親友で幼馴染みかつ長年の片思いの相手である大河とその家族のために、アキは誰にも内緒でストリップダンスの仕事を始めるが当の大河にばれてしまう、という表題作。全4話で、一冊のちょうど半分くらいまででした。
表紙が過激でネオンカラー風の効果もあって目を惹きますが、内容はとても可愛らしいです。
幼馴染みというよりも兄弟のように育ってきた二人。生い立ちや出会いも描かれ、どのようにしてアキは大河への秘めた片思いを抱えてきたか、アキにとって大河とその家族がどんなに大切か、また、最近大河が事故に遭い入院している間どれほど心配したか、丁寧に綴られていることから、自然にアキに気持ちが寄り添います。アキをとりまくダンサー達も皆やさしくて、第二の家のような場所が出来て良かったなあと思える一方で、仕方ないことですが大河がアキの恋心にこれまで気付いていなかった上に突然執着心を見せつけたりストリップダンスに生き甲斐を感じているのを理解しなかったりで、少々モヤりました。
ましてや俺の前でプライベートダンスを踊れとか、キスマーク付けたりとか、大河をとても子供っぽく感じてしまいました。アキに告白したのも本当に好きなのか疑うレベルです。
もしかしたら、一冊まるまるの分量だったら、大河のことももう少し描けたりしてこのモヤモヤも解消できたのかもしれません。そう思うとちょっと勿体なかったなと思います。
本の後半は、既刊「月と野蛮人」のスピンオフ、エルヴェが主役の「エル」というお話でした。
こちらは全5話です。申し訳ないですが完成度としては「エル」の方が表題作より高かったです。
「月と野蛮人」から3年後の設定で、ユリエルに仕えるエルヴェが主人公。もとよりエルヴェはユリエルの育ての親みたいな位置づけでもあり、前作がユリエル目線だったため頼れる兄的に描かれていましたが、いざエルヴェを中心に据えたらこんな感じになるのかと。若く美貌で有能なのに加えて、案外性に奔放で小悪魔的、女性からも男性からも好かれるというように非常に多面的に描かれていました。戦えば強いし賢いし駆け引きで負けないし弱点なんてあるのかな、と思うほどでしたが、甘えられたり世話をしたりするのが好きという一面が隙といえば隙でした。(なお、弱みはユリエル殿下のことだけ)
アルドの腹心バディスもエルヴェには形無しで、こんな最強のBL主人公は他にいないかもしれない、と思うなどしました。
ストーリーも面白く、小悪党タージェルの行く末も気になります。エルヴェのことは本気と思うので今後も諦めきれず、次の機会を狙ってくるんじゃないかと思っています。続きが読みたいです。
ラファージ王国の国王の末弟であるユリエルは誕生した時に両親が死ぬなど不幸が続いたことから呪いの王子と呼ばれ王宮とは離れた場所で暮らしている。あるとき、子供の頃から憧れていた伝説の都ロアディスの、遺跡調査の視察に赴いたところを砂漠の民に攫われてしまう。というお話。
19世紀の北アフリカ、架空の国が舞台です。
読み始めて思ったのは、大昔に読んだ少女マンガの世界だ!ということでした。
素直で天真爛漫な姫(ここでは王子)、砂漠の荒々しい部族の長、部族の民はあたたかくて姫は馴染み、自分を攫ったはずの男を好きになる。なんだか懐かしいぞ、と読みふけりました。
ユリエルは決して女の子ではないのですが、本当に素直ないい子で、心配になるくらい優しい(でもしっかりしてもいる)のでアルドが自分の物にしたくなるのも分かるなあと。
巻末のあとがきで、ロマンチックラブストーリーという単語が出てきまして、まさにそれだ、と思いました。展開もですし、登場人物の誰もが優しくて魅力的で、悪役が不在なのも良かったです。ユリエルと彼のそばに仕えるエルヴェとの繋がりの深さ(しかも恋心じゃなかったのがよい)がしっかり描かれていることにより、一層切なく感じられたのも良きでした。
上巻から3年後。沖縄でのんびり暮らす片岡のもとへ届いたメッセージによって、再び新宿にもどってきたお話です。2025年に雑誌で連載されていた同作のほか、描き下ろし番外編「はじまりの夜」、旧版収録の第0話、旧版発売時の各種特典、旧版カバー下、SNS掲載のマンガ等を盛り込んでいます。
頽廃的な雰囲気が漂う上巻から一転、下巻はいろいろな意味で幸せ色満載でした。こんなにハッピーでよいのかと思うくらいには新キャラ含めてキャラがみんな可愛いです。読んでいる間は違和感など全然ないのですが、下巻まとめに入った辺りで様々判明すると途端に全部が違って見えてきます。特に読み終わった後に下巻の始めに戻って再読すると、あんなに深刻に悩んでいた桐井の金策と「本家に頭を下げるなら死を選ぶ」という決め顔が、違う意味合いを帯びるために、思わず吹き出してしまいました。
