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表題作O.B. 1

遠距離恋愛のミュージシャンの恋人 草壁光
京都に住む大学生1年生 佐条利人

同時収録作品#3 <小松と竜一>

昔馴染みの男 本橋竜一
服飾デザイナー 小松

同時収録作品#4 前編<有坂と響>

元教え子の製菓専門学校生 響
教師 有坂

その他の収録作品

  • #1 <草壁と佐条>
  • #2 <佐条と城ノ崎>
  • #2.5 <草壁と佐条>
  • #3 番外編<ガールズトーク>
  • #3.5 <草壁と佐条>

あらすじ

『同級生』『卒業生』の草壁と佐条、『空と原』のハラセンとソラノ、その他コマっちゃんや有坂&響など、<同級生シリーズ>を彩る魅力的なキャラたちの“その後”を描く待望の最終章『O.B.』が2冊同時で堂々の完結!!

作品情報

作品名
O.B. 1
著者
中村明日美子 
媒体
漫画(コミック)
出版社
茜新社
レーベル
EDGE COMIX
シリーズ
同級生
発売日
ISBN
9784863494107
4.6

(416)

(323)

萌々

(70)

(17)

中立

(2)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
28
得点
1948
評価数
416
平均
4.6 / 5
神率
77.6%

レビュー投稿数28

恋人の彼等

「空と原」にもその後の草壁と佐条の姿が描かれてはいましたが、その中で見えていた二人の関係の在り方をより具体的に見せた、
主となるこのメインカプについては、佐条の大学生活の始まりを含めながら、草壁が佐条の元を訪れた2泊3日の滞在の前半の様子をメインにしている。
それらの他に、この1では脇を固めたこまっちゃんの小エピソード及び、描き下ろしの「ガールズトーク」という番外、
それに、もう一つの歳の差カプである響と有坂のエピソード前編で構成されている。


やはり雑誌の単発で読んでいた時より単行本としてまとまることで、より具体的に彼等が見えてくるのが不思議だ。
コマ切れの時は、その逐一の二人のやりとりにキュンして萌えを感じて身悶えて、
やっぱり二人、この空気感がいいな~などとお気軽に見てしまっていたのですが
他の2カプのエピソードも含めて、共通するモノ。
それらが見えてきたから尚一層、愛おしい。


佐条が大学の試験を受ける時、首筋のキスマークに目を止め興味を持った、同級生となった城ノ崎や佐条に振られ後友人となる同級生女子とのやりとりの部分。
佐条は表に出してあたふたしたりしない。
冷静に、いつものごとく真っ直ぐマイペースに誠実だ。
城ノ崎にカレシの事を聞かれ、自分はそうだけど彼は違うと思うという発言をした部分。
「同級生」でも彼はそこにこだわりがあったと思われたのですが、城ノ崎は佐条に魅せられたいいわけなのか、佐条のせいだと言う。
きっと佐条の心をグサリと付いたはずの言葉なのかもしれないが、佐条は草壁しか見てないんだろうな。
自分の決めた自分のペースで生きる佐条には、それが無意識の色気となって漂っているのかもしれない。

草壁が佐条の元を訪れて、頻繁に会えるわけではないからきっと押し倒したいくらいなのかもしれない。
でも佐条がレポートをやっていると知れば、草壁は大人しく待っている。
とても自然に、佐条を大事にするように。
そして佐条はやることを済ませると、思い切り草壁に甘えるのです。
普段、頻繁に会えるわけでないからと我儘を言ったり、無理をしたり、そうではなくて互いに対してとても自然体で思いやっている姿がいい。
その静かな中にとても甘い甘い、可愛らしと色気の存在する二人の関係が匂わせられて布団からのぞく脚の描写だけで、彼等の満足度が見えてしまう。
そして若干天然な部分がある佐条に対してワンコというよりオカンな部分を発揮する草壁は、新婚さんみたいだとこの逢瀬を愉しんでいる。
二人の信頼が見えるのです。

自らのブランドを持つ服飾デザイナーで原センのゲイ友のこまっちゃんの話は、また一つの大人の恋愛の話かもしれない。
どうしようもないスケコマシというべきかアカン男・竜一との再会。
ダメな男ほどかわいいというものではなく、憎み切れない男というものもあるのだと、そんなお話に、こまっちゃんの女性性をみることとなったのだが、
番外【ガールズトーク】では、若い頃乱交をした相手の女性と、多分投資家としてなかよくなったのであろう。
彼女とまさに、ガールズトークをするのです。
二人共、あんなヤツといいながら憎み切れないロクデナシ・竜一を。
これは、ちょっと洒落ています。

