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女性おラウさん

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ギニーピッグ=モルモットって意味なんですね。

作品全体の雰囲気や個性、読み心地については上巻の方にレビューしています。
こちらではストーリーについてなど。

まずはあらすじ。

とある不幸から男性妊娠研究の被験者にされてしまった凪冴は性的なことが苦手。
しかし研究員として赴任してきた幼馴染の隼人と研究のためのセックスパートナーになってしまう。
幼い頃の凪冴は隼仁を清廉な兄として無防備に慕っていたが、ある日隼仁が誰とでも寝るような男だったと知ってからは強いショックと嫌悪感を引きずったままだった。
しかも再開した隼仁の態度はひどく冷たくて。
それでも発情期には嫌でも衆人環視の中でセックスをさせられる。
その中で隼仁がふと覗かせる優しさや独占欲に心を揺さぶられ、いつの間にか彼に触れられる心地良さに気付いてしまう。
発情期以外のセックスにも身体は歓び、一方で隼仁以外の人物には触れられたくないと気付かされ、頭の中は隼仁のことでいっぱい。なぜ彼はただの被験者の自分にかまうのか。
そこで明かされる隼仁が研究室に来た本当の目的。
研究のために強制的に連行された凪冴を救いだすため、隼仁は研究員の身分で忍び込んだという。冷たい態度も周囲にバレないためのカモフラージュ。全てはずっと好きだった凪冴を取り戻し、一緒にいたいという隼仁の愛情の裏返しだった。
その告白を聞いてようやく自分の心に素直になり思いを通わせた二人。
隼仁の子なら妊娠しても構わないかも……とまで凪冴が思い始めていた頃、隼仁は男性妊娠研究の不都合な真実を目の当たりにしてしまった。
それは、これまでの研究結果上、妊娠した母体は出産時に100%死に至っているということ。
被験者の妊娠=死という現実を目の当たりにした隼仁は、ついに凪冴との研究機関逃走計画を実行するが――


ポイントとしては、
受も攻も前半と後半のギャップでしょうかね。
二人ともすれ違いツンツンからのデレ。
攻なんて、いつまでそんな横柄な芝居してるんだろ、早く言ってあげればいいのにって感じですが、まあそこはご愛敬。

あとは、凪冴が隼仁に対して、「理想のお兄ちゃん」像を押し付けていたと反省するシーンはこの本で一番ハートフルに感じました。身体だけじゃなく、隼仁という人格を過去ごと受け入れるという描写により、凪冴の「好き」表現の説得性がぐっと上がってますね。からの避妊なしセックスの流れはさすがのえちえちマンガっぷりですが。

ご時世的にちょっとすごいなと思うのは、初回は完全に嫌がっているけど致しちゃってるところと、後半の逃走生活中に「無理にでも眠らせてやる」って言ってそんな気になれないと拒否りつつある凪冴をイカせてるシーンですね。
最近強引気味なのあんまり見なくなってたから、逆に新鮮だったかも。
読む分には全然楽しめます。フィクションなんで。

他キャラについては、
まず当て馬悠心くんはしっかり仕事をしてくれました。せっせと貢物もしていて本当健気……彼は幸せになりますように。
先輩で妊婦のカナタさんは超絶良い人でしたが、残念な結末に。良い人が真っ先に犠牲になるのは物語としては定石なのでやむを得ないでしょう。後味はもちろん悪いのですが、ディストピアBLを名乗っているので、これは演出としては読者の気持ちを揺さぶる意味でも〇。
残りの子たちはちょいちょい出ては来たけど、最終的にはあんまり個性なくて未消化感ありです。全体を通して二人の関係性を描くのは情熱的で上手だけど、周りが添え物扱いなのは作品の弱点かな。ラストが二人だけの世界で手と手を取り合って生きるみたいなテーマだったのでなんとか成立はしているのですが。

まあ色々言いましたが、基本的にはえっちぃマンガです。
正直描かなくてもストーリー的には成り立つであろうエチもわりとあるんですけど、ちゃんと力を入れて描いてくれるところがさすが理原先生の作品だな。トータルでやっぱり楽しいし、ボリューム、満足感があります。

