イラスト入り
何度でも俺の腕のなかで目覚めさせて 犯してやる――。
笠井さんの美麗表紙につられて購入。
やばい。
めっちゃ萌えた…。
ストーリーとしても面白く、BL的な萌もぎっちり詰まっていて、読後ちょっと放心しました。
ということでレビューを。ネタバレ含んでいます。ご注意ください。
「災種」と呼ばれる人を襲う魔物がいる。
災種は、切られても頭をもがれても死ぬことはない。この災種を倒す方法は一つ。
「銀種」と呼ばれる種族に頭をつぶされた場合のみ、災種は絶命する。
銀種は人と同じ姿かたちをしているが決定的に違う点が一つ。
それは「死なない」こと。
たとえ死んでも蘇生する。
それ故に、人は銀種をコントロールし、見つけ次第親元から引き離し、軍に所属させ災種と闘わせている。
軍に所属していない銀種は、人間界で搾取される存在である。そのために銀種は人間を嫌い、同じ銀種同士でも仲良くすることはなく孤独を好む傾向にある。
銀種は「護衛官」と呼ばれる軍人とペアになり闘うことが規則で決まっていて、さらに「絶対者」と呼ばれる人間とペアになることもある。
という世界が舞台。
今作品の主人公は銀種のネス。
彼は銀種の中でもトップクラスの強さを誇り、その有能さゆえにいろいろな便宜を図ってもらっている。
そんなネスのもとに帝都からフィキという一人の軍人がやってくる。
左遷された彼は90日間という期限つきながらもここで研修を積むことになったのだ。フィキはネスの護衛官としてともに行動することになるが―。
鳥舟さんと言うと人外とかファンタジーものとかを多く書かれる作家さま、のイメージが個人的に強いのですが、今作品もそのイメージを損なうことの無いファンタジーもの。こういう世界観て、どうやって思いつくんでしょうね。引き出しが多い作家さまだなあと感心しきりですが、とにかくこの世界観が素晴らしい!
ネスは優秀な銀種でめっちゃ強いんです。
司令官もこなす、戦闘員。
で、ビジュアルも麗しい。
彼は闘い、そして絶命することにためらいがない。
銀種、ゆえに死んでも復活できるから、という理由だけではない。ように見える。
彼は、誰よりも彼自身が彼を大切にしていないんです。
なぜか。
彼の回想で、過去の壮絶な過去が見えてきます。
ネス自身、彼の過去を封印したいというか、思い出したくない、ということもあってその描写はあっさり目。なのですが、彼に対する人間の非道な仕打ちに怒りで胸が痛くなりました。
人は非力ゆえに自身の力では災種を倒すことはできない。
銀種がいて、彼らが災種と闘ってくれているからこそ、人は平穏な生活を送ることができている。
なのに、その銀種であるネスを、そしてまだ子どもだったセスを、あそこまでいたぶりつくすことのできる残虐さが恐ろしかった。
だからこそ、ネスは人と慣れあうことを良しとしない。
人と触れ合うことを極度に避けている。
それが、彼の人に対する恐怖心の裏返しにしか見えず、虚勢を張るネスの心情がなんとも切なかった。
けれど、ネスという青年はめっちゃ優しいのです。
口は悪く、短気で喧嘩っ早いネスの、仲間を守るその優しさと強さに、思わず落涙します。そんな彼の心情を、仲間たちが正しく汲み取っているのも非常に良かった。
そんなネスに近づいてきたのがフィキ。
上流階級に属しているであろう彼の、思惑とは。
序盤、フィキがどうにも胡散臭く感じてしまった。
鳥舟さんの文章力が半端ないためか、ネスと感情がシンクロしちゃうんですね。
フィキがネスを案じ、軍の司令官として能力を発揮し、ネスをはじめとする銀種の命を守りつつ災種と闘う姿を見るうちに。
そしてフィキがネスに惜しみない愛情と言葉を与えるにつれて。
ネスとともに、少しずつフィキへの信頼を、読者もまた育てていく。
ストーリーやバックボーンがとにかく面白く、一気にこの作品の持つ世界観に引き込まれていきますが、それと同時にフィキ×ネスの可愛さとカッコよさと、そして彼らが紡いでいく恋心に萌えが滾って仕方なかった。
特にネス。
人に傷つけられ、そして頑なに鎧をまとった彼の心が、フィキと出会ったことで少しずつ溶かされていく様がめっちゃ良かった…。誰にも心を許すことの無かったネスが、フィキに本人も気づかないうちにほだされていく姿が、めっちゃ可愛い!
