SS付き電子限定版
赤いマントを纏った運び屋「赤ずきん」(攻め)
警視庁特殊部隊の捜査官「ウルフ」(受け)
という、新刊のあらすじに書かれていた上記ワードで「絶対購入する!」と決めていた中原さんの新作。
数多いらっしゃる(BL)小説家のなかで、個人的に非常に読み心地の良い作家さん。
今回も期待以上で、終始ニヤニヤしながら読み進めていきました。
大人の男性が対等に関係を築き、認め合う。
この互いを尊重する関係を基に愛情と性欲を色っぽく絡まり合わせた描写は中原さんの独壇場だと思います。本当に抜群に上手い(偉そうにごめんなさい)。
最後まで堪能させていただきました。できることなら続刊熱烈希望。
物語は赤ずきんこと工藤と捜査官の向井が当初敵対関係だったところから始まり、工藤からの働き掛け(タラシこむとも言うかも)を経て手を結び、某人物と対峙するといった流れ。
お話の内容が魅力的なのはもちろんですが、特殊部隊の技能がパルクールなので、 文章から風を切り、ふわりと重力に逆らうように飛ぶ姿、するりと壁を登る姿等が映像として鮮明に頭に浮かび、なんとも言えない疾走感を味わえる作品でもありました。
そして、毎回思うのですが人物造形が素晴らしい。
例えば有能な「ウルフ」のリーダーである向井ですが、極度の綺麗好きで無意識に掃除(テーブルを除菌シートで拭いちゃう)してしまうとか。
以前、お付き合いした女性から振られた際の言葉は「掃除するのに疲れたの」。
人間的で思わず読んでいて「クスッ」となってしまう。
もちろん、攻めの工藤は大人の色気と余裕とエロさと優しさが溢れかえってます!
捜査官ものがお好きな方、オトナの男性の色気を堪能したい方にお薦め作品。
そして、真面目に今のリアルな世の中においての問題点に目を向けさせてくれる作品でもありますので、恋愛以外のものをお求めの方へもお薦めです。
パルクールの技術を応用して、ビルとビルの間を飛びぬけ、逮捕活動を展開する警察官の部隊。
パルクール部隊の「狼」のチーフが主人公。
赤ずきんを追う狼。
面白そうだと思って選んだ本だけど、想像以上に面白かった。
かっこよかった!!!
もう、それに尽きます。
余裕のあるオヤジ攻めがウブな美人受けと追いかけっこして共闘してラブも生まれるお話。
みずかねりょう先生のイラスト最高です!男らしい2人の色気にクラクラ~。
赤ずきんの攻めが追われる側。追う側のクールな受けをタラシこんで自分のモノにしちゃう一手も二手も上手な攻めに終始読者としても巻き込まれっぱなしでした。
こういう攻めが受けのために余裕なくしちゃったりジタバタするのが萌えるので…もっと攻め視点もあったら確実に萌え転がってた気がしますww裏が読めないオヤジの裏が知りたい~~~!
全体のお話はシリアスで正義とは?を突きつけられますし、今の日本とリンクしているようなちょっと未来の世界観にヒヤリとします。
物騒だもんね、最近。。
最後の2人のやり取り好きでした。愛しちゃってるのね。
人手不足解消の為の移民政策実施により、格差の拡大に治安の悪化と凶悪犯罪が激増した日本。
平和を取り戻すべく犯罪者を追う、特殊部隊「ウルフ」の捜査官と、赤いマントを纏い警察を翻弄する運び屋「赤ずきん」による、骨太の警察ものになります。
これ、攻めが赤ずきんで受けが狼で、更に二人で追いかけっこ!
てっきり、いつものトンチキ系かと思ってましたが、かなりシリアスで骨太の社会派BLでしたよ。
ちょっと前になりますが「本当の正義とは何か?」と言うテーマの、授業を見学させてもらったんですよね。
例えば、目の前に線路切り替えレバーがあり、切り替えなければ線路上に居る人間が一人死にます。
でも切り替えると、電車に乗っている10人が線路から脱線して崖から落ちて死んでしまう。
この場合、あなたはどうしますか?
また、電車に乗ってるのが、凶悪犯罪者10人なら?
