原作既読。
原作表紙も素敵ですが、CDジャケットの構図と2人の表情の醸し出す空気がとても素敵で大好きです。
目からの摂取では、かなり苦しく切ない物語でした。
ドラマCDはそれぞれのキャラクターの声と話し方がとても合っていて、より感情が揺さぶられた物語でした。
苦しく悲しいエピソードはより苦しく悲しく感じ、微笑ましく幸せなエピソードはより微笑ましく幸せに感じました。
阿座上洋平さん演じる宇喜田煌成は、傲慢で高飛車な嫌なお坊ちゃまのようで、心が空虚で寂しい男でした。ひどいエピソードをいくつも持つ煌成ですが、かわいそう、と思われない原作そのまま、かわいそう、とは感じません。
護衛でありつつ、煌成に常に辛辣な莉麻の言動がしっくりきます。言われてもしょうがないよね、と莉麻寄りの気持ちになりました。
野島健児さん演じる大野紬は、人が良くて弱弱し気で遠慮ばかりしているけれど、その奥にとても強くてしっかりした芯を持っているのが、裏表、二面性、という風には聞こえなくて、紬の大きさ深さがじんわりと伝わりました。
ぜひ、原作と合わせて味わい、この世界に浸っていただきたい作品です。
通常版を持っていて、何度も読み返すほど大好きな作品です。
新たな描き下ろしなど大量増ページの完全版ということでもちろん購入しました。
改めて泣き、改めて感動し、新たなエピソードでさらに感情を揺さぶられました。
素晴らしい完全版です。
暮田マキネ先生の作品は人間の暗い感情を文学的に描いていることが多いと思いますが、今作はその中でも特に重く苦しい感情が渦巻いています。
お金持ちの御曹司と使用人の恋、という題材は古今東西あるものですが、よくある題材でありながらその設定の細やか、かつ、心をじりじり焼くような苦しさがすごいです。
御曹司の煌成、使用人の孫で使用人の死後、身寄りがなくなり自身も使用人となった、しかし御曹司の幼馴染の紬。
お互い深く深く想い合っているのに、その想いがお互いに全く伝わっておらず、言うことやることがじわじわと2人を苦しめています。
御曹司の煌成の護衛の双子、莉生と莉麻は、物語の展開を導くキャラクターであり、煌成と紬をそれぞれ守る存在でもあります。脇役だけどこの2人がいたことで煌成と紬が深くて暗い悲しみのなかからあがってくることができたのだと思います。しかし2人の言動は、映画のヒーローのようにさっそうと現れて必殺技を使ってあっという間に問題を解決するのではなく、全ての登場人物の思惑が絡まり合っているのをバサッと一刀両断にしてご主人様を救うのではなく、任務と同様、背後からそっと寄り添うようなもので、主導するわけではないところが、素晴らしいです。
莉生と莉麻が深く深く、紬を慈しんでいるのが、表立たない、目立たない、いろんな言動で伝わってくるのにも感動します。
煌成と紬は最初はお坊ちゃまと使用人の子ども、そして幼馴染の友達になりますが、実の家族にひどく心を削られて今にも消えてしまいそうになっている煌成を励ましたい、大事にしたい、と「お母さんになる」ことを思いつく紬。子どもゆえの突飛な思い付きと申し出が、その後の2人の関係を少しづつゆがめてこじらせていきます。
それぞれお互いのことをとても大切に想っているのに、正しいふるまいができないが故に選択を間違えてしまい続け、別離となる結果がとても切ないです。
紬の選択もふるまいもとても悲しく切なく、まるで天使が天に帰ってしまったのかと思わされるほど、ふわりといなくなってしまいます。その去り方もまた切ないです。
煌成は紬がいなくなったことで、廃人のようになってしまいます。まるで魔窟のような宇喜田家でまともな人は誰もおらずみんなみんないびつ、歪みがありますが、一番、完璧なようで、一番、まともで、だからこそもろかったのが煌成だったことに気づかされます。
食事も受け付けなくなり、まともな生活もできない、外国に追いやられそうになったときに、莉生が紬から託された最後のお願いを煌成に明かすシーンは何度読んでも何度でも涙が出ます。なんと深くて強くて大きな愛なんだろうと感じます。
