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エキスパートレビューアー2020

女性おラウさん

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ポイント数307

今年度66位

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テンプレだけどおもしろいって実は深いよね

想像以上のことは起きません。
でも読後ちゃんと、おもしろかったなぁ、楽しかったなぁと思える作品です。

……よくよく考えたら、これってすごくないですか?

「想像以上のことが起こらない。だから、つまらない」と思った作品は過去に山程ありますが、

今回のように

新しくない
深くない
エロくない
まんまテンプレ

な内容なのに、
読んで良かった!もう一回読もう!
と思わせる作品って落ち着いて考えたらちょっと尋常じゃないです。

じゃあ何がどうおもしろかったのか?といきなり聞かれると、実は困る。
あとがきで先生ご本人がおっしゃっている通り、味付けも刺激も驚きも控えめな薄口小説なので、他の骨太小説みたいに
キャラが〜、展開が〜、職業描写が〜、と具体的なポイントを瞬時に挙げるのは難しい。

でも、おもしろい。
なのに、おもしろい。

それはつまり、この作品の「おもしろさ」が既存の評価尺度にありがちな、キャラの個性、意外性、新しい視点や切り口、伏線の巧妙さ、物語の深さ、エロといったポイントとはもう全く別の所に宿っているってことなんだと思います。

じゃあその月村流の「おもしろさ」とは何なのか?

ものすごく噛み砕くと「温かさと伝わりやすさ」なのかなと思います。

まず圧倒的に文章が読みやすい。
長すぎず、短すぎず、平易で親しみやすく毒のない言葉選び。

そしてわかりやす過ぎる起承転結。
盛り上がりポイントを後半の1点に集中させ、あれもこれもと欲張りません。
前半は全て後半へのフリに特化しています。
回想シーンもグダグダさせず、ハプニングエロもありません。
ノイズもブレも迷いもなく、古典的な一本道です。

しかも今回は月村先生にありがちな主人公不憫設定もありませんから、より一層シンプル度が増しています。

読み手への負荷がもう圧倒的に少ない。

そんなテンプレ通りの構成なのに機械的な印象にならないのは、作中に出てくる工芸、手芸、料理の描写から月村先生の「それが好きでたまらない!」といった人間味が溢れてくるから。
付け焼き刃の知識や、ストーリーを進めるだけの押し付けの説明だとこうはなりません。

しかも、テンプレはテンプレでもちょっとだけ構造にひねりがあり、
作中、攻の航輝は日名子、受の春音は悠一というそれぞれの専門学校の同級生と付き合っていると誤解し合ったり、
心のこもったプレゼントをお互いに試作品と偽り合っていたりと
同じ時間軸で攻と受の状況が対になっているんです。
そういう発見自体も読んでいて楽しいし、本文の受視点だけじゃなく、同軸の攻視点を想像する余地も生まれるから2週目も地味に面白い。

つまり、深さは無くても奥行きはちゃんとある作品なんですよ。

こういう所が並のテンプレ作との違いなのかな。

ここまでシンプルなストーリーを現代の商業作として成立させる数々の技は、フリーハンドで直線を描き続けるようなある種の特殊技術のような気がします。
見た目は地味で簡単そうだけど、その味わいは機械にも他の人にも出せない。

誰かが真似して簡単に出来るものでは無いだろうし、このテンプレストーリー1本勝負の土俵で月村先生に勝てる人は中々いないんじゃないでしょうか?