そして有坂と響のエピソードへ。。。
離婚した有坂の妻が産んだ子供が結婚することになり、父親に会いたいと、有坂は娘と合うことになるという展開。

総括は2巻へ。。。

14

特別な作品の、特別な二人

「特別」としか言えない、作品……
そんな「同級生シリーズ」の、OPERAに連載していた続編というか番外編が
この度単行本にまとまりました。

最初、せっかく本当に見事に終わった作品だったのに
これ以上引っ張っても……と、反発する気持ちもありながら
でもやはり読まずにはいられずに追っていた連載だったのだけれど、
こうして一冊にまとまってみると、やはり幸せを与えてくれる
特別な作品を、さらに特別にする短編達だったと思います。


#1 佐条と草壁 
ダウンジャケットを着てバイクに乗って草壁が、京都の佐条の家に来る。
しかし、佐条は日にちを勘違いしており、授業の発表の準備に追われている……
佐条が京都に進学し、遠距離恋愛になった二人が共に過ごす数日です。

#2 佐条と城ノ崎
受験の時に、真面目そうなのにキスマークをつけていたことを
実は印象深く憶えていた人々がいた。
そんな同級生と知り合う中、自分が付き合っているのは男であると明かす佐条。
佐条の色気にクラッとくる男一人女一人(笑) →城ノ崎はその男の方。

#2.5 草壁と佐条
イチャイチャの後……

#3 小松と竜一
脇役こまっちゃん。若き日に付き合っていた男と再会。
それがなかなかにしょうもない男なのだが……

#3 番外編<ガールズトーク>
そのしょうもない男とやはり寝ていた女友達、彼女と語る一コマ。

#3.5 草壁と佐条
佐条が大学から帰ってくると、草壁がグラタンをこしらえている。
一緒に食べるグラタン、食べさせてもらうグラタン。
そして、こたつでまったりお茶をすれば、もうどこにも出たくない佐条……

#4 前編<有坂と響>
印象的な脇役だったこの二人の背景を知りたい、という期待に応えて。
前妻から連絡が入り、結婚が決まった娘が有坂と会いたがっているという。
高校の進路指導室、響との出会いが回想されながら、
響に選んでもらった服を着て、娘との待ち合わせの店で待つ有坂……
次号に続く!

というのが、内容。


佐条と草壁の、日常の中で醸し出される柔らかで素直な心。
お互いを思い合う気持ちや、それぞれの瑞々しい個性。
その他愛もない仕草やセリフにキュンキュンくる。

彼らは、永遠に特別な二人なのだ……と
再確認しながら、二巻に進みます。

7

あのふたり、このふたり

佐条と草壁の今についてから始まる、『同級生』シリーズ登場キャラクターたちのその後。
O.B.って、いい響きですよね。原センはもともとO.B.ですしね。
オムニバス形式で彼らのその後が描かれています。この表紙でドキッとするのは、様々な年齢のキャラクターたちがおりましたが、彼らみな『高校生』だった頃の姿なのですよね。青春だった頃、色んな感情に押しつぶされそうになるあの青い頃の姿。

それぞれのお話についてではなく、キャラクターやカップルごとにつらつらと語るようなレビュー内容(の予定)です。

[草壁と佐条]
ふたつのひかり。こんなにも読者の心を魅了して離れなくさせるほどの、ひかり。
ときに弱くときに強く光るふたつのひかりの行く末を見届けました。
にしてもやはり、佐条の線の細さと儚げな雰囲気は独特ですね。ただの黒髪眼鏡っ子が、こんなにも妖艶に見える。つるりとした頭の形から首筋に至るまで。それが草壁の目にどんな風に映るかを、私たちは紙上で見ているわけですが、ううん欲情するのも致し方ありませんね。
すごく大人になっていました。見た目ではなく、精神的に。
そして佐条はとても素直に愛情を告げられるようになっていました。好きだということに自信を持っていて、素敵です。
いつまでも仲の良いふたりでね。幸せにね。

