ハズレのない作家さんというバリバリ高い期待値で読みはじめて、終わってみれば枕を濡らし(寝転んで読んだ)、勝手に置いたハードルなんて軽く越えられた上に風圧だけでなぎ倒されていった感じです。
これも転生ものになるのでしょうかね。
転生ものといえば運命的、ドラマチックなイメージですが、このふたりはふつうに青春しています。
で、ふつうの青春がどんだけたいへんかってことを全力で味わっている。
男同士で、自分のほうが先を歩いていたつもりがいつのまにか背中を見ていて、意地もプライドもすごくあって。
楽くんが葛藤を超えて素直になることができていれば、逆に現世では幸せな時間が短く終わってしまったであろうふたり。
待つしかできなかった、待っても成就するとも限らなかった学くんの覚悟のほどが恐ろしい。
それを理解できる楽くんだから、次は信じて待てた。
生まれ変わった楽くんは強かった。
地獄の話なのに楽しいしオシャレだし(笑)、それでもやっぱり地獄に来なきゃ実らなかった恋はなんだか悲しくて、最後の2人の笑顔はほんま枕をびしょ濡れにするほど輝いていました。
⋯⋯夏が近づいてきましたが、今年はすこし蚊に優しくなるかも。
高評価につられて読んでみました。
とにかく絵が綺麗。
すべてをセリフで語らせるのではなく、音楽やダンスで伝えるものもあり、表現が豊かです。
大人への憧れ、そこからの葛藤、社会へ出ること、責任……様々な問題にも向き合います。
なのですが、なんというか、絵のキレイさだけでなく話の進み方まとまり方、だ〜れも反対しない世界ぜんぶが綺麗すぎるのです。
ペラッツルッとした球体を撫でているうちに終わったような(伝わるんかこれ…)。
以下おもくそネタバレします↓
ふたりとも高学歴で社会的立場もある設定のためもあるのでしょうが、互いの人生に責任をもつと決めるまでが早すぎる印象です。
ものすごく個人的な好みをあえて述べるなら、子どものことまで広げず、これからも一緒にいろいろ悩む。そこを共有していれば充分じゃないかなと思いました。
ひんやりクール感漂う画面のなかでイマイチ情熱は伝わってこなくて(なんでだろう、クールな絵でも逆にコントラストの効いた情熱もあると思うのだけど)、え、いつの間にそんなに真剣だったの? と思っているうちに親にカミングアウトまでする。このへんはちょっと描きたいものを詰めこみすぎかと感じました(エラソーに申し訳ない)。
1巻もそうでしたが、同性愛、マイノリティ、そういうことへの世間の目、それらはテーマとして底に横たわっています。
こういう社会的なテーマを備えたマンガは往々にして作者の思想が前面にですぎたり、善悪に単純化されたり正義感や説教くささあふれる代物になったりしがちです。
1巻ではゆるい空気感やギャグで緩和されるものの、やや「理解されること」の押しつけがましさは感じました。
でも本当に「やや」くらい。
2巻はより自然に、真のテーマ感が薄れ、エンタメとして読めた印象です。
同性愛以外の家族の在りかたを問う話も出てくるのに、です。
ミヤコとアズマがラブラブ超えてアホになって、もう突き抜けた感あるくせに「そこで悩むんかーい」とうぶなもだもだをしつつ、互いを大切にしている、この主人公ふたりがちゃんとBLBLしていることで、もうひとつのテーマが「おう、そうだろうとも」みたいな、懐深く受け止められた気がします。
二人の悩みがもっと深刻だったら「ほかのことはあとにして!」という気持ちになったと思います。
それなりに重いテーマを据えつつBLマンガというファンタジー性エンタメ要素がしっかり満たされる、このバランスはなかなかギリギリな感じです(あくまで私にとっては)。
これを書いている現在、作者の推しチームは首位。
どうか気持ちよく応援しつつまたあらたな作品が書けますように(笑)
ちょっとびっくりしています。
話のはじまりはまさにタイトルどおりで、基本はコミカル。
