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表題作秘め恋

稲荷九朗,18歳,高校生
一尾彼方,18歳,高校生

同時収録作品秘め恋 三話

稲荷旭,九朗父
一尾弘,彼方父

その他の収録作品

  • ふゆがとけたら(描き下ろし)

あらすじ

村を災いから守り繁栄を確かなものとするため、狐一族の末裔と、狐の嫁の末裔として婚姻の儀式をすることになった幼馴染みの彼方と九朗。だが、風習を信じる彼方と違い、九朗はやる気がない様子で!?

作品情報

作品名
秘め恋
著者
三ツ矢凡人 
媒体
漫画(コミック)
出版社
白泉社
レーベル
花丸コミックス・プレミアム
発売日
ISBN
9784592720997
3.7

(90)

(18)

萌々

(37)

(28)

中立

(5)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
11
得点
327
評価数
90
平均
3.7 / 5
神率
20%

レビュー投稿数11

ひたすらに勿体ない!

本当に、本当に才能の無駄遣いというか、三ツ矢さんの作品はいつも勿体なさを感じてしまいます。
これだけ素晴らしいお話を作れて、これだけ人を魅了する絵を描ける方なのに、一巻で完結してしまう。
きっと、もっと掘り下げてよりいい作品にすることが出来たと思います。

このお話には二組の物語が出てきますが、まずは九郎と彼方。
この二人は「稲荷家の長男」と「一尾家の長男」として婚姻を結ぶことになります。
この仕来りは先祖代々続いているもので、その昔村に飢餓が訪れた時に九の尾をもつ狐が現れます。
その狐は村を救う代わりに村の中から一人嫁に貰うと言います。
そのことから、九尾の末裔とされる「稲荷家」とその嫁の一族「一尾家」の長男たちが婚姻を結ぶことになるわけです。
これは村の平和を守るため、とされており、昨年までは二人の父親同士が一年に一度儀式をして村を守っていました。
それが、この年からは息子たち二人に受け継がれるわけです。
そして、九郎は狐と意思疎通ができ、実は先祖代々続いている儀式に意味が無いことを知っています。
なので、ただこの家系に生まれただけの自分たちが結ばれるのは不本意ではないかと思うわけです。
そこで色々葛藤して、結局結ばれるわけですが。
そこから突然、二人によく似た、もう一組のお話が始まってしまいます。
なんの前触れもなく。(恐らくページ数の制限から)
読者からすれば、混乱しないわけがありません。
後にこのもう一組が、九郎の父と彼方の父だということがわかってきます。
この二人は他の方も言うようにとても切なく、最終的にはお互い嫁を貰い子孫を残すこととなります。
が、しかし。
九郎と彼方が成長し、当然その二人の父親も年をとるわけですが、普通に話しているわけです。
まあそこはだいたい読み取れますが、問題はこの二人の嫁達。
九郎の父親、旭は幼馴染の清子と。
彼方の父親、弘は村の外から来た女性と。(この子は恐らく、弘の部屋に上がり込んでいた黒い狐の化身)
それぞれに何があって、九郎と彼方、そして妹の遥が生まれたのか。
その詳細は一切描かれておらず、またその後の清子については儀式翌日の九郎の発言「うちはお袋いねーんだし」からしか読み取れません。
ただ、他の部分でしっかりお話が描かれている以上、これはもうページ数の問題なのかな、と。


三ツ矢先生の素晴らしい才能を、どうか最大限に活かして欲しい。
そう願うばかりです。

8

狐が村のあちこちにいる

村のしきたりで年に一度稲荷家の長男と一尾家の長男が婚姻(セックス)をする事で、村は災いから守られるらしいです。男色の意味合いあるので村以外の者には秘匿されてます。

九郎は狐の言葉が分かるので儀式には意味がない事を知っています。狐が言うには一尾家の者を大切にすることなので、例え彼方が自分と結ばれなくても大切にしようと決意していました。彼方はそんな九郎の態度を誤解して、好きじゃないからセックスしないんだと悲しむんです。
完全なる両片想いです。彼方の気持ちに合わせて天候が変化するという、本人は無自覚な力があるようです。