[城ノ崎と佐条に想いを寄せた子]
誰かの目線から見た、佐条というのはいつにもまして本当に魅力的ですね。
いや魅了されるのは読者だけではないのだとつくづく実感いたしました。よくぞ押し留まってくれた、城ノ崎、君はよくよく頑張った…!!
横恋慕も話としてはアリかなぁとも思いましたが、草壁とともに在るときの佐条は誰をも入れられないほどより美しいのでしょうね。そういえば、原先生もそうでしたものね。割ることなんて出来ないようなふたり、って強いなぁ。
佐条にとって疎外感を覚えるような世界において、彼らふたりの存在はとてもとても心強いものでしょう。またとない理解者。
友達できてよかった、草壁ではないけれど、私もそう思います。

[コマッちゃん]
なるほどこんなバックボーンがあったわけですね!
人生において、忘れられようもない出会いと別れ。唐突に起きて唐突に消える。
竜一みたいな人は本当に困るけれど、でも憎みきれないなぁというのも分かります。ガールズトークで、ふたりして話している姿も、分かる分かるなんて読んでしまいました。
さてもしかして今後、会社として付き合いがあるのかな。コマっちゃん振り回されてるな!(笑)

[有坂先生と佐野君]
名前を呼び合うようになっているんですね!
空原での彼らにまつわるシーンは、その全てが辛くて苦しくて見ていられなくって、くしゃくしゃになっている有坂先生の印象がとても強いです。だから、幸せそうで安心しました。
有坂先生のお子さん、先生にそっくりでしたね。綺麗な子。我が子だからこそ、佐野君を紹介したいと感じたのでしょう。嘘をつきたくなかったんですよね、きっと。ふたりしてぐしゃぐしゃに涙を流して、似ているなぁ。素敵な子だなぁ…。
彼らの知らなかった過去も織り交ぜられて綴られたストーリーに心が奪われました。ようやく、ふたりの夜を迎えられているかな。これでまた、佐野君の自信に繋がるといいな。

[空と原とフジノくん]
フジノくんは単純に鈍感だったのですね。だから空乃がまだ、ああしていられたんだと納得しました。ただの良い子、というよりも良い子でかつ少しばかりニブチンだったのか。
不思議と仲がいい子、思い返しても思い当たるような接点がない子、いやきっとどこかでキッカケはあったはずだけれど、そのキッカケがなんだったかを掘り起こせない子。
淡いキスの思い出を、うまく昇華できたのかなと。空乃にとって、今そこで躓いているわけでもないけど、気になるひとつのことを思い出に変えられたかなと感じます。
原センはきっといつからか諦めることが上手になっていて、それでいて隠すこともうまくなりすぎていて、そうしたらいつの間にかガチガチに固まっていたのでしょう。そこをひとつずつ軽くしてくれたのが空乃の存在です。佐条の卒業とともに、本当になにもかもを諦めてしまった原センにとって現れた光。
今はまだ言えないし、もしかしてこのまま言えないままかもしれない。
けれどふたりがふたりで居られれば、大丈夫です。少なくとも原センは、空乃を必要としています。だから、大丈夫。もうなにも諦めなくたっていいんだよ、原センセ。

6

タイトルからして

同級生シリーズの完結編と言うことで、首を長くしながら待ちつつ、でもこれで終わりか…、という悲しさもありつつ、でも大好きなシリーズなのでじっくりと読みました。

もうタイトルからしていいよね。「同級生」「卒業生(冬・春)」「空と原」「O.B.」。こんなに端的な言葉ながら二人の関係をにおわせる。中村先生のセンスってどんだけ良いんだ!と絶賛しつつ。

「#1 草壁と佐条」
相変わらずお互いを思いやり大事にしている二人に会えてすごくうれしかった。ゆるぎない相手への信頼というか愛情というか…。
レポートを終え、草壁くんの布団にもぐりこんで寝ている佐条くんの寝顔の可愛さにノックアウトされました。

「#2 佐条と城ノ崎」
入試の時にすれ違っていた二人。その時に佐条くんの首筋にキスマークを見つけていた城ノ崎君は佐条くんのことが気になっていて…。と言うお話。
城ノ崎くんが当て馬になったりイヤな子だったら嫌だな、と思いましたが、すっごくいい子でした(笑)。佐条くんのフェロモンに当てられつつ、それでも草壁くんのことしかみていない佐条くんにエールを送る。同級生シリーズは脇を固めるいわゆる「脇役」さんたちが本当にいい味出してますが、彼も本当にいい子でうれしかった。
城ノ崎くんのセリフの「焼きついてしもたんや 逆光みたいに」と言うセリフに、このシリーズの隠れテーマ(と個人的に命名した)「光」がうまく生きてるな、と感心しました。

