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エキスパートレビューアー2025

女性ぱるりろんさん

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魔女と猫 コミック

黒井よだか 

残忍な強敵から逃げるハードなアクション物

良かったです。魔女と使い魔という特殊設定ありのお話で、最初はその設定に戸惑ったのですが、何回か戻って確かめながら読んでいくうちに、須藤と寿一の二人の生い立ちが胸に迫り、寿一に笑って欲しいと願う須藤の気持ちが痛いほど伝わってきました。成り行きとはいえ魔女と使い魔という関係になった二人が、生死をかけて追っ手から逃げながらお互いに惹かれ合っていくのも自然で、とてもよかったです。
彼らを追いかける夏美がものすごい強敵で、常に余裕があって、何度も二人が危険な状態に陥るので目が離せず、憎らしくすらなりました。夏美側の事情のエピソードをもう少し見たかったところですが、そうすると今回味わった脅威が薄れるような気もしますし、やはり強敵だからこそのスリリングな展開というのがあるので、やはり現状が最適解なのかなとも思いました。
寿一の両親がとても優しくて、魔女狩りにさえ遭わなければきっと須藤のことも可愛がってくれただろうと思います。須藤の家庭環境が悲しく、寿一に会うことができて本当に良かったと思いました。
巻末のデートの描き下ろしがものすごく可愛いかったです。描いてくださって嬉しいエピソードでした。二人にはこういう時間をこれからも重ねて欲しいな。穏やかにやさしい日々を過ごしてもらいたいです。
それと、使い魔<猫>は夜目が効いて、<犬>は嗅覚。それなら<蛇>ってなんなんだろうなーなどと想像するなどしました。

幼馴染みで両片思いでセフレ

幼馴染みで両片思いのお話でした。
子供の頃から仲の良かった友達だからこそ、本当の気持ちは言えない。
好きな人がいると嘘をついて、その練習台として始めたセックスが、いつからかお互いに無くてはならないものになって、ますます二人の関係をたとえる名前が増えていく。
気の置けない仲だからこその遠慮の無いやりとり。肝心なことは黙っているくせに余計なことはストレートに口にするから喧嘩もするし、いつもどおりの空気が保てる。微妙であり絶妙なテンポ感。
両思いなのはこちらは分かっているので、いつのタイミングでこの歪でねじれた関係が本来のあるべき形に変わるのか、わくわくでした。
過去のエピソードもからめて二人がお互いを思いやる気持ちもよかったです。
最初こそ、顔の判別がつきづらくて、どっち?と戸惑ったりしましたが、だんだん見分けがつくようになりました。千鶴の友達のヨシくんがとてもいい奴でしたね。

読んでよかったです

 ※ネタバレも甚だしいです。未読の方は御注意くださいね。


「聖なる黒夜」から23年ぶりに続編が刊行、という触れ込みの本書。
実際には「聖なる黒夜」の続きにあたる物語は他にも複数出ていて、本書はそれらの続きにあたる、と思われます。
(花咲慎一郎の後半がいつぐらいなのかがちょっと不明。でも周辺の状況等でいつか照合できるでしょうか)
「聖なる黒夜」から本書にいたるまで、関連作品を9冊読んで、満を持しての「海は灰色」拝読でした。
「月神の浅き夢」のとき、練が39歳で麻生が46歳なので(推定。ちがったらすみません)、本書はそれよりも後なので、少なくとも練は40代。時の流れは怖ろしいですが、練のキャラはほぼ一緒です。
麻生が、別れた妻の影を追いかけて雪の温泉町まで足を伸ばす物語と聞いて、覚悟して手に取りました。
でもそこに描かれていたのは、私が見たかった世界でした。麻生と練のバディ感。遠く離れた土地で、二人が並んで夫婦漫才みたいなやりとりを交わし、事件の謎を解いていく。
これまで、麻生が緑子に一方的に練のことを惚気たり(「聖母の深き淵」)、長谷川環が花咲に練の唯一の弱みは片思いの相手だとばらしたり(「ア・ソング・フォー・ユー」)、そういう間接的な描写だけでもヒャァ~~と浮き立っていたのに、ここにきて二人が顔を合わせて語り合って、隣を歩いたり鍋をつついたり、なんの御褒美なんですか。麻生は当然のようにその存在を受け入れて、普通に「練」とか呼びかけるし、それどころか練の自分への妄執について人に話すし、尚且つもしも自分がこの場で命を落とすことがあれば間違いなく練が報復するだろうとか言うし、なんなのその距離感とその自信は!
そして、きっぱり離れようと思ったけど出来なかった、という麻生の言葉は、私がとても聞きたかったことでした。
色々思うところはあるけれど、バディ感を味わえたことは素直に嬉しかったのです。
もう、両思いだとかそういうことを軽く超越していると思いました。逆にそういう終わり方だったからこそ、これに続く第二部第三部がおそろしくもあるのです。幸せな二人じゃだめなんでしょうか。