途中、セフレなのに本気になってしまったと悩むターンはまあありがちなんだけど、なんだかとても心から応援したくなるせつなさで。
そんなちょっとすれ違うところもあるのに、読み終えてしみじみ、幸せなぬくもりに浸かっていた感じがしました。
互いに敬語のままで、それは相手への敬意とかまじめさの象徴になっていて、けして距離感は感じさせない。
どんどん互いに侵食し合っていっている、無自覚に。
医師と現場作業系の兄ちゃん、クールと明るく素直。
対照的なふたりなのに、出会いもまあまあサイテーなのに(笑)、言葉遣いも敬語のまま変わらないのに、侵食。
とても離れがたく。
それがごく自然に起きている。
絶妙な緩急のつけかたなのでしょうね。
いやーよかった、いいもの読みました。
買ってからずいぶん長くほっぽっていて、久しぶりに読みました。
放っていた理由は絵があまり好みではないからですが、そんなことは吹っ飛びました。
ええ話やないか〜(泣)
BLだな、ファンタジーだなと感じる展開もあるし、友だちなど周りの登場人物が理解ありすぎるし、学生時代の三春の奔放さの理由もまああるあるだし。
でも、男同士ということの難しさからは逃げなくて、といってそれでこじれるほどしつこくもなく、スパイス的に物語を引き締めている印象です。
全体的には「ありえない」「ご都合主義的」なのはいなめないですが、そのふわふわをベースにしつつも人物像はしっかり描かれていて、問題点も感じるけど主人公2人の気持ちもわかるー、親の気持ちもわかるー、でも考えが甘いわー、漫画の展開すぎるわー、さまざまな感想が浮かび、いろいろ考えさせられます。
考える余地がある、この物足りなさ含めて星5つです。
見るたび違う横顔なのは、まさに子どもから大人へ成長する平ちゃんそのものですから。
梶さんていい男って設定じゃなかったっけ?? と戸惑う程度には顔がこう、簡単な線だったり顔芸していることも多いのですが(笑)、一途さや真面目さが全面に出てとてもいい男、になっている。
ふたりが別れる別れないになる行き違いなどは無理やり感も感じるのですが、逆にこれくらい無理やり話を進めないとこのふたりは勝手にラブラブしちゃうんだろうなと思ってしまうくらい、互いにどうしようもなく惹かれ合うのを感じます。
深見くんも淡々としているところと率直に情熱的な姿とのコントラストがいい。
互いに気持ちよくて幸せであることに素直に貪欲になっているように思います。頑張っています。
互いに価値観やこれまでが違いすぎて言葉が足りないと振り回されるわけですが、それでも離したようでぜんぜん硬くとりあった手はつながっている、そんな力強さすら覚えました。
よかった……。
これだけでうっとりと終わりそうなくらいによかった。
読み終えたとき体を包む満ちたりた感すごかった。
いちおうレビュー。
恋愛や人間関係では、言わなくてもわかりあえるのが深いみたいなところあります。
阿吽の呼吸の尊さみたいな。
一方で、ちゃんと言葉にすることの大切さも重いわけで。
雀さんはたぶん、年齢や立場、もともとの性格も、本来は自分の思いを口に出すことは苦手または控えがちだと思います。
でも田中くんの前ではそれができる(少しずつだしものすごく勇気ふりしぼった感で真っ赤だったりしますが)。
そうできるのは、田中くんが言葉でも態度でも愛情表現を惜しまないから。
雀さんは彼氏の懐に安心してぜんぶ預けられるんですよね。
でも田中くんだってなにもかもあけっぴろげなわけでも無遠慮なわけでもなく。
控えがちなとこもある。
それは雀さんがちゃんと気づいている。
声にフォーカスしていたぶん言葉の大切さがとてもしみましたが、言葉で自分の思いを伝える真摯さと、黙っていてもわかりあえる絆の強さと、そのどちらもが無理なく成立していて素敵なふたりでした。
ところどころ、いくらなんでも人間の足じゃねえ! って長さだったり、指先どうなってんだ? って靴だったり、絵が気になるところはあるにはあったのですが、田中くんのかっこよさが際だっていたのでヨシ!
