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女性おラウさん

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別れ話はBLにもってこい

一回別れるストーリーが大好物です。
初読み作家さんでしたが、あらすじだけで購入決定。

結果、存分に満足!
出会いからラブラブ期までを描くのとはまた違う、別れ話ならではの独特の熱の上がり下がり感、切なさがたまりません。

一般的に、物語をエンタメに仕立てるには主人公らが乗り越えるべき「困難」が必要となるのものですよね。
標準的な出会い~両想いまでを描くBLストーリーだとその困難は「仕事のトラブル」「両親など周囲の人が認めてくれない」「悪役もしくは当て馬が登場する」など。
ファンタジーならそれこそ「世界が滅びそう」とか「不治の病にかかって」とか。
それがですね、別れ話BLはですねこの「困難」にあたるものがですね、「別れる」というイベント一つで済むんです。もう超絶シンプル。

ごちゃごちゃした仕事のトラブルとか、ちょっと胸糞悪い悪役とか、辛気臭い病気とかお金の話とかね、ちょっと読むのめんどいなって思う時ありませんか?そういうのがですね、なくても成立するんです。それが別れ話BLの素晴らしさ。
余計なものはいらない。描くのは純粋に二人の関係性のみ。

だからこそ、要約しちゃえば、ただの「カップルの痴話ゲンカ」なんですけどね。
4年くらい付き合った美容師と小説家が、すれ違ってきて、美容師の尽くんから別れを切り出したんだけど、桐生くんは別れたつもりはないようで……?みたいな話。

でも、「もう別れる」って言うまでに重ねた二人のアレコレ、言った瞬間の頭の中、言ってからじわじわ募るモヤモヤ……
別れた後からお互い相手のことを四六時中思い出して頭がいっぱいになる感じ。
片想いのときとはまた違うぐるぐる感。
明快な解決方法として別れを選んだはずの尽くんが、余計割り切れなくなり右往左往している姿、相手がまだ自分に気がある様子を拒んでいない感じ
どれもこれも人間らしくて可愛い。
別れる前提でのラストデートなんて、逆に最高の思い出にしようみたいなエッジが効いていてロマンティック。
価値観を認め合う、二人の絆を深めあうっていう流れもカッコイイ。

ただし、最重要事項をお忘れなく。
これがBLであり、絶対的にメインで描かれている二人は最後にハピエンラブラブになるという大前提の上に成り立っているということ。
これらがあるから安心して二人を眺められるし、キュンキュンできるのです。

この種の話で万が一、ハピエンにならず結局グダグダ別れていたらマジで時間の無駄と感じちゃうかも。

そういう意味で、本当BLと別れ話ってすっごく相性が良いと思うんですけどね。
絶対くっつくとわかっている二人を出会わせるのも良いけど、絶対ヨリが戻るとわかっている二人を別れさせるのも最高ですよ。

脚色は最低限。二人の人間模様だけでぐるぐるキュンキュンさせる王道の別れ話BL。
この手の作品もファンももっと増えないかなー。

半音ズレた独特なコミュニケーション

両片想いセフレすれ違い設定のオフィスラブコメ。
さぞかし焦れ焦れのキュンキュンかと思いきや……何かコレ絶妙に違う!!
確かにクスっと笑えてエロくて引き込まれるんだけど、滑らかさに欠けた独特の読み心地……。

多分この作品、設定(セフレだけど両片想い、お互い本当は付き合いたいと思っている)とゴール(お互いの気持ちを確認し合ってやっと恋人になれる)は超王道なのに対して、それに向かうストーリーの刻み方(すれ違い方、距離の縮め方)が結構こぶしの効いたマイナー調なんですよ。

多くの作品では「あっ、確かにそんな理由があったら、そんな思いを抱えていたらすれ違うよね」と読者にもわかりやすい素直なロジックで胸キュン演出を盛り上げてくるのですが、

