉塞に苦しみながら一途に阿南を想う。この「高校生」というものの描写がとても巧くて、始めから引き込まれました。
複雑な家庭環境もあるのか、若さゆえに暴走しようと基本的に瀬名は聡い子供です。生徒と教師という関係、十歳も年下の自分がまともに相手にされないのはちゃんと弁えていて、それでもたがが外れて空回りし、自分を抑えきれずに八つ当たってしまう。そこですぐに反省して落ち込むから、読んでいてますます痛々しく思うのです。
何というか――阿南にしてみれば、尖ったガラスが自分に向かって凄いスピードで飛んでくるようなものではないでしょうか。当たれば自分も血が出て痛いし、ガラスは簡単に割れ砕けてしまう。私なら背中向けて必死こいて逃げますね(笑……痛いのは嫌だしガラスが粉々に砕けるのなんて絶対に見たくない。
それに向き合って、ボロボロになりながらも受けとめようとした阿南は本当にすごいなぁ…と。

ただ、瀬名の危うさから目が離せず振り回されっぱなしだったので、阿南の心情がいまいち追いきれなかったのが残念です。強い人が最後の最後追い詰められて弱さを露呈する、なんて大好物なんですが――とりあえずこのレビュー書き終わったら落ち着いて再読するつもりです。
…しかし阿南先生、瀬名の危なっかしさにハラハラドキドキしすぎて吊り橋効果で好きになっちゃったんでは……と思わなくもなかったり(笑


さてこの作品もそうですが、凪良さんのお話は再会ものが多い気がします。
真っ直ぐで盲目的な熱情だけではやっぱり上手くは行かなくて、一度決別して距離をとってから再び関係を築いてゆく。それは離れている間にお互いが、或いは片方が一回り成長したからこそ可能なのだし、その成長にも相手が強く影響を及ぼしている。
瀬名も阿南と離れ社会人としてのより広い視野を得て、もう無力な子供ではなくなったからこそ再び阿南に出会えたのではないかな、と。そして理想的な年下攻めとしてカムバック!← 進化した瀬名は後日談、阿南視点のSSで堪能させていただきました。
「決別、再会」というプロセスを経ることで、はじめの盲目的で閉鎖的な勢いは無くなります。それでも強い想いはちゃんと残って、地に足のついた関係を再構築することができる――視野狭窄に陥りがちなBLにあって、その誠実さが良いなぁ…と思うのです。

今回は外しました…(涙

個人的に当たり外れが激しい作者さんです。
ドラマティックな心理描写や展開に、大抵は凄く引き込まれてハマるのですが…時たま、駄目な時は本当に駄目。この作品は後者でした。

歯の浮くような、といえば良いんでしょうか?
心理描写や台詞が随所で説明くさく大袈裟に感じられてしまって、攻めの葛藤やら受けの一途な切なさやら、折角の美味しい描写が真情として伝わってこない。
その為感情移入しづらいので、話にもあまりのめり込めませんでした。
で、入り込めずにしらぁっと半ば読み流していた結果。感情の動きや物語自体の展開が、やけにトントン呆気なく進んでゆくような気がして物足りず…ってそりゃそうだorz

「良いな~」と思うシーンは結構あったんですよ。クライマックスは程よく抑制が効いて、色々な面で美しかったですし、多面的な受け・イリヤの傲慢と健気が同居した人物造形なんか大好物です。
彼の愛に人生に必死で一途な様も、それを引き立てるドラマティックな展開も、客観的(?)に見て魅力的だっただけに…楽しめなかったのが残念です。

評価は…うーん……客観も加味して「萌」ですかね。
「萌」って甘い気もしますが…「星3つ」と考えればまあ。

「あお」に託したすべて

『天球儀の海』スピンオフです。そちらの主人公・希の兄である恒(酒のラベル送ってきた五連星の兄ちゃん)の話。

舞台が太平洋戦争も佳境に至って以降の最前線・ラバウルである以上、”死”は前作より更に近く、常に懐に抱え込んでいるようなもの。その”死”に磨り減らされた…磨かれた人の心、物語のどこまでも美しい純粋さが哀しくて、胸が引き絞られました。
美化し過ぎだと笑うことすら出来ません。存分に、敬虔に、ロマンに浸るべき作品です。
最後のまとめ方が若干、易きに流れたというか印象が弱い気がしなくもないですが…作品全体を読み通した満足感の前では些事、ですね。
うーん…これ以上は何書いても蛇足になってしまいそうで、レビュー出来ません。とりあえず、前作に少しでも感じるものがあったなら読め!としか←

あ、一つ難を付けるとすれば、ちょっと誤字脱字が目立ちすぎることでしょうか。
まあそれも、八月初めに間に合わせるために編集部さんが超特急で頑張ったんだと思えば
、ご愛嬌(笑
とかく様々な面で難しいであろう戦中、それも最前線をここまで描き切った作者さんに脱帽です。戦闘機もかなり出張っていて嬉しかった…

…ちなみに。月光が雲の上に出るシーンは紅の豚を彷彿とさせたりだとか、自分がちょうど明日、風立ちぬを見に行く予定だったりだとか、個人的には妙にジ○リと関連づけられる作品ともなりました。