だから巷には新しさ、派手さ、意外性、真に迫る読みごたえをプッシュした作品が溢れているんだろうし。

それらはもちろん面白いけれど、
月村先生のシンプルな作品を読む度に、「おもしろさ」の定義を再認識させられハッとします。

BL小説における古典芸術と究極のお手軽感を両立させた稀有な1冊。
ライト層にもヘビー層にもおすすめな良作です。

対比で楽しむほんわかキュート風俗モノ

これ、雑誌連載の頃からいいなーと思っていた作品なのですが、コミックスで改めてまとめ読みしたらさらに面白かったのでご報告を。

昼は地味な会社員、夜は風俗キャスト「リク」として働く小峰。
ある日勤め先の風俗店に会社の後輩御子柴くんが偶然来店した。
風俗の仕事を通して人を甘やかし、癒すのが実は大好きな小峰。
正体がバレないように気を付けながらも心を込めて接客していたら、「リク」のリピーターになってくれただけでなく、本気の告白をされてしまった。
過去の色々な経験から恋人を作る気がないことを伝えても、健気に通い続けてくれる御子柴くんに困ったような、申し訳ないような、でもすっごく可愛いような……。
しかしある日、部署異動をきっかけに超多忙となり夜のお店で働く時間がなくなってしまった。
疲労のあまり取り繕うことを忘れていた小峰は、ぼんやりしているうちにキャストとしてではなく会社員の姿で御子柴くんと急接近してしまう。
別人と思い込んだまま「リク」と「小峰さん」への気持ちに揺れて苦しむ御子柴くん。
一方、「本当に触れて甘やかしたいのは御子柴くん一人だけ」と自覚した小峰は、御子柴くんにリクの正体も自分の想いも全て伝えようとある行動に乗り出して――。

流行の(?)誰も傷つけない、悪人が極力出てこない、ほっこり心地よい世界観です。
しいて言うなら会社の同僚のあかねちゃんこと茜ケ久保さんが小峰くんの弱みを握り、部署異動と残業を命じて小峰くんの自由が奪われるところがちょっとだけピリッときますかね。でも、描き方はすんごいマイルド。
リアクションや黒髪フェチ設定などキャラ自体に抜け感があるので、全然いじめやパワハラっぽい嫌な感じがしません。
むしろ後半にかけて小峰くんとのやり取りはめちゃめちゃ可愛い。

そしてキャラと言えば、ひたすら御子柴くんが良い子すぎて、ワンコすぎて、天使すぎます。
こんなに綺麗で可愛くて真っ直ぐな子を翻弄するなんてけしからん!と一瞬思うのだけど、リクくんもリクくんでのびのび楽しく夜のお仕事をしていて、その姿にキュンキュンしちゃって。
もうどっちも可愛いし、どっちも良い子なんだから早く幸せになってくれ!という感じ。
こんな二人が主役ですから風俗店が舞台といっても湿っぽいヤラシさは一切ありません。
終始照れ交じりのすべすべシルキーなエロスです。BL初心者でも多分OK。

しかもただ可愛いだけの雰囲気マンガじゃないんです。

同じ二人を、「会社の先輩と後輩」「客と従業員」「告白される人とする人」「恋人同士」などのいくつかの枠組を用いて対比させたり、その違いに悩ませたりする構成がね、人間観察の意味でもすっごく読みごたえがあって楽しい。
ゆらゆら揺れる心理的距離感も、変化していく時間の間隔も丁度良く、このあたりは本当に古川先生マンガがお上手としか言いようがない。
この綺麗なグラデーションは単話ではなくまとめ読みだと一層引き立ちますので、なるべくなら1冊一気読みがおススメ。

テンポよし。キャラよし。中身あり。ネガティブなし。ハピエン。エロはあっさり。
ワンランク上のキュート系BLが読みたい日、とにかく癒されたい日にぴったりな楽しい1冊。
迷ったら買って損なしです。

元気をもらえる少年ギャグ漫画風ガチムチハイテンションBL

男臭い主人公、ちょっと汚い言葉遣い、出し惜しみのないギャグ、そして魅惑のガチムチボディ。
キラキラ少女漫画系やオシャレ大人漫画系ではなく、往年の少年ギャグ漫画テイスト。
サキラ先生カラーがぎゅっと詰まった元気の出る1冊です。

はっきり言ってメインストーリーは浅め。
細かなビジュアル(ひげ、ピアス)や設定(便利屋、夢はクレーン車のオーナーなど)を除けばスタンダードな幼馴染不器用すれ違い両片想いストーリーすぎるし、話の繋げ方も丁寧とは言い難い。

……が!申し訳ありませんが、今作ではその点はどうでも良い。
この作品の魅力は一点集中、圧倒的テンポ感です。

ハイテンションギャグ、迫力エロ、ほんのりシリアスを組み合わせた独特のリズム感がすごい。
「ストーリーが気になって」じゃなく、シンプルに「読んでいてただ楽しいから」という理由で次々にコマを追ってしまいます。
その秘密は豊富で緻密なフォント変化や擬音、デフォルメ絵の数々。
小説では表現しきれない、マンガならではの仕掛けが実はたっくさん。
クスクス笑いが止まりません。