ちょっとスケール大きめなえちBLとしては結構おススメ。
ストーリーの緻密さとか人物や情緒の繊細さとかを求めるならちょっとジャンル違いなので、お間違えないようお気をつけください。

おそらくストーリーマンガ寄りのエロマンガ。深く考え込まない方が吉。

上下巻読後。
セリフ、絵、コマ割りはわかりやすくサクサク読めます。
理原先生作品ということで基本的にはエチシーン頻回かつ描写は濃厚です。
これはもう安心・安定。
特に絵が好みですね。最近よく見るサラッとシルキーなタッチじゃなく、理原先生ならではの、綺麗なんだけど筆圧がちゃんと乗っていて少しざらつきとか重さのある画風がよりエロスを醸し出すというか。

さてその上で今作は仄暗い雰囲気にブランディングされた作品でした。
キャッチコピーはディストピアBLとのこと。

これがなぁ~商業BLとして吉と出たか凶と出たかは微妙なところかなぁ。

というのも話がやや壮大なんですね。
幼少期の性的ないじめ、母の自殺、負債、男性妊娠の人体実験……

で、それを商業BLの決められたページ数の、しかもエチエチシーンもたっぷりでという中でストーリーを消化させていくのはちょっと厳しかったのかなぁ?という印象。
話は追えるし普通に面白いんだけど、全てひねりのない浅いところで展開されていっている感じ。厳しく言うと若干のB級映画シナリオ感。

でもでも、それって普通のエンタメとしてはイマイチだけど、BLとしてはそんなに悪い事だとも感じてはいなくて。

BLとしてラブとエロを主軸に置いたときに、仄暗い過去とか、危機的状況とか、お決まりの展開ってのはやっぱり盛り上がるスパイスにはなりますからね。

うん。あくまでこの物語において、全ての不合理や不幸な境遇は、主人公二人のエチを盛り上げるための脇役であったと考えると意外としっくりきます。

幸せ能天気世界観の二人のエチだけでは飽きられちゃって長くは連載できないでしょうし、基本的なすれ違いとか当て馬嫉妬レベルの話は当然既出で新鮮味に欠ける。

もっと切なく、もっとエロく、もっと感情を揺さぶるラブを活かす舞台はどこだ?と考えた時に、自由を奪われている世界線っていう発想は全然アリでしょう。
拘束の身、掟、発情、職務命令、独占欲、唯一の希望みたいなキーワードで拾っていくと、なるほど扇情的。
初見では混乱してしまいましたが、おそらく今作はストーリーマンガの要素を若干強く持ってしまった真剣エロマンガという属性なのでしょう。

基本的にえちえちマンガを読むときにあまり頭を固くしていると楽しめないのは、BL愛好家の方ならおそらくご存知かと。
となると、このくらい浅くて緩めの設定やストーリーの方が案外気楽で良いのかも。

というわけで、まず、まだ上巻を読んでいない方はあまり頭を固くせずゆるり、ごろりとしながらプチダークエロスを楽しんで頂きたいですね。
もう既に上下巻読み終えてストーリーや世界観が腑に落ちていない方がいらっしゃいましたら、今一度脳のモードを切り替えて、お仕事終わりとかちょっと脳疲労起こしたくらいで再読するとよろしいかもしれません。

細かいストーリーの感想は、上巻が前振り、下巻がクライマックスとなる関係上ここだけでは取り上げにくいので、下巻のレビューにまとめて記載しておきます。

インド映画ばりファイヤーは必見

これは完全なる「ぶつかり稽古型」の作品ですね。かつBLエンタメに振り切れている。
西野先生さすがです。
単純そうに見えて、BL小説としては色んな角度から考察しがいのある良作だと思いますよ。

いや、まず「ぶつかり稽古型」って何なんだって感じなんですけど、
BL作品っておおまかに分けると、
「対話型」:繊細な心理描写や会話の積み重ねから二人の関係を熟成させていくパターン。
「問題解決型」:ある問題を二人で協力して解決していくうちに絆が生まれていくパターン。
「ぶつかり稽古型」:肉体関係がすべての始まり。肉体関係を通して唯一無二の存在であると自覚するパターン。
かなと思っていて。まあ多少の混在はありますが。

