四目屋の主・宗明と物売りの青年・虎のお話、続編。
1冊目では二人の馴れそめが主でしたが、本巻ではいい仲になってからのその後が描かれています。
今回は、宗明の父(先代の店主、存命でした)が登場し、宗明と対立?する場面などもあり、回想シーンで宗明の生い立ちが明らかになるなど前巻よりも世界観がより鮮明になっています。宗明と虎が仲睦まじく、周囲の協力も得てみんなで店の危機を乗り越えるという展開も頼もしくもありました。
ただこの危機の内容が、先代店主が店の品物をすべて撤去して、取引先に手を回して納品しないようにするというもので、確かに危機は危機だけど、そこに意味を感じないといいますか、どうにも解せなくて。相手がライバル店とか例えば役人が店を潰そうとするとかならまだ分かるのですが、勝手をする息子(勝手といってもお店は繁盛しているのだからいいのでは)に煮え湯を飲ませるために、仮にも自分の店を傾かせるようなことをするのはどうなのか。(代替わりしているとはいえ同居しているようだし、何かあったら自分にも被害が及びそう) 本気で何かをしたいのではなく、ただ宗明に意地悪したいだけだったとしても、ちょっと理解しづらかったです。
また、虎が天真爛漫なのは分かるのですが、夜の営みに使用する性具等を昼日中から野菜でも売るように大声で宣伝するのも何かが違うなと思ってしまいました。
四目屋とは江戸時代の性具その他夜の営みに関わるものを扱うお店ということで、張り形やりんの玉、痛和散等が登場するので勉強になります。え、こんなものまでも、と思ったのがカバー下に少し紹介されている甲形・鎧形で、ずいきもそうですが本当に使用したら普通に怪我をしそう。それとお湯に浸した綿を中に詰めて使う張り形のことも知りませんでした。
前巻のときも思いましたが全体的にとても絵が丁寧で描き込みも多く、調べ物のことも含めてただただ感心しきりです。それだけに勿体なかったです。
先代店主のビジュアルがイケオジで、個人的には見た目がとてもタイプでした。
ハルを育てながら村で暮らすルカとクロ。周囲の子育て世帯とみんなで支え合いながら村の子供達を育てていく様子は、シリーズ第1巻を思うと大きく異なる環境と思います。作中にもありましたが、クロはずっと一人がいいと言っていました。でも今はずっと笑っていてとても楽しそうです。農作業も力仕事も機織りの仕事も子育てもみんなで話し合いながら和気藹々と行う。村での生活の理想的な姿が描かれていると思いました。
本作は夏→秋→冬→春の1年で構成され、少しずつハルも成長していきます。(ハルは神様の子なので、今後、周りの子たちと成長が変化していくんだよなーと思うなどしました)
村の生活がメインのお話で、ノアやトトがあまり出てこなくて淋しくもありました。
巻末、ノアがメインの「愛日」というお話があり、ここでのノアの感情がすごく寄り添いやすくて、少しほっとしました。本巻で描かれる村の生活は楽しそうで明るくてキラキラしていて理想的で、ある意味羨望の対象であるのですが、極めて個人的な理由で私自身はあの生活には馴染めないと思っております。ノアも、私とは違う理由ではあると思うのですが、彼らを尊重しあくまで否定するわけではなくただ自分が「冬眠したい」と思う。もうこれは仕方ないことです。長い眠りから覚めたノアをたくさんの思いやりが取り巻いているのもこの作品らしさであり、あたたかい気持ちになります。一方でこのやさしい世界はフィクションだなあと改めて思いました。
αとΩの文字の形状、ノアとウェレなのが愛しいです。
兄弟をテーマにした短編集の続き。登場人物紹介のページがあり、全員1巻に出てきた皆さんばかりで、どうやら1巻の続きが読めるらしいと期待。連作短編集だったのか。
CASE 6:CASE1の続き。兄と別れた健人が勤める整体院でバイトを始めた晴臣。思いあまってとうとう告白し付き合うことになるというお話。厄介だー、これは厄介すぎる。健人はまだ晴臣の兄のことを少し引きずっているので、これからどうなっていくのか心配。二人ともいい子でかわいくて好き。
