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独特の輝きを持った作品。
かなり暴力的な描写がありますが、今にも壊れそうな危うさが堪らない味です。
表紙だけでは表紙の子が虐げられているようにすら感じますが、読めばそれだけではない狂った尊さに出会うことができます。
ひりつくような痛みがパチパチと弾けるような快感を与えてくれる作品です。
沢山のモブが出てきますが、彼らの登場により、普通の人よりは特別だという目安が分かります。ですが、それだけでは叶えられない願いが痛烈です。
彼らの言動が閉ざされた場所で生きる息苦しさを教えてくれ、私はさらに内容が深まったと思います。
空虚で透明な人間である「ハル」が、炎のような「篝」というカリスマに魅入られる1話から、加速するようにその関係性が歪んでいく展開が凄まじいです。
恋を知らない人間がその感情を例えるときに、暴力衝動のような危うさ秘めてしまう描写が美しく「星が燃え尽きて死ぬように激しく 俺のこと焼き尽くしてくれなきゃダメだ」というハルのセリフが印象的でした。
作中で篝がハルの瞳をガラスに例えた場面がありますが、
"私という現象は仮定された有機交流電燈のひとつの青い照明です"
という宮沢賢治「春と修羅」冒頭の一文を想起させられ、
燃え尽きた後の篝火は、真空のガラスに閉じ込められたフィラメントとして光り続けることができるのかもしれない…と、そのように感じました。
仄暗くひりひりと痛む様な青春の物語でありながら、晴れやかな読後感のある美しい作品です。
misoさんの作品は鵺のなく夜にも拝読しましたが、本当に「奇才」としか表現しようがないです。この方の作品にある、不思議な空気感がとにかく好きで引き込まれます。
暴力的なはずなのに時々妙に清らかに見えたり、なんでもない言葉が突然深くえぐるような力を持っていたり、この独特の感じがなんとも言えません。
特に私がこの方の作品で特徴的なのが「余白」だと思っていて、ウィットに富んだテンポの良い会話が多い作中で、時々吹き出しのないコマの静寂が挟まったりするときの緩急というか、無音のときに聞こえる耳鳴りみたいなものを感じてハッとなるあのメリハリと、その言葉のないコマからしか伝えられない言外の感情みたいなものを伝えてくるのが本当にすごい。話してないのになんかそのシーンで伝えたいことがわかる。なんなら言葉がないからこそ腑に落ちる、みたいな不思議な表現力があります。
この本は、猥雑で暴力的でうるさいような会話と、痛々しいほど鋭い表現と、詩的できれいな空気感が交互にやってくる、中毒性のある本です。
自我の薄さ故にただそこにあるだけのハルと、そこにあるだけで力を持つ篝の対照的な関係が、読み終わる頃には全く違う捉え方になっていて、余韻とともに本を閉じたときに表紙のイラストと「春の修羅」というタイトルを見て、本当に語彙力がなくなってしまうんですけど、あぁメチャクチャ最高な本だな…と思いました。この感覚はなるべく味わってほしいので、ネタバレはしない方向で。
暴力表現は強めですし、万人に受けるとは言いません。でも、こういうのがズドンと来る人にとってはたまらない一冊だと思います。エロももちろんの事、それ以外の表現力にも長けた人の描く作品は本当に最高です。
前作もそうでしたがやはり読む人を選ぶ内容の話だと思います。
常に少し影がある話ですが信仰と恋、狂愛みたいなものともまた違う主人公二人とその周りのやりとりがクセになります。
一見最初の方だけ読むとどうしてもとっつきにくい印象を受けますがこの話の中のテーマが一貫しているので意外と読みやすく、あとがきを読んだ後にもう一度読み返すとまた違った印象も受けて新鮮でした。
前作からの作者さん買いでしたが絵柄も儚くて物語にぴったりなので買ってよかったです。
濁った目をした表紙から苦手かもと思いつつ、ポエティックなタイトルがどうしても気になり購入。
結果は思春期かつ未成年の暗さと明滅する衝動をよく描けている佳作。
行動ヤバめのお坊っちゃま×言いなり美人。
真似事でも続ければ本物になると言い放つ攻めの修羅がエスカレートするに伴い、受けの修羅も顔を覗かせる。
同級生達の一歩引いてる空気感もよく表現されてて、リアリティーがありました。
後半、一気に空気感が変わるイベント発生。
ここはイニシエーションと解釈。
ほんの少しだけ大人になった2人。
その後も熾火が燻るような余地を描く感性も好き。
同時収録はニコイチのふたり。
こちらも生育環境があまりよろしくない。この作風が進化したのが表題なのかも?
ちょっとおばかなアジヨシの下がり眉&涙目が可愛いかった。
個人的には閃光というかハレーションのような瞬間を描ける作家は稀少だし、文芸の歴史を鑑みれば描ける期間も短いから神をつけたい。
レビューとしてはどちらも暴力ありで萌2くらいかなと迷うんですけどやっぱり神で!