「#2.5 草壁と佐条」
いちゃついてる二人です。
草壁くんが「新婚みたいだなーと思って」と言うセリフがありますが、いやいや、あなたたち、『ツーと言えばカー』の熟年夫婦みたいですから!と思わず突っ込んでしまった。

「#3 小松と竜一」
コマっちゃんが主役のお話です。
ああ、コマっちゃんはこんなダメ男が好きそう。って思わず思ってしまった。同級生シリーズは嫌な奴って出てきた記憶がないですが、この竜ちゃんはほんとにロクデナシです。
「ごめんな」「うれしかった」「ありがと」のセリフにほだされちゃダメ!でも、そんな人の良いコマっちゃんが可愛らしかったです。

「#3 番外編 ガールズトーク」
これは笑ってしまった…。ほんとガールズトークだよ…。コマっちゃんの乙女ぶりが良いです。

「#3.5 草壁と佐条」
これ見てグラタンが食べたくなった私。美味しいよね!グラタン。
イヤ、そうじゃなくて。ひたすらイチャコラしてる二人のお話でした。

「#4 <前編>有坂と響」
この二人のその後がすごく気になっていたので読めて嬉しかった。
普通に家に遊びに来たり、名前で呼び合うようになったり、ちょっと距離が縮んだかな、と思ったのだけれど、有坂先生からしたらまだ自分の中で禁忌があるのかな…。でも自分の気持ちを押し付けるだけだった響くんが精神的に大人になってていい感じでした。
<前編>では二人の出会いの回想がスペースの多くを占めているのだけれど、有坂先生のお嬢さんが結婚する、その前に会いたいとお嬢さんが言っている、という話がベースです。この続きは次巻へと続きます。

「O.B.」というタイトル通り、シリーズで出てきたたくさんのキャラたちが出てきて、すごく味わい深い作品になっています。

6

まるで透明な結晶のような

『O.B.』の連載が始まると知ったときは、嬉しい反面
あの名作の名エンディングの後ではどんなラブラブ後日談も
蛇足に思えてしまうのではないかと複雑な心境でした。
(『空と原』はハラセン救済作として
 読んでいたのでそこまで気にならなかったのですが)

しかし、連載を雑誌で読むにつれ
そうした不安は全くの杞憂であったと思い直しました。
ただのファンサービスではない、
「卒業」の後も末永く続いていく彼らの人生、
それを二人で歩んでいくことの重みとこの上ない幸福が
物語全体に貫かれていて、ズシリと胸にくるものがありました。


草壁と佐條の話は、
草壁が京都の佐條の部屋で過ごすほんの数日の物語。
「同級生」の頃より確実に大人になった二人だけど
二人を包む空気は当時と変わらない、
読者の自分が決して戻ることのできない
青年特有の輝きに満ち溢れているようで、眩しい。

大学の飲み会や、佐条のことを好きな女の子が出てきたり、
外部の世界との繋がりは随所に出てくるが、
それでも二人は、世俗のあらゆる不純物から解放された
水晶のような世界で生きているように見える。

この先、モラトリアムや遠距離恋愛が終われば、
もっと相手の嫌な部分が見えてきたり、
社会の中で同性愛者として生きていく大変さを経験して
今ほどピュアピュアじゃいられなくなるのかもしれないが
だからこその刹那的な輝きが愛おしくて仕方がない。
いつか一緒に暮らせることを夢見て
束の間の逢瀬を大事に大事にする二人を見ていると、
きっと何があってもお互いへの圧倒的な愛情は変わらないのだろうと思います。


時間が止まったような世界が描かれる一方で
夢物語のような浮ついた印象がないのは、
ちゃんと草壁と佐条が未来を見据えているため。
そして、草壁と佐条がいづれ出くわすかもしれない
現実的な人間の嫌な、めんどくさいアレコレが
外の世界―コマッちゃんや有坂先生、ハラセンたちを
通して描かれているためでもあると思います。

コマっちゃんの話は、昔泣かされたロクデナシ男との再会と一夜の交わり。
そして、その男が縁で知り合った女性との奇妙な友情が
「ガールズトーク」(←唯一の描き下ろし!)で描かれます。
ロクデナシ男を嫌いきれないコマっちゃんの情深さ、
男を肴にガールズトークする二人に
大人の含蓄と乙女な可愛さを感じる、味わい深い短編です。

有坂やハラセンの話については次巻で述べたいと思います。

6

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