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エキスパートレビューアー2025

女性ぱるりろんさん

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とにかく画面がエロい

婚約解消を機に自分を変えたくて、思いつきでタトゥースタジオを訪問した尚紀。彫師の愛助は自己嫌悪に陥る尚紀を肯定し、まずはモチーフを考えようと提案するとともに自身の黒歴史(別れた恋人の名前を黒く塗りつぶしたタトゥー)を見せる、というところから始まるお話。
初対面で上裸になって肌を見せ、「蛇とかどうですか?」と提案され、イケボでエロいことを囁かれて気持ちよくなってしまうというシーンが第1話から来るので、タトゥーを入れる=性的興奮という、昔からある彫り物をテーマにした映画や小説等を少し思い出しました。本作は性愛に特化した作品でもあって、画面がとても色っぽいです。たとえば尚紀が愛助の家を訪れたときに、「俺が開発するつもりだったのに、ひとりでエッチな体になっちゃって」という科白があるのですが、このときの尚紀の尻~脚の色っぽさ。男性の身体でも女性の身体でもない、不思議なラインです。尚紀は愛助との出会いによってまるで十代の子のように性に目覚め、愛助も前の恋人と別れてから不能になったらしいのに回復し、お互いがお互いを求めて性的に高め合う関係というのが絵から伝わってくるのがすごいと思いました。絡み合う痴態もアクロバティックなのにとにかく画面がエロい。二人がお互いの身体に溺れているのがよくわかります。唾液に塗れたとろけるような舌もいいです。
二人の関係はまだ始まったばかりで、あとがきを読んでも続きがあるような書き方をしているので、続編があるのかもしれないです。個人的な好みの問題ですがストーリー展開があまり無いのが気になりました。(内容的にそういうのはあまりいらないのかも知れないですが)

罪悪感と背徳感にゾクゾク

写真家の清澄は親友でアシスタントのみさごを事故で亡くし、みさごの弟であるひばりを引き取って一緒に暮らしている。高校3年生のひばりは清澄のことが好きで、清澄もそれを分かっていて、子ども扱いすることでなんとなくやり過ごしている、というお話。
好きなタイプの関係性で、以前から読みたいと思っていながら勿体なくてちょっと積んでいたのですが、意を決して手に取りました。あー、好き(笑)。この普段は見ないようにしているけどどうしようもない罪悪感とちょっとの背徳感、お互いが薄氷を踏むように日々を過ごす、尊くて且つ不毛な時間。大好きです。(うるさくてすみません)
良かったのは、清澄とみさごが恋愛関係ではなかったこと、みさごとひばりが親が居なくてたった二人きりの兄弟だったこと、清澄もひばりもどちらもがみさごの死に罪悪感を抱えていること。この、沈殿する淋しさみたいなものが、清澄の笑顔の裏側にあるということが、写真にも影響を与えているのかなと思うなどしました。
ひばりのまっすぐな瞳が時々翳るのが色っぽくもあり、でも子供として庇護したい気持ちになりました。
気になったのは、結構早い段階での清澄のモノローグで、ひばりが自分のことを好きだと断じてしまうところですね。お話を進めていく上で必要なので仕方ないですが、見方を変えるとちょっと自意識がやばい人みたいに感じてしまう。相手は高校生ですし。
清澄がひばりの学校で女の子達からキャーと言われたり、一方で、写真の個展の会場付近で「顔で売れてるんだろ」と蔑まれたり、そういう風に外側が描かれているのも良かったです。

