1巻でもかなり心を掴まれていたけれど……2巻は「特別な庭師」の仕事も恋模様もさらにさらに惹き込まれて、最初から最後までずっと床を転げていたいほど。
庭師の仕事の説明ページだけでも、いつまでも眺めていられるぐらい素敵。
何気に明と友也の庭師バディーが好きです。二人の対比が良いし、並び立つ姿だけでもカッコいい。
トオルも同じくだけど、和風の仕事着も、仕事中前髪を上げているところも、ツボに刺さりまくりです。もちろん、手練れな仕事ぶりにも惚れ惚れ。
睫毛の長い男ってBLではもはや珍しくもないけれど、絵本のようなこの独特の画風で描かれると、明の色気とトオルの透明感が際立って不思議な美しさを感じます。
脇キャラも個性が見えてきて楽しさ倍増。
第九話の扉絵、草太さん。見た瞬間、変な声出そうになった……そ、そーたさん、あなたそんなだった? 1巻のときモブだと思っててごめんなさい。草太さんのストーリーも俄然見たいです。
宝生さんのことを草太さんも泉くんも「間違えた」そうだけど、BL読者は一発で見抜きますよ。弓を引く姿が佳き。
第十一話の扉絵、泉くん。柴犬のマル介と似ていて可愛いです。まつむら植木のマスコット的な(部外者なのに)。
第十三話の扉絵、友也。期待通りのちょっと悪い男。でも案外いいヤツ。当て馬6:アドバイザー4ぐらいの程良い塩梅。
でも友也視点で考えるとなかなか切ない。トオルの可愛さを知れば知るほど、その可愛さは全部明に向かっていると見せつけられるし。おまけに明の内面も、いちばん近くで見てしまうし。
2巻は恋愛パートが想像以上に充実していて、とにかく萌え散らかしました。
明とトオルの関係は前進も後退もしていないけど……だからこその切なさ。
「このままでいい。このままじゃ、いやだ。」という、あらすじの一文がずしりと重く感じました。
ささやかなことが嬉しくて満たされるのに、もっと多くを求めてしまう。気持ちがバレるのが心底怖いのに、サラリとかわされてしまうのも苦しい。
揺れ動くトオルの心が切なくて可愛くて愛しくて、心臓が痛くなる。
明はどうなの……?と思ったら、最後にすごい衝撃。
いやまだわからない、明の本心も秘密もまだわからないけど。
明がトオルを、すごく、ものすごく、とてつもなく大切に想っていることだけは、間違いなく伝わりました。息が詰まりそうなほどに。
でもそれは恋なのか?
BLレーベルならもう200%確実に両片想いのところだけど……いや一般レーベルだからって、恋愛感情なかったらあんな風に抱きしめないよね?
でも両想いだったところで、過去の次第によっては気持ちを封じてしまう可能性もある??
続きが気になりすぎて、次巻が出るまで1巻と2巻を延々とループしそうです。
読み返すほどに、明のトオルに向ける眼差しが、微笑みが、優しくて優しくて溶けそう。
二人が幸せに結ばれることを祈らずにいられません。
新たなる萌え職業を見つけてしまいました。
“特別な庭師”
めちゃくちゃカッコよくて美しい……
そもそも、明が自分の好みど真ん中すぎて。
寡黙で無愛想だけど、中身はすごく優しい。優しくて柔らかくて静かな色気。そして庭師としての手練れぶり。ああ、ほんと好き。
過去の「付き合ったり付き合わなかったり」の話もなかなかだけど、それ以上に、暖炉と黒い犬とクチナシの想い出が……何でもない話なのに、何ともいえず艶っぽく美しい。
前半の数話はかなり絵本っぽい絵柄で内容も一般誌らしい感じだけど、黒い犬の話のあたりから漫画らしい絵柄になってきてBL風味もぐぐっと強く。絵本のような庭の話と美味しそうな料理も素敵なんだけど、やっぱり私には“BLとして”格別に魅力的な作品です。
体の関係がなければBLじゃない人にとってはこれはBLじゃないんだろうけど、私は恋心さえあればBL判定なので。そういう意味でこれは、ブロマンスじゃなくてBLです、確実に。
トオルの恋心がほんと可愛くて可愛くて。28歳、元ヤン(推定)の片想いの、なんと健気で純粋なことよ。
当て馬らしき存在も現れて、いい具合に気持ちが動き始めるか……?と思った矢先に、違う方向からものすごく気になる展開!で、「つゞく」!!