あとがきの作者がきている服のQRコードがちゃんと読めたのすごい(笑)
じゃあ素直に満点つけとけよって感じなんですが。
まず、上下巻まとめての感想かつかなりラストのネタバレありということをお断りしておきます。
満点にしない理由も、満点に等しい満足感も、理由はリアリティです。
しつこいけどホントにネタバレします。
舞花ちゃんのお父さんが余命宣告された身だったこと、そしてその前に亡くなったこと。
これ、せめてどっちかにしてほしかった。
最期まで闘病しきるか、健康だったのに事故に遭うか。
中途半端にここで女性が絡んだのも、訪問医療を受ければよかっただけなのでちと納得いかない。
細かいこというと、がんといいつつズキンと胸を抑える描写も違う表現にしてほしかった。
反面、余命がわかっているから彼は伊吹くんにきちんと手続きを経て残せるものがあったし、残されたものがあっても心身ともに大変な介護の仕事をしている伊吹くんの不器用さ真面目さもより輪郭がはっきりします。
そこはわかっちゃいるけど。
また主人公2人が気持ちに正直になるきっかけは舞花ちゃんの事故未遂、そこには父親の事故死との重なりも大きかった。
必要な要素だったとは思うのですが、ちょっとだけこの物語の中では舞花ちゃんの父親だけが設定詰めこみの「漫画の要素としての存在」感を強く感じてしまいました。
そのリアリティ不足にすこしの不満です。
ただ、悪く言えば彼は主人公の過去の男でもあるので、やたらリアリティある存在感を発揮されても困るのもたしかで…。
佑真さんのお母さんも漫画的キャラですが、こちらは親子関係といい恋人関係といい、はっきりと関わってくるわけではなく、まして主人公たちに恋愛的からみはないために割りきれます。
とはいえ、舞花ちゃん父には不満で佑真さん母には納得なのもけっきょくは私個人の好みとしか言いようのないことですが、そこでどう感じどう星をつけるかは自由ということで。
一方で、身寄りがなく信頼できる他人に子どもの人生を預けてしまう、血のつながらない親子、こういうのはきっとわりとどこかではあることだろうなと妙にすっと入ったのは自分もマイノリティながらたいへん自由に生きているからかもしれません。
そして主人公ふたりが、気持ちが通じ合い互いに互いを守る存在と考え、子どもの舞花ちゃんもそれを望んでいながら同居はしなかった事実。
ここにこの物語のリアリティがあるとも感じました。
このあたりもくどくどと2人の選択の理由は語られません。
BLマンガだとストレートもゆるっと掘ったり掘られたり、あげく子どもがいようがさくっと同居もありがちなのですが、伊吹くんは年齢的には高校生で舞花ちゃんのパパ、これだけでも世間の目を考えるし、佑真さんとの年齢差、パパふたり、実は娘は他人、これだけ重なると別居は正解だったように思います。
ここで別居を選択できる冷静さは、そこまでケンカ親子や自由で行動力と理解のある子ども、泣き虫で寂しがりな主人公をさんざん描いてきたあとに際立っていました。
佑真さん親子も他人だったこと、2人が別居だったこと、ここは本当に極限まで無駄をそいだ表現で済まされてしまう。
そこに感動しつつ無粋なまでに長文を書いてしまいました。
この情熱で星4ってウソやろという気分です。
かわいい、とにかくかわいい。
鳥飼かわいい。
………だけではなんなので。
ストーリー的にはそんなに珍しくない、予想のつく展開が続くのに、そこはかもめさんというものか、2人の表情、言葉の選びかたなどで伝わってくる感情の質と量が違う。
矢島と鳥飼どちらも、とても当たり前のことで悩んでいて、とても当たり前のように相手のことを思いやって行動して、互いに、関係をリードしているようでされているようでもあり、もうこの2人にしかないフィット感で成り立っているこの絶妙な唯一無二感。
一巻では言葉の足りなかった2人が、言葉にするようになって。
互いの思い、大切にしなきゃならないことを確かめ合い深めあった2巻でした。
それにしても鳥飼のかわいさはなんなの。
ちゃんとレスキュー隊のたくましさ頼もしさがありながらのあふれでるかわいさよ。
矢島にドシッと乗るとこやちびっ子時代の写真を素直に欲しがるとことかたまりませんでした。