今作品には「壊す」という言葉が頻繁に登場します。
前半は災種と闘い、災種を「壊し」、災種と闘ったことで「壊された」銀種。の姿が。
後半は、ネスの孤独と過酷な過去によってもたらされた彼の心の中の鎧が、フィキによって「壊されて」いく様が。
同じ「壊す」という言葉を、こうも自在に操り、それによって登場人物たちの心情すらも描き切る。その鳥舟さんの手腕に圧倒されます。
今まで辛酸をなめてきたネスが、フィキと出会い、心を通わせ、そしてぬくもりを手に入れた。ストーリーとしては王道のシンデレラストーリーといっていい展開ですが、薄幸な受けさんがスパダリな攻めさんに愛され幸せを手に入れるという展開が大好物なワタクシにはめっちゃドツボに入る作品でした。
終盤、フィキの両親とネスが交流を通わすシーンがありますが、フィキの母ちゃんが素敵すぎてこれまた悶絶しました。
そして笠井さんの挿絵も。
舞台が軍ということで、登場人物たちが軍服を着てますがこれがまずカッコいい。
ネスの、氷のような冷たい美貌。
フィキのスパダリ感あふれる男前さ。
そういったビジュアルはもちろん、ネスが少しずつフィキに心を許していく様とか、二人が心を通わせていくシーンとかそういった内面までもきっちり描き切っています。
笠井さんと言えば美しすぎる濡れ場のシーンもお得意ではありますが、今作品はエロ度はやや控えめ。控えめでありながらなお魅せる濡れ場のなんと美しいことか。
設定。
ストーリー。
キャラ。
何をとっても文句なしの素晴らしさ。
神、だけでは物足りない、神×10くらいの評価をつけたい、素晴らしき神作品でした。
死んでも何度も生き返る「銀種」の主人公と、彼と強い絆を持つ特別な存在「絶対者」である攻めとの、深い愛の物語です。
死んでも生き返ると言う特殊設定なんですけど、テーマが「命」だと思うんですよね。
その設定がすごく生きた。
鳥舟作品って、かなりトリッキーなものが多い印象ですけど、毎回根底にあるものは「愛」です。
とにかく受けが、稀に見るほど純粋で無欲だったりするんですよ。
中でも今回は、あまりに不器用で健気で泣けてしまいましたよ。
もっとワガママになってよ!
もっと命を大切にしてよ!
もっと、自分を愛してあげてよ!!と。
だからこそ、そんな主人公を大きすぎる愛で受け止める攻めの存在が、救いになるワケですが。
内容です。
銀種である軍人の主人公・ネス。
帝都から来た人間の少佐・フィキが、護衛官となる事に。
人間嫌いのネスはフィキに反発するものの、災種との戦いで重症を負い、彼と「絶対者」の契約を結んでしまいますがー・・・と言うものです。
まずこちら、作り込まれた世界観が魅力だと思うんですけど。
この「銀種」ですが、銀の髪に瞳を持つ人間とは異なる生き物で、なんと死んでも生き返ると言う特性を持っています。
更に「災種」と言う魔物や魔獣を彼等だけが滅ぼす事が出来る。
で、人間達は、そんな彼等の特性から対災種用として過酷な戦いを任せつつ、同時に恐れと蔑視を持って扱っています。
また、そんな彼等の戦いをサポートして護衛の役目を負うのが護衛官。
その護衛官の中でも銀種と特別な絆を築いて一心同体とも言える存在となった者を絶対者と言い、彼等のみが自分の銀種を即座に生き返らせる事が出来ると言う設定。
個人的にこう言う設定に弱いので、まずこれだけで萌え滾っちゃうんですよね。
いや、銀種と絶対者の絆と言うのがそれこそ絶対的なものなんですよ。
銀種達は総じて人間嫌いなんですけど、自分の絶対者に対してのみ、深い信頼と愛着を寄せる。
で、主人公となるネスですが、16歳まで野良の銀種として軍とは無関係に生きてきた、頑固で扱い辛い問題児。
ただ滅法強く、その為多少の反抗的な態度は許されてる存在でしょうか。
そんな彼と絶対者の契約を結んだのが、帝都から来たエリート中のエリートであるフィキ。
左遷されてきたとの噂ながらとても優秀で、更にこの転属には何か隠された目的がありそうで・・と匂わせてあります。
これ、最初こそ二人の相性は良くない印象。
瀕死の状態でのドサクサで、ネスはフィキを絶対者とする契約を結んでしまいと、互いに信頼関係を築いた上での契約では無いのです。
ネスですが、根本的に人間そのものが嫌いで、フィキに対しても頑なに反発する。
逆にフィキですが、何か目的があるだろう事は分かるものの、ネスに対して深い思いやりを見せる。
そう、ネスが初めて出逢った、自分を大切に扱ってくれる不思議な「人間」なのです。