「対話型」と「問題解決型」は一般エンタメでも良く見かける手法ですよね。一方「ぶつかり稽古型」はエロ多め作品でしかなかなかお目にかかれないタイプですね。
基本的には感動作、記憶と記録に残る名作、みたいなのはこの「対話型」「問題解決型」のどちらかのタイプに属する作品が多いかなという印象です。
緻密な心理描写とか、あっと驚く世界観や伏線回収ってそりゃあ面白くなりそうじゃないですか。
でもね、やっぱり欠点があるんですよ。
読むのに体力・集中力がいる。
あぁこれ評判なんだ、面白いんだろうなーって思って購入してみたものの、現実世界で慢性疲労を起こしている脳内ではなかなか思うように処理しきれないんですよ。
メンタル落ちているときにあまり高低差のある作品も読みたくないし。

そこにきて西野先生をはじめとする「ぶつかり稽古型」作品のありがたみを感じるわけです。
超絶読みやすい。そして普通に面白い。基本はエロハピ。
いやぁーありがたいですねぇ。
とくに今作はストーリーのシンプルさとBLエンタメとしての奥深さを両立させる秀逸な出来栄えでした。

まずストーリーですが

出会ってビビッときて
攻が囲って
受が逃げ出して
攻が受のピンチを助けだして
ラブラブハピエン

超シンプル。理解度100%でサックサク読める。とにかく脳に優しいBL。
身体から始まって、その瞬間にこいつは違う!でほぼカップル成立。周りくどさゼロ。
受をピンチに貶める悪役の描写も全く無駄がなくて上手なんですよ。
1ミリも余計な感情移入をさせないザ・モブ悪役という感じでストレスフリーでした。

そして、こんなにシンプルな構成なのに独自性を成り立たせるスパイスもちゃんとあって、特に
① 受の暦は攻の亡き父、孝造が用意した人物であること
② 攻の尊がある条件下で朱雀の獣身に変身すること
の2点が面白かったですね。

孝造のお手付き状態で二人は出会っているので、毎回のセックスに嫉妬や比較の感覚が入り混じるんですよね。
しかし孝造は亡くなっている。なのでどういう気持ちで孝造が暦を囲っていたか、何となくはわかるけれど完全には明かされないという余韻が生まれています。
孝造はシンプルストーリーの中で唯一良いとも悪いとも言えない立場にある複雑で独特な人物です。そんな彼を追想する暦や尊の姿には単純エロ作とは一線を画す哀愁を感じますね。

そして、1度読んだら忘れないのは、まちがいなく二つ目の方。
変身ファイヤーですよ。
いやぁ、笑っちゃいました。あのシーン。
インド映画かと思いましたもん。
こんなにシンプルな作品だけど、この本どんな話だった?って聞かれたら変身ファイヤーで受を助ける話だよってすぐ出てきますもん。完全なるハイライト。

で、もっとすごいのは、尊にとっては朱雀に変身するっていうことは設定上、獣人のアイデンティティに関わるものすごい大切なことのわけじゃないですか。
そのあたりの葛藤とか、そのパワーアップした力の使い道とか、今後の獣王としてのあるべき姿とかをね、一切描かないんですよ!

なんでかって?あくまでBLのエロラブに特化しているから。

これ、すごくないですか?
このあたり普通の作品だったら膨らませちゃうと思うんですよね。
封印された能力とその覚醒って多分深めようと思ったら深められるポテンシャルのあるテーマだと思うんですよね。
でも、全く描かない。その代わりに巣ごもりでひたすらエッチしているシーンを描くんですよ。

噓でしょ?!
そういうところが好きだなぁ西野先生、好きだなぁラヴァーズ文庫。

それでいいと思うんです。一般的なエンタメ作品の流れで大切そうなことも、BL読者にとってはそうでもないというか、どっちでもいいことってあると思うんですよ。
それを容赦なく切り捨てて、真正面王道の映し方じゃなく、エロラブ特化のカメラで描き続けてくれるサービス精神。
結果、なんかエロくて、なんかファイヤーだった、というライトな作品に仕上がっているんですよね。

王道の余地や深みも残しつつ、あえてライトエロに振り切るって実はどっちのエンタメ観もある程度熟知していないと難しいと思うんですよね。この加減に焦点を当てられるのはベテラン西野先生ならではかと。

ライトだからって侮れない、単純に見えて実はすごい一冊。
一般エンタメ<BLエンタメ派の方には特におすすめです。

素敵だけど、深さはなく、ページ数なりのサクッと感。ルビー文庫だから?