また、小田島の親友くん、名前が明らかになりました。片岡から嬉しい言葉も出て、気持ちがあたたかくなりました。そしてカバー下の1本目がものすごく可愛いので、ネタバレでもあるしカバー下はぜひ最後に読んで欲しいです。この4コマが最高に幸せです。
元はプリンセスコミックスカチCOMIで出ていた作品を、キャラコミックスから新装版として発売したもの。新装版の上巻は、元の巻に未収録のイラストと、描き下ろしの番外編「光のむこう」及びカバー下が追加になっているようです。
逃亡中のヤクザ2人。一人は若頭の片岡、もう一人は片岡に付き従う下っ端の小田島。片岡由来の事故について、組長の息子である桐井が話をつけるので、それまでの間ほとぼりがさめるまで行方をくらますことになった、というお話。
逃亡中という言葉とは裏腹に、片岡の言動は気の抜けたようなお気楽なものですし、誰かに追われている風でもなくただ郊外をドライブしているように見えます。片岡とは対照的に、無表情でぴりっとしている小田島は実は裏で桐井から片岡を始末するように申しつけられていることが読者には分かるので、ドキドキしながら行く末を見守っていく形です。
私は序盤は普通に読んでいたのですが3話でぐぐっと持って行かれて陥落しました。3話は扉絵からもう既に刺さり、内容もとにかく素晴らしく、とても気に入っています。3話で落ちたら4話5話は御馳走でしかなく、特別な一冊になりました。
片岡の黒スーツがカッコ良すぎ。下巻も楽しみです。
前作から2年後の設定。2年の間に、紫苑は、イヌカシは、火藍達はどうしていたのか、世の中はどんな風に変わったのか、ということにページが割かれており、紫苑とネズミの再会は終盤のみで、ネズミがどうして紫苑に会おうと思ったのか、紫苑のしらないところで何が起きているのか、といったことは次巻以降。
1巻を読んだだけでは、ストーリーの山谷や特段の盛り上がりがあるわけでもないので些か消化不良です。
また、続編に当たるので、前作を読まずに本書単体ではなんのことか分からないのではと思います。
もとはティーンズ向けだからなのか本書はハードカバーなのに大変に字が大きく、挿絵もあります。イラストはアニメNo.6のキャラデザをされたtoi8さんが描いています。挿絵は終盤に集中していて、狙いが分かりやすく、でもせっかく二人が再会するのだから挿絵じゃなく展開で喜びたかったです。
全編書き下ろし。
初版本には、初版限定書き下ろしSSがつきますが、ダウンロード方式で、2026年5月末がダウンロード期限なので興味のある方は御注意ください。
面白かったです! 紆余曲折の末のハッピーエンド、テンポがよくて時々くすっと笑えてほっこりしたり、最高の展開でした。
宇迦野父や宇迦野兄のナイスアシストにも震えましたが、なんといっても、荒矢編集長と宇迦野さんとの対決が大変ドキドキして素晴らしかったのです。
思い返せば1巻からずっとそうでしたが、宇迦野さんがもうとにかくカッコイイ。なんなんすかこのカッコ良さは。表ではにっこり笑い、その裏でたくさん計算して駆け引きをし、胸には怒りの炎を燃やしたり、さちおにメロメロだったりするのがたまりません。ドアを閉めた後の、「荒矢ぶっつぶす」のコマが大好きです。
荒矢さんのキャラ立ちがとても良くて、アライグマαっていうのもよかったです。キツネとタヌキの対決かと思ったらしっぽがしましまでタヌキじゃない(笑)。幼馴染みのウサギΩにこじらせているのも気になります。昔のさちおに意地悪だったのはマイナスですが仕事出来キャラなのが良かったです。詰めが甘いですが。宇迦野さんを敵に回したらいかん(部下だけど)
さちおはにこにこ笑うようになって本当に可愛いです。相変わらず餌界のエリートとの謎の自負心は面白いし、テンションが上がったり下がったりするのも微笑ましい。中でも宇迦野さんのふわ耳をはむはむしている場面がお気に入りでございます。4巻も見所がいっぱいですね。カバー下の宇迦野父も可愛い。
完結巻と思いきや続くとのことで嬉しい限りです。荒矢さんがなんらか巻き返すのかなー。さちおの新連載のことも含めて楽しみです。
バイトからの帰り道、行き倒れに遭遇する。雪が降るような寒い夜、凍え死んだら大変だと心配した比呂は、見ず知らずの男をアパートに連れ帰って介抱する。というところから始まるお話。
比呂は思いやりがあり、拾った山鹿の世話をやきつつも、気弱な性格でコミュ障のため常にびくびくしています。山鹿の方もわけありで自暴自棄になっていたので、比呂の優しさを鬱陶しく思うのですが、あまりにも彼が不器用なので放っておけずいつしかほだされていきます。
山鹿は酸いも甘いもかみ分けるような大人の男に見えて、甘い部分も優しいところもあるのでとてもモテそうで、恋愛経験の少ない比呂がドキドキするのも分かります。気の弱い比呂を手なずけているようで、実際には山鹿が振り回されているのも好きなポイントです。「Love Scene」でぼんやりした比呂を手のひらの上で転がしているときにそうと気付きました。