特にしんみり情緒が漂いかけた次の瞬間差し込まれるギャグ速攻のセンスが絶妙。
ラブハンドル然り。
脱いだら日焼け跡然り。
あらゆるフリをテンポよく笑いで回収してくれるので、ガチムチでエロエロなのに、胸やけしません。さくっと2週目も楽しめます。

ダンディ?と言うには自由奔放ハイテンションすぎる愉快な1冊。
カッコ悪くてもダサくても、なんだかんだ毎日楽しそうなキャラ達にいつの間にか元気をもらえます。

サクッとギャグエロを補給したい少年漫画好き腐女子さんに是非おススメです。

この肉体美エロは癖になりそう

恋人同士となった潤太と新を描いたシリーズ下巻。
テーマパークに夏祭りデートと、相変わらず甘々なお二人。
ラブラブにつき、潤太の艶感もましましで、エロさも大増量されております。
今回も潤太くんには何らかの悩みがあるみたいですが……さあ新くんに無事におねだりできるかなぁ?とニヤニヤしちゃう展開です。

今巻で登場するバイト先の先輩ユージさんや舎弟くんたちも良いキャラで、潤太くんの人の良さが引き立ちほのぼの。

しかしメインは終盤に登場する新くんの見せ場ですね。
上巻で深く語られてこなかった新くんのキャラ設定の秘密がようやく明らかに。
いろいろあったけど、男気溢れる「潤太を思いっきり甘やかす宣言」も聞けて満足。
今回も美麗なエチシーンを楽しませて頂きました。

この体格カップルに慣れちゃうと他だと物足りなくなりそう~
絵はリアル寄せだけど、中身はポップ感あり、ラブラブでエロエロなんだけど、精神性も大切にしていて。
うーん、とっても好きな作風。
ゆいつ先生の作品をもっと読みたくなりました。

EX〇LE系男子が甘えただったら??

テーマは「コワモテだけど甘えたがり」というギャップ萌え一本勝負です。

潤太はバイクの似合う強面かつ面倒見の良い長男。こんな見た目だけれど本当はずっと誰かに甘えてみたかった。隠れた憧れを叶えるために勇気を出してオーダーしたのはレンタルお兄さんサービス。そこで出会った青年、新は潤太を怖がることなく、頭を撫でてくれたり、大きな体を抱きしめてくれたり、時には昂った身体の世話までしてくれる。こんな自分を散々に甘やかしてくれる新にどんどん惹かれていく潤太。しかし新からレンタルお兄さんのバイトを辞めると伝えられ動揺してしまい――?

ガタイの良い男の子2人がメインなのに、甘々ポップな作風というありそうでなかった期待作。
登場シーンもバイクに乗っていてめちゃめちゃ恰好良くて、首が太くて、肩幅が広くて、筋肉質で精悍な顔つきでケンカも強いのに……なのに、あんなにウブで健気で無防備な姿見せるとかさぁ――

端的に萌えるよ。そりゃあ。
ギャップの効果は偉大です。
頬なんかすぐ赤面させちゃって天然にあざといなーとも思うけど、でも圧倒的に萌えます。
さらには雨に濡れるシーンも全然違いますね。
華奢でナヨっとした人よりも普段強めの人が雨に打ちひしがれている姿の方がぐっと来ませんか?しかも?え?料理男子?
なんかもう、そういう仕掛けのオンパレードです。
好きな人にはたまらない系統ですね。

エッチシーンは、重量感ある二人ですから、そこだけを切り取るとくどくなりがちな画風・質感と言えなくもない。その辺はひょっとしたら好み別れるかも。しかし、それまでのキャラ設定や展開がポップに来ている分、トータルではすごく好バランスだと思います。

ま、基本はエロいです。
肌色率や体位もさることながら、潤太くんの喘ぐ表情がとにもかくにもエロい。
口の開き方とか本当なんなの??ってくらい色気がすんごい。
是非周囲に誰もいないことを確認した上でまじまじと見て頂きたいですね。

攻の新くんはですね、この巻では普通に良い子です。
癖なくシンプルに読者と共に潤太の可愛さを愛でる役目って感じですね。
でも、下巻を読んでもう一度上巻を読むと「ほほう~」となり、ちょっとだけ新くんの見方が変わる……かも?