今回ですね、この主人公の心情描写と言うのが、とにかく切ないし心が痛むんですよ。
彼がここまで人間に対して不信感や反発心を持つ理由ー。
それが話が進むに連れて徐々に明かされて行きます。
16歳まで野良の銀種として生きてきた、ネスの壮絶な過去。
何度も生き返るなんて夢のようだと思いきや、そのせいで悲惨そのものの体験を繰り返してきた。
死んでいるネスの身体を、欲望を満たす為の道具とした人間達。
ネスを散々犯し、彼の身体が壊れる為に殺す。
そして生き返ると、再び犯しつくす。
野生動物に喰われ続けて、生き返るまで3年もかかってしまった事や、目覚めたら誰かの体液にまみれた状態で、自身が死姦されたのだと悟った事。
なんかもう、読んでてめちゃくちゃ辛い。
死んでも生き返るなら全然平気だよね!と思っちゃうんですけど、決してそうでは無い。
何度生き返れても、死ぬのは怖いし酷い苦しみや痛みをもたらす。
生き返った時、自分がどうなっているのか分からないなら尚更。
ここから、フィキの辛抱強い行動により、ネスは彼を信じるようになって行きます。
そう、この作品の見処ですが、こんな二人がいかに心を通わせてゆくか、そして一人きり、強く孤独に生きてきた主人公が、どのように変化して行くかにあると思うのです。
ネスと言うのは問題児でありながら、実はとても純粋でもあるんですよね。
これほど人間に傷つけられながらも、死ぬと生き返る事の出来ない人間を思いやり、自分が死ぬ事で彼等を守る。
また、確かにフィキに惹かれつつも、相思相愛になる事も、守られる事も望んではいない。
愛する事で誰しも望む、見返りとも言うべきものを何一つ求めず、ただ一方的に自分がフィキを好きでいたいだけなのです。
そう、めちゃくちゃ純粋で無欲なんですよ。
だからこそ、そんな彼を深い愛情で全て包み込むフィキの存在に、嬉しくて仕方ないんですよ。
ネスがですね、自分が愛されていい存在なんだと初めて理解するに至っては、泣けてきちゃうんですよ。
ちなみに、絶対者が銀種を生き返らせる事が出来るように、銀種もまた、絶対者に対して特別な恩恵を与える事が出来ます。
そして、何度も生き返る事の出来る銀種ですが、やはり命の終わりは来ます。
耐用年数の限界を越えれば、身体の一部分から「銀化」と言う現象が起こり、やがては本当の死を迎える。
これ、泣けましたよ。
あまりにネスが純粋で。
そして哀しくて。
繰り返しますが、「命」がテーマとなる作品だと思うのです。
主人公が何度も生き返るから「死」が軽く扱われているかと言うと、その真逆。
命について、真摯に向き合って書かれている、とても深くて感動的な作品だと思う。
愛する事。
生きる事。
死んで行く事。
どうか、二人の残された時間が少しでも長く幸せであるようにと、願ってやまないです。
最後になっちゃいましたが、フィキが転属してきた本当の目的。
これにはニヤリと。
いやあ、フィキ。本当にいい男ですよ。
結構な執着系で溺愛攻めって所まで、最高だと思う。
帯の文句を読んで、調教もの?鬼畜攻め?などと想像したのですが、全然違いました。
命をかけた大きな愛の物語で、壮大な感動作です!
私はいつもあらすじを読まずに読み始めるのですが、本作は予備知識として、あらすじから頭に入れておいた方が分かりやすい作品だと思いました。
銀珠という、死んでも生き返る稀有な存在・ネスが主人公です。
銀珠は、災種と呼ばれる魔物を倒すための人間兵器で、
災種を殺せるのは銀珠だけ……
そして、戦闘中に銀珠を守るのが護衛官で、護衛官の上位互換が【絶対者】
絶対者は銀珠と特別な契約を結んだ者であり、その場で銀珠を生き返らせることができます。
人間を嫌い、死を厭わない戦士・ネスの絶対者になったのは、
帝都から来たエリート少佐・フィキ。
出会って数時間で契約を結んでしまった二人は、いわば〝交際0日婚〟夫婦です^^;
銀珠と絶対者は、どちらかが死なない限り離れられない生涯の伴侶。まさに夫婦なのです。
本作は、二人が反発しあいながら認め合い、心から信頼する関係になっていく様子をゆっくりじっくり描いた作品になります。
これが本当のケンカップルだと思いました^^
何度でも生き返る銀珠のネスは、自分の命を軽んじています。
ネスは他人が死ぬより自分が死にたいという考えで、それは危険ですが、優しく、とても悲しい事だと思いました。
フィキは、ネスが死ぬ事を良しとしない。
例え生き返る存在だとしても、命を大切に扱うし、銀珠の尊厳を大切にする男です。
フィキがとんでもなくいい男。尊敬すべき存在です!