犬飼先生の官能童話シリーズ過去作、原案の「おやゆび姫」ともに未読です。
内容のリンク点などの評価はできていません。

ただただファンタジーを読みたくて手に取りました。
その点、攻の王子様がボトルサイズの妖精かつ箱庭で生活、
尽くし系受の方がまさかの巨人扱い、
なのにこのトンデモサイズ感のまま両想いに?という設定は、
作りはわかりやすいわりに、ファンタジーBLに落とし込むには斬新さもあり◎。
現実を忘れ、欧風の世界観にしっかりと引き込まれました。

ただ、設定は結構キャッチーでパワフルなわりに、中身や展開はあっさり軽めだったかなぁー。レーベルの雰囲気やページ数の制限もあるのでしょうが。

良く言えば難しいところがないので、サクサク読める。
悪く言えば深みや考察しがいが少ないので、繰り返し読みたい気持ちになりにくい。

犬養先生の文章自体はお上手で、事実ベースの展開描写はかなりわかりやすいです。
つまり
「庶民の受が、妖精の姿をした王子様と出会いました。
王子様は箱庭での生活を始めました。
しばらくして妖精から人間に戻してもらうために2人は旅に出ました。
ある晩、月の力で王子が大きくなり、2人は愛し合えました。
しかし再び小さくなってしまい、2人は一瞬はぐれてしまいました。
けれど、再会して最後には王子様は人間に戻り、仲良く暮らしましたとさ、めでたし、めでたし。」
というアウトラインの書き込みは無理無駄がなく美しいのです。
ラブシーンの描写もわりと濃厚でライブ感や迫力があり楽しめます。優美なイラストとの相性もばっちり。

一方、背景や葛藤の心理描写はことごとく控えめですね。
基本的なところで言うと、ロードがミルフェに恋をした、しかも初恋だった理由やきっかけ、情熱の高まり方はほとんど書き込まれていないような。
尽くしてお世話してくれたから?同性愛を責めなかったから?熱い視線を向けられていたと感じたから?……くらいの情報ですかね。もうちょっと欲しいかなあ~。
あと、なぜ放蕩息子を演じなければならなかったのかももう少し解説して欲しかったかなあ~消化不良気味。でもそこを掘り下げると、たぶん長くなるし暗くなりそうなんだよな~。
魔法使いも1回人間に戻るの無理って言った後、ウソウソ戻せるよーってあっさり翻ったのがちょっと肩透かしかなあ~。でも童話ベースならこんなもん?
ロードを誘惑してくる綺麗な妖精さんも、結局かき回すほどではなく、モブよりちょっと上の扱い止まりでキャラの使い方もったいないかなあ~
などなど読みながら多少もんもんとしました。

とはいえですね、最初に言ったようにレーベルとぺージ数的にはこのくらいが妥当なのかなと納得できるクオリティではあるんですよ。完成度が低いわけではない。
BLや小説の超初心者でもなければ(一応シリーズものだし、トンデモ設定だしそんな方は今作の読者には少ないとおもいますが……)、既定路線で予測、補完しながら読めば全然問題なく楽しめると思います。
むしろ一から十までダラダラ説明されるより快適と感じる人もいるかも。

ルビー文庫らしい手軽さと、物語の深堀り描写は、ページ数のトレードオフ関係なのかもしれません……悩ましい。

個人的にはページ数が増えても深堀りエピソードのあるタイプが好みだったので、今作は楽しめましたが萌え爆発までは行かなかったかな。
評価刻んで良いなら☆3.8くらいです。

小中大豆先生ってやっぱりエンタメBL小説書くの上手すぎない?って思わずレビューしたくなる作品

異世界転生モノ、苦手で避けてたんです。
過去何回か痛い目に会っておりまして。
でも実力派の小中先生だし、執事モノ読みたいし、表紙イラスト可愛いし
と思って衝動買いした結果……めちゃめちゃ良かった!
えっ、異世界転生モノでこんなに読みやすく、面白くなるんだ!と感動するレベル。
ほんっと久々にレビューを書きたい衝動に襲われました。

