ブーム到来中のタイBLドラマ原作、待望の日本語訳版!!

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表題作Manner of Death

ウィラポン・ヨートスンヌーン,26歳,塾経営者
バンナキット・ソンサクディナー,30歳,優秀な監察医

その他の収録作品

  • 補章

あらすじ

タイ北部の病院に勤めるバンは、優秀な監察医。
容姿端麗、頭脳明晰だが、誰にも言えない秘密があった。
ある日、バンは自殺と思われる女性の検死をし、他殺と結論づける。
しかしその夜、彼は謎の襲撃者に、検視報告書を自殺と書くよう脅される。
辛くも難を逃れ、親友の若手検察官プートに事実を打ち明けるが、直後彼が失踪。
責任を感じ、調査を始めたバンは、第一発見者の塾講師テーンを疑うが……。
次第に惹かれ合い、けれど緊張感をはらむ二人の関係。
二転三転する真実に、ページを繰る手がとまらない!

翻訳:南知沙

作品情報

作品名
Manner of Death
著者
Sammon 
媒体
小説
出版社
KADOKAWA
発売日
電子発売日
ISBN
9784041108444
3.5

(12)

(3)

萌々

(3)

(4)

中立

(2)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
6
得点
41
評価数
12
平均
3.5 / 5
神率
25%

レビュー投稿数6

カッコいい男たちに悶絶

今話題のタイBLドラマの原作、ということで発売を楽しみに待っていました。

電子で買ってしまったのですが、お値段1700円(税別)。
ちょびっとお高いですが、ページ数はなんと421ページというめっちゃ分厚い作品です。

主人公がゲイということで、ジャンルとしてはBLに区分される作品ではありますが、内容としてはBLというよりもサスペンス、あるいはミステリの比重の方が大きいかな?甘々で、男性同士の恋の成就のストーリーを読みたい気分の時には若干不向きな作品かと思われます。

が。

めっちゃ面白かった…!
主人公は監察医のバン。
個人的に監察医ものってすごく好きなこともあるのですが、その期待を裏切らない描写がたくさん描かれています。作者のSammonさんてお医者さんらしいですね。その知識を生かしたであろう繊細な描写にグイグイと惹きつけられてしまいました。

裏社会を描いた作品でもあり、流血、殺人といった血なまぐさい展開になりがちなので、苦手な方はご注意を。ネタバレ含んでいます。ご注意ください。






主人公はバン。
優秀な監察医で、周囲からの信頼も厚いイケメンさん。
やりがいのある仕事、仲が良くチームワークも素晴らしい仕事仲間、そして学生時代からの知り合いで親友でもある検察官のプートの存在。忙しい毎日を送っているが、彼は現在の状況に満足している。

そんなある日、彼は女性の検死の依頼が舞い込んでくる。
女声の死因は自殺に見えたが、バンはその死因を他殺と見抜く。

が、その検死が、平穏なバンの日々を波乱へと巻き込み―。

というお話。

その事件の第一発見者は、亡くなった女性の恋人であるテーン。
塾経営者で、自らも塾の講師として働くテーンが犯人ではないかと目星をつけるバンだったが。

女性が殺されなくてはならなかった理由とは。
そして犯人はテーンなのか?

というミステリ要素を軸に、バンの恋にも描写は及んでいきます。

バンは仕事は優秀、イケメンさんで、「人」としてはパーフェクト。けれど恋人(女性です)との関係が長続きすることはなく次々と恋人を変える恋多き男性。

と、周囲の人に思われている。けれどそれには理由があって。

今作品がミステリに区分されずBLというジャンルに分けられるのは、このバンの性癖によるところが大きいかと思われます。彼はゲイ。けれどそのことを理由に子どもの時ににいじめにあい、学生時代にも心に傷を負った過去がある。

「普通」でいるために。
そのために彼は自身の性癖を隠し続けるという決断をしたわけですが、その葛藤がなんとも切ない。

このバンの葛藤があるがゆえにBLとして読んだときに奥深さが出るっていうのかなあ…。タイってLGBTに寛容なイメージがありますが、実際はそうではないんだよ、というそのお国柄が垣間見える。一歩踏み込み、上っ面だけ繕っていないところに非常に好感を覚えました。

バンは監察医なのでもちろん警察サイドの立場なわけですが、警察vs犯人、という構図でないところがタイBLっていう感じがより一層浮かび上がっていた気がします。

警察の腐敗、裏社会とのつながりなんかも描かれていて、そのストーリー展開が日本のそれとは一線を画していてそれも面白かった。

ストーリー展開も面白いのですが、そこに輪をかけて素晴らしいのが登場人物たちです。

もうね、バンがカッコいいのよ。
常に冷静沈着、賢く、頭が切れ、けれどなよなよしてなくって男気に溢れてる。どんなピンチに陥っても、それを潜り抜けようとするガッツもある。

そんなバンを追い詰めていくのは誰かというと…、

と書きたいのですが、めっちゃネタバレになるのでここでは書きません。
書きませんが、バンを追い詰める人物もこれまたカッコいい。彼もまた、葛藤や苦しみを抱えている。その中で、バンを愛してしまったからこその彼の苦しみが、

めっちゃ萌える!