それと、これは作品レビューではないのですが、
(でもひどくネタバレ。注意)
麻生は服役したので探偵事務所を開くことができず、浅草の事務所も畳んでいまは川崎に住んでいるらしい。なら「ア・ソング・フォー・ユー」でのあのときはいつだったのか? 「海は灰色」時点ではもう俺は警察官でも私立探偵でもない、と言っているので気になります。
それと、玲子はこの温泉町に2年間いたらしい。いまから3年以上前、だそうなんだけど、「今」が何年なのか、99年か00年?普通に考えると98年とかになってそれは合わないから違うとして(麻生の出所が98年冬)。切実に年表が必要。

友情物語かもしれない

大和は子供の頃から貧乏に苦しんでいた。母親は宗教にはまり献金も滞納し、自責の念に堪えかねて大和を残して自死してしまう。そのため、とにかく母のようにはなるまいと、金を稼ぐことに血道を注いでいた。
そんな大和の前に、ホストの悠星が現れる。楽して稼げると誤解した大和は、ホストになるべく体験入店をするのだが、というお話。
大和の生い立ちが壮絶なのに対し、悠星のキャラがちゃらんぽらん過ぎて、その激しい格差に最初こそ戸惑っていましたが、テンポのいい二人の掛け合いと、この先どうなるのか全然見えない展開に、最後まで一息に読んでしまいました。勢いにのまれたといいますか、筆力とはこういうことなのかと。
悠星は確かにお金のある家に生まれて、大和とちがってお金で苦労したことは無いと思うけど、他人にたかられて利用されて、普通の友達関係を築けなかったのはとても気の毒でした。悠星にとっては大和は初めての友達で、大和にとって悠星は金持ちになりたいという自分の希望を体現した人。一緒に過ごすうちに情が湧いて二人が寄り添い、互いを庇うようになっていった展開にはうっかりほろっとさせられました。
恋かどうかと聞かれたら友情かもしれませんが(セックスはするけど)、そういうのもありでしょう。
タイトルの意味が最後まで分からずでした。

勤務状況が心配です

ほぼやってるだけでしたね。
制服警官の白石は、町で密かに流行っているドラッグの密売について探るために、マッチングアプリをつかって潜入捜査をしようとするのですが、アプリで知り合った男に主導権をとられ、後ろを開発され、動画もとられてしまいます。
まったくチョロすぎて心配になるくらい素直で従順。脅されて呼び出されてあれやこれやされる毎日。
自分の中で大義名分があるので断れない、といいつつ、絶対に気持ちよくて断ってないんだろうと。
身体の相性がいいのかも、本編だけではよくわかりません。とにかくアナルプラグで開発されて、遠隔で色々させられて、ローターで快感を高められ、なんといっても相手に洗脳されてます。
絵柄は丁寧できれいなだけに違うお話を読んでみたくもあります。