魔窟の宇喜田家を追い出された異母兄、央大とその理解者たちの元で、穏やかな暮らしを送っていた紬のところに煌成を訪ねてからも、再会からの告白で一気にハッピーエンドではなく、それぞれお互いのことをとても大切に想っているのに、正しいふるまいができないでいた2人はじわじわ話が進みません。
お互いがお互いのことを愛しているのを知らないままの、愛している、という告白が、とても文学的で、苦しくて、そして感動しました。
宇喜田家はまさに魔窟だったのだろうなと、追い出された央大、追い出されかけた煌成のその後の幸せな暮らしを見ることで感じることもできます。
煌成と紬が愛を確かめ合った翌朝、煌成につけられたであろう、指の歯形を空にかざして見るシーン、と、紬が結婚指輪をつけた手を空にかざすシーン、並んでいるのですが、同じ構図であるけれどその持つ空気、明るさ、透明感が全く違うのにも驚かされます。
央大が義母弟の煌成のことをかわいくない、と言ったり、優しい言葉をかけなかったりしつつ、紬絡みでは援助しまくり、かつ、紬にお兄ちゃんと呼ぶように命じるところなど、おしまいのあたりはほっこりエピソードが続きます。
莉生と莉麻が2人のそばにずっと一緒にいるのにも胸が暖まります。
完全版の新しい描きおろし
煌成と紬が両想いになってから、一緒に暮らすようになる前の、遠距離恋愛時代のお泊りエピソード、紬が煌成のためにあれこれ準備をしていた様子がとても愛らしくきゅんきゅんしました。
酔っ払い紬がよくわかんないクイズを出し、それを笑いも呆れもせず満面の笑みで乗っかる莉生と莉麻、愛らしさいっぱいの幸せエピソードもあります。
煌成は魔窟の実家から抜け出して、浄化、再成長中なのだと思いますが、長年に沁みついた魔窟のあれこれは簡単には落ちないような苦しさを感じます。
遠距離恋愛中に、隣に眠る紬の姿を確認し、良かった夢じゃない、と静かに涙を流す様子は、魔窟でつけられた毒素のある硬い殻が、少しづつとれて、明るい光が煌成の中に差し込んできている象徴のようにも感じました。
特典で、紬に子ども時代の髪形をリクエストされ応えようとする煌成のエピソードもあり、紬の光に照らされてどんどん明るくまっすぐ成長している様子がほの見えてほっこりしました。
暮田マキネ先生の作品は名作ぞろいですが、今作はその中でも上位のひとつ。
既刊を持っている人も、まだの方も、ぜひ読んでいただきたい完全版、です。
番になり結婚もして幸せな毎日を送る鳴と正嗣。
仕事に行く前にキスマークをねだる正嗣がすっごくかわいいです。
結婚後の正嗣は雰囲気がとても柔らかく、きれいになりました。
仕事に真剣なのは相変わらずですが、プライベートとのギャップ、職場でもかまわず、ずっと鳴にくっついているところは、気高く孤高だった野生のトラが、きれいでかわいくて飼い主べったりの洋猫になったように見えました。
普通じゃない、と周りの目を気にして距離をとろうとした正嗣に、さっとフォローの言葉を、しかも本心からの自分の希望に乗せてかけた鳴は、さすがアルファ、という感じがしました。
滅多に見かけないことからツチノコ呼ばわりされている正嗣ですが、鳴と正嗣が一緒にいるところは、幸せのオーラーがびしばし出まくりで運気があがりそうと思いました。
ツチノコの次は、2人セットのときはパワースポットと噂されていそう、などと妄想してしまう幸せぶりです。
好きだから、愛しているから、と番になって結婚したけれど、仕事で結婚観について質問されたり、子どもを産むこととこれからの仕事のことと考えてみたり、正嗣が変化している様子に胸が熱くなります。
ちょっと不安になったり心配になったりする正嗣を全力で支えて大事にしている鳴もとても素敵で、正嗣の発情期を迎えるためそれぞれスケジュールを調整していく2人の姿勢と気持ちが、とても美しく感じました。
正嗣の元運命の番の息子、ひねくれもののお坊ちゃん、籠目が登場し、悪だくみ、ひっかきまわそうとしますが、2人の絆は、さらに固くなり、困難を乗り越えます。
子どもが生まれて3人家族になってからの続編が読みたくなる素敵なハッピーエンドでした。
オマケのひねくれ坊ちゃんの籠目と羽鳥が、社長と秘書になるエピソードも楽しいです。
