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エキスパートレビューアー2025

女性ぱるりろんさん

レビュー数52

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恋する乙女的

写真週刊誌の記者である和久井が路上キッズの取材をしているとき、近くで挙動不審な男を見かけて声を掛けると、その人は取材対象の女の子を探しに来た兄だった、というのが二人の出会いです。
和久井さんと忍くんは歳が結構離れているので、20歳の忍くんにとって30代の和久井さんはもんのすごい大人の、かっこいい男の人に見えるんだろうなと想像。ちょっと影があってお仕事も一般的なそれではないし、妹も懐いていたしで憧れる気持ちがなんとなく分かります。彼を大好きな忍くんの乙女的なリアクションが、とにかく雄味をまったく感じられなくて、恋する少女そのものだったのも和久井さんにとっては新鮮だったのかもなと思った次第です。若くて綺麗な男の子が自分のことをこんなキラキラした瞳で見つめてくるわけですよ。そこへ発熱やら悪夢やら不慮の事故やら、自分がとても弱っているときにそばにいたらまあふらふらと靡いてしまうのも頷けます。
とはいえ、実は読みながら、このお話はどっちに転がるんだろうと色々想像を巡らせていました。たとえば彩佳ちゃんは実家の居心地が悪くて家を出てきたのですがそんな兄妹の家では、実は見えないところで家庭内暴力が行われていた、だとか。または、この週刊誌の編集長には秘密の裏の顔があって、アンダーグラウンド系の話になるのかな、だとか。まあこれまで読んでいた鳥丸太郎先生の作品では裏の組織や厳しい生い立ちが出てくることが多かったのでそんな無粋なことを思い描いてしまったわけなのですが(と言い訳)、もっとピュアッピュアなお話でした。

巣作りのおはなし

新太に初めて本格的なヒートが来たとき、新太は春休みでまだ国嵜さんと付き合っていない段階で、国嵜さんとの思い出のハンカチやチョコレートバーなどをベッドに持ち込んでヒートを乗り越えた、という本編のエピソードを、国嵜さん自身はとても後悔していた、というところから始まるお話なのですが、その最初の3行でとても愉快な気持ちになりました。もうそれだけでこの特典は成功なのでは。ろくな巣作りをさせられなかったから、番になってからはたっぷり巣材を用意している、という発想がもう面白いです。過保護というか、まあ過保護なんですが、国嵜さんのベクトルが違う方を向いている、というか。やはりこのカップル可愛い。まだ新太に理性があるうちは多少なりとも余裕があるということですよね。末永くお幸せに。

一目惚れからスタートした変化球オメガバース

大学生の新太には大好きな推しがいる。大学の近くのマンション建設現場で働く、長身でイケメン推定二十代の作業員。遠くから眺めるだけで充分だったのに、ある雨の日泥水をかぶったことで初めて言葉を交わすことに、という、一目惚れからスタートした恋のお話。オメガバース。
ポイントは、中学生の時のバース判定の一斉検査では新太はベータ判定だったということです。両親ともにベータで、ベータとして生きてきて、つるんでいる友達もベータの子がほとんど。それが大学3年生のあるとき突然過呼吸のような症状になって救急車で運ばれて、オメガです、と診断されてしまう。なんの覚悟も知識もないままにバース性が変わるという相当な一大事に見舞われるのですが、たまたま入部していた映画サークルが実はオメガ性の学生の互助会的な役割を果たしていたり、たまたま仲の良いクラスの女の子がオメガ性だったりで、周囲のフォローを受けながらオメガ性についての認識を新たにしていきます。
新太のいいところは、人のアドバイスを素直に聞いて、自分が間違えたと思ったらすぐに謝って行動を改めるところ。そして、前述のフォロー体制はあるものの自立心が強く、とにかく自分でなんとかやってみようとするところです。人に頼る前にまず自分で頑張るので、周囲も手を貸しますし、若干いい子過ぎるきらいはあるものの読んでいるこちら側も不遇な状況は気になるしで応援してしまいます。
お相手の国嵜さんは、確かにとてもかっこいい人なのですが、こちらも色々と拗らせている方で、とても不器用。新太は「損」と表現していますが、まっすぐなだけに障壁にぶつかりダメージを直に受けるタイプの方です。前向きで頑張る新太と相性がいいなあと思って読んでいました。
こちらの作品に描かれるオメガバースは、たとえば運命の番はベータが作り出した都市伝説だよ、というように、アルファ・オメガとベータとの間にはバース性に関する誤解がはびこっている、という設定です。本格的なヒートの前兆で、新太が過呼吸のような症状に陥るのですが、この症状と性欲が必ずしも直結していないことや、アルファとの接触で薔薇のような香りが漂ってきて呼吸が楽になる、というのがいいなと思いました。想像もしやすかったです。その後の新太の本格的なヒートでは、「淋しい」「人恋しい」気持ちで強烈に胸が締め付けられる、というのが個人的にとても好きでした。
気になったのは、国嵜さんが御自身の悩み、わだかまりを新太に打ち明けた場面で、新太がそのひとつひとつに自分の意見を伝え、それが国嵜さん的には刺さるのですが、新太が社会人設定だったら良かったなと強く思いました。私が気にしすぎなだけなのですが、いくら良い事を口にしても、でもこの子は学生なんだよなと思ってしまう。社会人であれば、言葉の裏に経験を感じられて重みがあったのにと。ただお話全体を見ればやはり新太が大学生だから成立する部分も多いので(映画サークルの存在とか長期休暇とか)結果として今の設定でよかったと思いますがここだけは気になってしまいました。
思い込みの強い二人。番となった今後どんなカップルになるのか、想像すると面白いです。新太はこのあと就活ののち社会人になり、国嵜さんは本社でばりばり働くでしょうが、ものすごい過保護になるのが目に見えるので小さいトラブルも多そうですね。