正直メインストーリーは転生モノのワンパターン。
前世(現代人)の頃の自己紹介→転生世界の今後のストーリー説明→死亡フラグ回避に向けたアクションと、それによって捻じれていく運命……という既視感ありありのやつ(かつ、タイトルだけで結末わかっちゃうやつ)。
なので、あらすじだけで言うと他作品と横並びです。

なのに、読んでみると面白さが全然違う!
同じストーリーなのに、なんでこんなに引き込まれちゃうんだろう?!
しかも読んでいて全然疲れない!。
という、マジックにかけられたかのような衝撃。

思うに、めちゃめちゃメリハリ上手なんですよ。
基本は、前世腐男子であるフィンの語りで進行するので、現代の私たち側の視点に寄り添うようなコミカルでポップな雰囲気。見た目は子ども、頭脳は大人~みたいなあの感じもまといつつ。
そこに小中先生らしい説得力あるバックボーンが良い塩梅で組み込まれています。
各人の生立ちから飢饉や穀物備蓄の話、違法歓楽地の話、領主と国都との関係性、成人パーティーの政治的な意味などなど。
このあたりの書き込みや説明って、緻密すぎても重くて疲れちゃうし、かといって雑にしすぎると作品自体ぺらっぺらになってつまんないし。
っていうところで丁度良く、本当にボーイズラブに焦点を当てるのに丁度良すぎるエンタメ温度感で書き込んでくれてるんですよ。いや、これが本当BL小説ファンとして嬉しくて嬉しくて。

説得力ある世界観の作品って一般文芸だと普通に出会えるんですけど、BL畑で特に新作となるとかなり希少で。このあたりめちゃめちゃ上手いBL作家さんたちって最近は一般文芸主軸になられていたりするから……で、その作家さんが書く一般文芸ってもちろん素晴らしいけど、結局テーマはBLじゃないんです。それが何か物足りなくて。

それが今作は、登場人物が取る行動の一つ一つに、「はあ、なるほど」と読者が納得して読み進められ、かつ疲れさせず、メインのラブに視点を集中させてくれる絶妙な文字運び。
ちょっと無理やりギャグやファンタジー、ご都合設定で流す感じもあるにはありますが、全体的なコミカルな雰囲気とちゃんとマッチしていて、決して浮いてはいません。

肝心のラブについても個人的にはかなり好み。
肉体よりも精神性の高いイチャつきぶりでした。
一見、ラブシーンは最後だけのように見えますが、読感としては全然違いましたね。
中盤、フィンとユエンが酒を酌み交わしたり、出自について真剣に話し合う姿がですね、心の距離感ゼロなんですよ。
「好きだ」とか「愛してる」という言葉こそ出てきませんが、腹を割り、心を裸にしないと決して生まれないであろう対話の数々にグッときました。
恋愛としての表現をしていないので、その時点ではブロマンス萌えなのかもしれませんが。
愛や独占欲を薄っぺらく吠えるより、ガツンと濃密で良いシーンです。

ユエンへの転生のネタばらしも最後の最後ではなく、中盤にしてしまいどうなることかと思ったら、さらにそこからもうひと展開。楽しませてもらいました。

先を予知できるチートが使えて、世界観も作りこまれていて、っていう意味だと、同じく小中先生の『気難しい王子に捧げる寓話』と若干被るんですけど(これもめちゃ面白くておすすめ)、あちらよりもコミカルでポップで、相手役の側近も素直な感じでしたね。ルチル×カワイチハル先生のイメージピッタリでした。

ただ、これだけ満足度高かっただけに、たったひとつだけ、気になったところが……。
転生世界のBL小説のタイトルが『地平線まで』。
最初から最後まで通して、この言葉に全然ピンと来ず。
うーん、これだけは「なるほど」ってならなかったかも~。

別れ話はBLにもってこい

一回別れるストーリーが大好物です。
初読み作家さんでしたが、あらすじだけで購入決定。

結果、存分に満足!
出会いからラブラブ期までを描くのとはまた違う、別れ話ならではの独特の熱の上がり下がり感、切なさがたまりません。

一般的に、物語をエンタメに仕立てるには主人公らが乗り越えるべき「困難」が必要となるのものですよね。
標準的な出会い~両想いまでを描くBLストーリーだとその困難は「仕事のトラブル」「両親など周囲の人が認めてくれない」「悪役もしくは当て馬が登場する」など。
ファンタジーならそれこそ「世界が滅びそう」とか「不治の病にかかって」とか。
それがですね、別れ話BLはですねこの「困難」にあたるものがですね、「別れる」というイベント一つで済むんです。もう超絶シンプル。