この作品の場合はタイトルに「口下手」とあるように、すれ違い理由は「言葉の表現方法とタイミングが悪いから」に終始します。
このこだわりの演出がね、良くも悪くもすごい独特のリズムと読感を生んでいて。
グッと納得させられる口下手具合もあれば、いやそれはさすがに……という斜め上というか、非常識で不自然というか、強引で無理やりだなと思うような対話もチラホラあり……。

歌で言うとまさにオンチって感じですかね。
しょっちゅう半音ズレてるし、微妙にリズムや節が違うけど、なんとなく味はあるし、多分他の人には再現できないやつ。

なので読んでいて、ストレートに気持ちいい!頭使わない!スカッとする!っという印象はありません。
書き込みや情報量も多いし、ん?ん?ん?なんかバグった?今のセリフはこのキャラ的には冗談で言ったの?本気?わからん……と脳に負荷がかかる瞬間も多々ありました。
あらすじから王道をイメージしちゃうとなおさらね。

とはいえ、そんな読みにくさを含めても総合的に惹きつけられる作品であることは間違いないです。
やっぱり他と違うって大事。
それに名前が最後の最後に出て来るところはかなりオシャレ。

個性は残しつつ、あとほんの少しだけ、ピッチを整えて読み手側に寄り添ってくれたら爆発的に好きになっちゃいそうな作風でした。惜しい!

ぷんすか!系独占欲が楽しい一冊

初読み作家様でしたが、なにこれ好みど真ん中の作品すぎて衝撃。
コミカルでハッピーでベタにBLしてるのにちゃんと個性が際立っている!
即行で過去作をポチり、一通り拝読。
どれも結構好みでしたが、やっぱりコレが一段飛び抜けて面白いと思ったのでレビューを。

本作はタイプで言うと、ストーリーや展開で魅了する系ではなく、二人の関係性を愛でて萌え禿げる系ですね。
既に恋人としての信頼関係が築けている状態で起こるアレコレが時におバカで時に過激で時にキュンと来ちゃいます。
このタイプのお話って、通常だと第2巻から繰り広げられることが多いんですよ。
ストーリーや展開メインの第1巻で紆余曲折を経てくっついた二人、その続編として描かれるイチャイチャ編みたいな感じで。
続編には続編の良さもあるのですが、個人的には正直飽きたり、ダレて脱落することも結構あって……。

その点今作は出来上がっているカップルの関係性を最初からプッシュしてくれて、大変ありがたい。
始めからくっついている二人を観察するスタイルということは、順行のストーリー展開からではなく、二人の日常的なセリフ、プレイ、表情などから読者が能動的に属性やパワーバランス、くっつくまでの経緯を推測しながら読み進められるという余白的な面白さもあるんですよね。楽しい。

多分その推測の肝となるのが、二人のオフィス・オンモードでのド派手な喧嘩っぷりですかね。
甘々描写ももちろん良いのですが、この二人の喧嘩って「相手が自分のことを絶対に嫌いにならない」っていう前提の上で思いっきりぶつかっているのが透けているから本当ニヤニヤするし安心して楽しめる。これは良い対等感と茶番感。
しかも、結局なんやかんや仕事うまく行って喧嘩が無駄にならないところも読んでいて気持ち良い。緩急バッチリ。
関係性メインの作品なのでストーリー自体は激うすなのですが、その分、こんな感じでキャラ、シチュエーション、テンポ、視点切り替えの掛け合わせはめちゃめちゃイキイキしていて好バランスです。
これでストーリーを欲張ると多分胸焼けしたと思う。
良い意味で隙がある感じ。
ベタはとことんベタですしね(エレベーターでイチャイチャするし、付箋でラブメッセージ送るし、もちろん会社のデスクで最後まで致すし、社員旅行の温泉では酒入ってパニックになります。お約束すぎる)。

そして何より好みだったのは、この作品、独占欲ドバドバで喜怒哀楽もハッキリしているのに全然、陰の執着とか病み系に振れないところ。
独占欲はあるし愛情もズッシリなんだけど、嫉妬しても拗らせず、ぷんすか!の領域で終わっているんですよ。
このさじ加減に留めてくれるの、個人的にめちゃめちゃ心地よい。
ポップなのに人間力も感じられる読感で終始ハッピーでした。