ここで一気に沼に突き落とされました。二重三重に絡め取られて抜け出せません。
1巻のあと2巻が長らく出ていないということで購入を迷っていた作品だけど、このたび2巻が発売されたのを機にようやく読めました。この作品に出会えてほんとうに良かった。ご病気で5年も休載されたとのことですが、再び描いていただいて、ただひたすらに感謝です。
ああ、やっぱりこの二人、好き。
キャラクターも好きだし関係性も好き。
Dom/Subは普段は読まないけど、この作品だけは大好きです。
第二の性がある世界って“男同士”という葛藤が無さそうだけど(読んでないから知らないけど)、この二人はDom同士だから、いわばダイナミクスの中での同性愛。本来の性志向と違う相手と付き合っているマサはノンケみたいなもので、元々の性志向どおりのオトはゲイといったところ。
ゲイとノンケのカップルといったら、ゲイの方が悩むんだよね。自分のせいで相手に負担をかけてしまう、自分と別れた方が相手のためじゃないか……BL界の普遍のテーマ。ベタといえばベタだけど、やっぱり好きです。悩んで迷って苦しんで、それでもこの人じゃなきゃダメなんだ、っていう強い気持ち。それを見たくてBL読んでると言っても過言でないのです、私は。
マサのこと好きすぎるわ、自分の力は強すぎるわ、根が真面目だわで、あれこれグダグダなオト。表向きはカッコよくてデキる男なのに受けのことになるとヘタレてしまう攻めが大好物な私としては、非常においしい展開でした。まあ何も言わずに避けるのは違うだろとツッコミたかったけど、マサがバシッと言ってくれたし。
こういうタイプのヘタレ攻めには大きな愛で包んでくれる受けが必須で、マサはそういう意味でほんと理想的な受け。
とにかくマサの男前で懐が深いところがどストライクです。なのに、すりすりして可愛かったり、わくわくして可愛かったり。カッコよさと可愛さがナチュラルに同居してるのも、堪らなく好き。
オトとマサは、向き合った状態で「右」と言ったらお互いに“相手から見て右”と当然のように考えるからすれ違う。
そんなふうに相手を気遣う二人も好きだし、でも本音をぶつけ合ってバチバチする二人も好き。やっぱり強いDom同士だもん、こうでなくちゃ。
血管ビキビキで喧嘩しながら、ちゅっちゅして、ほわほわしてるのも可愛かった。
そして、普段のワンコだったりヘタレだったりする顔から一転、常人ならざる瞳を見せるオト……ゾクゾクきます。
オトの「本気のコマンド」が見られるかとかなり期待したんだけど、今回はお預けで残念。3巻で描いてくださるのでしょうか……楽しみにしてます!
「夢」を叶えたくて必死で食い下がってくるオトも歳下らしさが滲んで可愛かった。二人の関係がいろいろ変化してきても、オトのいちばんの根っ子はマサへの永遠の憧れ。そこはずっと無くならないでくれて嬉しいです。
雑誌に掲載された写真は、7話の扉絵みたいなモデルっぽいマサを想像してたのでちょっと意外だったけど、こっちの方が素敵。
裏表紙とかの2ショット絵もカッコいいですね。見た目完全にマサが攻めっぽいけど……腰を抱いている方が攻め。BLカップルの真理。
謎めいた終わり方をした上巻から一転、いきなり蛍の話になって混乱させられる下巻。上巻で蛍と曽我部さんは会ってたのに、また初対面みたいになってる……???