CASE 7:CASE2の続きでCASE2の後からCASE3までの間のお話。兄に振られた弟の次の恋は同級生でした。ということは、CASE3で陸が兄と再会したときにはもう違う人を好きになっていた、ということか。
CASE 8:CASE5の続き。寮生活の兄と友達、なんと付き合うことに。
CASE 9:CASE4の続き。恋多き兄弟の騒々しい恋バナ。1巻でもそうでしたがこの便利屋兄弟の話は本の中の清涼剤というか幕間みたいな役割があるような気がします。
CASE 10:CASE6の続き。晴臣の兄・正臣視点のお話。正臣の小学生時代に当時の担任教師にキスされたエピソードが強烈過ぎました。そして晴臣と健人がつきあっていることを何故か正臣が知っていた(なぜだ)。正臣はくず男だと思っていたけれど、今回は教師としての一線を守ったのでほっとしました。で、CASE4・9の便利屋さんが久世家の御近所だと知りました。
エピローグ:これまでの4CPのその後をクロスオーバー風に描いたエピローグ。これにて大団円。みんな幸せになってください。便利屋さんの兄だけシングルですね。私の推しは晴臣×健人なのでCASE10以降も仲良くやっていることがわかってとても嬉しいです。(2巻の表紙もこの二人。可愛い)
兄弟をテーマにした短編集。全2冊の長編と思っていたので、2話に入った時に驚きました。
一部連作になっているお話もあります。
CASE 1:結婚が決まった兄には男の恋人がいたはず、とモヤモヤする晴臣。兄の婚約者からもその話をされ、兄の恋人に会いに行くお話。
CASE 2:両親の離婚で離ればなれになっていた兄弟が、父親の死によりもう一度母・兄・弟の3人で暮らすことに。そして兄は弟から告白される。
CASE 3:CASE2の続編。大学進学を機に寮生活を送る兄が友達を連れて久しぶりに里帰りし弟に再会する。
CASE 4:便利屋を営む仲良し兄弟はどっちもゲイで好みのタイプが同じ。うるさいけどほのぼのした恋バナ。
CASE 5:CASE3の続編。寮に戻ってきた兄と友達。弟に暴露された後の気まずい空気。
というわけで、2・3・5はつながっています。
私はCASE1が好きだったので、その後の晴臣くんの恋の行方が気になっています。
「40までにしたい10のこと」は雀さんが40歳になるまでにやってみたいことをリスト化して、慶司と二人で挑戦していくなかで心の枷をはずしたり自身の変化を受け入れたりする物語でしたが、3巻では、慶司のやりたいことリストを作ろうよ、ということになりました。ほうほうなるほど、とページをめくっていきましたが一筋縄ではいきません。雀さんの元パートナーで、かつてヘッドハンティングがあって会社をやめたという鳩山氏から声が掛かって、再び雀さんと組んで仕事をするようになりました。伝説のマーケター鳩山氏は、昔の仕事のやり方をする人なので、時間外とか休日とか働き方改革とかまったく関係ありません。24時間戦っている人なのでした。デートの時にも普通に連絡が入ります。雀さんは常識人で社畜なので当然仕事を優先します。残された慶司は文句を言わずに送り出します。俺のことはいいから仕事が済んだら休んでくださいねと言います。私はものすごく考えてしまいました。身体は疲れている。少しでも睡眠をとって休むべき。でも心は全然休めない。癒やされない。この1冊の本の中で、雀さんは明らかにSOSを出していると思いました。このままでは心が壊れてしまう。支えるという意味で慶司が居てくれてよかったけど、一方で慶司と恋仲になっていなければ実は100%仕事に費やせて思い悩むこともなかったのかなとか、そういうことも考えてしまいました。でももう慶司と過ごす時間を知ってしまったから、以前の雀さんにはきっと戻れない。
今回冒頭のlist16というお話は、すず子視点で綴られています。雀さんをずっと見てきたすず子のやさしい労るようなモノローグに、ひっそり泣いてしまいました。最後のlist22は慶司視点の短いお話ですが、これにもやられました。私の情緒が大変に揺さぶられています。