「俺が彼を選んだのではない、彼が俺を選んでくれたんだ」
この言葉、感動しました(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
自信家なだけじゃなく、差別なく他人を慮る思慮深い人です。
猫みたいに全く懐かないネスが、フィキにだけは態度を軟化させていく。
そして、フィキは独占欲の塊!
周りを牽制して外堀を固める策士‼︎
それに全く気付いてないネスとの関係に最高に萌えます♡
バトルシーンはさほど多くないです。
あくまでも、二人の心の交流。そして、身体。
治癒を促すだけのセックスから、愛を感じさせるセックスに変化していく過程が最高!
ネスの銀珠としての辛い過去を上書きするかの様に、すべての経験と記憶にフィキを乗せていく行為が堪らなくゾクゾクします‼︎
ラストは、甘々のラブラブ♡雰囲気だだ漏れ。
そして何より、ネスの心の成長がしっかり描かれている所が素晴らしい作品なんです。
未来ある子どもたちを育て、命を大切に生きていこうと決意する。この心の変化。
とても自然で素敵なラストに胸アツでした。
あとがきの後に笠井先生の素敵なイラストがあり、こにらは読者への最高の贈り物だと思います。
読了後にみることをお勧めさせていただきます!
ラスト1ページまで決して手を抜かず、読者のめくる手を止めさせない素晴らしい一冊でした。
いやあ、これは萌えた…
神の上の評価があれば押したいくらい。
読んでいると登場人物達にシンクロしてしまうというか、読み終わる頃にはすっかり夢中になってしまっているんですよ。
ちょっと、予想以上に萌えて面白くて大変でした。
ファンタジーやバディものがお好きな方、鳥舟先生のつがいシリーズがお好きな方は間違いなくハマると思います。
「人間」「銀種」「災種」の3種族が共存する世界。
「災種」は魔物のようなもので、人間も銀種も見境なく襲って来る、他種族からすれば共通の敵といったところでしょうか。
「銀種」が頭を潰す事でしか倒せないかなり厄介な相手です。
つまり、人間は手も足も出ないわけですね。
銀の髪と瞳を持つ銀種。
人間同士・銀種同士・人間と銀種同士の間から偶発的に生まれる希少な存在で、人間と同じ外見をしていますが、彼らは何度死んでも蘇生するという特性を持っています。
そこに目を付けた人間から搾取され、見つけ次第軍に放り込まれ人間兵器とされたり、差別と偏見に晒されたりと、人権が無視されたような銀種にとっては過酷な世界が舞台です。
軍に所属する銀種の中でも屈指の戦闘力を持ちながら、大の人間嫌いで軍規違反を繰り返す問題児でもある青年・ネス。
ある日、帝都からフィキという将校が現れ、銀種を守る「護衛官」としてペアを組んで戦う事になりますが、人間嫌いのネスが言う事を聞くはずもなく。
やがて、災種との戦いの中で仲間を守り重傷を負った彼は、フィキと「絶対者」の契りを交わす事となり…
ネスという子が本当に魅力的。
仲間思いで優しくて、強く気高く美しく、でも不器用で。
鳥舟先生はこういった複雑な人物を描くのが本当にお上手だと思う。
自らを犠牲にして仲間を救い、他者の犠牲よりも自らの死を望む…ある種破滅的な愛し方と生き方が勇ましくも痛々しい。
野良の銀種として16年を孤独に過ごし、その間に受けた数々の痛ましい出来事から、人間を嫌悪し、頑なに信用せず、自分を守るためには強くなるしかなかった。
命を顧みず仲間を救い守るのは、自分が誰かにして欲しかった事の裏返しなのです。
強がって生きる姿や、死を恐れない強さの理由があまりにも悲しくて。
自らを差し出す形の愛し方は知っていても、愛され方や、自分を大切にするという考えは持ち合わせていないのが切なく、こんなに愛情深い子なのにと胸が痛んでしまう。
そんな彼と契約を交わし、ネスの絶対者となったフィキ。
「恋も愛もない」と、職業上の良い伴侶となるよう自分好みに仕込めればと考えていたはずが、ネスの自らを投げ打つかのような生き方に憤りを覚え、どうにか改められないかと考え始める。
