表紙の緑が印象的で手に取りました。
とても綺麗で幸せな物語を予感させるような装丁でした。カバー下もクローバで彩られています。
大人になってから再会して物語が動き出す、王道なオメガバース。
わくわくしながら手に取ったのですが、驚いたのはその本の薄さです。
ページ数が少ないので、物語が結構駆け足に進んでいってしまいました。
とくに1話で印象だった”カケモノ”という言葉。
子どもを産むことができないΩをそう表していて、受けがその体質であることが明かされるのですが...この要素がほぼ空気でした。
これを負い目に感じる受けだからこそ、なかなか恋愛に発展しないという展開ではあったのですが...
”カケモノ”という言葉ばかり強調されているように感じました。
なぜそこにこだわるのかという部分が掘り下げられていたら、オメガバースものとしてぐっと深い物になったのではと思います。
ページ数が少ないと制約があって難しいのかもしれませんね。
けれどそんな中でも、感情面はしっかりと描かれているので、読みごたえはありました。
久々のオメプロだったので、全てのバース性が妊娠できるという設定を忘れていまして...
受けが妊娠できないなら、攻めがその選択をする可能性がある。
というニュアンスの言葉が出てくるので、そこはそうだったなあと少し衝撃でした。
無印の1巻がほんとうに良かったので、あの雰囲気が味わえると思って読むと、ちょっと違うなあとなってしまいました。
始まりが唐突で、続き物だったっけ?と疑問に思います。
登場人物たちのもつ背景は、とても良い要素なんです。
でも、それがうまく物語に反映されているかと言われれば、ふわっと上辺だけをすくって完結まで駆け抜けたイメージでした。
ざっくりと要約すれば、攻めの恋愛的気持ちの変化と、受けの境遇に焦点をあてて進んでいきます。
この受けの境遇的な部分を、もうちょっと読みたかったなあというのが正直なところ。
受けの感情の変化については、家族という存在に対する依存なのか、恋愛なのかわかりませんでした。
過去からこびりついた感情が、すぐに解消されるとは思えないので、きっとこれからの2人なんですね。
だから前シリーズに出てくる2人の様子を見て一安心。
ここから信頼関係をぐっと築いていくのだと思うと、そこは受けが幸せになれて良かったなあと思いました。
作者さんのXに投稿されている番外編に、ちょっとした怖さを感じながらも、恐る恐る手に取りました。
本編は終始笑いっぱなしで、楽しかったです。
脇役がしっかりと描写されていない点は、受け視点の世界だと思えば納得できます。
ただやっぱりどこか感じる狂気性。
受けの行動がぶっ飛んでいるのはもちろんのこと、その周りや攻めも、それを受け流しているのがなんだか怖かったです。
そこが面白ポイントではあるのですが…
恋愛面では、攻めの感情がわからない。
よくある数年後再開エンドなので、余計に気持ちが傾く過程がわかりませんでした。
ギャグ的な面では楽しかったのですが、ボーイズ"ラブ"的な面では謎が残りました。
amco先生のコメントを見てびっくりしたのは、掲載時からほぼ丸々描き直されているということ。
話の流れまで変わったレベルでの手直しって、何があったんでしょうか...掲載時の話も読んでみたいです。
お話は王道路線。そんな中、”美”が印象的でとても強調されていると感じました。
2人の出会いは、攻めが受けの元へお仕事として住み込むことになったことからはじまります。
攻めは騙されたことによりお金がなく、ある目的のために早急に工面することになりました。目的のためなら身体も差し出す潔さは、美しい見た目と印象的な目と相まってとても強いです。
受けは”女装した少年に抱かれるのがすき”という性癖の持ち主。攻めに対し良い環境の生活を提供しつつ、自分の欲も満たしてもらっています。
金銭が絡んでいることを忘れてしまえば、2人は本当の恋人のように楽しそうに毎日を過ごしていました。
そんな中でも、攻めはその後の明るい未来を信じているようですが、受けはそうではないところが、何かを秘めているようでドキドキしました。
種明かしがあったあとは、何歳差なんだろう...というところが気になって仕方ありません。
ただ個人的に最後がなんだかあっさりに感じられたので、もう一超え欲しかったかなというのが正直なところです。
「とのこい」という題名は、「世との恋」という意味だと作者インタビューで見ました。
これは納得。
攻めと脇役2名の合計3名が、世と恋してどうなったか、が描かれています。
冒頭はわくわくしながら読んだのですが、謎の答えが読者にも察せられてからの過程が長かったです。
メイン2人の間にある”一夜の記憶”にたどり着くための過程なんですが、脇役視点のストーリーも間に挟まれてきます。
こうなると、メイン2人の間にあった会話のやりとりを忘れてしまうんです。
何度もページを遡ってしまいました。
そしてこの物語を楽しめるかどうかは、受けが読み手の嗜好に合うかどうかにかかってくると思います。
美しくて性格は可愛くて甘え上手な”魔性”の男。
でもその実は、優柔不断で周りの男たちをキープしてしまう、ずるい男でした。
受けの行動は、3名が物わかりの良い男達だったから成り立つけれど...