ずるい男だけど嫌いになれない不思議

良かったですー。めちゃ好みのお話でした。
圭吾はいつの頃からか幼馴染みの隆司のことが好きで、でも告白するつもりもなくひた隠しにしているのを隆司の弟の朔に知られてしまう。朔は圭吾のことが前からずっと好きで、隆司のことで傷つく圭吾を慰めたりするわけなのです。
このお話は全5話で構成されていますが、もとは最初の1話と2話を前後編として雑誌に掲載していたようです。そう聞いてから読み直してみると確かに、1話・2話の凝縮具合が際立っていると感じます。この濃密ぶりがとても良かったんです。色々盛り込んでいるのに後ろに引っ張ることなく答えを出していくし、そのわりにごちゃごちゃしていない。キャラも魅力的で、楽しく読めました。
3話以降も2話までの凝縮を引き継ぐように展開していき、キャラの気持ちの揺れ動きを丁寧に描いて安易な方には流れて行かないので、目が離せませんでした。最後もきちんと向き合いますし、気持ちが良いほどに潔かったです。
圭吾はずるい男ですが、不思議と嫌いになれないし、隆司がノンケで圭吾の気持ちに全然まったく気付くことなく普通に彼女と関係を深めていくことにも反感を覚えません。朔にはただただ共感して勝手に切なく思って応援するばかりでした。
ガーデンウェディングのあと二次会を断った二人が、家まで我慢できずに雪崩れ込んだシーンはとっても好きな場面で、呼吸や心音や体温さえも伝わってくるような作画に見とれ、繰り返し読んで味わいました。雨のなか写真をとる場面も可愛くて好きでした。

いろいろ腑に落ちました

桃源財閥の御曹司である信康の護衛として子供の頃から仕えている理一と、彼の元に突如配属された新人エージェントの橘。二人の不器用な恋を描いた作品の後半。
下巻の最大のポイントは6話の回想シーンです。このエピソードでぐっと惹きつけられましたし、橘の行動が腑に落ちました。
どうせ死ぬなら思い残すことがないように、会いたい人に会うと決めて日本にやってきたのかと。なるほど最初から理一しか見ていないんですね。それならなおのこと、仕事一筋だった理一が橘のことを好きになってくれたことは橘にとっては奇跡みたいなものだし嬉しいしかないはず。真面目な理一がいきなり重いことを言うのも橘にとっては何程のこともないでしょう。
理一のギャップについては上巻のレビューにも書きましたが、私個人的には仕事のときのきりっと男前モードの時の方が好きなので、下巻の方がそういう面を多く見られたように思えて良かったです。
御曹司の信康がアルバイトを始めたり、これまであまり良く分かっていなかった自分の周囲に居る人達のことに目を向けるようになったり、少しずつ成長していく様子が窺えます。まあ箱入りとはいっても一応学校にも通っているのだし、一般的には気付きが遅いような気もしますが(敢えて目を閉じていたのかも)、それでもクソガキからは脱しそうで良かった。お父さん(社長)が信康に語りかける口調を見る限りでは、本当に甘やかされているんだなと思いますし、理一も信康の働きぶりに感涙したりしていて、本気で叱る人の存在の必要性を感じました。
巻末描き下ろしの「ノブの初恋」も可愛くて気に入ってます。
あと、本筋に全然関係ないですが、橘が表計算ソフトが使えないというエピソードを佐久間が話しているときに、橘から何度も質問され佐久間がキレて「イルカにきいてください!」と叫ぶのと、理一が冷静に「イルカはもういません」と半分呆れながら呟く場面は、何回みても面白くて、つい吹き出してしまう2コマでした。

不器用過ぎる二人

桃源財閥の御曹司である信康の護衛として子供の頃から仕えている理一と、彼の元に突如配属された新人エージェントの橘。二人の不器用な恋を描いた作品。
二人は想像していたよりずっと歪な凸凹コンビで、ものすごく不器用。
特に理一が仕事一筋すぎて恋愛に関する経験値があまりに低く、心配になるレベルでした。あんなに仕事出来で美形でパーフェクトなのに、恋もしたことなくて、当然デートもキスも知らないというまさに稀少な生物。大丈夫か(大丈夫じゃない)。
それだけにギャップがすごいです。クールビューティが一転些細なところで照れたりする。これは大変な破壊力ですよ。よく今まで無事でしたね。(気高すぎて誰もアタックしないのか) いずれにしても経験値の低さから、結果として理一は、橘の押して押して押して突然引くというオーソドックスな戦法に引っかかっています(橘の方は戦法などと思っていない)。もう先も見えてますがこんなチョロくて大丈夫なのか(2回目)。
それと、理一がずっと護衛している御曹司。彼が絵に描いたようなクソガキで、生まれ育ちを考えるともうこれは仕方ないのかな。周りにたくさん人が居るからこそ、子供で居続けることのほうが難しそうな気もするのですが。
下巻も楽しみです。