上巻自体は「出会い~恋人になるまで」と大変区切りが良いので、お試しで上巻だけ買ってみるのもアリだと思います。

そつがない。しかしアクもない。

タイトルに寸分の狂いもありません。
幼馴染がカップルになるまでの超~モダモダを描いたお話。

① 蒼衣(攻)は諒太(受)に長年片想いをしている。
② 幼馴染で同じ大学に通う二人はひょんなことからルームシェアをすることに。しかし同居人となった諒太の無防備な姿に気持ちを抑えられず、ある夜、蒼衣はとうとう想いを告白してしまう。
③ 蒼衣の気持ちに全く気付いていなかった諒太は突然の出来事に気持ちの整理が付かず動揺しまくり、悩みまくり。そんな中、隣人男性カップルとの交流や蒼衣とのデートを通し、蒼衣に対する自分の気持ちを一つずつ再確認していく諒太。
④ 果たして諒太が出した告白の答えとは――?

よく見る幼馴染テンプレではありますが、こちらは①②の告白までに時間をかけるタイプではなく、③の告白後のモダモダ部分をメインに持ってきている作品でした。
1話目で告白まで済んじゃうので、ちょっと駆け足かなーとも思いましたが、この辺は好みによるのでしょう。
受の諒太くんのモダモダっぷりを引き出していくには、さっさと告白してもらわないと話が進みませんからね。

ただ、そのパートをメインにしたとしても、諒太くんの出す答えはわかりきっていますし、諒太くんの葛藤内容も、どれだけ彼にとっては衝撃的で初めてのことでも、残念ながらこちらはもう何度も読んできた展開ですから、全く新鮮味はありません。
舞台も現代の普通の大学で特殊設定なし。
はっきり言って、ストーリー自体はめちゃめちゃ薄い。
この点は今作の圧倒的な弱みでしょう。

だとしても、さすが百瀬先生。
ストーリーが薄かろうが、テンプレ展開だろうが、読ませちゃうマンガ技量が半端ない。
テンポがひたすら良い。
最後までテンションを落とさずに駆け抜けます。
セリフや独白の文字量や配置も自然でめちゃめちゃ読みやすいし、心情をデコレーションするトーン背景や書き込みのバリエーションも豊富。
表情も豊かで、キメゴマもばっちり。
メインもよき隣人カップルもそつのない愛されキャラの仕上がり。
エッチシーンは爽やかさとエロさと初々しさの超バランス設計。

ああ、これはぁ……売れてる同人誌でよく見るタイプかなぁ。
いわゆる正統派現代801というか。
ストーリーうんぬんではなく、キャラありきのキラキラ・モダモダというか。

商業だからもう一歩オリジナリティを楽しみたいというわがままな思いもありつつ、
まあテンプレだと百も承知で手に取っているのでそこは評価対象外かなとも思いつつ……。

いや、これだけで十分楽しめる作品には違いありません。これは本当。

でも、もうワンアクセント、百瀬先生らしいエッジを効かせたアクを盛り込んで欲しかったっていうのが、やっぱり本音ですかね。

攻エドワード万能説

「この仕事が終わったら東京に行かせてほしい」
その言葉以来、彼は自分を抱くことをやめた。
望んでいたはずのエドの巣立ちに心揺れる亮二。
さらにかつての思い人中原から「一緒に来ないか」と誘われ――?