ごちゃごちゃした仕事のトラブルとか、ちょっと胸糞悪い悪役とか、辛気臭い病気とかお金の話とかね、ちょっと読むのめんどいなって思う時ありませんか?そういうのがですね、なくても成立するんです。それが別れ話BLの素晴らしさ。
余計なものはいらない。描くのは純粋に二人の関係性のみ。

だからこそ、要約しちゃえば、ただの「カップルの痴話ゲンカ」なんですけどね。
4年くらい付き合った美容師と小説家が、すれ違ってきて、美容師の尽くんから別れを切り出したんだけど、桐生くんは別れたつもりはないようで……?みたいな話。

でも、「もう別れる」って言うまでに重ねた二人のアレコレ、言った瞬間の頭の中、言ってからじわじわ募るモヤモヤ……
別れた後からお互い相手のことを四六時中思い出して頭がいっぱいになる感じ。
片想いのときとはまた違うぐるぐる感。
明快な解決方法として別れを選んだはずの尽くんが、余計割り切れなくなり右往左往している姿、相手がまだ自分に気がある様子を拒んでいない感じ
どれもこれも人間らしくて可愛い。
別れる前提でのラストデートなんて、逆に最高の思い出にしようみたいなエッジが効いていてロマンティック。
価値観を認め合う、二人の絆を深めあうっていう流れもカッコイイ。

ただし、最重要事項をお忘れなく。
これがBLであり、絶対的にメインで描かれている二人は最後にハピエンラブラブになるという大前提の上に成り立っているということ。
これらがあるから安心して二人を眺められるし、キュンキュンできるのです。

この種の話で万が一、ハピエンにならず結局グダグダ別れていたらマジで時間の無駄と感じちゃうかも。

そういう意味で、本当BLと別れ話ってすっごく相性が良いと思うんですけどね。
絶対くっつくとわかっている二人を出会わせるのも良いけど、絶対ヨリが戻るとわかっている二人を別れさせるのも最高ですよ。

脚色は最低限。二人の人間模様だけでぐるぐるキュンキュンさせる王道の別れ話BL。
この手の作品もファンももっと増えないかなー。

半音ズレた独特なコミュニケーション

両片想いセフレすれ違い設定のオフィスラブコメ。
さぞかし焦れ焦れのキュンキュンかと思いきや……何かコレ絶妙に違う!!
確かにクスっと笑えてエロくて引き込まれるんだけど、滑らかさに欠けた独特の読み心地……。

多分この作品、設定(セフレだけど両片想い、お互い本当は付き合いたいと思っている)とゴール(お互いの気持ちを確認し合ってやっと恋人になれる)は超王道なのに対して、それに向かうストーリーの刻み方(すれ違い方、距離の縮め方)が結構こぶしの効いたマイナー調なんですよ。

多くの作品では「あっ、確かにそんな理由があったら、そんな思いを抱えていたらすれ違うよね」と読者にもわかりやすい素直なロジックで胸キュン演出を盛り上げてくるのですが、

この作品の場合はタイトルに「口下手」とあるように、すれ違い理由は「言葉の表現方法とタイミングが悪いから」に終始します。
このこだわりの演出がね、良くも悪くもすごい独特のリズムと読感を生んでいて。
グッと納得させられる口下手具合もあれば、いやそれはさすがに……という斜め上というか、非常識で不自然というか、強引で無理やりだなと思うような対話もチラホラあり……。

歌で言うとまさにオンチって感じですかね。
しょっちゅう半音ズレてるし、微妙にリズムや節が違うけど、なんとなく味はあるし、多分他の人には再現できないやつ。

なので読んでいて、ストレートに気持ちいい!頭使わない!スカッとする!っという印象はありません。
書き込みや情報量も多いし、ん?ん?ん?なんかバグった?今のセリフはこのキャラ的には冗談で言ったの?本気?わからん……と脳に負荷がかかる瞬間も多々ありました。
あらすじから王道をイメージしちゃうとなおさらね。

とはいえ、そんな読みにくさを含めても総合的に惹きつけられる作品であることは間違いないです。
やっぱり他と違うって大事。
それに名前が最後の最後に出て来るところはかなりオシャレ。

個性は残しつつ、あとほんの少しだけ、ピッチを整えて読み手側に寄り添ってくれたら爆発的に好きになっちゃいそうな作風でした。惜しい!