6と7 コミック

凡乃ヌイス 

深い深い闇

BL AWORD 2026のディープ部門上位だったので、それなりの覚悟はして読んだつもりでしたが、もんのすごい衝撃を受けました。
こういうお話だったとは! え、同人でしたっけ? と思わずレーベルを見返してしまいました。マーブルでした。いやちょっとほんとうに、商業BLのお約束どこ行った(そんなもんあったのとかの質問は受け付けません)。
と、ここまで書いて一日寝かせました。一呼吸。
昨年発売なのに今頃言うなと言われそうですが、今読んだのでお許しください。
第1話。天真爛漫な禄斗と同居している七海との日常からスタートし、幼馴染みで恋人同士だとの関係性にふんふんと思っていると、序盤で謎の白黒反転の画面が出てきて、ぞわっとしました。でもすぐに和やかな場面に戻るのでまあいっかとやり過ごしたのですが、七海の怖ろしい述懐が始まるのです。七海の言っていることが真実なのか、それともあまりに荒唐無稽な内容なだけに、七海がおかしくて真実は別にあるのか、第1話ではまだわかりませんが、とにかく第2話へと引き込まれるように読んでいきました。
そこに描かれる非現実な闇と沈む七海、対する明るいばかりの禄斗。この対比が非常に顕著で、ますます混乱したまま第3話へ。真実はどっちなのか、禄斗と七海どちらがどうなのか、考察しながらどんどん先へとページをめくりました。読み進むうちにだんだん見えてくるものがあるのですが、「え、まさか」と思ってしまう自分がいます。
最後の最後まで目が離せず、結局「まさか」と思ったまま、ラストでまたショックを受けまして。
なんなら奥付のページですら、もやもやに拍車が掛かりました。
いやー、大変な作品でした。これ同人じゃないんですよね。驚きました。

複数作品のクロスオーバーが楽しめる「CROSS OVER池袋」収録

2019年冬発行の同人誌。「CROSS OVER池袋」「灰の月」「捜し物屋まやま」「吸血鬼と愉快な仲間たち」の番外編を収録。贅沢な本でした。
「CROSS OVER池袋」は、「MUNDANE HURT」「灰の月」「吸血鬼と愉快な仲間たち」「LOVE&CATCH」のキャラが池袋の動物病院で診察を待ったり、その後のあれこれ等でキャラ同士が絡むお話。まさにクロスオーバーです。私は「LOVE&CATCH」だけ未読なのですが、こうやってたくさんのキャラが登場するとそれぞれが個性的でとても面白いです。テーマは猫。「MUNDANE HURT」の二人が飼っている猫のミツが具合が悪くなって看病するのですが、このお話でも二人のラブラブラブは健在で全体の糖分担当になっています。同じ糖分でも「灰の月」は湿度が高くて得体の知れない不気味さもはらんでいて、本当に色々だなあと思います。

クロスオーバー作品の後は、それぞれ単体の番外編。
「灰の月」はハチの憂鬱というタイトルで、ハチが店のママを相手に零すSS。惣一を甘やかす嘉藤のツーショをCROSS OVERで見たばかりだったので余計に部下の苦労が忍ばれます。元は夏コミのペーパーとのこと。
「まやま」はハロウィンのSS。白雄が着ると何でも似合う、イケメンずるいみたいなお話。2019年秋にWeb公開したものとのこと。
巻末の「吸血鬼」は前巻(Novel Plus mini12)の続きで、米倉海斗がアルをぼこぼこのぐちゃぐちゃに破壊する場面でした。読んだのとちょっと違うなと集英社文庫を引っ張り出して確認するなどしました。文庫の方がマイルドなのと、同人誌では海斗がアルの特性を知ってしまって、自分の血をのませてまた破壊するを繰り返していて大変怖かったです。

ちがう意味でドキドキする2編

2019年夏発行の同人誌。「吸血鬼と愉快な仲間たち」と「MUNDANE HURT」の2本立て。
「吸血鬼と愉快な仲間たち」は集英社文庫に収録されている内容です。死体をみつけたアルが忽滑谷に連絡して、自身ももう一度見に行ったらもう既に米倉海斗によって運び出された後だったという場面。その後アルは奮闘するものの海斗にみつかって大ピンチに。既読部分ですが何度読んでもドキドキします。
「MUNDANE HURT」はepisode10で、同人誌の「MUNDANE HURT 同人誌総集編」には未収録の内容。西崎はカフェを開店していて常連客もついていて、今以て長野とラブラブラブです。西崎の今の幸せな日々は彼の過去を知っているだけに心からよかったと思えてあたたかい気持ちになります。今回の目玉は長野が猫を拾ってきて飼うことになったところ。長野から「謝らなくてはいけないことがある」と言われて、西崎の頭に浮かんだのは、病気がみつかった、女性を妊娠させた、の二点で、長野が生きているから後者の方がいい、と考えるところがもう、西崎お前はもう!とじたばたしました。甘々ありがとうございます。

