Sakura0904
真に孤独な人生が始まる前に、また、新たに孤独な生命を生み出す前に、圭が春の手を取る勇気を出してくれて本当に良かったと安堵しました。もちろん、彼がその選択をすることができたのは、春が諦めずに何度も圭の前に現れて行動し続けたおかげ。春もずっとすべてを曝け出せていたわけではない。彼にも臆病な部分はあって、圭との接し方を間違えたと後悔していた気持ちもある。
圭から見たら周りは皆自分より強い人、恵…
まず、ソライモネ先生が描かれる田舎の風景がとっても素敵です。木々にも農作物にも瑞々しい生命を感じます。そんな田舎に越してきた訳ありそうな楓。今時のごく普通の男の子という印象でしたが、少しだけ挟まれていた回想から想像するに、人の裏切りに遭い結構傷は深そうですね。
楓が新しく出会う九十九は変わっていると聞いたので気難しいタイプかと思いきや、むしろ人好きのする、人との距離感が無意識に近いタイプ…
生活リズムの違う者同士で同棲を始めた時のすれ違いっぷりがリアルでした。お互い仕事と就活に追われる中、なんとか合わせられた休みのために仕事を詰め込んだり試験合格に向けて励んだりして、相手と一緒の時間を過ごそうと奮闘する様子が愛おしかったです。言葉数が少なくて表情もけっして豊かではない金江だけど、灰賀の前だと結構甘さが滲み出ていますよね。灰賀も彼の好意をしっかり感じ取っていて、傍から見ると不思議な組…
またこの2人に会えて嬉しいです。1巻の終わりに敵に通じていることが明らかとなったダンテ。でも、ジーノへの愛に偽りがないことも仄めかされていたので、シリアスな展開でも2人の関係性については何の心配もなく読めました。読者は知っているとはいえ、ジーノとの攻防を楽しむためにもう少しダンテが敵側に堕ちていないことが分かるまで引っ張っても良かったかなとも思いましたが、2人の性格的にも猪突猛進で軽快なテンポで…
1巻の中に10章以上収録されているにも関わらず、どの章も余韻を残してくれて、1つひとつが愛おしくどこか哀しかったり切なかったりする物語で、世界の雰囲気も異なっていて、ARUKU先生の無尽蔵の頭の中を覗いてみたいなぁと思わずにはいられません。絵本のようであり、大人向けの映画のようであり、どこまでも愛の物語であり。
今回はピアニストとバイオリニスト、女工、秋の女王の話がお気に入りです。護堂の…
いきいき描かれたであろうARUKU先生の熱量は1巻から変わらず感じることができました。ずっと先の読めない展開で、章が変われば羽繕たちが訪れる世界も変わり、毎回雰囲気も変わる。頭で理解しようとするより、羽繕たちと共にひたすら心で感じるままに読み進めていくべき物語なんだと思います。この旅の行き着く先がどこなのかはさっぱりですが、1つ試練を乗り越えるたびに宝物のように羽繕の心に蓄積されていく新たな考え…
1、2巻の兎和たちの話はあまり刺さらなかったんですが、今回は当時から少し気になっていた兎和の兄である流兎がメインの受けで、想像以上に良かったです。海兎族として正常に発情できないことに1人悩んでいる流兎。そんな彼にアタックする冬馬が最初は常に自信のある俺様系の攻めに見えるのですが、実は幼少期から流兎一筋の男で。
しかも、何度も流兎を襲える状況に置かれてもいつもキスや軽い愛撫止まりで、フェロ…
1巻を読んだ時はここまで続くと思っていなかったので、正直驚いています。でも、4巻まで読み進めてきて改めて感じたのは、やはり夏野先生の描く作品の空気感がとても心地よくて好きだなぁということ。淡々としている中にじわりと熱や湿気を孕んでいる、そんな会話、表情、テンポが魅力的だなぁと思いました。
今回は白崎の家庭環境の描写が多めでしたが、両親は健在で虐待されていたわけでもなく、悲惨なものではあり…
蔦丸、武市、菊右衛門とそれなりの人が2人の関係を知ることになりましたが、この3人はひとまず源介と惣五郎が真面目に稽古や舞台に取り組んで、人前では一切仄めかさない限り、反対はしないというスタンスでほっと一安心。本人たちもその線引きは曖昧にではなくきっちり守っているし、もちろん歌舞伎への情熱は変わらないし、咎められる謂れもないでしょう。ただ、将来も視野に入れると後継ぎ問題は避けて通れず、大谷屋も玉乃…
最後まで丁寧に2人の言動が描かれていて、満足度の高い下巻でした。自分のセクシャリティと金江に抱いている感情について、じっくり悩んで結論を出した灰賀。もっと大人でも悩んでいる人がいるなか、大学1年生でこの壁にぶつかって、金江に対して誠実に接し続けた灰賀は、自分では頼りないと思っているみたいだけれどいい男だなと思いました。受け身で控えめな言動も、その場のノリや考えなしな行動で相手を傷付けたくないから…