攻めが……可愛い…っ

お話としてはライトめで、テンポも良い感じです。

苦い失恋から恋愛に少々嫌気がさしている攻め・赤江(海外支社勤務の経験のあるエリート、しかも偉ぶりもしない好感の持てる美形。…イイ男です)と、男女問わずを魅了しまくる魔性の受け・永嶺(ギリ三十代)の一応ノンケ同士?いや永嶺所長はバイ?な恋愛。
――読者から見ても確かに魅力的なオヤジなんですよ、この人。ざっくばらん(?)な性格と美人顔、白髪、それに仕事スイッチが入った時のカッコよさが絶妙に合わさってキャー、みたいな(笑
なのに攻めにはその「魔性」が効かない(何かの技名みたいでw)。
魅了されないにも関わらず、のっぴきならない事情から所長と”付き合う”ことになってしまった赤江は、彼のまた違った一面――無邪気だったり無自覚に弱かったり――に接する内、「魔性」とは無関係に少しずつ恋を育てていきます。
(この"事情"の原因となった攻めの元同僚の女の子……悪い人ではないし、話の起爆剤でもあるのですがいかんせん、行動が少しイタいです。苦手な方は要注意。

攻め受け双方に影響を与えているそれぞれの過去はあまり掘り下げられていないので、重たさ・くどさはそう感じられません。全体としては、コミカルな部分も多く適度に読みやすいライトさだったかなと。
力のある作家さんじゃないと、多分サラっとしらっと読み流してしまうような展開だと思うんですが……話のつくりが上手いのでしょうか、今一つ先が読みきれないのと、場面場面での感情の追い方に引き込まれました。
それに、花ヶ谷営業所の皆さんカッコいいんですよ。社会人として。お仕事BLって程でもないのですが、お仕事シーン他の"デキる"感じがもう、堪りません←
永嶺所長(受け)じゃないけど、「痺れるねぇ♪」ってやつです。

で、ここからが本題です。(え
赤江が……攻めが可愛い!
どちらかというと私は受け至上主義、普段あまり攻めは気にしません。しかもこの作品の受けはかなり好みの部類……なのにここまで攻めに気を取られるって、初めてかもしれない(笑
初日に左遷の事情をバラされた時の赤面に始まり、いちいち表情が受け受けしくて泣かせたくなるんですよ~← デキる男前なのもまた良いですし。
あんまり可愛いので、後半になると何かもう受け同士にしか見えなくなりました……これが百合か!って。(違
今なら百合好きの方の気持ちが分かるっなんて勝手に親近感を抱きつつ、新たな境地が拓けていくのを感じました。はい。


さてこの作品、読後しばらく経ってから振り返ってみると、引っ掛かる部分は結構あります。
結局所長はノンケなのかバイなのかとか、赤江の元カノ"マリさん"に対する気持ちの決着はいつの間に??とか、そもそも何故「魔性」が効かないのか、所長なんで白髪??とか。二人共の過去の色々の扱いが軽いせいでどうしても、話の説得力は下がってしまいますし。

ただ、読んでる間は殆ど気にならなかったのと(普段少しでも引っ掛かるとすぐに白けて、読み流してしまうのですが…)妙に印象が良いのとで、凄く"当たりだった"感が強い。
なので評価はとりあえず、読み終わった瞬間に(「神」だ!)と思った、その直観に従います――時間が経って頭が冷えた今、何がそんなに気に入ったのかよく分からんのですが(笑

ごくごく個人的に、どうにも……

秀香穂里さんといえば何よりもまず、お仕事BL!という印象。
そこが好きな作家さんなのですが、今回は個人的に、お仕事のチョイスが不味かったかなぁ…と。

受けと攻めは同じ進学校の、それぞれ国語科と社会科の教師であり――物語を通して、恋愛面だけでなく人として教師として、成長してゆく姿も描かれているのですが。
つい二年前までそこそこの進学校で受験生をやっていた身としては(受けは高三担当です)、教師の仕事の仕方(というか学校の教育システム?)や行動、生徒の考え方に突っ込みどころがありすぎてorz
高三にもなって文系理系が同じクラスにいたりとか、『先生のクラスは抜き打ちテストが多い』とか。どうなってんだこの学校……(汗
もっとなんちゃってな設定の学校モノでも、普段はここまで引っ掛からないのですが……
なまじお仕事がっつりなだけに、さらっと『BLはファンタジー』で流せませんでした。

ということで
『これは読めん』と仕事パートを流していたら、今度は受けが攻めの家族間の問題に引っ張りだされ……話に聞いていただけの、初対面の人間と腹を割って対話、いい助言までするという展開に目が点。
ちょっと付いて行けなかったです。

恋愛面も、書き込みが物足りない印象で……これといって魅力的な点は少なかったかなと。
受けが基本的にはタチの人だったり、優しく器の大きな攻めが、セックスの時はSっ気のある感じになったりと、萌えポイントはそれなりにあったのですけどね。