綺麗な正統派ストーリー曲線を描き、ちゃんとドキドキ、ちゃんとハピエンの下巻です。

ターニングポイントや見せ場がキチっとしていて、話のメリハリが効いているのが特徴的。
ベースとしては問題が起きて、葛藤して、解決してという感じでサクサク進みます。

電気開発事業の大岩問題は、エドの気回し力で上手く事が運び、
亮二が長年抱えていた中原への執着は、エドへの想いに気づけたことで成仏し、
東京巣立ち問題は、亮二閉じ込め事件で二人が命の危機に瀕したことで互いに離れてはいけない存在であると確認できました。

とにかくエドのスパダリぶりをこれでもかと見せつけられましたね。
特に閉じ込められた亮二を助けに満を持して登場するシーンはヒーローショーさながら。
そんな簡単に解決……?したっていいの!BLだもの!と突き抜けるファンタジー感も一種の見どころです。

上巻に比べるとイベントが多く、情緒にかける時間は少なめ。
ですが、上巻で盛り上げた気持ちを今巻でしっかり回収してくれるので、物足りなさ、忙しなさは感じずちょうどよいテンポだったと思います。
上下巻同時発売なのも空気を壊さずに読めるので◎。

想定外だったのは中原さんの黒幕具合と彼の結末……。
いざこざでそこまでしちゃうかぁ~~急にサイコ?と若干雰囲気の違和感はありましたが、メインではないのでそこまで差支えはないでしょう。

ラスト、二人が単なる主従関係から正真正銘公私に渡るパートナーとなるところまでを見届けて幸せな気持ちで読了。
全体を通して上品かつ、素直で癖の少ないBLでした。
地味に浴衣や三つ揃えスーツ、丸眼鏡と小道具も効いていてビジュアル的にも楽しい一冊。
ストーリーにリンクし、読者の心にもふわっと明かりを灯すような、万人におススメできる作品です。

五感の演出が絶品

出来心で拾った男がスパダリに成長し自分を口説いてきた。でもそれは雛鳥の執着だろう?――な上巻。

明治末期、電気技師の亮二は電気開発のために訪れた町で、その日暮らしの肉体労働をする身汚い男に出会う。
言葉をろくに理解せず、皆から知恵遅れと呼ばれるその男のことをなぜか放っておけず、宿場に連れ帰った亮二。
よくよく観察してみると彼の正体は知恵遅れではなく、視力が悪いために動きが鈍くなり、母国語が異なるために話を理解できなかっただけの若き異国人エドワードだった。
その後、亮二の教育を受け成長したエドワードは亮二の寝食の世話から仕事の手伝いまであらゆることを難なくこなす優秀な従者になっていた。
しかしどれほど亮二の役に立てども、亮二の心にはある男が住み着いているようで……。
関係を近づけたいエドワードはある日とうとう亮二を組み敷いてしまい――?

ラブストーリーの構成自体は、主従の壁を超えていけ!な王道展開なのですが、いかんせん
演出がとても良い。
特に五感を生かした設定とストーリー運びがとってもお上手でびっくりしました。
とりわけ「視覚」は完全に話のキーポイントになっていますね。
エドワードの低視力問題、亮二の暗闇問題。
はっきり見えたり、ぼんやりしか見えなかったり、暗くなったり、明るくなったり。
その度に心理的にも物理的にも近づいたり離れたり。
エッチシーンもよくよく見ると、さりげなく眼鏡が脇に置かれていたり、ふっとランプが消たりと芸が細かい。
おかげで二人の間では音、匂い、味、肌触りと視覚以外の全ての感覚が研ぎ澄まされている様子がしっかりと伝わってきます。
この演出がね、非常に艶っぽくて素敵なんですよ。
コテコテドエロでもなく、あっさり印象薄にもならず、作品の雰囲気にとても良く合っています。

他にも中盤、亮二がかつての思い人中原さんにお口を弄られるシーンも、ネクタイひとつ緩めずにこんな艶めかしさ出せるんだ!!ってなくらいドキドキなワンシーンでお見事でした。

なおかつヒューマンストーリーとしての読み心地も良好。
明治の電気開発事業を軸に、主人公たちの洞察力、処世術、向上心、熱意、葛藤などが自然に盛り込まれ、純粋に上品でカッコいい。
しかし説明過多になりすぎることもなく、本筋のラブの邪魔になることもなく、ファンタジー感、ご都合主義感も多少ありで、結果としてBLとして最適なバランスに仕上がっています。

望むまま与えよう。
雛への褒美として。
いつか巣立つ日まで。

エドワードの熱い思いを受け入れながらも、どこか俯瞰している亮二。

二人の関係の行きつく先は?
そして無事電気は開通するのか?