ここでやっと気づく、「AとB」という考え方の意味。これを「未来と現在」と考えてしまうと訳がわからなくなっちゃう。
Aの蛍が過去の晶の前に現れた瞬間から、「Aの過去」とは別の「B」の世界線が始まる。○ックトゥザ○ューチャーみたいに未来の人が過去に干渉したら未来が変わってしまうのではなくて、もう一つの未来ができる。こういう分野のストーリーに馴染んでいない者にとっては、頭がこんがらがるたびに「これはAだからBとは別なわけで……」と整理しやすい、親切設計でありがたかったです。
おかげで初読でもなんとか90%ぐらいは理解できた……かな? 2回読んだら95%ぐらい。3回読んでもまだ完璧ではないけど、それぐらいでむしろいいのかも。スピリチュアルな世界はわからないことがあって当然だしね。繰り返し読んでだんだん理解が深まっていくのもまた一つの楽しみです。
下巻の萌えポイントは、やっと生身の二人が出会って危機を乗り越えるまでのバディー感。
蛍の方は全容が見えていて確信を持っているけど、晶は突然のことで何もわかってない、しかも失敗したら失うのは自分ではなく相手の命。未来が見えたとはいえ晶の方が決断するのに勇気がいるけど、それでも蛍を信じて託す信頼関係が尊い。
欲を言えば、10代の二人の恋のもだもだ部分をもうちょっとじっくり見たかった。
アフターストーリーをABそれぞれ描いてくれたのはさすがです。
まず、サスペンス作品として面白い! 上下巻イッキ読みでした。
ただ、かなり頭を使うので、気力・体力があるときしか読めないですね。何回も繰り返し読みたいのは山々だけど。
まず事件の謎より前に、蛍と晶を取り巻く基本設定からしてややこしい。
蛍の父と晶の母が兄妹で、蛍ファミリーは海辺の町の寺在住、晶ファミリーは東京在住。晶はの母は早くに亡くなっているけど、晶は法事の時や夏休みには母の実家(=蛍の家)に滞在。お寺の先代住職は曾祖父で、二人が子どもの頃に亡くなっている。現住職は蛍の父。次期住職は二人のハトコ(曾祖父にとってはこの子も曾孫)の敬人。
文字に起こしてみるとそんなに複雑でもないけど、これを人々の会話から読み取らなくちゃならないのにけっこう消耗しました。
けどこんなのは序の口、ここからがさらに難しい。ちょこちょこ回想が入ってくるし、回想にも20年ぐらい前、15年ぐらい前、10年前といろんな時点の話がある。現在の時間軸もあっちに行ったりこっちに行ったり。
「AとB」という考え方を示してくれた曽我部さん、ほんとにグッジョブでした。最初に上巻を読んだときはまだそれもピンと来ていなかったけれど、下巻を読み始めてからこれのおかげで頭の整理が大分しやすくなったのでした。
で、肝心カナメの蛍と晶の関係ですが、確かにBL要素はかなり薄い。けど個人的には、けっこう好みの要素が多かったです。
ずっと一緒に育ったわけではないけど、一種の幼馴染ですよね。
しかも二人だけにしかわからない問題を共有してる。お互いに唯一無二の存在。
小さい頃に弱虫で相手に頼りきっていた方が、大人になると背が伸びて攻めになるという……何気に好きなBL界のお約束。
そして晶が、表紙を見たときはキツそうな顔立ちで苦手かなーと思ってたけど、本編ではかなり好みでした。透明感があって、それが内面の清廉さとも合ってる。「晶」という名前もぴったり。
サングラス姿もなんか可愛く感じてしまう。赤面するのも可愛い〜
1巻がものすごく好きだったので、楽しみなのと同時に読むのが心配でもあった2巻。綺麗に完結した話はあまり引き延ばさないでほしい派なもので。
でも変な当て馬が出てきたり無理矢理なすれ違い展開になったりせず、良かったです。
緑を差し色にした表紙が素敵。1巻の赤が慶司、2巻の緑が雀のイメージカラーなのかな? 残念ながら電子だと表紙を2つ並べて見ることができないので、サムネが並んだ画面を拡大して眺めています。
雀の表情がナチュラルな笑顔になっているのもいいなあ。1巻の困り顔も好きだけど。
正直いって私は、アラフォーが歳下に愛される話が大好きってわけじゃないし、内面が乙女なおじさんはむしろ苦手。
でもこの作品が大好きなのは、雀がただチョロ可愛いだけじゃなくて、ちゃんとデキる男なところ、大人なところを見せてくれるから。
1巻もそれをすごく感じていたけど、2巻でも雀のいいところがたくさん出てるのが良かった。
慶司のために温泉やプレゼントを奮発しちゃうの、今までの雀なら出来なかったことをやってのけたのが胸熱。描き下ろしのプレゼントを買いに行った話も好きです。
1巻と比べてしまうと、二人の関係が進展していくドキドキ感とか、恋が実ったカタルシスとかは無くなってしまったけれど。
恋人として甘々なところ、プラス、掘り下げて欲しいところ、その後が気になるところなんかを丁寧に回収してくれて、心穏やかに読むことができました。
デパ地下のお姉さんたち、羨ましい……!