あと巻末の書下ろしパートもとても良いですね。
ちょろっとだけ、二人がくっつくまでの経緯が描かれています。
でもそのメッセージ性が高くて、案外深みがあるというか。
え?そこからこうなってこの関係性なの?!というプチ感動がありました。
おかげで二週目も楽しい。

うん。ベタなオフィスラブシチュエーションが苦手じゃない人でコメディ好きな人には刺さりそうな一冊。ひょっとしたら2022年前期のイチオシかも。

エロは言わずもがな。フィクション感あるキャラ・ストーリーも技ありで満足

よくある量産型のエロコメかと思いきや、小技盛り盛りでかなり楽しめました!
読後の印象抜群でしたので久々にレビューを。

ベース要素は古典的BL満載なんですよ。
表紙はオシャレ横文字ではなく、いかにもエロBL自信ありますみたいなビビッド配色と表情。
タイトルは一行で内容を理解できる考察要素の全くない親切設計。
ストーリーもベタベタに惚れ薬だったり、ちょっと強引に始まるセックスとすぐにグズグズにとろける受だったり。
片想いの相手には他に好きな人がいて……、この恋は期間限定で……みたいな定番切ない要素もあって。
エロは真正面からドストレートなお医者さんごっこを取り入れる潔さ。
ああ!どこかで読んだことあるやつ~~!の連発なのです。

なのですが!
これが良いのです!

BLの基本の基本を押さえているからこそ読みやすく、ここぞというアクセントが丁度よい塩梅で溶け込み印象に残るんです。
で、その作品の肝に当たるアクセントがこれまた大小さまざまな角度から織り込まれていて、飽きさせない。

最もインパクトが大きいのは、受の真岡くんの「バブりたい」発言。
お綺麗なイラストの堅物天然美人キャラから突然発せられる「バブみ」というワードの意外性。こういう唐突なギャップ演出は、あまりに連発されると読み手として引いてしまうのですが、作品の世界観やキャラクター性を壊さないギリギリのラインでまとめておりお見事。

真岡くんが惚れ薬を自分で飲ませておいて、自分で解毒方法を探すという自己回収型のストーリーも好き。
「惚れ薬」と言えば「事故的に」な演出も多い中、人のせいにしないのが良いですね。一生懸命な真岡くんのキャラも引き立ちます。

一方の攻の牡丹さんも、一瞬テンプレイケメンかと思いきや、結構クセのあるキャラでして、読めば読むほど味がありました。
まず小芝居がね、楽しい。
媚薬が栄養ドリンクだってわかっていて、それを隠しながら好き放題やっちゃってる姿が良いですね。色事の経験値も真岡くんとは段違いで、もうグイグイ行っちゃって。
「薬が効いたフリしてキスくらいしてもいいよな」って。めちゃめちゃフィクション的な解釈でおもしろーい。
散々小芝居続けていて、バレたら逆ギレするのも予想外すぎました!
全然スパダリじゃなーい。
でも、こういう完璧すぎない器の小さいとこもある攻って実は人間味があって結構好き。

かと思えば「関わろうとしてくれたから迷惑をかけることができたんです」「あなたに出会えて変われた」みたいな心にジンと響くシーンなんかもあって。
でも押しつけがましいわけでもなくて。

全体を通して、王道と外し感が絶妙なグラデーションでみっちり重なっているので、サクサク読めて、エロエロで、頭も全然使わないのに読後は満足という良コスパ本。

こういう作品本当に好き。
奇をてらった感じじゃなくて。
文学性とか芸術性とかでもなくて。
エロコメと王道を押さえつつどこまで面白くできるかっていう商業感がめちゃめちゃ好き。

