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エキスパートレビューアー2023

女性Sakura0904さん

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大切に想っているだけで十分見返りになるから

 メイン2人のキャラが個人的な好みからは少し外れていたのでこの評価に落ち着きましたが、ストーリーと栗原のようなタイプの人間の解像度の高さは素晴らしかったです。こういう人、リアルにいるんですよ。悪い奴じゃないし、ビッチともちょっと違う。社会性や対人スキルにも問題がないからメンヘラと一言で片付けるのにも違和感がある。ただ、やはり家庭環境にあまり恵まれない幼少期を過ごしていて、孤独への不安や抵抗が大きく、寂しさの埋め方が歪になってしまっているタイプ。

 分かりやすい見返りを自分が与えられるから、相手にもちゃんと必要とされる。この方程式が簡単には崩せないから、児島のような男に翻弄され、関係が切れた後もぐずぐず悩んでしまう。馬鹿な奴だなぁと思うかもしれないけれど、栗原の危うい不安定さは彼が今まで積み重ねてきた人生経験の結果。私は見ていてとても切なくなりました。なまじ常識人だし人の機微も読み取れるから、桃井が少しでも引く態度を見せれば途端に消極的になってしまうんですよね。そんな彼に1年以上もかけて根気よく、体の関係がなくても人は人を大切に想えるのだということを教えた桃井の誠実さが素敵でした。栗原がそこを理解した上で付き合うことで、今まで彼に寄ってきた男たちとはまったく違う安定した関係性を桃井とは築けると思います。たわいない恋人同士の日常を楽しんでほしいです。

短髪時代の神田天使。小林にも感謝

 すべてにおいて絶妙でした。序盤では上野から神田へのまだ無意識な好意が軸となって進んでいくのかな、と思ったんです。ゲイからノンケへの、自覚し始めたら切なくてしんどい恋。神田は上野がゲイだと知った上で彼の家で全裸になれるほど飄々としていて、良くも悪くも周りをまったく気にしない人間なんだなと。さばさばしているから友人として付き合う分には気持ちがいい人間だけど、恋してしまうとちょっと大変そうなタイプだなぁと思ったり。

 しかし、上野視点がずっと続くわけではなく、すぐに神田視点の話が始まります。この切り替えで2人の関係の見え方がぐっと変わるんです。いつもあっけらかんとしていて、営業の仕事も難なくこなして、日々実に楽しんで生きているように見える神田の本当の姿。元々同僚としのて好感を持っていた上野にカミングアウトされたと同時に、お前はタイプじゃないから大丈夫と言われたことがずっと引っかかっていた彼。もちろん上野のその台詞はノンケへの気遣いの塊で、「だから気にしないでね」と軽く肩を叩くような言い方だった。でも、何度も上野の家に通い、彼のさり気ない優しさや包容力に触れるたび、最初に言われたその言葉が神田の心に深く食い込んでいく。

 真面目そうなありふれた新入社員から、いつの間にか垢抜けて人好きのするふわふわした雰囲気を纏うようになった神田ですが、それがすべて上野を意識した変化だったと知り、なんて切なくて可愛くていじらしいんだろうと思わずにはいられませんでした。他人の家で全裸になれるなんて良く言えば大らか、悪く言えばがさつな性格なんだなぁと思いきや、まったく真逆で上野の目を気にして気にしての行為だったなんて。文字にするとゲイをからかう悪意のあるノンケのように聞こえるかもしれませんが、読めば神田がいかに真剣に上野を振り向かせようとしていたかが分かってもらえると思います。

 また、神田はセンスで出世街道を楽々と駆け上がってきたわけではなく、実は苦労人。上野はそんな神田を高い所から憐れむこともなく、本人の意思を無視してお節介することもなく、お前がしんどいことは分かっている、1人でいたくないなら一緒にいよう、と誠実な心地よい態度でずっと接してきた一面もあります。その存在に甘えたいと思うようになる神田の心情変化がとても自然でした。神田が大切だからこそ、恋人にはなれないとはっきり告げた上野もただ臆病だったのではなく、彼との付き合いを維持させたいという強い気持ちがあったからこそ。そして、最後にもう一度アタックした神田。彼の真摯な恋心が上野の苦い思い出を払拭し、心に届いて本当に嬉しかったです。恋人になってから初めて家に「おいで」と言われた時の神田の反応がとても可愛かったですね。

