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表題作鬼の子いとしや桃の恋

西園光洋,20歳,大学生
しづる,200歳~,鬼

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

夏休み、実家の本家がある瀬戸内の田舎町に呼びつけられた大学生の西園(にしぞの)光洋(こうよう)。なんでも西園家は鬼退治の家系らしく、二十歳を迎えた一族の男子は「鬼鎮め」の儀式を経験しなければならないとか。今どきそんな因習など意味がないと、鬼を封じたとされる小さな無人島に軽い気持ちで向かった光洋だが、そこで本物の鬼の少年と出会って!?

作品情報

作品名
鬼の子いとしや桃の恋
著者
野原滋 
イラスト
金ひかる 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
ISBN
9784344846623
3.5

(42)

(10)

萌々

(13)

(11)

中立

(4)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
10
得点
139
評価数
42
平均
3.5 / 5
神率
23.8%

レビュー投稿数10

世界はこんなにも、綺麗なもので溢れてる

こちら、大学生の主人公と鬼による、純愛ものになります。

表紙やあらすじから可愛いお話を想像してたんですけど、実際コミカルでクスッとさせてくれるんですけど、とても切なく、また哀しいお話でもあるんですよね。
ボロボロ泣きましたよ!
純粋で健気すぎる鬼の姿に。
ラストの幸せな二人の姿には、もう胸がいっぱいですよ!
めちゃくちゃ感動的ないいお話だと思う。


ザックリした内容です。
災いをもたらす鬼を退治し、封印した伝承を持つ西園家の家系に生まれた大学生・光洋。
20歳になった彼は、一族の男子が経験しなくてはならない「鬼鎮め」の儀式を行うべく、鬼を封印した島へと訪れます。
そこには何と、本物の鬼が存在していてー・・・と言うものです。

こちら、読んでの一番の感想なんですけど、純粋すぎる鬼がとにかく切ないだったりします。
終始攻め視点で進みますが、主人公はごくごく普通の大学生なんですよね。
当然鬼なんて信じておらず、「鬼鎮め」もあくまで形式的なものだとしか思っています。
で、そんな彼が、島で本物の鬼と出逢う・・・。

出逢い時のしづるなんですけど、無邪気で人懐っこい子供のような鬼なんですよね。
いや、見た目こそ人間離れした美貌に角を持ちと、普通では無いですけど。
彼は島へとやって来た光洋を、喜び勇んで出迎える。
やっと迎えにきてくれたと。

で、ここからが、なかなか心が痛む展開。
実は鬼達ですが、人間を襲った事などなかったんですね。
それどころか、人間と仲良く暮らしたいと望んでいた。
しかし人間達から恐れられ、仕方なくこの島で隠れて暮らしていた。
そこへ偶然やってきたのが、西園家の祖先。
その話を聞いた祖先の人物は、彼等が人間と仲良く暮らせるよう、仲を取り持つ事を約束する。
そこで感動した鬼達は、彼の為に力を貸し、村を襲う災厄を退けるように。
時には力を使い果たし、命を無くす鬼さえ出しながら。
で、村に迎えられる準備が出来たら迎えに来ると言う約束を信じ、ずっと待ち続けたきた。

そうこれ、人間に騙されて利用された、哀しい鬼達の物語なのです。
また切ないのが、受けであるしづるの現在に状況。
鬼は皆死に絶え、彼が最後の一人だったりします。
そう、たった一人で仲間達の墓を守りつつ、約束を信じて待ち続けていた。

しづるですが、めちゃくちゃ純粋なんですよ。
最後の一人で鬼としての力も弱く、そのせいで角も小さい。
しかし、それを無邪気に喜んでいる。
人間に近いから、人間とも仲良く暮らせると。

まだこれ、物語の序盤なのです。
序盤なのですが、この時点でめちゃくちゃ切ない。
しづるが光洋(人間)に無邪気な信頼を見せれば見せるほど、人間の汚さが際立っちゃって。

光洋ですが、ごくごく普通の大学生で、特に正義感も強くなければ、逆に卑劣でもないんですよ。
そんな彼なので、最初こそ面倒事に巻き込まれたくらいの感覚なんですよね。
出来るなら、無かった事にしたい的な。
それが、しづるにあまりに純粋な好意を向けられ、彼を一人残して島を去れなくなってしまう。
悩み迷いつつも、しづるの好物である桃を持って島へと通うようになるんですね。
そして、東京に戻る最後の日、しづるを連れて行く事を決意する。