バリバリのフィクションBLを読みたいお疲れの夜におススメの1冊です。

受の内心の口の悪さと絵の綺麗さのギャップがたまらん

ひょんなことから猫と青年との同居生活を始めた裏表アリ営業マン早坂さんのお話。

ストーリーとエロ度で言ったらあっさりライトな作品なのですが、
もうね、早坂さんが可愛くて。
個人的に綺麗な顔で口の悪い受が大好きなんですよ。
早坂さんは外面はよくて、内心でクズ発言するタイプ。
営業スマイルでニコニコしながら心の中では
誰が行くか
くそつまんねぇ~
みたいな人生も他者も舐め腐っている態度なんですよ。
それが、猫とイケメン熊谷くんを拾ってしまったばっかりに、予定調和の毎日が崩れて、あたふたドキドキっていう超幸せ仕上げの誰も傷つかないBLです。
仕事バリバリだけど、家事は苦手で部屋ぐちゃぐちゃだったり、実は恋愛経験なくてピュアピュアだったりめちゃめちゃ可愛い。
悪態をつけばつくほど可愛い。
結局熊谷くんの精神年齢の方が上なので、彼の手の平でコロコロされちゃうんですけどね。
全編ほっこりで、最後までは致さず、絵も綺麗。
お部屋にあっても大丈夫、電子書籍不意に覗かれても大丈夫な安心属性な作品です。

春夏4度の甲子園出場した男子っていう細かすぎるバックグラウンドが好き

スピンオフ作品ではありますが、単体で問題なく楽しめます。

幼馴染・両片想い・再開・すれ違いの定番BL要素に
野球選手×スポーツメーカー社員というスポ根風・熱血爽快世界観の組み合わせ。

このバランス感覚がとても良い作品。

一歩間違えると、野球要素いらなくね?みたいな、有名人×平凡リーマンのBLに落ち着きかねない設定。それを、一輝の小中高プロまでの詳細なバックグラウンド、身体の使い方、スパイクやインソールのこだわり、プロテインドリンク補給、シーズン順位結果など細かな描写があるおかげで、野球歴ガッツリな男の子感をしっかり楽しめます。
少年漫画風の演出、三白眼で迫力あるキレ顔も好みですね。
かと言って、野球・スポーツに全フリしているわけでもなく、試合結果に命を懸けているわけでもなく、ラブの優先割合が高いのも、BL作品として文句なしの優秀さ。

この系統のBL、ありそうで実はあんまりない。
じっくり観察してもらうとわかるのですが、キャラの良さ、セリフ回し、筋肉や野球のデティールを表現する画力、寸止めHを始めとする小さなピークと飽きさせない構成、コミカルなテンポ感、雰囲気と臨場感あるエロシーンなどなど、とにかく細かなマンガ技術の上に成り立っている作品なんですね。
みんなが真似して量産できるパターンになり得ないんですよ。

それをサラッと実現させてしまう猫野先生のすごさ。
全く違和感なく物語に引き込まれます。
わりとお互い好き好きオーラが出ているのに、意外にすんなりまとまらない感じも良い。
初恋拗らせ同士による緊張と緩和が楽しい~。
ちょうど1冊に収まるボリューム感もベストだったかなと。

ちょっと個性的だったのは、ラスト。野球界の多様性を訴え、同性婚ハッピーエンド・良い話ダナアという句読点感が強かった所ですかね。
10年前までは~みたいな社会変革のメッセージ性が果たして必要だったのかなという疑問はややあり。
偏見とか社会制度を乗り越えて幸せになりましたっていうピークの持って行き方と、それまでの単細胞執着無茶振り契約のファンタジー感が微妙にずれてるかなー、唐突かなーとは思っちゃいましたね。
でもやっぱりマンガがお上手なので、違和感と言えるほどではなく、それはそれでって感じもしました。

総じると、やっぱり良作ですね。
タイトルもわかりやすいし、各種演出も奇を衒わず読者ファーストなのでたくさんの人が楽しめると思います。

スピン元作品の「マウンティングが止まらない同期のセフレ事情」はもう少しリーマン・コメディ要素強めですが、今作を読んで気になったら是非に。

「幸せ」の概念をマンガ化したらこうなった

「幸せ」ってまるごとマンガ化できるんですね!