で終わる上巻です。
大丈夫。上下同時発売です。
首を長くして待つ必要はありません。

長年のオメガバースのモヤモヤが解消されました。

まってまって。
西野先生の新刊~~といつもの調子でエロモードで読み始めたら、エロ以上にめちゃめちゃストーリーが面白い。

組長の養子として育ちながら、とある事件を起こし、その落とし前として組の取引用娼婦になったオメガの鼓巳。特殊なフェロモン体質で接待客を次々と虜にしながらも、彼の想い人は、義兄で次期組長の清武ただ一人だった。清武は鼓巳の初めての男になってくれただけでなく、接待後の自分を毎度激しく抱き、「いつかこんな仕事から足を洗わせてやる、番になろう」と独占欲まで見せてくれる。しかし組への負い目や清武の立場を考えればそんな未来はあり得ないとわかっている。清武の縁談話を機に、とうとう彼の側を離れる決意をした鼓巳は清武にわざとひどい言葉をぶつけて家を飛び出したが――。

キーワードだけを抽出すると、「ヤクザ」「義兄弟」「娼婦」「オメガバース」というよく見かける言葉なんだけど、それを上手く組み合わせたストーリーは不思議と凡庸じゃない。
かと言って、変に肩肘を張っているわけでもない。
BLあるあるなお約束展開もたっぷり。
なにこの丁度よい塩梅。

様式美は楽しみたいけど、ただの二番煎じなら読みたくない。
中身のある文章が読みたいけど、あくまでエンタメだから疲れちゃうのは勘弁してほしい。
エロはとことん潔く。
わがままBL読者の願いを全て叶えたような丁度良いチューニング。

もちろん、もっと伏線バリバリ重厚ストーリーで語彙も描写も感動量も桁違いの作品がこの世にたっくさんあるのは知っています。
でもそういうのって、ちょっと疲れちゃうんですよね。
何回でも気軽に読めて、その度に好き!面白い!BL最高!ってピュアに思えるのはこっちの作風なんだよなぁ。

特に好印象だった点が、攻がアルファなのに特異体質のため、オメガのフェロモンに影響されないという設定。

オメガバースといえば「突然のヒートに巻き込まれた受と攻が、本能に抗えず激しいセックスをせざるを得ない状況に陥り……」というのがド定番。
でも、正直このテンプレがちょっと苦手だったんですよね。
だってセックスの理由も目的もその後の恋愛展開も、全部「ヒート」任せだから。
もちろん誰が見てもわかりやすいし、諸々スピーディーかつ自然に盛り上がれて便利な設定だとは思うけど、

……でも、でも、なんか薄っぺらくない?
手軽にお腹は膨らむけど、味は均一でインスタント食品みたいじゃない?

「ヒート」がなかったらセックスに至るまでに、もうちょっと情緒とか葛藤とか距離を詰める過程とかあるはずだよね??そこは書いてくれないの??

と長年抱いていたモヤモヤをブチ壊してくれたのが、この「アルファなのにフェロモン効かない設定」です。
これ、本当に良かった。
攻の発情は全て、「バースシステムではなく、シンプルに受のことが大好きだから」という揺るがぬ証拠になり、より一層清武の溺愛ぶりが引き立つ結果に。

一方で受のフェロモン過多+ヒート設定は、受がウリをするに至った理由、そして後半に敵対する組と戦う武器としてのみ機能しています。
つまり、恋愛情緒をあまり必要としない外野ストーリーはバース設定でショートカットし(読者の負担減)、メインの恋愛パートはバース性に寄りかからず、二人の心の変化を丁寧に描いてくれているんです(読者の満足度増)。

ありがたや!
こういうのが読みたかった!