ぷんすか!系独占欲が楽しい一冊

初読み作家様でしたが、なにこれ好みど真ん中の作品すぎて衝撃。
コミカルでハッピーでベタにBLしてるのにちゃんと個性が際立っている!
即行で過去作をポチり、一通り拝読。
どれも結構好みでしたが、やっぱりコレが一段飛び抜けて面白いと思ったのでレビューを。

本作はタイプで言うと、ストーリーや展開で魅了する系ではなく、二人の関係性を愛でて萌え禿げる系ですね。
既に恋人としての信頼関係が築けている状態で起こるアレコレが時におバカで時に過激で時にキュンと来ちゃいます。
このタイプのお話って、通常だと第2巻から繰り広げられることが多いんですよ。
ストーリーや展開メインの第1巻で紆余曲折を経てくっついた二人、その続編として描かれるイチャイチャ編みたいな感じで。
続編には続編の良さもあるのですが、個人的には正直飽きたり、ダレて脱落することも結構あって……。

その点今作は出来上がっているカップルの関係性を最初からプッシュしてくれて、大変ありがたい。
始めからくっついている二人を観察するスタイルということは、順行のストーリー展開からではなく、二人の日常的なセリフ、プレイ、表情などから読者が能動的に属性やパワーバランス、くっつくまでの経緯を推測しながら読み進められるという余白的な面白さもあるんですよね。楽しい。

多分その推測の肝となるのが、二人のオフィス・オンモードでのド派手な喧嘩っぷりですかね。
甘々描写ももちろん良いのですが、この二人の喧嘩って「相手が自分のことを絶対に嫌いにならない」っていう前提の上で思いっきりぶつかっているのが透けているから本当ニヤニヤするし安心して楽しめる。これは良い対等感と茶番感。
しかも、結局なんやかんや仕事うまく行って喧嘩が無駄にならないところも読んでいて気持ち良い。緩急バッチリ。
関係性メインの作品なのでストーリー自体は激うすなのですが、その分、こんな感じでキャラ、シチュエーション、テンポ、視点切り替えの掛け合わせはめちゃめちゃイキイキしていて好バランスです。
これでストーリーを欲張ると多分胸焼けしたと思う。
良い意味で隙がある感じ。
ベタはとことんベタですしね(エレベーターでイチャイチャするし、付箋でラブメッセージ送るし、もちろん会社のデスクで最後まで致すし、社員旅行の温泉では酒入ってパニックになります。お約束すぎる)。

そして何より好みだったのは、この作品、独占欲ドバドバで喜怒哀楽もハッキリしているのに全然、陰の執着とか病み系に振れないところ。
独占欲はあるし愛情もズッシリなんだけど、嫉妬しても拗らせず、ぷんすか!の領域で終わっているんですよ。
このさじ加減に留めてくれるの、個人的にめちゃめちゃ心地よい。
ポップなのに人間力も感じられる読感で終始ハッピーでした。

あと巻末の書下ろしパートもとても良いですね。
ちょろっとだけ、二人がくっつくまでの経緯が描かれています。
でもそのメッセージ性が高くて、案外深みがあるというか。
え?そこからこうなってこの関係性なの?!というプチ感動がありました。
おかげで二週目も楽しい。

うん。ベタなオフィスラブシチュエーションが苦手じゃない人でコメディ好きな人には刺さりそうな一冊。ひょっとしたら2022年前期のイチオシかも。

エロは言わずもがな。フィクション感あるキャラ・ストーリーも技ありで満足

よくある量産型のエロコメかと思いきや、小技盛り盛りでかなり楽しめました!
読後の印象抜群でしたので久々にレビューを。

ベース要素は古典的BL満載なんですよ。
表紙はオシャレ横文字ではなく、いかにもエロBL自信ありますみたいなビビッド配色と表情。
タイトルは一行で内容を理解できる考察要素の全くない親切設計。
ストーリーもベタベタに惚れ薬だったり、ちょっと強引に始まるセックスとすぐにグズグズにとろける受だったり。
片想いの相手には他に好きな人がいて……、この恋は期間限定で……みたいな定番切ない要素もあって。
エロは真正面からドストレートなお医者さんごっこを取り入れる潔さ。
ああ!どこかで読んだことあるやつ~~!の連発なのです。

なのですが!
これが良いのです!