「幸せ」って、言葉で定義したり説明するのは実は難しいじゃないですか。
でも、この作品を読んでると「あっ!今ここに確実に幸せというものが存在してる!!」ってめちゃめちゃ実感するんですよ。
もちろんこのページのこれが「幸せ」だよとか、この条件が揃ったからこの登場人物は「幸せ」なんだよとか、視覚化や論理化できるようなものでは無いんです。

でも、読んだらわかるんです。
「幸せ」ってこういうことかと。

言葉と理屈をとっくに超えちゃってるんですよ。
このアホエロというマンガが。
重い実先生が。
ちょっと普通じゃないんです。

正直、作品を読んで実感してもらうこと以外、この場で何を言うのも無粋なのかもしれません。
きっとどれだけ言葉を尽くしても、この特殊な本の感想にはピタッとはまらない気がして。
なんだか次元が違う気がして。

だから、よろしければ以下のレビューは読まずに、まずは至急今作を読んでみてください。
それからアホエロをシリーズで読み返してください。
それからまた今作を読んでみてください。
それも終わって時間が余ってどうしようもなくなった方、そんな方が万が一いらっしゃいましたら広い心で下スクロールに進んで頂ければと思います——






まずですね、序盤から「三重県にある築50年の日本家屋の防音工事、敢えて言うなら声楽」のギャグセンスに脱帽。
えっ!あの酒造のあのカプ!とニヤニヤが止まりません。
そしてもちろんメインカプの高東くんと坂口くんの甘さと眩しさは最初から最高潮。
ペアリング選びの話でウキウキかつ同じ会社で仕事ができてドキドキ。

からの、坂口くんの貴重品入れのエピソードで泣かされます。
坂口くんにとって一番価値のある貴重品が1巻の旅行時にもらっていたというバスの整理券だったことが判明。
直後に挿入される僅か一コマの回想シーン。
瞬間、アホエロ1巻の二人が脳内に蘇り、ああ、この2人があの日あの旅行に行って結ばれ今もラブラブに暮らしていて本当に良かった……祝福できて嬉しい……と心がフワフワしてきます。もうその整理券は坂口くんだけじゃなく読者にとっても貴重品だわって感じで。
そんな坂口くんの貴重品エピソードから、指輪の種類じゃなくて、「俺があげることに意味があるんだろうな」と高東くんが気づくんですけど、このモノローグの切れ味も良くて。
この高東くんのセリフって言葉にしちゃえば何をそんな当たり前のことをって内容なんですよ。全くもって使い古された言葉なんですよ。なんですけど、不思議なくらい重くズドンと胸に落ちてくるんです。余韻がすごい……。

実は、同じような現象が、このアホエロ婚約編にはたくさん起きていて。

大好きだよ。
全部好きだ。
どんな姿をしていても。
24時間365日かわいい。
俺がいればいいだろ。
っていうセリフとか。

ひざまずいて指輪を差し出したり。
自分と同じ指輪を恋人が嵌めているのを見てホッとしたり。
エプロン姿の恋人にときめいたり。
病気の恋人を介抱したり。
名前で呼び合うのにとんでもなく照れ合ったり。
っていうシチュエーションとか。

言葉で抜き出すと、どこかで聞いたことがあるような言い回しや内容。
普通なら擦られ過ぎて薄っぺらくなる危険すらある愛情表現。
それが、アホエロの世界観では全く違う深い響きで、心に突き刺さってくるんです。

これが重い実先生のすごいところなんだよなあ。
ハッと気づかされるんですよ。
大好きって気持ち、かわいいって想い、ずっと一緒にいたいっていう願い、
これって全部、真理なんだよなって。
基本中の基本の感情なんだよなって。
それ以上分解できない最強の存在なんだよなって。