「彼」もまたカッコよくって、カッコいいのにワンコさながらバンに尽くす彼の恋心にも萌え滾りました。

事件が解決するまではハラハラドキドキする展開で、どうなっちゃうのかなーと心配しつつ読み進めましたが、事件が解決した後は甘い展開になるのも良き。終盤に「補章」という、第三者視点のSSが収録されているのですが、これが爆笑。本誌の裏側を違う人物視点で描いていて、ハラハラしつつ爆笑してしまうというナイスな造りになっています。

事件の捜査、というだけにとどまらず、バンの過去、そしてそこから起因している事項に関して、バンが自分の力で乗り越えようとするストーリも盛り込まれていて、この厚さになるのも納得の濃厚な1冊でした。

ただ気になった点も。

過去と今。
誰視点の描写なのか。

それらが急に変わるために切り替えがうまくできず、ンン?と思うことが度々あったのが残念と言えば残念でした。読み慣れてくると「あ、今、切り替わった…?」と推測できるのですが、序盤はその辺りが全く分からず、?となってしまったりしました。

あと挿絵。
表紙がとっても素敵でいやがおうにも萌えが滾りましたが、作中挿絵は1枚もありません。電子だからなのか…?紙媒体だったら挿絵があったんでしょうかね。

それと、濡れ場の描写はほぼありません。
セックスしたんだな、一応、バンが受けさんなんだな、と分かる描写はあっても実際にイチャコラしてる描写はないので、そこに比重を置いて読まれる方には肩透かしを食らうかもです。

ですが、カッコいい男たちに、詳細な描写、二転三転するストーリー展開、と非常に面白かった。

次回作も楽しみです。

7

ドラマ版との齟齬が気になって…

 ドラマ版を視聴してから原作小説を読んだのですが、珍しく複雑な心境になりました。
今まで映像版を視聴してから原作を読んだ場合、映像版で端折られているエピソードや心理描写が多いので原作は深いなーと思う事が多かったです。
この作品の場合、一冊の小説を連続ドラマ化されたので、かなり原作の内容を膨らませられている事が分かりました。。原作というより原案と言い換えた方がいいレベルかも…。


 ドラマ版は事件の被害者女性やその周辺の社会問題の深層の根底にある「女性の哀しさ」にスポットライトが当てられていて見応えがあったのですが、原作の方はそういう描写が無くて驚きました。原作は「家族(一族)の物語」で一連の事件とBLがメインの内容でした。

 さすが作者が現役の医師の人だけあって、法医学のリアルな現場の話とスリリングなバイオレンス展開が面白かったです。BLとしては「容疑者と恋仲に??」というのが盛り上がり所でしょうか。一連の事件の吊り橋効果で気持ちを育んだバーンとテーンの二人が事件解決後、一緒になるまでの道のりや葛藤が丁寧に描かれていました。
ドラマ版に描写の無かった一族の業を背負うテーンの姿は印象に残りました。

 小説の描写は現実に迫っていて面白かったのですが、小説のプロット構成が不可解でした。中盤まで盛り上がった事件の描写があっさり終わり、その後はBL話がメインで事件の真相がほんの少し入ります。
日本のBL小説のように、事件後のBL話は別のタイトルにして独立させた方が読み易く思いました。
欧米ミステリー小説風で、二人は警察でも探偵でも無いので、当然と言えば当然ですが、事件の真相解決には部外者的な立場で真相もあっさり警察から語られて終わりでした。終盤の二人のイチャイチャやモト彼ミステリーより、法医学のウンチクや事件の真相をもっと読みたかった。。

ドラマ自体はとてもハマっていたのですが、ここまで原作と別物だとモヤモヤ感が…。 
ドラマ版と原作の双方の違いが読者にとって大きいシコリになる、、。こういう事があるんですね。。原作版の大きな収穫はブートとバーンのフラグが爆弾級でした。ドラマ版では全く想定していなかっただけに。ここはもっとクローズアップしてもらいたかったです。残念。



0

初めてのタイBL

どんなんだろう?とワクワク読みました。結構なボリュームと話が現在・過去と混じったり、視点も受けと攻めで急に変わったりとちょっと読みづらい面はありました。26歳の塾講師・テーン×30歳の監察医・バンが主人公です。