きっと自分で自分を見失っているのね

 このシリーズって熱狂的なファンの方がたくさんいらっしゃいますよね。私もその熱の根源を知りたくて読み始めた1人。7年前くらいに初めて読んだ時は魅力が分からず2巻辺りで離脱しましたが、そこから2年経って改めて読んでみたら最初の頃と感覚が変わったのか、萌える余裕も出てきて毎巻結構楽しんで読んでいました。

 ただ、今回は前巻を読んでから間が空いたせいもあるかもしれませんが、あまり萌えは感じられませんでした。前巻から第2章に入ったとも言えるわけですが、矢代のこの頑なな壁は一体何のために築かれているのでしょうか。今百目鬼を受け入れることで生じるデメリットが私には分からないし、人が壁をつくるのは何かを守りたいからだけど、矢代がこの壁によって守っているものが何なのかが分からない。あなたの内に今、そこまでして守るべきものがあるの?

 百目鬼のことをのらりくらりと躱しながら、完全にシャットアウトするのかと思いきや、家に上げたりする。こんな世界でこんな環境で長く生きてきた男だから仕方ないんだ、というのは分かるけれど、この堂々巡りを娯楽として楽しむにはちょっとハードルが高いかな。雰囲気に頼りすぎな気もします。ラストは百目鬼が痺れを切らしたようなので、次巻で大きく動くといいなと思います。

あなたの飾らない姿が魅力的なんだから

 40代同士の恋愛、ダヨオ先生の絵にぴったり合っていて、終始素敵でした。性別に関わらず、趣味や仕事に全力を注いできて、この歳までまともな恋愛経験がないという人もさほど珍しくなくなってきているように思います。そのまま駆け抜けるのもそれはそれでけっして悪くない人生だと思うし、一旦立ち止まって、恋愛の方に目を向けてみようかなとおっかなびっくり自分を変えてみるのもまた人生。

 春江は藤嶋のようなハイスペックの男性に、いつも仕事で疲れ切っていて恋愛経験も未熟な自分が釣り合わないと考えているけれど、逆に藤嶋からしてみれば、同年代でここまで擦れていない、いつも可愛らしい隙がある男性と出会えたことは十分僥倖と言えるでしょう。普段はきっちり社会人をしながら、プライベートでは時折高校生のような初々しさや勢いを見せる春江に、藤嶋の方も自然と合わさせられていく様子が微笑ましく、大人の恋愛と子供の恋愛のいいとこ取りをしているような気持ちで読める作品でした。老後まで末長く、穏やかで可愛い日常を紡いでいってほしい2人です。

これからは兄も恋人も両方兼ねて

 連れ子同士の義兄弟の関係性ということで、本当の兄弟よりで恋に発展するよりはずっと現実味がありました。幼い頃からならともかく、ある程度物心ついてからの再婚なら子供といえどお互い多少は気を遣う。やっぱりどこまでいっても他人だからこそ、こうして好きになってしまうんじゃないかなと思います。miso先生の作品にしては毒気というかシリアス成分がそこまで多くはなく、兄の雄飛の方はもっと病んでいるのかと思いきや、可愛い弟の意思を押さえ付けてまで自分の妄執を注ぐタイプではなく案外健全なお兄ちゃんでした。ちょっと物足りない感はありましたが、義兄弟もので読みやすい作品としては貴重かと思います。

意外と独占欲強めな攻め

 この2人はこれからもキスに重きを置いて恋人としてやっていくのかな?と思っていましたが、当然透はそこから先の行為への欲求も強いし、普段も恋人らしい日常を送りたいと考えていて。キスは上手でもまともな恋愛経験のない真白は、いつでもキスに持ち込んだり、透以外ともキス上手の噂をきっかけに仲良くなったりする自分を客観的に見つめ直します。2人が出会ったきっかけでもあるし、真白の1つの個性でもあるから我慢する必要はない。けれど、恋人として対等な関係を築きたいなら、自分の欲求ばかり優先するわけにはいかない。真白のちょっとずれた思考にはあまり共感できませんでしたが、我慢するのではなく、透が喜ぶことをすれば自分も嬉しくなるという方程式に気付いてくれて良かったです。

先生が楽しんで描いたのが伝わる

 なかなか面白い攻め受けの組み合わせでした。イケメンで性欲も強いのに、キスが下手な透。大学で噂になるほどキスが上手いのに、そこから先に進みたい欲がまったくない真白。前半はキスをレクチャーする真白が押していましたが、相手に触りたいと思えないのは本気で好きになった相手とシていないからでは?と透が真白の歪な性欲の原因に気付いてからは、透の方が押すように。そういう所に気付けるのって、やはり人をよく見ているなぁと思いました。透が積極的になった途端真白が完全に受け身になるかというとそうはならず、気の強さや元来のキスに対しての積極性はまったく失われることなく、攻める気持ちが透と互角な所も受けとして好みでした。

