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『セキュリティ・ブランケット』の下巻。上巻が良いところで終わっていて、下巻の発売を今か今かと心待ちにしていました。
すみません、ネタバレ含んでいます。
高砂と龍之介。
鼎と国生、そして万座。
上巻ではこの5人の男たちの恋模様が描かれていましたが、下巻では万座さんは抜け、残りの4人の男たちのお話に。
鼎が高砂のことが好き。
それだけでもまだ若い龍之介を混乱させるに十分な情報だったわけですが、さらにそこに龍之介の父親という男性が登場します。
母と自分を捨てた男。
そう思っていた龍之介(と鼎)なわけですが、実は…。
誰よりも大切な人である鼎のために高砂への想いを封印しようとする龍之介。
高砂への秘めた想いを抱え、そして万座をも失った鼎。
そして龍之介を捨てたはずの父親の登場。
展開としてはシリアスに分類されるかと思うのですが、凪良さんのテンポの良い描写で描かれていて重すぎず、けれど彼らの気持ちを軽んじた展開にもなっていない。
高砂、龍之介、鼎、そして国生。
彼らが選ぶ「未来」はー。
お互いがお互いを想う。
全員が優しく、自分のことよりも愛する人たちのためにと心を砕く。その想いに落涙しました。
タイプの異なる男性が出てくるので、読み手の好みを網羅している作品かと思います。個人的には鼎が一番ツボに入るキャラなので、とにかく鼎に幸せになってほしくてたまらなかった。
37歳と18歳の恋。
高砂さんと鼎は大人組ですが、しかも二人ともしっかりしている男性たちですが、それでも恋をすると途端に可愛くなってしまう。恋に翻弄されるのは、年齢は関係ないんだなあと微笑ましくなってしまいました。
それと、ミドリノエバさんの描かれた挿絵も美しかった。イメージにぴったりでした。
特に表紙…!
和服姿の鼎の美しさに、ため息が出ました。
「みんなそれぞれ自分の気持ちがあって、同じ物事でも解釈が違う」
下巻前半に出てくる龍之介のモノローグです。
せつない恋のお話にこういう言葉を挟み込んでくるから、私は凪良さんを絶賛したくなってしまうのです。なんというか「正しく美しい人だなあ」。
両思いの龍之介と高砂がどうして上巻で結ばれないのかと言ったら、前述の境地に立たない想いはすぐに揺らいでしまうからなんだろうと思います。
自分だけの感情から、他者がいる社会に気づくこと。その上で自分の想いを遂げようと全力を尽くすこと。これこそが「君は一人じゃない」ってことですよねっ。その素晴らしさを描いて、満足の下巻でした。
結局、誰と誰が想いを遂げたのかは書かないでおきます(ご自分の目で確かめた方が面白いと思うので)。書いておきたいのは、龍之介と国生の『子ども組』が、このお話をくぐり抜けたことで『いい男になる階段を登った』ということ。
こういう『お話が終わった後でもその後に想いを馳せることの出来る話』は、読後感がサイコー、って思いました。
宮、鼎、高砂、国生、万座の五人が、大切な人の幸せのために悩み苦しみながら行動する下巻。
絡まった想いが少しずつほどけ、また新たに結ばれていくのですが、そこには痛みや切なさ、喜び、戸惑い、ときめきなど、様々な感情があふれていて、とても胸にしみました。
一番印象的だったのが、温泉宿で鼎と高砂が自らの恋を振り返る場面。
二人を結びつけようとする若者たちの荒っぽい思いやりに、二人が苦笑しながら「高校生に戻れたらどうしたい?」と話すくだりが、本当に切なくて。
最後まで高砂に好きだと言えなかった鼎は、心の中で思うのです。
そのときは今度こそ高砂に想いを告げるだろう、でもそれは無理な話で夢なんだ、と。
そして長年の片恋を痛みとともに手放します。
一方高砂も、告白していたらどんな人生になっただろうと、興味とともに鼎への恋心を懐かしみます。
恋よりも友情を選んだ二人。今の鼎には宮への親心もありました。
大人になると守るものができて、一心に恋に飛び込むことはできなくなる。