ピリッとした雰囲気の1巻から少しずつ柔らかく、甘く、頼もしく変化してきた表紙絵が、最終巻では明るく綻んだ笑顔に! なんだか二人の歴史を感じてしまって、表紙からすでに感慨深いです。
ラストはやっぱり尊の両親との対峙。
といっても激しく対決したりするのではなくて。これまでの誠志郎との結婚生活を通して、尊の中ではもう母親と向き合える下地は出来上がっていたんですね。
どこまでもブレない貴子ママも、意外なキャラだった和日郎パパも、どっちも好きです。子どもの育つ環境としてはいろいろアレだったけど、黒の京極家もなんだかんだ素敵な家族。
完璧なんじゃなくて、いろんな形の結婚・家族があっていい。このシリーズのテーマそのものでした。
わかってはいたけど切ない礼央との別れ。礼央の前では泣かないのが誠志郎らしい。ウルグアイ、とかズレた論理を持ち出すところが栄一郎パパ譲りよね。
2回目の結婚式はthe大団円という感じでした。尊が黒は自分で白は誠志郎と拘っていた1回目とは対照的に、お揃いの袴で素敵でした。GI値をちゃんと習得してる芳子ママ、さすがです。
家族BLとして、とても素晴らしい作品でした!
巻数表記が「1」だから3巻以上は続くのかと思ってもう少し待とうと思っていたけど、結局読んでしまいました。でも読んで悔いなし。じっくり時間をかけて待つのも楽しみと思える出だしでした。
妹の代わりに嫁ぐとか、実は過去に接点が、という展開はBLとしては目新しくはないものの、そんなことは枝葉に過ぎず。
皇帝一族のことや治水のことといった土台がすごくしっかり作り込まれているから、普通に漫画として読み応えがあって1冊があっという間でした。
名前の付いている脇役もたくさん出てくるけど、それぞれの個性とか関係性とかが分かりやすくて、混乱せずに読めるのはさすがです。私は今のところ王悟がお気にいり。
治水の部分はちょっと難しそうだけど、話し言葉は現代風でサラッと読めるし、ムダなところで嫌な人間が出てこないし、全体的に柔らかくてほのぼのした雰囲気。
小梅ちゃんが真単や端正に結構ずけずけものを言っちゃうなんて、リアリティーはないけど好き。彼女だけ名前が何故か訓読みなのも。
子パンダまで出してきて……まんまと癒されてしまう。
陛下が腹違いの弟殿下と仲良しなのも、ほろっときてしまいました。末の弟君のエピソードはとても重いので、これぐらいのバランスが好みです。
恋愛面はまだまだ序章という感じ。王佳が空気読めないキャラのうえ、陛下もなかなかに不器用なお方。でも、不器用だけど、重荷も負っているけど、器の大きさも感じられる人で、これから期待大です。
このシリーズを買い始めたのは既に10巻か11巻まで刊行されていたころ。そんなにたくさん買うのは負担が大きいよな〜、まあでも1巻ごとに話がまとまってるから、もう満足となったらそこでストップすればいいか。8巻で一段落つくらしいから、長くてもそこまでかな……というゆるい考えで買い集め始めたのでした。
5巻ぐらいまでは共感しづらい部分もありつつ、なんだかんだ安定のクオリティーで8巻まで読み終えて、うん、満足。満足したけど、もう1巻買おうかな。別に、続きが気になる!ってわけじゃないけど、やっぱり読んだら確実に面白いんだよね……と、新刊が出るたびに買って、かれこれ15巻。自分の中では、いい意味で水戸◯門のような存在です(若い人にはわからないか…)。
おなじみのパターンでありつつバリエーションがしっかりあって、9巻以降もちゃんと二人の関係が進展している。“3歩進んで2歩退がる”程度だけど着実に1歩ずつ進んでる。むしろ以前は“3歩進んで3歩退がる”ぐらいだった二人を思えば、なんと成長したことか。
そしてこの巻での宗一の「家族」発言……!