数々の特集に顔を出すこの作品

人口減の町で役所に勤める矢澤は、日々の閉塞感を癒やすためにチラシにあったレンタル猫を試すことに。約束の日、家に来たのは本物の猫ではなく、猫耳としっぽをつけた人間の男だった。というお話。

「ちるちる」でずっと前から紹介されて気になっていた作品。メリバ的な特集でしょっちゅう挙げられるので覚悟してページをめくったのですが、その先入観がなければもっと衝撃を受けただろうなと思いました。確かにこのシチュエーションでは救いがないけれど、でもやっぱり普通のハッピーエンドを期待してしまう。二人とも苦境に立っているからこそほんわかした生活を送って欲しいという、お花畑的な希望ゆえです。ハッピーエンドは商業BLのお約束でもありますし。
最終話のとびらイラストが可愛くて、こんな毎日を二人には迎えて欲しかったですね。切に。
矢澤もタマも、ビジュ含めて好きなキャラでした。二人とも表情がとてもよくて、特にタマが矢澤に抱っこされてるときの安らいでいる顔が可愛らしく印象的で、あとで自棄になったタマ(青)が「あのときはよかったなあ」と回想するのに相応しいシーンでもありました。
キャラもよかったですが不穏な背景も秀逸でした。将来、人口減の果てはこんな風な社会になっていくのかなあと薄ら寒い気持ちにもなりました。

メインキャラよりも他界した老老カップルに萌えました

前の職場を解雇されてから就活を続けて振られること1年、「ベースカラー診断」の看板につられてジュエリーショップに立ち寄った昇龍は、子供の頃に離ればなれになった晶と再会する、というお話。
晶にとって昇龍は初恋の相手かつファーストキスの相手です。
「銀座の恋の物語」という、ゲイバー「銀城」を舞台にした作品に、お客として登場する鳴海晶が本作のメインキャラ。どっちがどっちのスピンオフなのか分かりませんが、双方の第1話初出は同じ年(2011年に別の雑誌掲載)のようです。「ジュエリー・スィートホーム」にも銀城が出てきます。
さて、晶と昇龍はなかなか、難物なカップルでした。まず、晶がものすごくモテる人で貞操観念が低い。つきあっている(別れたいと思いつつずるずる)恋人は妻子持ちであり、この1冊の中でも関係のある男が他に何人も出てきます。対して、昇龍の方は、1話では女の子と同棲していたノンケで、再会した晶のことは美人だと見とれたりするものの性別が男なら恋愛の範疇外だとはっきり表しています。なのに1話ですぐに二人が寝てしまうので、勢いにしても付いていけないなあと思っていました。
それが2話で、晶の方は、初恋の相手とはいえ寝てみたら大してそうでもないな、と冷静に考えていたり、昇龍の方も男と寝たことを今さらながら後悔していたり、流れがリアルな方向に変わってきたのでどうにか気持ちを立て直して先を読むことができました。
でもやはり、昇龍がノンケで、男はないわー、とついこの間まで思っていたこともあって、最後まで煮え切らない(ように見える)、それだけに現実味を感じられるところではあるのですが、元からゲイの恋敵たちの方が晶には合うんじゃないかと思ってしまいます。晶は確かに美人だけど、昇龍が本当に晶のことを好きなのか分からないところもマイナスです。(恋敵の存在に煽られているだけ?)
という点はあるものの、お話は特異で面白かったです。ジュエリーショップのお話だけあって、パワーストーンの持つエネルギー(歯車がずれた等)のエピソードや、晶が石と会話?したりするのも良かったです。
でも本作の肝は、晶の養父であり師匠の鳴海安志とパートナーのアレクの老老カップルにつきます。最後の最後まで添い遂げて、遺灰同士を合わせてメモリアルダイヤにするなんて、素敵過ぎました。