これな!
ここでやっとしづるは幸せになれると、読んでて嬉しくて仕方ないんですよ。
実際、仲の良い従兄に助力は頼むものの、二人はママゴトのような可愛い生活を始めと、萌えまくりの展開なんですよ。
いや、人間社会の事を何も知らないしづるがですね、突拍子も無い言動を繰り返し、慌てふためきながら面倒を見る光洋みたいなエピソードがめちゃくちゃ可愛くて。
新婚さんかーーーい!みたいな甘酸っぱい毎日で。

ところがここからまた、胸が抉れそうな切なすぎる展開。
自分達が人間(西園家)に騙されて利用されていた事を、しづるが知ってしまい・・・と続きます。

しづるはですね、人間の事を疑う事も無く、純粋に信じてきたんですよね。
人間の為に、仲間が死んでも。
最後の一人になり、孤独の中で待ち続けても。
真実を知った時の絶望と怒りに、言葉が出ないんですよ。

また、祖先の非道な行いの罪悪感に苦しみつつも、しづるを愛してしまった光洋。
怒りのあまり暴走したしづるを止めようとした彼は・・・と続きます。

もうこのあとが、悲しくて悲しくて。
ボロボロ泣けましたよ。
これほど哀しいスレ違いってある!?と。
そして、しづるが健気すぎるよーーー!

何と言うか、野原先生はですね、人外ものがすごくお上手なんですよ。
人ではない彼等だからこその、純粋さや哀しさを真っ直ぐ綴る。

果たして二人は、この試練を乗り越え幸せを掴む事が出来るのかー?
って所でしょうか。

とりあえず、ハッピーエンドなのでご安心下さい。
余韻の残る素敵なラストなんですけど、なんだかホロリと来ちゃう感じでしょうか。
胸がいっぱいになってしまう・・・。

違う種族故のスレ違いだったり、それを越えての純愛だったり、哀しくも優しいストーリーだったり。
全てが最高と言いたくなる、とても感動的で素敵なお話でした。
とにかく泣けたわ!!
めちゃくちゃ良かったわ!!!

9

切なさと愛しさで胸いっぱい

とても胸打たれる素敵な作品でした。
『泣いた赤鬼』を思い出しながら読んでいたのですが、
あとがきを読んで、やっぱりなという気持ちになりました^^
鬼が悪者じゃなく誰にも退治されない、愛しくて慈しむべき存在として描かれています。


昔、鬼を退治し栄えたとされる西園家。
その本家で成人した男子に行われる秘伝の儀式「鬼鎮め」
儀式を行った光洋は、選ばれし者として一人きりで「鬼住み島」へ向かうことになりーー…!

この島で出会ったのは、不思議な青年・しづる。
しづるは鬼の唯一の生き残りで、数百年もの間一人きりで畑を営み、仲間の墓を守って生きてきました。
しづるがメチャクチャ健気!
人間との共生を願い、迎えを待ちながら寂しさを堪えて、たった一人きり生きてきたのです。

実は、西園家には鬼を騙して小島に匿い、利用してきた過去があります。
何も知らないまま、里で人間と暮らすことを夢見ながら死んでいった鬼たち……
もう、この事実だけで泣けてきました。
真実を知らないしづるの無邪気さ、健気さが切なくて切なくて。

そんなしづるを放って置けず、東京にこっそり連れ帰る光洋。
現代社会に驚き、喜び、美味しいものを食べて笑顔を見せるしづるか愛しくて仕方がなかったです。
とにかく、しづるの可愛さに萌えまくります♡

しづるに楽しいことをたくさん経験させ、もっと幸せにして護りたいと思う光洋は、知らず知らずしづるに惹かれていきます。
もしかしたら、最初からずっと好きだったのかもしれないなぁ。

しかし、お世話になる親戚の孝志にしづるの正体がバレ、さらに西園家の悪行がしづるの知るところとなりーーと、展開していきます。

ここからグッと切なくて苦しい展開になっていきます。
孝志としづるが揉め、庇った光洋がしづるの爪で大怪我を負ってしまうのです。
嘆き悲しむしづるは、自分の精気を注ぎ続け、光洋を助けるために自分が瀕死の状態になってしまいます。しづるの献身的な愛に猛烈に胸を打たれ、泣きました(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

回復した光洋は、しづるを助けるため、一縷の望みをかけて西園の本家に向かい……という流れ。
ラストは感動とほっこりとニッコリ^^

Hは少なめですが、意外だったのが、しづるが積極的で妖艶だったところ♡
攻めのはずの光洋が完全に責められてた^^;
しづるに〝可愛い〟と連呼されながらイかされる光洋がとても良かった(゚∀゚)
個人的に攻め喘ぎ大好きなんです。少ないエロも大満足でした!