この2人の父親たちがもっと切なかったです。両方とも後継ぎの為に女性と結婚しています。そして気持ちを確かめあった後に、儀式以外ではセックスしなくなりました。彼方の父親は子ども達は村から遠ざかって生きて行って欲しいと彼方と妹は遥と名付けてます。

最終話は彼方に一目惚れした民族学の教授の息子が当て馬で登場します。全てを気に入った物を自分で選んでると語る彼に、彼方は自分の気持ちが本物なのかとぐらつくんです。これには九郎が気の毒になりました。儀式を知る前の自分達はただの九郎と彼方だった事にやっと気がついて、九郎に改めて告白してます。

彼方に近づくよそ者を警戒する狐達が個人的にお気に入りでした。

一尾家の後継ぎは遥ちゃんが産んでくれそうだけど、稲荷家は九郎がひとりっ子なのでちょっと気掛かりでした。

8

田舎のしきたりBL、良い…!!

村の変な掟に翻弄される、ちょっと不思議なお話です。
九朗と彼方、両片思いのすれ違いが可愛い!!

私は表題作より、第三話…、九朗の父と彼方の父の若い頃のお話がすごく好きでした。
このふたりも、村のしきたりで一晩限り夫婦になる運命。九朗にそっくりの旭(九朗父)と糸目で真ん中分けの弘(彼方父)。ふたりも好きあっています。
気持ちが通じあってのアオカンは良かったです。「俺としてお前を抱けるのは今日で最後だな」というセリフが悲しい。
結局、子孫を残すために旭は許嫁かつ幼馴染の女の子と、弘も可愛いお見合い相手と結婚しました。旭の結婚相手は弘のことが好きだし、村の掟に従わなければいけないのは少し可哀想だな~と思いました。
ただ女キャラがどちらも可愛いので個人的にアリ!!好きです。
できればお母さんになった清子も見たかったのですが全然出てきませんでした笑

四話、五話は唐突に当て馬が出てきます。
当て馬くんのキャラは好きなのですが、話の展開があっさりしすぎ&当て馬くん可哀想なのであまり好きじゃないです。


田舎の不思議な風習に翻弄される主人公たち、そして村人たち。
これ、親同士のカップルも子供同士のカップルも好き合っていたので良かったのですが、
ノーマルな人がやらなきゃいけなくなったら可哀想ですよね。

6

遠く昔から。狐に見守られ、育まれた恋人たち。

祭りしかイベントの無い、旧い因習を守って来た村で育った稲荷の血筋、九朗と幼馴染で一尾家の彼方。村を厄災から護る為、2人は祭りの日に結ばれると決められている。
親同士というよりも、村ぐるみで決められた許婚。2人は心の底から愛し合っているが為に、因習で結ばれる事に葛藤していた。
村で大切にされ、自由に生きている狐たちの言葉が解る九朗は、この因習が意味の無い事に早くから気付いていた。結ばれる事が肝心なのでは無い。一尾の人間を大切にする、というのが稲荷家に課せられた事なのだと。九朗は一人合点する。彼方の幸せを見守るのが自分の役目なのだと。彼方は彼方でそんな九朗の自由を奪ってしまう事を怖れている。すれ違いモダモダする2人。けれど。九朗は自分の思い違いに気付く。彼方を幸せにするのは自分の役目。彼方が望むなら、愛してもいいのだと。

