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「まじめに、ゆっくり、恋をしよう。」名作コミック同級生シリーズ

2015/09/23 02:28

2018/03/01 13:19

“いろはの「い」”中村明日美子が目指した王道BL


2008年に第1作目『同級生』が世に放たれて以来、2014年の『O.B.』発売までの約8年。不動の人気を築き上げ、今ではBL漫画を代表する作品となった、中村明日美子先生の「同級生」シリーズ。

シリーズ3作目となった『卒業生 -春-』はBLアワード2009のコミック部門2位

「このBLがやばい」ではシリーズ作品がいずれも発売年の1位を受賞。

腐女子不朽の名作でも2015年から連続してランクインしている大人気シリーズです。


続編やスピンオフ作品ファンブックの刊行、ドラマCD化、そして2016年には劇場版アニメ公開。シリーズが完結した現在もその存在感は色褪せることを知りません。

ではなぜ、数えきれないほどのBL作品が存在するなかで、こんなにも多く、長年にわたって「同級生」シリーズは愛されてきたのでしょうか。皆さんのレビューと共に、少しずつ繙いてみたいと思います!

“基本の「キ」”を詰め込んだ超王道BL

コミックス『同級生』のあとがきで、中村先生は同作のことを「いろはの“い”、基本の“キ”」と表現されました。

ちるちるのレビューにも、「もはやBLの教科書」「BLが初めてでも萌えられた」といった声がいくつも見受けられるなど、『同級生』がいかにBLの基礎を詰め込んだ作品であるかが窺えます。どんな時代、どんな世代にも共通する普遍的な萌え=王道。それが、同シリーズが長く支持を集める大きな理由の一つなのではないでしょうか。

そしてその“王道さ”を支えているのが、「まじめにゆっくり恋をしよう。」という作品テーマに違わない、丁寧で繊細なストーリー展開です!

寡黙な優等生と一見おちゃらけたバンドマン――まるで正反対の位置にいるただのクラスメイトだった佐条と草壁が、互いに意識しあい徐々に歩み寄っていく様子が、第一作目『同級生』ではじっくりと描かれています。
そのためBL初心者には優しく、そして上級者にはそのもどかしさが反って新しく感じられるという、不思議な現象が巻き起こったのでした。

出会って数ページでデキてしまう、というご都合主義作品が多い中で、ゆっくり、着実に距離を縮めていく歯がゆさ、もうキスしちゃえよ!押し倒せよ!と背中を押してあげたくなってしまうけれど、どうしてもそれが叶わない純情さとか、男同士ならではの葛藤とか、的確に萌えポイントを突いてきます。(槙緒らてさん)

距離がゆっくりゆっくりと縮まるのんびりペースの等身大の恋がよかったです。もっとゆっくりでもいいと思ってしまう位、日常が輝いていて、ページをめくるのが勿体ない位でした。(ミュウさん)

エロシーンよりこの2人の場合はむしろ手と手が触れ合ったり、足と足が触れたり、キスしたり、というシーンの方がドキドキして心臓が甘い真綿に包まれてゆっくり締め上げられた様にきゅううううんってなるんですよ。(クレタコさん)

確かな画力と芸術性、唯一無二の世界観

ところで、初めて中村作品を読む方の中には、先生の個性的な絵柄がどうしても苦手で……という方もいらっしゃるのでは。かく言う記者も、かつては耽美系・アート系の漫画全般を食わず嫌いしていた時期があり、『同級生』も発売から随分月日を経たのちにようやく手に取ったほどでした。

ではちるちるユーザーはどうでしょうか。
サイト内にて『同級生』読者の意見を見ていると、「絵柄もストーリーも初めから好き!」という意見のほかに、「苦手意識があったけど、読み進めたらむしろ好きになった」「最後まで苦手な絵だったのに、ストーリーが良すぎて絵柄の相性は二の次」など前向きなコメントが多数。

万人に受け入れられる絵柄ではなかったとしても、あの妖しく色気をまとった筆致でピュアな青春劇を描き出すからこそ、心に引っかかるものが生まれる。コマ割りやセリフ回しといった演出にも言えることですが、長きにわたり愛されるために必要なのは「この作品でしか感じられない何か」を持っているかどうかではないでしょうか。

誰もが通り過ぎ、誰も戻れない特別な時間

また、“ゆっくりまじめに”恋をしているからこそ、作品の中に流れる時間がとても着実でリアルなのも今作の魅力の一つ。

高校時代や10代半ばというのは、細かな差はあれど皆が共通のイメージを思い描ける特別な日々。平凡だけれど輝かしい毎日を過ごす佐条と草壁の姿に、あの頃の自分自身を懐かしんでみたり……中村先生の言葉運びに誘われて、ついついセンチメンタルに浸ってしまった方も多いのではないでしょうか。

その1人として作中に登場するのが、佐条にのっぴきならない想いを抱く音楽教師のハラセンです。記者も何度彼の視点に自分を重ね、佐条と草壁を取り巻く美しい青春の空気に呑まれたか分かりません。アテ馬と言われても仕方のないポジションにも拘らず、彼が驚くほど読み手からの支持を獲得したのは、ハラセンが多くの読者と同じ“あの頃に戻れない大人”の象徴であるからかもしれませんね。

一方佐条と草壁は、2010年発売の続編コミックス『卒業生 -冬-』『卒業生 -春-』で、それぞれがそれぞれの壁にぶつかります。

受験、将来、家族、人生……と、男子高校生が1人で抱えるには重すぎる現実も、幼く不器用な方法で一歩ずつ、ともに乗り越えていく2人。シリーズを通し、彼らが恋人としてだけではなく1人の人間として成長してきた証を見たような気がし、ラストシーンでは心のなかで「卒業おめでとう」と言葉をかけずにはいられませんでした。

10代であるから理解できる衝動がある。ぜひ10代の方に読んでもらいたい。そして大人になり、素直な思いを持つ難しさを感じているからこそ伝わる一瞬の美しさもある。ぜひぜひそんな大人の方にも読んでもらいたい。(梅子さん)

これを読んで、青春っていいなって思い、高校生に戻りたくなりました。(上の空さん)

まだまだ若い二人だからこれからゆっくりお互いの気持ちを確かめ合い深めあっていくと良い、そしてまたどこかで成長した二人が見られたらこれほど幸せなことは無いなとそんな風に思えるお話でした。(高坂ミキさん)

どの年代の心にも存在する「青春時代」を舞台に、どの年代の心にも訴えかける言葉と世界観で綴られる王道BL。アニメ映画公開を控えた今だからこそ、読んだことのない方はもちろんのこと、一度読んだ、二度三度読んだ皆さんも、改めてこの名作に触れてみては!

記者:神谷浩未

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