BLの基本の基本を押さえているからこそ読みやすく、ここぞというアクセントが丁度よい塩梅で溶け込み印象に残るんです。
で、その作品の肝に当たるアクセントがこれまた大小さまざまな角度から織り込まれていて、飽きさせない。

最もインパクトが大きいのは、受の真岡くんの「バブりたい」発言。
お綺麗なイラストの堅物天然美人キャラから突然発せられる「バブみ」というワードの意外性。こういう唐突なギャップ演出は、あまりに連発されると読み手として引いてしまうのですが、作品の世界観やキャラクター性を壊さないギリギリのラインでまとめておりお見事。

真岡くんが惚れ薬を自分で飲ませておいて、自分で解毒方法を探すという自己回収型のストーリーも好き。
「惚れ薬」と言えば「事故的に」な演出も多い中、人のせいにしないのが良いですね。一生懸命な真岡くんのキャラも引き立ちます。

一方の攻の牡丹さんも、一瞬テンプレイケメンかと思いきや、結構クセのあるキャラでして、読めば読むほど味がありました。
まず小芝居がね、楽しい。
媚薬が栄養ドリンクだってわかっていて、それを隠しながら好き放題やっちゃってる姿が良いですね。色事の経験値も真岡くんとは段違いで、もうグイグイ行っちゃって。
「薬が効いたフリしてキスくらいしてもいいよな」って。めちゃめちゃフィクション的な解釈でおもしろーい。
散々小芝居続けていて、バレたら逆ギレするのも予想外すぎました!
全然スパダリじゃなーい。
でも、こういう完璧すぎない器の小さいとこもある攻って実は人間味があって結構好き。

かと思えば「関わろうとしてくれたから迷惑をかけることができたんです」「あなたに出会えて変われた」みたいな心にジンと響くシーンなんかもあって。
でも押しつけがましいわけでもなくて。

全体を通して、王道と外し感が絶妙なグラデーションでみっちり重なっているので、サクサク読めて、エロエロで、頭も全然使わないのに読後は満足という良コスパ本。

こういう作品本当に好き。
奇をてらった感じじゃなくて。
文学性とか芸術性とかでもなくて。
エロコメと王道を押さえつつどこまで面白くできるかっていう商業感がめちゃめちゃ好き。

バリバリのフィクションBLを読みたいお疲れの夜におススメの1冊です。

受の内心の口の悪さと絵の綺麗さのギャップがたまらん

ひょんなことから猫と青年との同居生活を始めた裏表アリ営業マン早坂さんのお話。

ストーリーとエロ度で言ったらあっさりライトな作品なのですが、
もうね、早坂さんが可愛くて。
個人的に綺麗な顔で口の悪い受が大好きなんですよ。
早坂さんは外面はよくて、内心でクズ発言するタイプ。
営業スマイルでニコニコしながら心の中では
誰が行くか
くそつまんねぇ~
みたいな人生も他者も舐め腐っている態度なんですよ。
それが、猫とイケメン熊谷くんを拾ってしまったばっかりに、予定調和の毎日が崩れて、あたふたドキドキっていう超幸せ仕上げの誰も傷つかないBLです。
仕事バリバリだけど、家事は苦手で部屋ぐちゃぐちゃだったり、実は恋愛経験なくてピュアピュアだったりめちゃめちゃ可愛い。
悪態をつけばつくほど可愛い。
結局熊谷くんの精神年齢の方が上なので、彼の手の平でコロコロされちゃうんですけどね。
全編ほっこりで、最後までは致さず、絵も綺麗。
お部屋にあっても大丈夫、電子書籍不意に覗かれても大丈夫な安心属性な作品です。