年齢にしては、ちょっと子どもっぽすぎるかなと思ってしまいました。
ただ年下×年上要素は楽しめたので、その点は良かったです。
まさに”お騒がせラブコメディ”でした。
立派な天使になるために学校に通っている天使たちの恋のお話なんですが、恋色よりもコメディ要素のほうが強いです。
そのノリが面白くて、でもちゃんとBLしていて楽しめました。
登場人物が全員黒髪なので初見は覚えづらく、人物を確認するために前へ戻る事が多かったです。
〇伊織×由貴
伊織は由貴が一番な子、由貴は真面目で自分のことを考えるのが苦手な子です。
ぐいぐいっとくる伊織に振り回されて絆されていく由貴。
由貴に向けて正面から”綺麗””美しい”という言葉を告げる伊織と、その言葉を受けて赤面する由貴の可愛さがたまりませんでした。
このお話が天使の要素が一番強いと思います。大きな翼を広げて宙に浮く美しさがありました。
〇義巳×優
義巳はTHE優等生、優は騒がしいけれど憎めない小悪魔系天使。
優からの襲い受け、誘い受けな感じで行為の描写があります。喘いじゃう系攻めなので、なんだか可愛く思えました。
優等生である義巳が優と関わって、おろおろしながらも不器用に恋をしていく様子が微笑ましかったです。
〇真澄×静
真澄は低燃費で無表情、静はびっちなせっくす狂いです。
一番エロティックな話でした...お似合いな2人だと思います。
静は攻め以外との行為の描写があるので、そこが苦手な方は注意が必要です。
〇明奈×岬
明奈はツンツンデレな年下、岬はTHE陰キャな惚れっぽい子。
明奈のほうからどんどんと関わりを持っていくのですが、ツンツンデレな彼らしく思っていることと言っている事が全く違います。
岬に対して冷たい言葉を吐いた後の後悔している姿はなんとも可愛かったです。
〇恵×理央
恵はTHE人気者といった雰囲気、理央は飄々とした雰囲気を持ち合わせています。
身体から先に繋がった2人なんですが、その実は両片想いで最後はハッピーエンドでした。真実を知ったときの2人が可愛い!!!
40ページ近く描き下ろしがありまして、天使たちのその後を読むことができます。
天使要素を求めて読みはじめると、コメディ色の強さに驚きます。
閉塞的な空間で天使たちが生活し、恋をする。重くなりそうな題材が明るく楽しく描かれています。
単話「やさしいひと」を読んだとき、一話でしっかりとまとまっていて良い感覚だったので、続きが出ると知って納得しました。
単話ではわからなかった細かい部分が、「やさしいやみ」で補完されたので読んで良かったと思います。
ピュアに見えて歪んだ愛情のお話。
けれど柔らかい絵柄で描かれるストーリーなので、ほんわりと優しい雰囲気が漂っています。
ここが歪みを和らげている要素でもありますし、うすら寒い雰囲気を醸し出してくれるポイントだと感じました。
ヤンデレものとしては、よくあるストーリー展開かなとは思います。
ただ、脇で出てくる受けの幼馴染が、良い役割を果たしていました。
メイン2人を引き離すために奮闘した彼が、受けのことを想ってした最後の決断は、切なくもぞくっときます。
単話ではわからなかった部分が明かされてはいますが、さらっとしか触れられない要素もありました。
攻めの背景や、彼の犯罪に協力した医師の存在。
この部分は、詳しく明かされなかったので謎のままでした。
ヤンデレものとしては優しいので、今まで読んだことがなく挑戦したい人にはおすすめです。
ただ最後は、メリバとは違うもやっとさも感じるので、最終的にはハピエンを求めたい方は注意が必要だと思います。
Xで試し読みをみて興味を持ったのですが、タイトルとおりのお話でした。
1巻なのでまだ物語は動き出したばかり。
Ωが双子αにいいようにされてしまう描写ばかりなので、可哀想に感じました。
出来損ないだったΩが運命の番であるαに出会うことで、その性を開花させてしまう。
今まで経験したことのない快楽に、抵抗らしい抵抗がないまま話は進んでいきます。
まさしく”堕ちていく”感じ。
どうやら双子αどちらも、運命かもしれないようですが...どっちも運命なんてことはあるのでしょうか。
片割れはなにか秘密を抱えて居そうで気になります。
Ω自身が運命を認識していないので、まだわからないことばかりです。
即堕ちに近い感じなので、もう少しΩが頑張るところがみたいなあというのが正直なところです。
好きなものを好きということの大切さが描かれていました。
けれどそれは当事者にとっては、とてもハードルが高いもの。
わかってはいても、簡単には口に出すことができません。
今作は、そういう攻めの気持ちが中心になって回っていきます。
受けに出会ったことで、自分の気持ちに正直になることができました。
傍にいて一緒に一歩を踏み出してくれる相手がいるって、とても有難いことですね。
攻めが一歩踏み出したことで、そういえばこの人はすごい人だったんだ、と我に返って逃げ出した受け。
今まで良い感じだっただけに、ここは若干唐突に感じました。
ただ、攻めが活き活きと動き出す現場を見て、実感したと考えると納得がいきます。
攻めの解放の物語としては良かったのですが、恋愛面で見ればかなり唐突。
攻めからのいきなりのアクションが多いので、びっくりしてしまいました。
少しひっかかるところはありますが、とても良い作品でした。