傲慢な考えですが、ネスの性格や美徳、仲間への想いの深さ、不器用で懸命な生き様をきちんと認めた上での言動がとても好ましい。
銀種に対しての偏見や差別の意識のない、誠実な出来た男前です。
序盤こそ反発しあっていたものの、それは異種族ならではの価値観の違いや他者への愛し方の違いから。
生き方に口を出すフィキの存在は、ネスからすれば煩わしいだけなわけです。
しかし、不死ではないただの人間であるフィキが、言葉だけではなく体を張ってまでネスを守ろうとする姿を見て、理由は分からないけれど彼が自分の盾になる姿を見るのは嫌だ…と、ネスの中の死や命に関する価値観が変化していく。
死ぬよりも、死なれる方が余程辛いのだ。
この辺りの丁寧な心理描写と関係性の変化、ネスがフィキを信頼していく様子が物凄く良かったのです。
相性最悪だった2人が次第に軽口まで叩けるようになる。
フィキが少しずつネスに歩み寄り、真っ直ぐに愛情深く接する内に、ネスの心の根底にあった孤独や恐怖といった、誰にも見せられなかった部分までもが自然と溶かされていく。
言葉のやり取りが不器用で可愛らしく、「好ましい」が「愛おしい」になる過程も素敵で。
負の感情意外を知らなかった子が、喜びや幸せに溺れそうになり、初めての感情に戸惑う様が愛しくて愛しくて仕方がなくなります。
フィキに甘えるネスと、ネスを優しく包み込みながら愛し気に見守るフィキの図が幸せ以外の何ものでもなくて、不器用な2人の恋に萌えだとかそういうものをすっ飛ばした何かがふつふつと湧いて来てしまう。
フィキのネスに対する溺愛と過保護っぷりと、恋愛下手さ、過去を全て書き換えようとする独占欲と執着がたまりません。
これからは彼からの傲慢で心地の良い愛に、穏やかに心の深い部分まで壊されていって欲しい。
相手には従わず、互いの愛し方をぶつけ合う彼らの生き方が好きでした。
「絶対者」という番のような契約。
絶対者からのキスによって、死んでしまった銀種は即座に蘇える事が出来ると言う。
これはお互いの信頼が無いと不可能な事。
フィキが「俺が彼を選んだのではない。彼が俺を選んでくれた」と言い切るシーンが好きです。
精神的支柱のない銀種のネスにとって、心の拠り所である唯一無二の絶対的な孔雀色の宝石。
生まれて初めて自分だけの特別なものを手に入れて、「今がわりと幸せ」と思えるまでになったネスの姿には胸がいっぱいになりました。
やはり鳥舟先生のお話が好きだなと改めて実感。
架空の世界で、様々な種族や設定があって…と、ファンタジーならではの作り込まれたものがあると、設定の把握や読み慣れるまで時間が掛かってしまう事もありますよね。
鳥舟先生の作品は、独創的な設定でありながら難しすぎず、自然と物語の世界観に入り込めて、なおかつ魅力溢れる登場人物達の生きざまや感情に丁寧に寄り添った描写が見事なのです。
だからこそストーリーにもキャラクターにも愛着が湧き、感情移入してしまう。
今作も命と愛についてを描いた本当に素晴らしい作品でした。
銀種の起源や銀種の銀化や寿命など気になる設定も多いので、この世界観でシリーズ化されたら幸せだなあ。
もっと読みたくなってしまいました。
最近読み始めた作家さんで、なかなか自分のツボです。
受の苦しみを攻の愛でもって、時間をかけて癒していくだろうなーという未来が見えます。傷ついた過去をおおらかな攻に癒されるって、24年組の少女漫画が大好きな自分には王道です。
私的には大ヒットですが、死んで生き返る設定は受け入れがたいかもしれないし、なかなか痛そうな描写も多いし、ベッドシーンも腸に入っているんだなー感があるので萌えるかというと冷静に読んじゃったりして、結構読む人を選ぶかもと思いました。
ただもう、受が幸せに暮らしていくだろう未来に幸せな気持ちになりました。
まだまだこの作者さんの読んでない作品がいっぱいあるので、過去の作品を読むのが楽しみです。