慶司のお姉さん達とそのお店はドラマの逆輸入ぽい気がして相乗効果で楽しいなと思いましたが違っていたらすみません。慶司のマンションのお部屋はお洋服がたくさんで、観葉植物も育てていて出来すぎにお洒落ですね。お部屋やオフィスなどの背景の書き込みが細かくてじっくり眺めて堪能しました。人物の表情にもはっとしますが、背景も見逃せません。
4巻が楽しみです。
「石橋防衛隊(個人)」の続編。石橋航にむらがる敵から守るため、さして興味もなかった某衛大(防衛大)に進学した国分寺(でも首席)。前巻で晴れて両思いとなり、本のタイトルも(個人)から(公認)へ格上げになっています。寮の外にアパートを借りて、外泊許可が出た日にはデートをしたりお泊まりしたりするんだ~とわくわく毎日を過ごす二人の前に、石橋の従弟というライバルが現れたり、国分寺のファン(拗らせ)の後輩が現れたり、なかなか思うように二人きりになれません。とはいえ、なんだかんだ言っても二人は付き合い立てのお花畑なので、それなりにいちゃいちゃしていて大変に微笑ましいです。
前巻は二人が両思いになるまででしたが、本巻は前述のライバル絡みとイベントとしては開校祭ですね。棒倒しのあといつまでも二人でくるくるお花を飛ばして喜んでいるのが可愛かったです。
それから佐倉先輩とその彼氏(海自)とのお食事会。気の置けない感じの先輩二人のやりとりからもまるで夫婦の家に遊びに行った感が満載でしたし、卒業後の進路の話題で、佐倉先輩が恋人とすれ違うのを避けるために陸自を志望したと言うのを聞いてちょっと襟を正す国分寺と石橋。最後の方で石橋が自分たちの未来について語る場面がありますが、このときの先輩達との会話も影響しているのだろうと思いました。
そしてあれよあれよという間に大学を卒業してしまったので、もう続編は無いのかな。あとがきで番外編を描きたいと書いていらっしゃるので、どこかで読める日が来るかもしれません。
本巻が「(個人)」の勢いやテンションと少し違うのは、両思いになってしまったことというより、学生から社会人になろうとする彼らの立ち位置の違いなのかもと思うなどしました。まあ恋愛脳ではあるのですが。
高校の同級生である石橋が某衛大(防衛大)に進路を決めたと知ったから、国分寺も秒でそれに倣い、同じ大学で過ごしている二人。国防のための学校ですが、国分寺にとってはすべては石橋を守るため。恋に一途な国分寺のお話。
強面でガタイの良い国分寺が、ただひたすら石橋だけを見つめて石橋だけを思う、ピュアッピュアな恋心が描かれます。ときには肝試し、ときにはスキー合宿、数合わせの合コン参加、色々なイベントを経て二人の仲が深まっていくのが可愛らしく、壁とか天井とかに張り付いて行方を見守っている気分でした。石橋が素直ないい子なのも良かったですし、確かに顔はすっきりイケメンなのですが女性らしいところが1ミリもなく、石橋も国分寺もどちらも紛う方無き「男」なのが良かったです。
石橋にとって国分寺は元々仲の良い友達であり憧れでもありライバルでもあったものが、大学生になってもっと相手をよく知ることとなり、あるときからそれまでとは違うように見えてくるという、そういう気持ちの変化も自然に感じられました。一方で国分寺は石橋をずっと好きなので、好きすぎて自分の感情を抑えるのに慣れすぎて、いざ石橋の気持ちに変化が訪れたら朴念仁みたいになる(まさか石橋が自分のことをそんな風に思うはずがない、と先に思ってしまう)のが可愛いです。コミカルな作風なので気軽に読めます。
婚約解消を機に自分を変えたくて、思いつきでタトゥースタジオを訪問した尚紀。彫師の愛助は自己嫌悪に陥る尚紀を肯定し、まずはモチーフを考えようと提案するとともに自身の黒歴史(別れた恋人の名前を黒く塗りつぶしたタトゥー)を見せる、というところから始まるお話。