それは少し悲しいけれど、穏やかに恋をほどく二人は本当に素敵だと思いました。
そしてなんといってもドキドキしたのは、鼎が戸惑いながらも国生に大きく傾くくだりです。
国生は鼎の幸せを一心に考えて、万座ともう一度結びつけようと奔走したり、鼎の体調を見抜いてフォローしたり。以前からは考えられない成長ぶり。
でもやっぱり、「鼎さんのことが全部知りたいんだ。」と、追いかけてくる青さがあって。
19も年下のまぶしい若者に気持ちをかけるのが怖い。でも、まだどうなるのか分からない…。
こんな風に揺れてこそ、恋じゃないでしょうか。
芯の強い鼎の心を揺らすには、万座は分別がありすぎたのかもしれません。
一度ほどけた鼎と国生の関係が、新しく恋という形に結ばれる予感がします。
何度も読み返すうちに、大人たちの言葉が若者たちの背中を押しているなあと思いました。
マリアーノの「僕ナラ、好キナ人ニ、幸セニナッテホシイ」がなければ、国生は温泉旅行を計画しなかった気がします。
万座の「相手のためプラス自分のため。このふたつのバランスを取れてやっと愛になるんだよ。」は、国生を悩ませ成長させただけでなく、国生から宮にも伝わって、高砂を追いかける宮を励ます言葉にもなり。
高砂の「きみはひとりじゃない。だから怖くない」は、宮を支えて、そして宮からジェシーに伝わって。
鼎の「お前はお前のことをがんばれ。」は、宮が殻を破って飛び出す勇気をくれて。
大人たちは人生の先輩ではあるけれど、突き動かされた若者二人に翻弄される様子が可愛らしかったです。
そして若者たちより大人たちに共感してしまう自分に気付いて、ちょっと苦笑いしました。
鼎をめぐる、国生、万座、万座の娘の関係は、ますますややこしくなりそうで、続きがとっても気になります。宮と高砂の遠距離恋愛も、やきもちを焼く高砂を見てみたい。
彼らの物語をもっともっと読んでみたいです。
今まで読んだBL小説でここまで右往左往振り回されるのは初めてでした。スポットが一つに当たる作品ではないので、
どうかあらすじも読まずに飛び込んで貰った方が楽しめるのではないかと思いました。
一体誰が誰と結ばれるの?と。
ここからネタバレで。
不憫な宮くんにぐっと感情が動かされる上巻でした。
そんな宮くんが幸せになるのは心から喜ばしいのですが、個人的に宮くんと高砂さんの恋愛プロセスよりも高砂さんと鼎さんのプロセスの方が重厚で、長年想いあってすれ違う二人が通じ合えるその舞台が整ったとあっては・・・と思ってしまいました。
宮くん、鼎さんがそれぞれ良くも悪くも障害になってしまったところがこの作品でどちらに傾いても気持ち良くなれない部分でした。まぁそれがリアルなんじゃないだろうか!
相手の幸せを思って身を引く愛に共感出来たのですが、本作で高砂さんが他者を思って身を引けてしまうくらいの愛ではというニュアンスの対比に衝撃を感じました。なるほどな!
下巻では国生くんの真っ直ぐな健気さがわたしの中でピークでした。国生くんは脅迫と体から始まった鼎さんとの関係をこれからどう紡ぐ中々ドラマがありそうで期待大です!
思うところは色々ありましたが、複雑に絡まり合い、錯綜する4人+万座さんの物語は文芸作品として素晴らしい作品でした。
気になるところで終わった上巻の続き。
鼎、龍、高砂、国生、万座の複雑な恋。それぞれ思うところはあっても、互いに想い合いすぎて、色んなところですれ違いが起きて、辛かったです。でも、5人の複雑な想いが交差して、ようやくひとつ、繋がった時にはほっと安心して感慨深いものがあります。群像劇なので、1つのカップルの話だけではないところが、良い。龍と鼎の家族愛が、1番切なくて、1番好きです。私は龍に注目して読んでいたので、彼の成長と、幸せを掴みに行く姿にきゅっとしました。
若干ネタバレですが、やっぱりどれだけ相思相愛だったとしても、タイミングがあって、それが運命なんだと思いました。あと、鼎には万座さんに甘やかされるのがお似合いだと思うんですよね。個人的な希望として、万座さんに頑張って欲しい…!