店の危機はたしかに危機だけど

四目屋の主・宗明と物売りの青年・虎のお話、続編。
1冊目では二人の馴れそめが主でしたが、本巻ではいい仲になってからのその後が描かれています。
今回は、宗明の父(先代の店主、存命でした)が登場し、宗明と対立?する場面などもあり、回想シーンで宗明の生い立ちが明らかになるなど前巻よりも世界観がより鮮明になっています。宗明と虎が仲睦まじく、周囲の協力も得てみんなで店の危機を乗り越えるという展開も頼もしくもありました。
ただこの危機の内容が、先代店主が店の品物をすべて撤去して、取引先に手を回して納品しないようにするというもので、確かに危機は危機だけど、そこに意味を感じないといいますか、どうにも解せなくて。相手がライバル店とか例えば役人が店を潰そうとするとかならまだ分かるのですが、勝手をする息子(勝手といってもお店は繁盛しているのだからいいのでは)に煮え湯を飲ませるために、仮にも自分の店を傾かせるようなことをするのはどうなのか。(代替わりしているとはいえ同居しているようだし、何かあったら自分にも被害が及びそう) 本気で何かをしたいのではなく、ただ宗明に意地悪したいだけだったとしても、ちょっと理解しづらかったです。
また、虎が天真爛漫なのは分かるのですが、夜の営みに使用する性具等を昼日中から野菜でも売るように大声で宣伝するのも何かが違うなと思ってしまいました。
四目屋とは江戸時代の性具その他夜の営みに関わるものを扱うお店ということで、張り形やりんの玉、痛和散等が登場するので勉強になります。え、こんなものまでも、と思ったのがカバー下に少し紹介されている甲形・鎧形で、ずいきもそうですが本当に使用したら普通に怪我をしそう。それとお湯に浸した綿を中に詰めて使う張り形のことも知りませんでした。
前巻のときも思いましたが全体的にとても絵が丁寧で描き込みも多く、調べ物のことも含めてただただ感心しきりです。それだけに勿体なかったです。
先代店主のビジュアルがイケオジで、個人的には見た目がとてもタイプでした。

キラキラしたやさしい世界

ハルを育てながら村で暮らすルカとクロ。周囲の子育て世帯とみんなで支え合いながら村の子供達を育てていく様子は、シリーズ第1巻を思うと大きく異なる環境と思います。作中にもありましたが、クロはずっと一人がいいと言っていました。でも今はずっと笑っていてとても楽しそうです。農作業も力仕事も機織りの仕事も子育てもみんなで話し合いながら和気藹々と行う。村での生活の理想的な姿が描かれていると思いました。
本作は夏→秋→冬→春の1年で構成され、少しずつハルも成長していきます。(ハルは神様の子なので、今後、周りの子たちと成長が変化していくんだよなーと思うなどしました)
村の生活がメインのお話で、ノアやトトがあまり出てこなくて淋しくもありました。
巻末、ノアがメインの「愛日」というお話があり、ここでのノアの感情がすごく寄り添いやすくて、少しほっとしました。本巻で描かれる村の生活は楽しそうで明るくてキラキラしていて理想的で、ある意味羨望の対象であるのですが、極めて個人的な理由で私自身はあの生活には馴染めないと思っております。ノアも、私とは違う理由ではあると思うのですが、彼らを尊重しあくまで否定するわけではなくただ自分が「冬眠したい」と思う。もうこれは仕方ないことです。長い眠りから覚めたノアをたくさんの思いやりが取り巻いているのもこの作品らしさであり、あたたかい気持ちになります。一方でこのやさしい世界はフィクションだなあと改めて思いました。
αとΩの文字の形状、ノアとウェレなのが愛しいです。