この2人が、ベタベタの恋愛じゃないけど、理解者でありパートナーである番になるスピンオフもよさそうだなと思いました。
原作既読。
ジャケットのイラストは、原作は正嗣だけでしたが、ドラマCDは鳴と正嗣の2人です。
作品の雰囲気にはこちらのほうがあっているようで好きです。
山中真尋さん演じる正嗣は、最初はわがままな血統書つきの高い洋猫という感じ、気高くて気まぐれで、認めた人には近しいけど、アルファ嫌いで付き人のアルファ鳴につんつん冷たいです。
信頼と関係、情が深まるにつれ、話し方はつっけんどんだったり、冷たい言葉遣いだったりするのだけど、徐々に甘さがにじみ出てくるようになってくるのがすごいです。
寺島惇太さん演じる鳴は、最初のうちは既存のイメージにあるアルファらしさは全くないように聞こえました。ただひたすらに優しくて真面目で一生懸命です。しかし、正嗣のヒートに遭遇してしまったときの対応、それからの言動に徐々にアルファ味を感じるようになります。オラオラ味は全くなくて、オメガを守ろうとするアルファ味と、正嗣を愛おしく想い大事にしたいと想う保護欲のようなものを感じて、素敵だと思いました。
そんな鳴の発した最強かつ最高の言葉
「俺を選んでくれたら俺があなたの運命です」
胸が熱くなり、目頭も熱くなりました。
すごく素敵な求愛でした。
メインの2人には萌えたり感動したりしつつ、脇キャラの癖の強さにはけっこう笑いました。嫌がらせ犯、カメラマン、デザイナー、モデル、マネージャー、話し方にかなり強力な癖があるキャラクターが多くて、おもしろいです。
原作未読でも楽しめると思いますが、原作→ドラマCD→原作、という味わい方がお勧めです。
ドラマCD取後の再読レビュー。
原作→ドラマCD→原作、の順番でより味わい深くなりました。
表紙はふんわり優し気な雰囲気ですが、この人気モデル、オメガの音無正嗣は、プライド高く、ポリシーしっかり、アルファ嫌いで、アルファへの当たりがきついクールビューティです。
音無正嗣の周りはアルファは皆無、オメガとベータで揃えられているのに、そんな中に1人、期間限定とはいえ付き人をすることになったのがアルファの轟木鳴。
いわゆるアルファらしい、尊大さや圧の強い感じは一切ありません。真面目で優しくて、芯が強く、無視されても冷たくされても、与えられた仕事、音無正嗣の付き人を懸命にこなしています。
芸能人とそのスタッフ、というBLものはけっこうありますが、今作は性別も関係性も一風変わっています。唯一無二の世界観、という感じ。
壮絶な過去を持つオメガ、人気モデルの音無正嗣も唯一無二。
そんな音無正嗣にただ1人だけ認められたアルファ、全身全霊で尽くす付き人の轟木鳴も唯一無二。
お互いの信頼感が増して心が寄り添えられてきたかのように思えていたのに、性別故の抑制剤の飲み過ぎて倒れてしまったアルファの轟木鳴は、音無正嗣は付き人をクビになってしまいます。
距離ができて寂しく感じる2人、性別も性格も得意なこともまったく違う2人、それぞれの凸と凹がぴったり合った2人と感じました。
轟木鳴からたくさん素敵な言葉が出てきますが、最も感動したのは
「俺を選んでくれたら俺があなたの運命です」
胸が熱くなるすごいプロポーズ、そして素敵なハッピーエンドでした。
くち嘘の思い出がいっぱい詰まった素晴らしい一冊。
いろいろな書店で買いそろえないと手に入らなかったおまけペーパーなど、ありがたい限りです。
和智と槇尾の関係性の違いが楽しめます。
情はあるけど、打算もあった時期や、恋人同士よりセフレ寄りに近かった時期、槇尾のいろいろな表情が楽しいです。
和智はずっと、槇尾大好きでたまらないのが、短編のエピソードひとつひとつから伝わってくるのに萌えます。
たまに和智が主導権を握ったかと思ったら、仕返し?で槇尾が1カ月以上も帰って来てくれなくなるとか、やってることはエロエロだし、ちょっとえげつないなってこともあるけれど、2人ともそれぞれ違う愛らしさがたまりません。
痴漢プレイに、昔話パロ、野球拳もどきプレイ、教師と生徒プレイ、浴衣プレイ、サキュバスプレイ、いろんな2人のエロいプレイが楽しめます。
それからちょっとほっこりする人の情に関する短編もいくつか。