子供心に自分の恋を諦めて、彼方の幸せを第一に生きると決めた九朗が男前過ぎて。
健気でカッコよくて。可愛くて。ちょっとだけ泣けます。まぁ思い込み激し過ぎて、勘違い暴走野郎なんですが。九朗が彼方を一番に考え過ぎて手を出しあぐねていたばかりに、彼方は不安になってしまう。
そんな事で彼方を不安にさせてりゃ男前も台無しです。
まぁ、この2人はめでたくラブラブなんですが。
物語は突然その親たちの若い頃の時代へと遡る。最初、全然違う物語が始まったのかと驚いてしまう。
読み進めるうちにそれは彼等の父親の話だと理解する。
昔話というからには、も少し遡って曽祖父くらいまで行かないと…中々生々しいのだ。
村が特殊な因習に縛られている事を受け入れている父親同士は愛し合っているものの、家を絶やさない為に。稲荷家の長男、旭は幼馴染の清子と結婚が決まっている。清子は旭が祭りの日以外でも一尾家の長男、弘を抱いているのを容認している。それどころか清子は自分の運命を受け入れてながらも弘に想いを寄せている。弘は旭への想いを断ち切る様に、村の外から嫁を娶る。清子が見た弘の見合い相手は村に居た黒い狐の化身だったか…。不気味な様相を呈しながらも、エピソードは終わる。
結ばれなかった旭と弘の子供たち、九朗と彼方が時を経て、想い繋がり。結ばれる。
悲恋に終わった父の想いの切なさ。交錯する視線が物語るそれは。
何かを諦めた様なのに、それでも温かい。

最後はどういうわけか。東京から村へやって来て、突然彼方に横恋慕する狸こと伊月くんの当て馬未満のお話。もう九朗と彼方は互いの想いが盤石だと知っている筈なのに、彼方は九朗の自由を奪ってしまったのでは無いのかとモダモダ悩む。
自分の自由意志で恋をしているという事を互いに知る時。それが本当の恋の成就。
因習やしがらみが無くたって。九朗はきっと。彼方としか恋をしない。
彼方も九朗しか愛さない。そんなラブラブの日々が続く。甘々後日談でした。
何だったんだよ、伊月。

村に犬の様に沢山居る狐たちが、九朗が言葉を解るせいか。全面的に九朗の味方なのが微笑ましくも癒し。彼方はいつもあちこちに居る狐たちのせいで九朗に秘密は持てないし、父の旭も敵わない。
狐の言うには、この因習の始まりは、九尾の狐が彼方にそっくりの嫁を娶ったこと。
狐たちに大切に育まれた恋人たちがいつまでも幸せであります様に。

0

リアル狐パラダイス

村中に溢れる狐達が可愛い!
歩いていると普通に横にいるし、家の中にも入ってくるしで三日月村は狐パラダイスです。
一族の末裔にお付きの者として1匹ついているとかではなく、村民と同じように沢山の狐が生活している様が素敵でした。


本編は1、2話が彼方と九朗が結ばれるまでの話。3話が彼方と九朗の父親が儀式を引き継いで5年目の若い頃の話。4、5話が彼方と九朗に当て馬が現れ二人の絆が深くなる話。という構成です。


彼方と九朗は両片思いなのに儀式としてセックスを強要された為にすれ違い、結ばれるも最初から相手が決められていたからなのではないかと悩むという展開は王道路線のピュアさで可愛いなと思うのですが、問題は親世代です。


彼方父の弘と九朗父の旭は、両思いなのに跡取りが自分しかいないという理由でお互い嫁をとって別々の家庭を持つというなんとも悲しい展開。
もっともっと悲しいのはお互い嫁がいるのに儀式のために年に1回はセックスしないといけないのです。
そんなの気持ちを断ち切ろうにも断ち切れないでしょ!?
カバー裏に彼方と遥(彼方の妹)の名前の由来がありますが、それが悲しすぎて辛すぎて。

詳しくは描かれていませんが(そこもまた怖い)弘も旭も今は独り身のようで、儀式を息子に引き継いで二人の関係が変わっていくのか気になるところです。


そして醸し出すだけで触れられていない稲荷家の跡取り問題。
一尾家は遥ちゃんが張り切っているのでクリアですが、稲荷家は九朗しかいないのにどうするのでしょう。
絵柄の効果もありキラキラピュアピュアの可愛らしい話に思えますが、根底には田舎村の古い風習の闇を感じます…

11

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