とにかく、作中通してしづるが可愛くて仕方がなかった!
光洋がいないと生きていけないというしづるの思いは、
依存じゃなくて共存だと思います。
種を超えてお互いを愛しく思う気持ちを教えてくれる、
とっても素敵な作品でした。

6

優しく温かなストーリー

作家買い。

野原さんの書かれる健気受けって大好物なのですが、今作品の受けちゃんもナイスな健気受け。健気なのだけれど健気なだけではない。そんな魅力のいっぱい詰まった受けちゃんでした。

ネタバレ含んでいます。ご注意ください。






主人公は大学生の光洋。
彼の父方の実家は、鬼退治を機に栄えてきた。それゆえ男子は20歳になると鬼にまつわるとある儀式を行わなくてはならない。

鬼、という、現実味の欠片もないその儀式に光洋はいやいや参加するが、そこで彼は「選ばれし者」になってしまう。

鬼が住まうというその島に一人向かう光洋だが、そこで彼は本物の鬼に出会い―。

古くから伝わる伝説。
心優しき青年が鬼と出会い。
その鬼は実はめっちゃキュートで。

という、バッサリ言っちゃうとよくあるストーリーなんですよね。既視感ありあり、というか。

が、ですよ。

このストーリーに華を添えるのが、この鬼ちゃんであるしずる。
しずるがとにかく可愛いの。

世俗から離れた場所で生きてきたために、とにかくまっさらさん。
人を疑うことを知らず、まっすぐな目で光洋を見つめる。

が、彼は素直なだけではありません。
仲間の鬼たちはみんな死にゆき、かつて仲間の鬼が言い残した「いつか人間が迎えに来てくれる」という言葉をひたすら信じ、待ち続けてきた。たった一人きりで。

孤独の中、仲間を思い、人を信じ、生きてきた。
そんなしずるのなんと可愛いことか。

で、そんなしずるを可愛く思うのは読者だけに非ず。光洋もなんですね。
お供えものとして持って行った桃を喜び、全身で感情をあらわにし、そして孤独な環境にいてなお明るく素直なしずるを、一人置いていけないと苦悩する。

読者のしずるへの想いを、きっちり光洋が表現し、行動に移してくれるので一気に感情移入してしまう。鬼の子であるしずるを守り、そして人間社会で生きていけるよう教育していく彼の男気にもほれぼれします。

そんな二人を見守り、時に手を差し伸べ、サポートするのが光洋の親戚筋の孝志。彼がナイスガイなのも非常によかった。大人であるが故の分別を持ち合わせつつ、けれど四角四面に物事をとらえることなく懐の広い人物なんです。

「鬼」というバックボーンはあれど、登場人物たちは等しく優しく、温かく、野原さんらしいほのぼのさを持ち合わせた優しい物語でした。

ストーリーとしては目新しいものはなく先の先までスーッと見通せる展開ではありますが、とにかくキャラが魅力的でこの作品の持つ世界観に引き込まれました。

人の優しさ。思いやり。
そういったものが繊細に、緻密に描かれた作品で、読後非常に癒されました。

5

鬼ちゃんの可愛さが切ない

うわ~~(;///;)
鬼と人間のすれ違いが切なくて泣く…。

あらすじを読んだだけでは情報が少なすぎて迷ったけれど、作者さんがTwitterで「切ない恋」と説明されていたので期待して読んで正解でした。可愛くてほのぼのしちゃう場面もありつつ、すれ違いの痛みが切なくて萌えます(;///;)すっごい良かった。

1点だけ。本文で鬼ちゃんの容姿を「恐ろしいほどの美貌」「皆が振り返るほどの美貌」と表現される度に、すみません…どうしても挿絵を見ると、び…美貌?可愛いのはわかるけど美貌じゃないよな…と素に戻ってしまって;その度に気が削がれてしまったので☆1つ下げました。