槇尾の子ども時代のお話は読めてよかった!本編再読するときの楽しみが増しそうです。
くち嘘シリーズがついに終わってしまいました。
これまでいくつもの事件が起こりましたが、最後の事件は過去最悪、個人対個人ではなく組織や街を巻き込んで、これまで以上に命が危機にさらされました。
和智の槙尾への愛はじわじわと益々、深まり、さらに強くなっているのを感じましたが、槙尾の和智への想い、言動は少しづつ、10巻かけて変化していったその集大成、という感じの素敵できれいなハッピーエンドでした。
ラスト間近に大事件、これまでに出てきた存在感の強い脇キャラたちのオンパレードという感じで、昔のみんなが夢中になった月9のようにも感じました。
すごくドラマチックでした。
槙尾の決断と、和智との未来、きっとなんだかんだと一般人では遭うことのない事件やトラブルに遭遇したりもしつつ、2人で乗り越えていくのだろうなと感じさせる素敵なラストでもありました。
おとぎばなしの「そして2人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ、めでたし、めだたし」のようでもあり、温かい気持ちにもなりました。
本編以上にいろいろゆるふわな皐がかわいい短編です。
こーんなゆるふわ、ベタ甘な皐、秋葉に抱きつぶされちゃう、と思ったら、いじり倒されました。
単純明快な皐に対して、秋葉はだいぶ厄介な人だったんだと改めて思わされます。
皐のかわいがりかた、愛し方が、ちょっと意地悪でちょっと怖い。
顔を赤らめて意地悪いいながら皐を責め立てるところなど、ゲイビのサド攻め役なのかと思わされるほど。
どっちの言動も、それぞれ皐と秋葉じゃないとひかれちゃうようなものです。
だから、皐も秋葉も、それぞれこの相手じゃないとダメなんだなと再確認したある夜のエピソードでした。
本編でメインキャラを引っ掻き回すために登場した脇キャラ、ネコ専男優の茉莉が主人公のスピンオフです。
茉莉は本編では嫌なやつかと思ったら、ちょっと引っ掻き回しはしたけれど、悪意のある言動はなく、男優としてだけでなく、性格も猫科男子、という感じでかわいらしい憎めない人でした。
新人AV監督の植木は、茉莉の普段の言動、仕事に対する姿勢、そして恋に破れて悲しむところ、いろんな顔を見て密かに想いを募らせています。
勢いと慰めでの持つ身体の関係は寂しいけれど、そんな状況のようで、2人の間には気持ちが通じているように見えました。
植木が、仕事でずっと見てきた茉莉の言動、身体のあれこれを、ぽつぽつち語りながら、茉莉を愛していくところは、エロいシーンながら、気持ちがじんわりと伝わって来て、素敵でした。
茉莉は大河と、喧嘩友達、セフレからの恋人同士になるのかなと勝手に想像していたのですが、植木みたいな人があってるし、幸せにしてもらえると思いました。
ちょっと面倒くさくてかわいくて天邪鬼な茉莉メインがかわいいです。
1巻で無事に両想いになった2人。
人気AV男優の須藤秋葉は、皐が好きになって恋人になったからよかったものの、言動がなかなかひどい男です。
皐はちょっとおバカで健気で子犬のような大学生。ピンチのときだったとはいえ須藤のひどい提案を受け、ひどい目に遭わされ、騙されていたことを知ったのに、まんまと好きになってしまって、恋人になります。騙されやすくて心配になるかわいいおばかぶりだと思っていたら、2巻でも懐いてきた新人男優の大河に騙され、脅されて言うことをきき、しかも、その交換条件の結果がもっと悪くなるのに気づかない浅はかぶり。
これぞまな板の上の鯉、という状態のときに、王子様のごとく須藤が登場して救い出します。須郷も、皐も、単体だと、あれこれ問題が多い人柄、思考、性質だと思います。だからこそこの2人がぴったりあうのだと思います。
1巻同様、ストーリー展開に全てAVのありがち設定があり、ゲイビの内容が絡んで、予定調和すぎる流れ、が、かえって潔くておもしろいです。
百瀬あん先生の描くエロかわいい男性が存分に楽しめます。
脇キャラが増えたことだし、この雰囲気、流れで、3巻、4巻と続いて行ってほしい作品です。