ブラザー制度という仕組みがある高校の寮のお話

2年生と1年生を同室にするブラザー制度という仕組みがある高校の寮で、後輩ブラザーを可愛がるんだとわくわく楽しみにしていた夏の前に現れたのは、おそろしく無愛想なツンケンした新入生だった、というお話。
夏の涙ぐましいまでの「可愛がりたい」圧とその空回りはある種滑稽でもあって、相部屋の依人がちょっと気の毒でもありつつ、夏の軽妙な語り口についつい笑ってしまう楽しいお話でした。同じ部屋なのだから仲がいいに越したことはなく、依人の頑なな態度もどうかと思うのですが、むしろこのマイナス100の関係性からどうやってラブに至るのかをじっくり見たかった気持ちです。結構早い段階で一足跳びに軟化したので、勿体ないと思いました。著者は気持ちの移り変わりを丁寧に描くことが得意な方なので、もしやカットされたのかと邪推もしました。
依人が夏を好きになっていったのをきっかけに、中学の時のわだかまりに決着をつけようとするエピソードは潔く、また相手の子も軽率ではあったけど決して悪い子ではなかったので、行く末(卒業後とか社会人になった後とか)に希望が持てるような展開で良かったです。
メインの二人に拘わらず周りの友達それぞれ個性があって、恋をしていたり友情に厚かったり、なんだかみんないい子ばかりなので、夏と不仲な滝が新鮮でもありました。滝の目に夏はどんな風に映っていたのかも気になりました。でもここを深彫りすると甚だしく脱線してしまうから仕方ないのかな。
夏が1年生だったときの先輩ブラザーの海先輩がめちゃくちゃ大人だったのと、最後の方で笑いながら「当て馬になりたくない」発言をしたことも良かったです。夏がものすごく懐いているのでそれこそ当て馬になりそうでひやひやしていたのです。まさか本人に自覚があったとは。
番外編は依人の卒業式のエピソード。大学生の夏が、卒業式の後、車で依人を迎えにきてデートするのが実にエモかったです。

江川さんには足を向けて寝られない

「キスは捜査のあとで」の続編。遠距離恋愛となったものの片道2時間をものともせず食事したりイチャイチャしたりなかなかアグレッシブな二人。そんな二人の間には色々な邪魔が入ります。
障害が多ければそれだけ絆が強くなると昔から言いますが、本作は一冊の中に、邪魔者(という言い方が適しているのか不明ですが)が何人も現れます。当て馬一人に一冊まるまる振り回されるような展開はいやだなと思っていたので、この構成は良かったです。しかもやはり特筆すべきは真ん中のトラブル、プリギャラのソルト様に尽きます。温泉旅行がフイになって気の毒でしたが、それよりなにより爆笑でした。そしてここでも江川さんの活躍が光りました。もうね、二人は江川さんに足を向けて寝られませんよ。お世話になりっぱなしですよ。
最後のトラブルは警察官らしい展開で、塩野くんが一枚上手でかっこよかったです。なんでも出来る人ですね。
多古井さんは1冊目はもう絵に描いたような朴念仁でしたが、さすがに恋人ができてあれやこれやで色恋にも熟達し、不器用ながらも気持ちを言葉にしたり行動に移すようになって、可愛さが増してきました。二人がバカップル路線まっしぐらなことも、職場の皆さんが面白がりつつも二人を応援していることも、大変微笑ましいです。

朴念仁すぎて今後が心配

山ノ道警察署のベテラン警察官である多古井は老若男女あらゆる人達から慕われるいわゆる人たらし。なのに席の近い若手イケメンの塩野だけは「楽しそうでいいですね」とツケツケ嫌味を飛ばしてくる。自分に当たりがきつい理由が思い当たらずとうとうその場の勢いで正面切って問いただしてみれば、とんでもない真相を突きつけられる、というお話。
社会人で年の差ありの年下攻め、片方がポーカーフェイス、というのが個人的に大好物なシチュエーションなので、わくわく楽しく読みました。多古井さんがかなりの朴念仁なのに加えて脇が甘いのがリアリティがあり、最後まではらはらしました。好い人だしみんなから好かれるのは分かるけど、本当にそれも善し悪しで、もともと警察は男社会だからどうやってもこういう言動になってしまうよなあ、と諦め半分に理解はしますが、それにしても塩野くんが気の毒でした。
野球の試合を見に行ったときの、塩野くんの気合いの入った下調べに泣かされました。どれだけ楽しみにしていたのでしょう。多古井さんにはコンビニのゴミ箱から拾い上げるか同じ物を買ってきてほしい。性格はきっと変わらないから今後のお付き合いも前途多難なのでしょうか。続編もドキドキしながら読みたいと思います。
同僚の江川さんがすごくすごくナイスアシストで、江川さんの歌う「乾杯」に私も横からコーラスで参加したい気持ちでいっぱいになりました。