多分、ただ説明するには抽象的過ぎるし、セリフだけでは薄っぺら過ぎるんですよ。
そんな「幸せ」や「愛」の概念を、この作品では高東と坂口二人ならではのエピソードとセックスを重ねること、深めることで、見事に表現してくれているんです。
それも普遍的なのに、唯一無二な圧巻スタイリッシュなマンガ演出で。
独特のリズム感、温度感で。
ちなみに、もう甘くて、甘くて、添加物のない愛の塊みたいな内容かと思った矢先に挿入される中西兄弟のエピソードも、ほろ苦く、極上のアクセントになっていました。

毎日一緒に時を過ごし、無条件に相手を愛おしいと想い続ける。
そんな生活を並べただけ。
確執も裏切りもヒーローズジャーニーも無い。
けれど、これまでのどのエンタメ作品よりも「幸せ」ってこういうことか……と実感してしまう。
言葉の次元を超えた豊かさを発見してしまう。
大げさに聞こえるかもしれませんが、こんな作品が読める時代に生きていることは、ちょっとした奇跡ですね。

読んで幸せを知り、読んで幸せになる。
アホエロはそんな貴重な体験をくれる作品でした。

凌辱モノの世界観にした意味とは……

松雪奈々先生の文章はわりと好き。
いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、そうしているのかが最速で伝わってくるから。
難しい言葉もだらだら長ったらしい描写も使わない。
かるーく文字を追うだけで、キャラがわかる、話の筋がわかる、エッチシーンで盛り上がれる。起承転結の型も外さない。
トンデモ設定作品も多いけど、説明が端的だから案外無理なく楽しめる。
読みやすさという点では頭ひとつ飛び抜けていて、小説が苦手な人にも正直おすすめ。

以上を大前提として……松雪先生の筆力は十分に評価した上でなんだけど……
今作はちょっと無理めだった。
もう、本当に読みやすいのは間違いないんだけど、
もっと根底の問題で無理めだった。

それがジャンル混同問題。
もうね、読んでいて、なんかヘン。

ストーリーは異世界転生モノ。
自らシナリオを書いた凌辱系BLゲームの主人公に転生してしまった受が、シナリオのほとんどを占める凌辱バッドエンドを回避するために、攻略キャラのイケメン上司に溺愛されるハピエンを目指して奮闘するというお話。

これね、凌辱系ジャンルと溺愛スパダリ系ジャンルを同じステージに上げちゃってるんですよ。
これがもう、どうしても不協和音で。

特に凌辱系ゲームって、凌辱する、されるを楽しむ目的で作られるジャンルじゃないですか。
なのに今作では絶対にその目的が達成されないんです。
それを匂わすキャラとか展開だけ提供されて、実際はほのぼの溺愛エピソードばかりでって……全然、入り込めないし、スイッチも切り替えられない。すんごい違和感。
逆に溺愛ストーリーが凌辱エッセンスで引き立っていたか?というと大してそんなこともなく。

人間って不器用なので、本格辛口カレーを食べようと思っているお口と、生クリームたっぷりパンケーキを食べようと思っているお口を同時に存在させられないんです。
おにぎりの形をしているけど、実はケーキでした~みたいなものも驚きはするけど、結局美味しいとは感じられないんです。
なぜなら、頭が満足しないから。
来ると期待したはずのものがいつまでたっても来ないから。

フォーマルドレスにスポーツシューズをコーディネートくらいの違和感。
単体としては間違っていないのに、目的が違うものを合わせただけでこんな大惨事。

だったらいっそ溺愛系だけの世界観にしてほしかったかなあ。
読みやすいだけにもったいない。
新しいことに挑戦する姿勢は好きですが、各々のジャンルの良さ、目的を潰さないようにしてもらえるとありがたいなーと思います。

魔法とエロって相性良いよね

わーい、西野先生の新作~!と喜んで一気読み。
相変わらず、とっても読みやすいライトな文章でサクサク進みます。

今回は褐色エルフ、魔法使い、淫紋の呪い、触手生物が登場してエロエロな展開になるファンタジーです。

が、すっごい大まかな話をしちゃうと、良い意味で、本当に良い意味で新しい要素は皆無です。
いつも通りの起承転結。
受が攻と出会って、セックスしなくちゃいけない状況に陥って、セックスしまくって、ときどきライバルとかモブにも攻められてアヘアへしちゃうけど、最終的には攻と幸せになる話です。