初対面で上裸になって肌を見せ、「蛇とかどうですか?」と提案され、イケボでエロいことを囁かれて気持ちよくなってしまうというシーンが第1話から来るので、タトゥーを入れる=性的興奮という、昔からある彫り物をテーマにした映画や小説等を少し思い出しました。本作は性愛に特化した作品でもあって、画面がとても色っぽいです。たとえば尚紀が愛助の家を訪れたときに、「俺が開発するつもりだったのに、ひとりでエッチな体になっちゃって」という科白があるのですが、このときの尚紀の尻~脚の色っぽさ。男性の身体でも女性の身体でもない、不思議なラインです。尚紀は愛助との出会いによってまるで十代の子のように性に目覚め、愛助も前の恋人と別れてから不能になったらしいのに回復し、お互いがお互いを求めて性的に高め合う関係というのが絵から伝わってくるのがすごいと思いました。絡み合う痴態もアクロバティックなのにとにかく画面がエロい。二人がお互いの身体に溺れているのがよくわかります。唾液に塗れたとろけるような舌もいいです。
二人の関係はまだ始まったばかりで、あとがきを読んでも続きがあるような書き方をしているので、続編があるのかもしれないです。個人的な好みの問題ですがストーリー展開があまり無いのが気になりました。(内容的にそういうのはあまりいらないのかも知れないですが)
写真家の清澄は親友でアシスタントのみさごを事故で亡くし、みさごの弟であるひばりを引き取って一緒に暮らしている。高校3年生のひばりは清澄のことが好きで、清澄もそれを分かっていて、子ども扱いすることでなんとなくやり過ごしている、というお話。
好きなタイプの関係性で、以前から読みたいと思っていながら勿体なくてちょっと積んでいたのですが、意を決して手に取りました。あー、好き(笑)。この普段は見ないようにしているけどどうしようもない罪悪感とちょっとの背徳感、お互いが薄氷を踏むように日々を過ごす、尊くて且つ不毛な時間。大好きです。(うるさくてすみません)
良かったのは、清澄とみさごが恋愛関係ではなかったこと、みさごとひばりが親が居なくてたった二人きりの兄弟だったこと、清澄もひばりもどちらもがみさごの死に罪悪感を抱えていること。この、沈殿する淋しさみたいなものが、清澄の笑顔の裏側にあるということが、写真にも影響を与えているのかなと思うなどしました。
ひばりのまっすぐな瞳が時々翳るのが色っぽくもあり、でも子供として庇護したい気持ちになりました。
気になったのは、結構早い段階での清澄のモノローグで、ひばりが自分のことを好きだと断じてしまうところですね。お話を進めていく上で必要なので仕方ないですが、見方を変えるとちょっと自意識がやばい人みたいに感じてしまう。相手は高校生ですし。
清澄がひばりの学校で女の子達からキャーと言われたり、一方で、写真の個展の会場付近で「顔で売れてるんだろ」と蔑まれたり、そういう風に外側が描かれているのも良かったです。
BL AWORD 2026のディープ部門上位だったので、それなりの覚悟はして読んだつもりでしたが、もんのすごい衝撃を受けました。
こういうお話だったとは! え、同人でしたっけ? と思わずレーベルを見返してしまいました。マーブルでした。いやちょっとほんとうに、商業BLのお約束どこ行った(そんなもんあったのとかの質問は受け付けません)。
と、ここまで書いて一日寝かせました。一呼吸。
昨年発売なのに今頃言うなと言われそうですが、今読んだのでお許しください。
第1話。天真爛漫な禄斗と同居している七海との日常からスタートし、幼馴染みで恋人同士だとの関係性にふんふんと思っていると、序盤で謎の白黒反転の画面が出てきて、ぞわっとしました。でもすぐに和やかな場面に戻るのでまあいっかとやり過ごしたのですが、七海の怖ろしい述懐が始まるのです。七海の言っていることが真実なのか、それともあまりに荒唐無稽な内容なだけに、七海がおかしくて真実は別にあるのか、第1話ではまだわかりませんが、とにかく第2話へと引き込まれるように読んでいきました。
そこに描かれる非現実な闇と沈む七海、対する明るいばかりの禄斗。この対比が非常に顕著で、ますます混乱したまま第3話へ。真実はどっちなのか、禄斗と七海どちらがどうなのか、考察しながらどんどん先へとページをめくりました。読み進むうちにだんだん見えてくるものがあるのですが、「え、まさか」と思ってしまう自分がいます。
最後の最後まで目が離せず、結局「まさか」と思ったまま、ラストでまたショックを受けまして。
なんなら奥付のページですら、もやもやに拍車が掛かりました。
いやー、大変な作品でした。これ同人じゃないんですよね。驚きました。