BL作品でこの手の言葉は何度か見てきたけれど、私の場合ものすごく感動するケースと、逆に冷めた目で見てしまうケースと両方あります。
重みのある言葉だけに、すごく好きというだけで安直に使われると後者になるし、それだけの積み重ねがちゃんとあったうえで言われると前者になる。
宗一のはまさに前者。
哲博の実家問題は1巻から折に触れて描かれてきて、私は密かにこの作品の裏テーマなんじゃないかと思って見守ってきました。
6巻では巽ファミリーの絆を目の当たりにした哲博が切なくて、宗一が無意識ながら寄り添ってくれたのにはじんと来たし、哲博の福岡時代を支えてくれたマスターとのエピソードも好きなので10巻も泣けました。
そして15巻にして、ここまで築き上げてきたんだよなと思うと、感慨深くて涙出ます。
今後の巻で、実際に親との対峙が描かれるのか否か、描かれるとしたら和解するのか決別か……どう転んだとしても納得できる気がします。
私は長編作品はあまり引き延ばさないで欲しい派なんだけど、この作品は穏やかに読み続けられる稀有な存在。
全巻を通しての神評価です。
1〜8巻合わせての評価&レビューです。
正直いうと、初めて1巻を読んだときはドン引きでした。
あまりにも暴力的でワガママな暴君・宗一に対してはもちろんのこと……一見健気そうに見える哲博もやっぱり自分の気持ちを押し付けてばかりで。
でも漫画自体はテンポが良くてギャグとシリアスの緩急も上手く、ついつい読み進めていったら(3巻まで無料で読めるときだった)、なんとなく腑に落ちてしまったんです。
この二人に限っては、これでいいのかもしれない……と。
お互いに無茶苦茶なエゴをぶつけ合っていても、それなりに受け止め合えてるし、互角に渡り合えてるし。そもそもすごく波長が合ってる二人。値切り式で回数決めるって何だよ……なんか楽しそうになっちゃってるじゃん。
これはいわゆる破れ鍋に綴じ蓋ってやつか。他の相手なら“逃げてー!”な案件だけど、この二人の間だったらアリかも。というかお互いこの相手以外は無理かも。
そこが納得いったらあとは楽しく読めるようになりました。5巻ぐらいまでは二人とも“それはやりすぎ……”と感じる言動は毎巻ありつつ、やっぱり全体的には読みやすくて面白い。前半に軽め、後半にしっかりめの絡みがあり、その間にモメゴト勃発!というお馴染みのパターンもなんだか安心感があるし、新しい1冊を開くときにはヒロトくんに会えるのを楽しみにしている自分がいる。
8巻でいったん完結するとのことだったから、当初はそこまで読めばいいかなと思っていたけれど、なんだかんだ15巻まで出ている今でも買い続けています。
気軽に読めるラブコメとしても楽しくて好きだし、意外としっかりしてるなと思うところもあって、そのひとつが哲博の抱えている問題。
恋人と引き裂かれ、周囲から蔑まれ、親兄弟からさえ疎まれて。しかも愛し合っていたつもりの相手は別の人を想っていて。
サラリと語られているけど、高校生でこんな経験はほんとに辛い。普段は強引な哲博がときどき異常なほどにネガティブになるのも、宗一の気持ちを執拗に確認したがるのも、無理ないかと思える。
しかもそんな思いをしながら、なおも相手を思いやり続けているとか……骨の髄まで愛が重い気質。
こんな重い重い過去と重い重い愛情を抱えた男を、普通の人間はなかなか受け止められないな。迂闊に寄り添おうものなら一緒に潰される。情け容赦なくぶつかり合って、だけど絶対見捨てたりしない、宗一の「鉄拳付き」の愛だけが哲博を救えるのでは。
そしてもうひとつ、宗一は哲博の笑顔が好きなんだな、という気配が1巻目からずっとさりげなく描かれているのが、とても好き。
二人とも自覚していないから、言葉でそうと説明されるわけではないんだけど、表情や間から伝わってくる。哲博にニコッとされるのに、宗一は弱い。
子どもか!ってレベルだけど、これが暴君の「恋」なのかな、と思う。
5巻あたりから哲博の表情の変化を気にかけるようにもなって。9巻で「お前はへらへらしててこそだろ」と言ったのは宗一らしくて微笑んでしまった。
恋人としての関係は一進一退でほとんど変わらず、8巻にしてようやく人並みのスタートラインに立てた感じだけど、水面下で宗一のマインドはずいぶん変わった。恋の力は偉大。
他人に興味がなかった暴君・宗一が人間として成長していって、その宗一に、心の傷を抱えた哲博が支えられていく。破れ鍋に綴じ蓋だけど、最高のパートナー同士。
少しずつだけど着実に変化していく二人の関係を、ゆるく楽しみながら気長に見守っているシリーズです。