二人とも過去に挫折を経験していて、苦しい思いを抱えて落ちた底からもう一度立ち上がる、再浮上に至る展開なのが良かったです。
新装版は、旧版の内容に加えて、書店特典を集めたらしい「Bonus Scenes」、Canna vol.104に掲載された「Extra Scene」、描き下ろしの「Next Scene」を収録しています。続編の連載も決定とあるので、この二人のお話が今後も読めるようです。
小雪舞う中を外で夜通し踊って、そのまま疲れ果て雪に埋もれて眠る……。いやいや風邪引いちゃうから。凍死するかもしれん。という、一面銀世界の朝の場面からスタート。
プロフェッショナルな二人は本当にずっと練習しています。世界選手権でどうしても一位になれない(アジア人だから?)杉木・矢上組と、国内の大会にしか出場したことがない鈴木・田島組。スタンダードとラテンを教え合って10DANCEに挑戦する、というお話なのですが、社交ダンスの世界のことを知らないため、書いてあることを鵜呑みにしつつ楽しく読んでいます。
3巻では、杉木と鈴木がかなり個人的な深い話をするなどして、仲を深めていく様子が描かれています。子供のときの話とか、他愛ない事柄とか。そうすることで解像度がかなり高まったのか、お互い、離れている間にも切実に相手のことばかり考えているのです。受け止めて理解して、心の中に自分以外の人間が入り込んで来る。本人達が認めたくないとしても、もうそれは恋としか。
なので、少しの行き違いがあって離れた後すぐに引き返してもう一度会ったりなんて、まるで付き合い始めのカップルじゃないか、と思うなどしました。キスに至るのも自然に見えてしまうのは作品に流れる雰囲気の妙かなと。濃密だったり軽妙洒脱だったり、見えないはずの空気感を感じました。
ただ、二人の仲が深まれば深まるほど、疑問も湧いたりします。二人がダンスのパートナーだったらこうして時間とともに仲を深めていくのも分かるのですが、あくまでも社交ダンスは男女で踊りますし、実際それぞれパートナーが居て、二人で大会に出るわけではないんだよなと。夜中の練習も素敵だし夜中テンションで落ち着いて対話をするのも良くて、息がぴったり合って踊る様が絵になるだけに勿体ないというか釈然としないものを感じてしまいます。読み進むうちに氷解するのかな。
美男で独身の警察官ばかりが次々に殺害され、しかも両手両脚と局部を切断されるという猟奇的な連続事件が起こる。
リコは辰巳署所属だが、高須から声をかけられ捜査本部の一員として捜査に携わることになる、というお話。
猟奇的殺人事件の捜査そのものが面白くて、どういうことなんだろうと色々考えながら読んでいきまして、四人目の被害者の親戚が十二年前に起こった冤罪事件に絡んでいたという真相にたどり着いたときには、膝を打ったものでした。
その鍵となる往年の冤罪事件は、真犯人は警察官でしたが、いったん容疑者とされた人物はまったくの無実の一市民。おおかた犯人として送検されそうだったところ、研修から帰ってきたばかりの麻生さんがコツコツ実験を続けて真犯人逮捕に結びつき、誤認逮捕をせずに済んだという話でした。そのエピソード知ってます!(→みんな知ってる) というように、「聖なる黒夜」とオーバーラップしていました。
練のお姉さんは登場するし、ウスバシロチョウや朽木村が出てきますし、その冤罪事件は同じ頃でもあるので読みながら何度も、この展開はやばい、とドキドキわくわくしていました。本の半分くらいまでですね。前半は本当に神でした。
ですが、やってほしくなかった展開が中盤辺りにありまして、私は大変ショックを受けて読書が止まってしまいました。
これはして欲しくなかった。練はいいけど、麻生さんはだめだ。
というわけで3日くらいあけて読書を再開したので、もしかしたら一番盛り上がるところで自分でブレーキをかけてしまったかもしれません。そのためなのか、事件解決への収束がある意味ひとりよがりにも思えて、とても残念に感じました。
途中までは本当に面白かったです。
因みに韮崎が死んだのが2年前とのことなので、「聖なる黒夜」の序盤から2年後のお話です。生前の韮崎は練をいじめた輩を次々に屠っていたと思うのですが、玉本は野放しだったんですね。あの玉本を。ということが意外でもありました。
それから個人的な話をしますと、大好きな及川が登場したことが殊の外嬉しかったです。ちょっと大人しめな印象でしたが嬉しかった。麻生が絡まないと狂気な色は醸し出さないのか。
RIKOシリーズは3で終わりなのでしょうか。でもまだ練が登場する本があるみたいなのでそっちにも手を出します。