兄弟がテーマの連作短編集でした。

兄弟をテーマにした短編集の続き。登場人物紹介のページがあり、全員1巻に出てきた皆さんばかりで、どうやら1巻の続きが読めるらしいと期待。連作短編集だったのか。
CASE 6:CASE1の続き。兄と別れた健人が勤める整体院でバイトを始めた晴臣。思いあまってとうとう告白し付き合うことになるというお話。厄介だー、これは厄介すぎる。健人はまだ晴臣の兄のことを少し引きずっているので、これからどうなっていくのか心配。二人ともいい子でかわいくて好き。
CASE 7:CASE2の続きでCASE2の後からCASE3までの間のお話。兄に振られた弟の次の恋は同級生でした。ということは、CASE3で陸が兄と再会したときにはもう違う人を好きになっていた、ということか。
CASE 8:CASE5の続き。寮生活の兄と友達、なんと付き合うことに。
CASE 9:CASE4の続き。恋多き兄弟の騒々しい恋バナ。1巻でもそうでしたがこの便利屋兄弟の話は本の中の清涼剤というか幕間みたいな役割があるような気がします。
CASE 10:CASE6の続き。晴臣の兄・正臣視点のお話。正臣の小学生時代に当時の担任教師にキスされたエピソードが強烈過ぎました。そして晴臣と健人がつきあっていることを何故か正臣が知っていた(なぜだ)。正臣はくず男だと思っていたけれど、今回は教師としての一線を守ったのでほっとしました。で、CASE4・9の便利屋さんが久世家の御近所だと知りました。
エピローグ:これまでの4CPのその後をクロスオーバー風に描いたエピローグ。これにて大団円。みんな幸せになってください。便利屋さんの兄だけシングルですね。私の推しは晴臣×健人なのでCASE10以降も仲良くやっていることがわかってとても嬉しいです。(2巻の表紙もこの二人。可愛い)

違う関係性の兄弟をテーマにした短編集

兄弟をテーマにした短編集。全2冊の長編と思っていたので、2話に入った時に驚きました。
一部連作になっているお話もあります。
CASE 1:結婚が決まった兄には男の恋人がいたはず、とモヤモヤする晴臣。兄の婚約者からもその話をされ、兄の恋人に会いに行くお話。
CASE 2:両親の離婚で離ればなれになっていた兄弟が、父親の死によりもう一度母・兄・弟の3人で暮らすことに。そして兄は弟から告白される。
CASE 3:CASE2の続編。大学進学を機に寮生活を送る兄が友達を連れて久しぶりに里帰りし弟に再会する。
CASE 4:便利屋を営む仲良し兄弟はどっちもゲイで好みのタイプが同じ。うるさいけどほのぼのした恋バナ。
CASE 5:CASE3の続編。寮に戻ってきた兄と友達。弟に暴露された後の気まずい空気。
というわけで、2・3・5はつながっています。
私はCASE1が好きだったので、その後の晴臣くんの恋の行方が気になっています。