ここから、最大多数の最大幸福と言う論理なんかも展開されたワケですが、この「平和で大多数の人の幸せ」と言うものが、何だか得体の知れないゾッとするものに感じられたのを思いだしましたよ。
まぁ要は、そんな、正義に対する考え方の違う一人の男と、犯罪者かと思いきや、そんな彼の暴走した行動を止めようと対立する「赤ずきん」。
更に、捜査官として犯罪者を追いつつも、この事実を知り赤ずきんの協力者となる主人公との、正義の為の戦いって感じになるでしょうか。
読んで癒されるって感じでは無いし、甘さも少な目。
ただ、すごく読み応えがあり、作品として面白い。
のんびり甘いお話を読みたいと言う方にはオススメしかねますが、骨太で深いストーリー性のあるものを読みたいと言う方にはピッタリじゃないのかなぁ。
あと、個人的な萌え処。
えーと、赤ずきんこと工藤ですが、包容力がありちょい悪い男であり、男くさい色気を漂わせるオヤジです。
そう、中原先生の書くオヤジ、格好よすぎー!
また、そんなオヤジにチョッカイを出されまくる主人公で、捜査官の向井。
生真面目で正義感が強く、抜群の身体能力にきれい好き!
いや、無意識にあちこち拭き上げてるのに笑えるのです。
また、この二人のやりとりも面白くて。
どちらかと言うとウブな向井に、セクハラみたいなチョッカイをかけてからかう工藤って感じですかね。
そして、見所のもう一つが、捜査官達の犯人を追う際のパフォーマンス。
パルクールの使い手である捜査官達が、狼の狩りのように統率の取れた動きで獲物(犯罪者)追うわけです。
これも格好よすぎー!
臨場感のある巧みな描写でして、実際に目の前で繰り広げられてるみたいに感じちゃうのです。
そんな彼等を軽くいなしながら、追跡の手をくぐり抜けてく工藤も、また格好よすぎー!!
そう、重いテーマでシリアスな作品ながら、萌え処もしっかりあるんですよ。
ところで、今作を読みながら、国民がナンバーやコンピュータで支配される管理社会に、ゾッとしましたよ。
ありえない未来では無い所が恐ろしい。
そう!
私も以前から「パルクールはカッコいい」と思っていたんですよ。
そのただでさえカッコいいパルクールを駆使して荒れたスラム街を飛び回り犯罪者を逮捕する特殊部隊のチームリーダー向井はロシアとのクオーター。対面ではその美貌で、背を向ければその濃紺の制服の背中にクッキリと記された『WOLF』の文字で私をメロメロに。
お相手はオヤジの魅力をプンプン巻き散らす違法運び屋の、通称『赤ずきん』。
動き辛いはずの赤いマントを常に着用し、ウルフ達に何度も発見されながらもまるでからかう様に逃げ去ってしまう警察特殊部隊以上の実力保持者。
そしてもう1人の登場人物は掴みどころのない向井の上司、遠野。
ウルフの統括を行っている彼は誰よりも犯罪を憎み、その根絶に全てをささげている紳士然としたエリート。
ねぇ、なんて外連味タップリなのっ。
主要登場人物だけでもう盛り過ぎでしょ!
それ以外の『小道具』にも萌え要素がいっぱい散りばめられているんですよ。
飲酒・喫煙が制限された管理社会の中でひっそりと経営される違法バーで出されるカクテル。
それに伴うシャンソン歌手だった祖母の思い出。
雨の中で燻らせられた煙草の香り。
執拗に追いかけているうちに生まれる強すぎる執着……
もう、書かれるものすべてから萌えが発生する様な本ですよ、これは。
管理社会が進んでしまう理由や、赤ずきんの正体、3人の関係性などは『謎』というほどではないですけれど、お話が進むにつれて解る構成になっていますので、ここでは触れないことにします。
クライマックスが若干駆け足すぎて、壮大な物語の結末としては物足りない感はありましたが、とにかく萌え要素のてんこ盛りに打ち砕かれ、骨抜きになってしまいました。
余計な蛇足をつけさせていただければ「管理社会はつまらん」と私も思います。
素敵なもの、カッコいいもの、ハートをドキュンと(ここ、笑うとこです)打ち抜くものは、猥雑な巷の中から生まれるんだと思うのですよね。