唯一無二の共通項がなくなってしまったら

幽霊が見えるという共通点が縁で仲良くなりルームシェアをしている二人。あるとき突然玲志から霊感が消えてこの世ならざる者が見えなくなってしまう。二人の関係に変化が訪れるお話。
幽霊とか霊感とか言うとホラーっぽいですが、そこまでホラー寄りではありません。ここに描かれる霊は、我々生きている物とは関係なく、ただ通り過ぎて行く影のような存在。何か悪さをしたり向かってきたりということはありません。
そして、この二人の縁を言い換えると、例えば同じ難病の治療をしている同士とか、誰も知らないようなインディーズバンドのファンだとか、これまで誰とも共有できず一人ぼっちだと思っていたのに同じ人がもう一人居た、という縁、でしょうか。その偶然の出会いは貴重だし、それは声を掛けて仲良くなるよなと思えました。ルームシェアまでするのも分からなくもないなとも。解り合える人というのは貴重ですからね。
ただ、生きづらいとは思うんですよ。行く先々で、なんなら家でも、無害とはいえ影が通り過ぎていくわけなので。
見えるようになったのは、玲志は中学生のときから、依良は物心ついたときから、と差があり、冒頭で玲志の霊感がなくなったことも「元に戻った」という感覚。それだけに依良と離れてしまったと淋しく思う気持ちもとてもよくわかります。
こういう仕掛けは、以前読んだ「52ヘルツの共振」でも思いましたがとてもお上手で説得力があり、気付けば玲志に寄り添って読んでしまいます。
ただ、BLだから仕方ないのですが、ここでエロ方面に行くことが私には難しかったです。ごめんなさい。二人の関係に変化が訪れたこと、共有できなくなった淋しさも相俟って恋愛感情に発展したことは理解できます。だけど即物的に性欲に結びつけることは私には無理がありました。本当に個人的な感想です。

瀬尾くんの彼氏(偽装)の半年間

青春BL小説コンテストで大賞を受賞された本作。原題は「瀬尾くんの彼氏(偽装)の半年間」でした。まさに原題のとおりの内容で、夏前からクリスマスまでのお話になっています。この半年の間に、主人公の一颯には偽装彼氏が出来て、恋をして、飲み込んできた様々なことを口に出せたり、大きな変化がありました。周囲ともめるくらいだったら自分が我慢すればいい、という思い癖のようなもの。言いたいことも腹の内にためて、へらりと笑顔を浮かべて、意に沿わないことも引き受ける。損といえば損だけど、確かに周りからは浮かない。性格的なこともあると思いますが、周囲にも自分の心にも波風を立てないことが彼にとっての優先事項なのでしょう。だから感情を揺さぶられることを恥ずかしいと感じるのだと思います。こういう、きわめて個人的な、考え方や人となりがとても丁寧に描かれています。一人称小説なので一颯の気持ちがとてもよくわかります。一方で、女の子がほっとかないクールビューティーの瀬尾が、いつからどんな風に一颯のことを気に掛けて大切に思うようになっていったのかも見えてきます。瀬尾視点で書かれていないのに鮮明に見えてくることや、一颯が何度も瀬尾の言動を間違って受け止めていることに「そうじゃないよ!」と言いたい気持ちにさせられることも面白かったです。
高校生のお話なので、夏休みや文化祭、一緒にお弁当、本の貸し借り、クリスマス等々懐かしい気持ちになりました。また、前述した一颯の考え方は、大なり小なりこの年代にはありがちな葛藤ともいえ、当時は自分もそうだったかもなと思ったり、今でも近いものを心の奥底に引きずっていることに気付いたり、そうした発見もありました。
気になったのは「恥ずかしい」という単語があまりにも多く登場することでした。他の語に言い換えはできないか?と自問しましたがやはり難しく、この単語が最適解だと認識したものの、それにしても多かった。それだけ一颯の悩みは深いということなのかもですが。
巻末の番外編「ゆっくりファーストステップ」は糖度が高く甘々で可愛らしいお話でした。あとがきで二人の今後らしきことに触れられていて、俄然読みたくなりました。機会があれば二人の今後も知りたいです。
最後になりましたが、大好きな作家様が商業デビューされ、とても喜ばしいです。御活躍の場を広げられ今後も様々な作品を読ませていただけることを楽しみにしています。