綺麗な、良い話すぎたのもあってか、総じて物語に入り込めませんでした。

あ、それと
男子校な筈なのに、挿絵に女の子がいたのはちょっとどうかと……
男の娘容認な学校なんだ!なんて脳内補完は流石に無理でした(笑

苦手はそうそう直らないようです…

どうにも以前からこの作者さんに苦手意識があったのですが、好みど真ん中の設定に釣られて懲りもせず手を出してみました。……結論、やはり苦手なものは苦手みたいです。

理由としては、話の展開や文章が肌に合わない…これに尽きると思います。
ヤクザ×警察官僚なんて大好物な設定にも関わらず、あまり話に入り込むことが出来ずにしら~っと読み流してしまいました。
恋愛面は普通に楽しめます。問題は、物語の背景……キャラが属する暴力団や警察機構の描写でした。硬く、シリアスにしようと作者さんが頑張っているのは分かるんですが、それがどうにも陳腐で薄っぺらく感じてしまうのです。ハードに描こうとしているのが透けて見えるような気がして、ちょっとした違和感ですぐ鼻白んでしまう。
文章が苦手なのも含めて、この辺は多分、読み手側に問題があるんでしょうね(笑 ひねた目線の持ち主でなければ、大分楽しめたのかなー…と。

あ、それともう一つ、読んでいて辛かったのが視点の入れ替えの唐突さ。
基本的に話は受け・遥翔の視点で進むのですが、所々に改行もなくいきなり他者視点が放り込まれていて、え?と……非常に気になりました。
これも話に入り込めなかった一因かなと思います。

関係性や設定が非っ常においしかったので、評価は萌と迷うのですが……苦手な作者さんに手を出すな、という自戒も込めて中立で。

上手くまとまっているので安心して読めます。

ただ『あれ?』と思う程度ですが、まず一つ気になったことが。
タイトルにもなっている「エンペラーズ」という呼称……実際、そんな言葉はどこにも出てきません。作中で二人につけられているあだ名は「殿様コンビ」です(笑
その殿様コンビという呼び名にしろ、ほとんど話に出てこないので、タイトルとあらすじに「エンペラーズ」という語を持ってきていることにかなり違和感がありました。

それに対して登場が多いのが、受け・東原のあだ名である「王子様」でしょうか。攻め・御門がからかい混じりにそう呼びかけて東原が怒る、というよくある応酬を含めて、顔を合わせればバトルが勃発する警視庁捜査一課のエース二人です。
意見は合うが気は合わないライバル同士を持て余した上司によって、どうにか不和を解消しようと(?)殺人事件の捜査で警部補×警部補という異例の(管理職の端っこ同士)コンビを組まされます。
裏面のあらすじにはそこまで書かれていませんが、実は何年も前の出来事によって互いに恋情を半ば自覚してからずっと、上記のような、二人の口喧嘩と信頼に基づいたライバル関係のすぐ下には、緊迫した熱が潜んでいたようです。事件の間=恋情を認められない(主に受け・東原が)意地っ張り期間なのです。それが事件を経てどう溢れだすのか、というのがこの話でした。

年月による積み重ねがある恋愛感情、というのはやっぱり良いですね。私はしっかり仕事面を話に盛り込んでほしいお仕事BL好きですが、年月が存在すれば、仕事面が多くても恋愛面が薄くならないので。
その点でこの話、仕事と恋愛のバランスはかなり良かったと思います。
事件とその展開は重たくなりすぎず、かといって軽くもなくて、突っ込みどころもあまりなく(BL的ご都合主義はまあ、許容範囲内でした)。
恋愛は、口喧嘩や信頼で出来た薄膜一枚のすぐ下に走る緊張感と、それに揺さぶられる熱情、追い詰められてすっと定まる感情と覚悟(…etc.)の描かれ方がさすがに上手くて、自然に入り込むことが出来ました。

ただ、惜しいなあと思うのが……序盤、二人のライバル関係だとか能力・実績がほぼ伯仲であることだとかが強調されている割に、実際はあまりそう見えないことですね。
攻め・御門はかなり作中で能力を見せつけていましたが("情報屋"多用という少々チートな有能さとはいえ)、一方の受け・東原が活躍しない。地の文は東原視点が多く、かなりしっかりしているので読者が無能な印象を受ける、ということは全然無いのですが……いかんせん、捜査上で目立った活躍・見せ場が全然無かったのが残念でした。
拳銃だけは術技で唯一受けが攻め勝る、という記述からの、絶対に受けの発砲があるだろう!という予想も裏切られ……うーん。
結果として、捜査上で完全に東原が受け身に回ってしまっているのが何とも惜しい。

ので、私のようにがっつり実力伯仲のライバル関係!ってのがお好きな方には、物足りないかと思われます。


――とまあ色々と書きましたが、全体でみて結構良かったので評価は「萌」で。

遊んでいるようで意外と一途&ストイックな俺様攻めと、堅物でツンツン、クール(?)な受けの喧嘩ップル。
話の展開、萌えの押さえどころなんかはさすがに安定感があるので、そんなカプのじれじれっとした関係性が好きな方はまず、読んで外れはないと思います。