電子限定描き下ろし漫画付き
作家買い。
読み始めたとき、意味がさっぱり分からず頭の中に「?」マークが飛び交いました。人間関係とか登場人物が全然つながらないんです。
が。
さすが明治さん。
この作品の持つ世界観が理解できるようになるとあっという間に独特な世界観に引きずり込まれます。
山の神の声を聞くことができる「覡」という存在を描いた作品です。
覡は山の神の声を聞き、それをもとに人々にご神託を与えている。が、神の声を聞くためにはエサが必要。その「エサ」となるのが「ためつもの」。覡は神秘な存在ではありますが、「ためつもの」がいなくなってしまえばともに消滅してしまうという共存している立場なのです。
今作品で覡とためつものは数人登場していますが、中でもメインで描かれているのは覡である定用と「ためつもの」の豊。子どものころに引き合わされ、覡とためつものとして生きてきた彼らですが、この二人は馬が合わずすれ違ってばかりなのです。
彼らと対比するように描かれているのが、定用の弟で覡でもあるわたると、わたるの「ためつもの」である竜。この二人は定用と豊とは異なり、きちんと恋愛感情が育っていて仲良し。そのためか、わたるの覡としての能力は日々育っていく。
そしてもう一人。
序盤に、覡で、彼らの遠縁にあたる信という青年のエピソードが収録されています。
ためつものに死なれ、以来精を得るために村の男に抱かれ続けてきた信。
「ためつもの」の存在を失った覡。
けれど、男に抱かれ「エサ」を与えられても覡としては十分な能力を発揮することはできない。
では、覡に必要なものは何なのか。
最後に信が望んだものは―。
「エサ」を得るためにためつもの(あるいは男に)抱かれる覡ですが、本当に必要なものは愛情なのだと。定用、わたる、そして信。三人の覡を通して、覡にとって、人にとって、真に必要なものは何なのかを描いています。
明治さんてちょっと独特な絵柄を描かれる作家さまで、その絵柄で紡がれていくストーリーもすごく独特というか、特殊な世界観。
が、そこに描かれているのは紛れもなく愛情で、人にとって必要なものは何なのかをきっちり描き切っている。
覡とたもつものは身体の接触によってエネルギーを補給していくので、濡れ場の回数はそれなりに多いです。多いですが、エロいというよりも何となく神聖な感じがしました。はじめはエネルギー補給としてのセックスしかしてこなかった二人が、少しずつ歩み寄り、理解し合い、そして愛しあうようになっていく。その過程に激萌えしました。
シリアスに見えて、実はがっつりラブストーリー。
エロが多めでありながら、純愛。
明治さんらしいバランスのいい作品でした。
文句なく、神評価です。
「坂の上の魔法使い」シリーズを思わせる、奥深い愛の物語でした。
3組のカップルのお話が描かれているのですが、各カップルの物語は相互に絡み合っていて、複雑な世界観を感じさせます。
口の悪いツンデレ受が、不器用ながら包容力ある優しい攻の死期が近づいていると知って奮闘し、両想いになる…というお話なんですが、一筋縄ではいかない世界観設定にニヤニヤ、ハラハラさせられます。
考えれば考えるほど深い。雄大な自然と小さなムラの中で、命や愛とは何かを考えさせられる名作です。
そしてエロがとてつもなくエロい…。
受けが体を神様に乗っ取られて大胆にセックスしたり、かと思いきや、好きな人と心をつなげるのが始めてで、一緒に横で寝られるだけで頰を染めたり…。
エロいのに純情で可愛い、最強の受けでした…。
とにもかくにも、まず読んでほしい!ほんと素晴らしいから!後悔させないから!という気持ちです。明治カナ子先生作品に外れなし。今回も期待を何億倍も上回る、素晴らしすぎる作品でした。
山の神に仕える「覡」に美味しく頂かれる「ためつもの」。
人でも木でもない不思議な存在です。誕生木が枯れてしまうと、そのためつものも死んでしまいます。
「覡」と「ためつもの」の関係が上手くいっていれば、「覡」は仕事もうまくでき、立場が良くなっていくようですが、子供同士のときに引き合わされるので一筋縄ではいかないようで。
連作短編です。「土塊」で山に仕えるという不思議な話が語られ、「雨敷」で覡(弟)の話、「雨敷II」で覡(兄)の話になります。「ためつもの」以下は、覡(兄)の定用と、ためつものの豊のストーリーになり、枯れそうだった柚子の木を花を咲かせるまでに至ります。
柚子の大馬鹿18年と言われますが、花が咲いたのは23歳という遅咲き。お互いにさんざん他の男を抱いて抱かれていたというのに、恥ずかしがっている様子が初々しくてニヤケてしまいました。
意地っ張りなんですが、時々優しい。お互い蔑ろにしてはいないというのが読んでいて楽しかったです。眼鏡を選んであげるところや、デートマニュアルをそれと気が付かずに真面目に実行していく様が可愛らしかったです。トイレで寝られると困る、という場面も好きでした。
最高にもどかしい、恋を知らなすぎる大人の素敵なお話でした♡
真敷様が繋ぐ、真敷の分家のお話が1冊に入っています。
お話の筋は大きく分けて3つ収録されていますが、実質まとめて1つのお話です。
神の声を聞く『覡』と、その覡と体を繋げることで力を与える『ためつもの』のお話。
一番最初に、真敷の分家・二敷家の覡である二敷信が山崩れによって亡くなるお話が入っています。
この作品の時点では私がまだこのお話の本筋を理解していなかったので読んでいる時点ではちょっとあまり理解できていませんでした。
が、その後に収録されている表題作を読んでる最中にこのお話の尊さが襲ってきました!!
その次に、二敷家と同じく真敷の血筋の雨敷家のお話が入っています。
最初に雨敷家次男で覡の雨敷わたると、わたるの「ためつもの」である雨敷竜のお話。
後に雨敷家長男で覡の雨敷定用と、定用の「ためつもの」である雨敷豊のお話。(←表題作)
竜と豊は、子供の頃に真敷様が迎えに行って雨敷家へ養子となっています。
出逢った時から相性が良いわたると竜が大人になっても一心同体なのに対して、
定用と豊は子供の頃から、そして大人になっても険悪そのもの。
定用と豊の関係性が少しずつ、ほんと少しずつ動いていくのがたまりませんでした♡
定用が「恋愛感情」に疎く豊かに対する自分の気持ちに感情がついてこれない感じなのがたまらなく可愛かったです。
皆さんのレビューに導かれて本作品に出会いました 初読みの作家さまでしたが、本当に出会えて良かったと、皆様に感謝でした
とにかく、読後何でしょう、この世界観!
淡々とストーリーが進んでいくようで、関わりのなかで、じわじわとふたりの情緒が成熟し、濃厚な愛が成就する、という引き込まれる物語でした
これから、新たな神さまの宿る山で、不器用なふたりがどのように愛を育んでいくのかなぁと想像せずにはいられないほど、魅力的な登場人物ですね