見ていてもらえること、気付いてもらえることの喜び

 上司である佐倉が少し天然なようにも感じたのですが、彼の立場に立って考えてみると、相手が女性だったり歳上や同世代だったりならまだしも、歳は一回り下で世代も2つ3つ違う同性となったら、さすがに相手から恋愛的な好意を持たれているとは夢にも思わないよなぁと。勘違いだったら恥ずかしいし申し訳ないから、藍井のいろんな言動をZ世代ならではのものと納得するシーンがおかしくもあり、どちらの目線になってもちょっと切なくもあり。

 そうして佐倉が脳内で思い悩む一方で、一見無表情に見える部下・藍井から時々溢れ出てしまう好意は、とっても可愛らしく愛おしかったです。佐倉はやっぱり藍井の世代とは合わないところがあるけれど、常に部下との距離感を測り、かけるべき声をかけ、いつも自分の言動を振り返って相手を傷付けていないか考えている人。怒ったりせずとも、その人間性に部下がちゃんとついてくるタイプです。藍井が年齢も性別も関係なく、彼を好きになった過程がとても自然に思えました。鈍いというよりは防衛線を張っていた佐倉が、藍井の気持ちに正面から向き合い、考えて答えを出すところが誠実で素敵だなと思いましたし、そんな風に向き合ってもらった藍井はどんなに幸せだろうとこちらまで心から嬉しくなりました。

ただただ善良な子供2人

 題材、ストーリー展開はとても良かったです。誰かに理不尽に苦しめられた時、暴行や刃傷沙汰に遭った時、苦痛を受けている人を助けたい一心で犯す罪というのは、私はけっして軽くはないけれど、人間らしい感情を持つが故のごくごく誰にでも起こり得るものだと思っています。亮の行動も楓の行動も、十分に理解の余地があるものでした。

 一方で、2人の互いへの執着というか強い結び付きの基盤となる、事件が起こる前の関係性の描写は私には短く感じられ、相手のためにここまで行動できる理由にすんなり納得するには、もう少し時間をかけて辿ることが必要でした。また、濡れ場が多いのも刹那的な今を表現するには効果的でしたが、毎回とろとろにされる楓はエロ重視ではないこの作品の中では少し滑稽に見えたので、もう少し抑えめの方が良かったかなと。ただ、ちゃんと自首するのもそこに2人で向かうのも、この世界でこれからも長く相手と一緒にいるために下した決断であり、この若さでそれを選択できた2人に尊敬の念を抱きました。

INCITE withボディガード、推させてください

 ストーリー展開、攻め受けのビジュアルと性格、アイドルという特殊な仕事ならではの魅力と大変さの盛り込み、どれをとっても素晴らしい作品でした。序盤ではもさかった男子高校生がトップアイドルになれるものかしら、なんて思いましたが、実在する美形俳優でも、学生時代はぱっとしない隠キャだった方もいらっしゃいますもんね。やっぱり素材を活かす髪型や服装、努力を経た自信って大事なんだなぁ。一度は根暗なゲイで終わるだろうと決めかけた人生の天井を自身の力でここまで大きく突破してみせた智也の、せっかく得たチャンスを無駄にしないいつも素直で一生懸命な姿に感動しました。

 そして、攻めであるケイがまた途轍もなく魅力的なんですよね。まず見た目に大人の色気と深みが溢れていて、私も智也に負けず劣らず終始見惚れてしまっていました(笑)。大島先生の画力に大感謝です。ゲイバーで会った時も、再会してからも、恋人になってからも、過剰な甘さや優しさ、受けへの愛情表現がないところが逆に現実味があって、だからこそ彼が智也を可愛い、愛おしいと思う瞬間を表情から読み取れると、とても尊いものを見せてもらった気持ちになりました。分かりやすい言葉は少なくても、彼は態度や行動、案外豊かな表情で、智也を大切にしていることを十分伝えてくれます。安易な励ましや上辺の賞賛もせず、智也が弱音を溢した時にはそっと受け止めてくれる静かな寄り添い方にも好感が持てました。好きな人に愛される歓びを知った智也にはこれからもっともっと輝いていって欲しいですね。