考えさせられ揺さぶられました

「40までにしたい10のこと」は雀さんが40歳になるまでにやってみたいことをリスト化して、慶司と二人で挑戦していくなかで心の枷をはずしたり自身の変化を受け入れたりする物語でしたが、3巻では、慶司のやりたいことリストを作ろうよ、ということになりました。ほうほうなるほど、とページをめくっていきましたが一筋縄ではいきません。雀さんの元パートナーで、かつてヘッドハンティングがあって会社をやめたという鳩山氏から声が掛かって、再び雀さんと組んで仕事をするようになりました。伝説のマーケター鳩山氏は、昔の仕事のやり方をする人なので、時間外とか休日とか働き方改革とかまったく関係ありません。24時間戦っている人なのでした。デートの時にも普通に連絡が入ります。雀さんは常識人で社畜なので当然仕事を優先します。残された慶司は文句を言わずに送り出します。俺のことはいいから仕事が済んだら休んでくださいねと言います。私はものすごく考えてしまいました。身体は疲れている。少しでも睡眠をとって休むべき。でも心は全然休めない。癒やされない。この1冊の本の中で、雀さんは明らかにSOSを出していると思いました。このままでは心が壊れてしまう。支えるという意味で慶司が居てくれてよかったけど、一方で慶司と恋仲になっていなければ実は100%仕事に費やせて思い悩むこともなかったのかなとか、そういうことも考えてしまいました。でももう慶司と過ごす時間を知ってしまったから、以前の雀さんにはきっと戻れない。
今回冒頭のlist16というお話は、すず子視点で綴られています。雀さんをずっと見てきたすず子のやさしい労るようなモノローグに、ひっそり泣いてしまいました。最後のlist22は慶司視点の短いお話ですが、これにもやられました。私の情緒が大変に揺さぶられています。
慶司のお姉さん達とそのお店はドラマの逆輸入ぽい気がして相乗効果で楽しいなと思いましたが違っていたらすみません。慶司のマンションのお部屋はお洋服がたくさんで、観葉植物も育てていて出来すぎにお洒落ですね。お部屋やオフィスなどの背景の書き込みが細かくてじっくり眺めて堪能しました。人物の表情にもはっとしますが、背景も見逃せません。
4巻が楽しみです。

両思いになっても心配は尽きず

「石橋防衛隊(個人)」の続編。石橋航にむらがる敵から守るため、さして興味もなかった某衛大(防衛大)に進学した国分寺(でも首席)。前巻で晴れて両思いとなり、本のタイトルも(個人)から(公認)へ格上げになっています。寮の外にアパートを借りて、外泊許可が出た日にはデートをしたりお泊まりしたりするんだ~とわくわく毎日を過ごす二人の前に、石橋の従弟というライバルが現れたり、国分寺のファン(拗らせ)の後輩が現れたり、なかなか思うように二人きりになれません。とはいえ、なんだかんだ言っても二人は付き合い立てのお花畑なので、それなりにいちゃいちゃしていて大変に微笑ましいです。
前巻は二人が両思いになるまででしたが、本巻は前述のライバル絡みとイベントとしては開校祭ですね。棒倒しのあといつまでも二人でくるくるお花を飛ばして喜んでいるのが可愛かったです。
それから佐倉先輩とその彼氏(海自)とのお食事会。気の置けない感じの先輩二人のやりとりからもまるで夫婦の家に遊びに行った感が満載でしたし、卒業後の進路の話題で、佐倉先輩が恋人とすれ違うのを避けるために陸自を志望したと言うのを聞いてちょっと襟を正す国分寺と石橋。最後の方で石橋が自分たちの未来について語る場面がありますが、このときの先輩達との会話も影響しているのだろうと思いました。
そしてあれよあれよという間に大学を卒業してしまったので、もう続編は無いのかな。あとがきで番外編を描きたいと書いていらっしゃるので、どこかで読める日が来るかもしれません。
本巻が「(個人)」の勢いやテンションと少し違うのは、両思いになってしまったことというより、学生から社会人になろうとする彼らの立ち位置の違いなのかもと思うなどしました。まあ恋愛脳ではあるのですが。

石橋のことしか見ていない国分寺

高校の同級生である石橋が某衛大(防衛大)に進路を決めたと知ったから、国分寺も秒でそれに倣い、同じ大学で過ごしている二人。国防のための学校ですが、国分寺にとってはすべては石橋を守るため。恋に一途な国分寺のお話。
強面でガタイの良い国分寺が、ただひたすら石橋だけを見つめて石橋だけを思う、ピュアッピュアな恋心が描かれます。ときには肝試し、ときにはスキー合宿、数合わせの合コン参加、色々なイベントを経て二人の仲が深まっていくのが可愛らしく、壁とか天井とかに張り付いて行方を見守っている気分でした。石橋が素直ないい子なのも良かったですし、確かに顔はすっきりイケメンなのですが女性らしいところが1ミリもなく、石橋も国分寺もどちらも紛う方無き「男」なのが良かったです。
石橋にとって国分寺は元々仲の良い友達であり憧れでもありライバルでもあったものが、大学生になってもっと相手をよく知ることとなり、あるときからそれまでとは違うように見えてくるという、そういう気持ちの変化も自然に感じられました。一方で国分寺は石橋をずっと好きなので、好きすぎて自分の感情を抑えるのに慣れすぎて、いざ石橋の気持ちに変化が訪れたら朴念仁みたいになる(まさか石橋が自分のことをそんな風に思うはずがない、と先に思ってしまう)のが可愛いです。コミカルな作風なので気軽に読めます。