あと小説では珍しいなと感じたんですが攻め喘ぎがガッツリと。これも個人的に嗜好に合わずその辺りは流し読みになっちゃいました;
(逆に言えば、攻め喘ぎをお求めの方は是非…!)
(エッチなシーンは少なめです)


お話は攻め視点で展開します。
あらすじにもあるように、千年前に鬼退治をしたことから一族が繁栄した西園家。今でも昔の習わしが残っており儀式を行わなければ厄災がもたらされる…ということで、光洋(攻め)はしぶしぶ儀式に参加します。

儀式では150年ぶりだという不思議な現象が起き、誰も踏み込むことがなかった鬼住み島へ向かうことに。鬼を信じていなかった光洋でしたが、島には鬼のしづる(受け)がいました。

伝承とは全く違い、鬼は人間と共存することを夢見て西園家の人間が迎えにきてくれるのをずっと待ってたと言います。待ってる間に鬼が減っていき、しづるが最後の鬼になってしまったと。話を聞けば聞くほど混乱した光洋はしづるをどうすべきか迷ってーーーと始まります。


150年以上、人間の迎えを待ち続けたしづるがいじらしくて堪りません。ニコニコと人懐っこくて疑うことをしならない清らかさがあるのですね。だからこそ、嘘をついている後ろめたさが光洋を襲う。これ、捨て犬に中途半端に餌あげてしまっているような罪悪感で砂利を噛む気持ちになるんですよ…。しづるが光洋を信じて笑えば笑うほどギューーーと痛くなって切なかった…。

しづるが1人ぼっちでどう生きてきたか…という点も、光洋視点だとしづるの言葉の端から想像するしかないのですね。しづる自身の視点を挟まない分、淋しい方向へばかり想像が膨らんでいくので余計に切なさが増します。

本人は何の気なしにニコニコと話すけれど。仲間が次々死んでいくのを1人ぼっちで弔って、人間の迎えを信じて、ひたすら待つ生活…。なんすかもう。泣くしかないやつじゃないですか。しづるが明るいから余計にギュッて抱きしめて上げたくなる(;///;)

光洋は良くも悪くもごくごく普通の現代っ子って感じかな。しづるに出会うまでは要領よく生きてきたけれど、しづるに出会ってからはしづるを守るために成長しなきゃ!がんばらなきゃ!と奮闘するのが、"男の子"から"男性"へ成長し始めてるように見えて良かったです。気負いばかりが進んで空回りする場面もありましたが、男の子が少しずつ変わり始める過程はグッとくるモノがありました。

大昔に嘘を吐き、鬼を島に置き去りにした西園家。
西園家の言葉をずっと信じて待ち続けた善良な鬼。

千年前の大きな罪を知った光洋はどう行動し、嘘を知ったしづるはどんな行動にでるのか。引き裂かれるような心の叫びはボロ泣きしました。

中盤ぐらいまでは、何も知らない赤子のようなしづると一から教えて世話する光洋の関係が保護者と庇護者で、親子みたいなところもあったんですね。けれど2人の心を引き裂く想いは恋愛的な愛に満ちていて、互いが互いに助けようと寄り添う姿はもう泣けて泣けて仕方なかった。しづるも光洋も相手を失っては生きていけない悲痛さがもう…(;///;)

個人的には光洋が涙で言葉を詰まらせるセリフが特に涙腺にきました。みっともないぐらい泣く攻めってキュンキュンするよね…(;///;)めっちゃいい。萌える。

光洋視点だからこそしづるのバックボーンに切なさを募らせたり、しづるの可愛さに癒やされるようなところがとても良かったです。しづる視点だとまた違ってただろうな。

4

野原滋先生の作品、多分ほとんど読んでないと思いますが、私の購入基準で、金ひかるイラスト作品は問答無用で内容ノーチェック予約。
もう、このカバーイラストの、精悍でガタイのいい攻めに、攻めよりはちょっと華奢だけど別に女っぽくはない受けってところからツボです。
小説内では鬼の子しづるは超美形とされていますが、金先生のイラストのしづるは、小島にたった一人残されて長い年月を生きてきた、その無垢さが現れている、そんな美しさです。
お話としては「それから二人はずっと仲良く暮らしましたとさ、めでたしめでたし」と、なんだか唐突に終わってしまいましたが、まあ、おとぎ話なわけだし、二人が一緒に暮らせるようになるまでに何かあったとしても、それはまた別の話という事で、これでよかったのでしょうね。

2

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