マイナーなキャラ設定の違いはありますが、こうなるんだろうなーと思う方向にサクサク流れるのでストレスフリーだし、エロは毎回濃厚だし、物語上どうしても必要な戦闘シーンとかはもう息を飲む速さで片付けられて逆に圧巻。
読後の満足感も十分。

この感じ、何かに似てるなーって思ったら、スーパー戦隊系の脚本演出パターンかも。

仲間を集めて、戦って、ピンチになって、ロボが出て、敵は巨大化して、ロボは合体して。
細かいストーリーは毎回違うけど、大筋は同じ。毎年同じ。でもそれで良いし、むしろそれが良い。
やっぱり敵が巨大化しないのはつまらないし、ロボが合体しないのもつまらないしそんなスーパー戦隊はもはやスーパー戦隊ではない。
それと同じくらいのテンションで、西野先生の作品は、半強制発情とか中出し、モブ攻が今や必須になっていますね。

その上で今回はなるほどこう来ましたか、と答え合わせをするのが新作の楽しみ。
今回はファンタジー要素をしっかり利用した、呪い、触手生物、夢や意識に働きかける超人技が見所でした。
淫紋の解除という大義名分も二人のセックスの共同感を盛り上げるのにもってこい。
いやあ、それにしてもどれもこれもけしからん魔法だこと。

いじわる?っぽいお姉さんやご両親がでてくるところも古くからのおとぎ話っぽい演出で、作品の雰囲気を掴みやすくて良いですね。
こういうベタなキャラは現代モノではなかなか出せないし、浮いちゃいますからね。
逆に繊細で情緒的な脇役家族にしちゃうと魔法やエルフの要素も含め設定が飽和しちゃいそう。
同様に、攻のアドルファスの軟派な三枚目感もポップファンタジーな雰囲気によく合っています。

こんな風にサラッとみせつつ、実は読者が一番かみ砕きやすい極上の状態でエロBLを提供してくれている西野先生の筆力はお見事。
しかも作品間でのクオリティの差が少ないのも魅力的です。

作家買いはまだまだ続きそう~。

逆張り攻を愛でながら読む2周目もおすすめ

「俺にもタイプがある」
「好きになれる気がしない」
「あんたの身体なんか興味ない」

どんなにどえろく誘っても据え膳喰わない、キスすらしない

普通の人はもちろん、大抵のツンデレ・クーデレキャラだって絶対行くでしょ!というところで、頑なに、物の見事に行かない攻様が珍しい、完全なる逆張りBL。

なので、前半はもう焦れ焦れです。
同衾して、無意識にバックハグして、勃っちゃってるのに、「相手を間違えただけ」も「好きじゃない」もあったもんじゃないですよ。
頼むからはよめろめろになっておくれ摩宗くん、と願いながら見守るものの、正直なのは耳としっぽの動きだけ。
経験値のない朱充くんには本音が伝わっているわけもなく……

と、たっぷり読者を欲求不満にさせてからの後半戦の緩急はご想像通りえげつないです。
溜めて、溜めて、溜めて――がっつきます
いやあ、まさかセクシーランジェリーでも接近乳首でもポーカーフェイスを崩さなかった摩宗くんがあの一言で陥落するとは……
さらなる誤解とベタなすれ違い、怒涛の伏線回収が入り混じり、最後の最後にエロエロの溺愛エロ。

つまりはね、
好きじゃないってたくさん言ったから
好きって気持ちが引き立つんだよっていう話なんですよ。
まったく未練なんてねえよって言うから
その執着がひしひし伝わってきちゃうんだよっていう話なんですよ。

逆張りの功名。

でもね、そもそも「初めから勝手に婚約解消すんじゃねえよ」って。
ほんそれ。