ちなみに恋愛パートは「自分なんかじゃ相手を幸せにできない、身を引かなきゃ」という古典パターンもあれば、結婚式の白無垢姿で「結婚してもあなたのお友達と3Pしてもいいよ」という大胆発言もあり、なかなか良い緩急のつけ具合でした。
濡れ場の激しさは西野先生の作品の中で言うと、下の上~中の下くらいかな。
もちろん他作家さんに比べれば盛り盛りには違いないですが。
モブレ、3P、お医者さんプレイもあるけど、精神的には1on1なので変態アヘアヘ系ではなく、しっとり切ない系です。

その他恋愛パート以外のショートカット具合はバース以外にもとことん潔くて、
・ドンパチするけど身内は死なない
・特に攻様は銃撃されても動けるし、わりとすぐ治る
・指詰めあるけど、案外元に戻る
・親父、わりと性格丸くなれる
とツッコミどころ満載!
でもハピエンに越したことありませんからね、そこは優しく見守り楽しみましょう。

薄すぎず、重すぎず、まあまあエロくて面白い溺愛ヤクザモノ。
笠井あゆみ先生の美麗イラストと合わされば、まず読んで損はないと思います。

今までになく切ない帯でした

追悼・花川戸菖蒲先生という文字と
「……幸せな夢を見た」という薄墨色の本文抜粋のセリフ。

先生の死を悼む現実と、甘いBLの世界で呟かれる夢という言葉の組み合わせは、対極なのにしっかりと調和していて、目にした瞬間にいつもの書店の空気がきゅっと厳かに感じられました。

裏帯にはこれまでのシャレード文庫での作品名がびっしり記載されていて、ますます想いを馳せざるを得ません。

今回に限ってはジャンルや設定、あらすじの好みからではなく、花川戸先生の最後の作品という理由から読ませてもらいました。

内容はタイトルからわかる通りのオメガバースもの+裏権力系プチサスペンス。

攻の直紀と受の薫は名門私立幼稚園からの同級生で幼馴染同士。
いつも一緒にいた二人だが、直紀は自らの希望で中等部へのエスカレーター進学をせず、薫とは別の全寮制中高一貫校「慧総学院」に入学した。
一方、薫は中学に上がると同時にオメガであることが発覚し、不運なヒート事件をきっかけに学校での居場所をなくしていた。
心配した直紀の声かけで薫は高校から慧総学院に編入することに。
密かに想いを寄せていた直紀との全寮制の学園生活に期待と不安が入り混じる薫。
3年ぶりに一緒に過ごす直紀は、片時も薫の元を離れようとせず過保護な一面を見せる一方、影では学院の帝王として生徒や学校を意のままのしている素振りがあった。
直紀の様子に違和感を持ちながら過ごしていた薫にある日ヒートが襲い掛かる。
やむを得ず直紀と一緒に避難した個室で、理性を失った薫は必死で耐えている直紀を誘惑してしまい……?

ラブストーリに関しては既存のオメガバース作品に近く、ヒートを鍵として関係性の展開が訪れるいつもの仕様ですので、一般的なオメガバース知識さえあればスラスラ読み進められると思います。

一方、もう一つの本筋でもある「直紀が学院の王である」という謎。
本来中高一貫校のただの4年生である直紀が、最高学年の6年生や学校長にまでも意見を通す権力を持っている違和感。
背景にチラつく「俺はお前らの将来を潰すことができる」という脅しのメッセージ。

こちらに関しては花川戸先生らしい力強く個性的な設定と展開で中々読み応えがありました。
医者、弁護士、ヤクザ、政治家、社長、芸能人と様々なBLジョブがある中、将来の職業:黒幕って多分初めて読んだな……。
その重い職業選択を中学時代から背負う闇の深さと、でもそれは結局薫のためというBL的一貫性が良かったですね。
しかし、どうでも良い他人には堂々と権力を利用して付き合えるのに、格好つけたいばかりに大好きな薫には裏事情の説明も、好きだという告白もきちんとできていなかったため2回目のヒートでは薫に拒絶されてしまった直紀くん。
強めの攻様が狼狽える姿は王道に盛り上がり、ツボでした。

そうして最後に全てを伝え合って、結ばれて。
朗らかな日常を過ごして――
しかし作品はラストシーン不在のまま終了します。

先生に代わって編集部が作成したあとがきに、その理由が記されています。
素敵な物語の世界から、これが遺稿だったという現実に戻されてもう一度切なくなりました。

全てを含め、胸がいっぱいになる1冊かもしれません。

最後までBLを書き続けてくれた花川戸先生、書籍化してくれた出版社様・関係者様、本当にありがとうございました。