特典ペーパー付
本当に素晴らしい作品だった「あおに鳴く」と同じく上下巻・不思議な男との遭遇もの。
今作も同様、日本家屋や料理の風流とほっこり感、日常の些細なやりとり、出会いと少しずつ距離の縮まっていく関係が濃密な空気感情感で描かれています。慈しみたくなる程見惚れるのでページを捲るスピードは遅くなります。そして時折ハッとする心の接触にドキドキ。
現状上巻のみ2回読んだだけで私の頭では内容が全て理解出来たわけではないのですが、
家族から放っておかれている17歳八潮のもつ寂しさと、日本の昔の人が守ってきた伝統や知識を失っている現代の切なさが混ぜ合いつつ、それがベースに流れていることで気枯れ(ケガレ)を落とすだとかハレの日だとか日本的で前向きな行動がより際立ち、楽しそうに感じました。
灼先生による台詞の面白さ、絵と構成の抜群の美しさが隅々まで行き渡っていることもさることながら、知識量とアイデアの思いつきが半端ないです。
とにかく森の中のざわめきや植物や微生物の存在感、庭の風まで感じられるような美しさがあります。流れるようなピアノやギターの音楽を聴きながら読んでいます。
掃除してちゃんと自炊しようと思えました。
なんという感想のオチ
上下まとめて読んだのでレビュー内容も混同しています。
モノノケというにはあまりにも現代になじむ見た目の青年に最初は逆に驚いたけど、そんなことがどうでもよくなるくらいに穏やかで優しい話でした。
迷子になってしまって山から下りられない高校生がモノノケを自称する青年に押しかけ同居をされたところから始まるお話ですが、「ケガレを払う」というちょっと非日常の言葉は毎日の生活を丁寧に暮らしていくということで、高校生と何百年と生きるモノノケがかつて生きていた人たちに教わったことを一つ一つ大切にして、季節を感じ、行事があれば風習に倣ってまんじゅうを作って食べて、なんてことはない優しい毎日を過ごす二人が少しずつ気持ちを寄せ合っていくのが素敵でした。
田舎の風習や「神様のいる暮らし」を、そういったものから縁遠くなってしまった現代に生きているからこそ、素敵だなあと焦がれてしまうんでしょうね。
人と人ならざるものが恋に落ちて共に生きていこうと誓う話はボーイズラブではよくある、一つのジャンルとして確立しているカップリングだと思いますが、この作品は、不老不死のモノノケが年の功で、未知の感情に触れた高校生を言葉や態度を尽くして順序だてて自覚させたり、教えたりするのが特によかったです。
人のそばで生きてきたモノノケだからこそできることだなと思いました。
モノノケらしく(?)姿を変えることはないので、人外ものが苦手な人でも読めると思います。
一コマ一コマじっくり味わいながら読みたい作品でした。
個人的にものすごくド好みなテイストでした。
所謂人と人じゃない者の物語ではやはり寿命の違いがネックになると思っているのですが、2人の向き合い方がとても暖かく、感動しました。また日常の中に少しずつときめきがあるのも良かったです。とにかく優しい物語だと思います。
こんなに大好きになる作品に出会えてよかった。
日本のどっかの田舎みたいなリアルのなかに溶け込むモノノケの存在。ノンフィクションのようなファンタジーです。読めば読むほど味が出る。伏線がたくさん、いろんなところに散りばめられていて、これを一読で終わらせるのはあまりにも勿体ない。ちょっとだけ三角関係かも。灼先生はいろんな愛のカタチを描くのが本当にお上手です。小さな起点からお話を広げ、起承転結と繋げていく様が美しすぎて、ほかの先生のお話じゃ物足りなくなるくらい惹かれています。