ミステリーは中盤で急展開があり、謎が謎を呼んで面白かったです。ラブの面で残念だったのはベッドシーンがほぼないというか朝チュン程度だった事。受け攻めポジもわかったのが最後にかろうじて、という感じだったので。ねちっこくエロを書いてくれる日本人作家やモノロマ文庫で出てる外国人作家に感謝。タイ人作家は奥ゆかしいのかな。長いストーリーだけに挿し絵も欲しかったな。表紙は美しいけどどっちがどっちだかもはっきりしないし。監察医だから手袋してる方が受けだと思うけど4歳年上に見えないしなー。

素敵だったのはタイ文化が垣間見えること。タイ料理が美味しそうだとかワイの挨拶(合掌するやつ)とか。あと「バンはテーンのものだよ」とかいう表現が翻訳だからニュアンス違うのかもしれないけどなんだか女子っぽくて可愛い。BLで世界旅行楽しいですよね。今私はタイの家の壁になってこのカプを見ている、みたいな(笑)

最後の書き下ろしはライトBLっぽくて楽しかった。惚れっぽくて好きな相手にすぐ大量のお菓子をプレゼントする癖のある学生が可愛い。モテモテのバン先生の次に好きになった人が意外。危険なとこ行っちゃったなーって感じです。

長いしお値段高めだけどちょっと変わった海外BL読みたい方にはおすすめ。ドラマだとさらに良さが出そうなストーリーなので見てみたいなあ。

1

フィジカルは強くメンタルは繊細なテーンが

殺人事件の真犯人を追う監察医と塾講師、テーマのわりに作り込みがふわっとした作品。ミステリとして読む構成ではないし、BLとしては一目惚れ要素が強く萌えにくい。ひたすら不憫なテーンのキャラクターはとても魅力的だった。

視点変更有りな一人称小説。バン視点から始まり、序盤は殺人事件を隠蔽したい犯人との攻防が繰り広げられる。監察医一人を脅すだけでどうにかなる、ド田舎での事件っぽい。絡まり合う人物相関図が複雑で面白かった。

中盤でテーン視点に移ると、いきなり真相が語られてしまう。そこから後は、権力を持つ真犯人とどう戦うかの話になっていく。
だが決着は策も何もない行き当たりばったりともいえる逮捕劇。バンの活躍もなく、何のために何度もバンは頭が切れると書いていたのかと思った。

終盤はその後の二人のお話で、事件の詳細やバンの元彼絡みの話など、細かな謎が一つ一つ片付いていく。事件解決の盛り上がり後にまだページ数が1/3も残っていて、長いおまけを読んでいる感覚。

BL的には、テーンが辛すぎる日々を送っていた間、放置していたバンが引っかかる。村八分状態で針の筵の中、たった一人の家族といえる母を看取るまでテーンを放っておいたのに、一瞬の反省でくっついてしまうとは……。

テーンは生い立ちが同情を誘う酷さで、バンに一目惚れして尽くす健気さもまた涙を誘う。フィジカルは強く、メンタルは繊細。
全てを懸けてバンを守るまでになるには、それに見合うエピソードが欲しいところだが、辛い境遇を思えば、共感に至らずとも全力で応援したくなる。崇めるようにバンを見つめるテーンの心理描写が刺さった。

バンの魅力は正直あまりよく分からない。でもテーンはバンに惚れまくっていて、テーンはバンがいれば幸せで。それなら仕方ない、というかテーンが幸せならそれが一番、という目で見ていたかも。

事件ものとして見ると、二部作の本編と後日談のよう。BLとしては二人の関係性を深めるエピソードがもっと欲しいと思った。
ただただテーンの魅力に引き込まれ、何よりもテーンの幸せを願いたくなる作品だった。

0

ドラマの原作だからなのかなぁ?

「ドラマで観れば感想が違うくなるかもしれない」と思ったので中立にします。
と言うのも、この本、ミステリ小説として散漫だと思うのですよ。
謎解き部分があるので出来るだけ内容に触れずに感想を書きますね。

少なくとも殺人事件について書かれる部分と、バンのセクシャリティをアウティングした人物を洗い出す部分は別物のお話として、例えば二部構成にするとかした方が良かったんじゃないかと思うんですね。だってお話のトーンが全く違って、キャラクターの一貫性も揺らいでしまっちゃった様に感じたりしたものですから。

殺人事件に関するお話でも4つ位の謎解きがこちらに投げかけられます。
この手の錯綜する話は嫌いじゃないです。
でも、せっかくいくつもの謎を出してきた割には、それぞれが単独の謎なんですよね。出来ればもっと滅茶滅茶とこんがらがって欲しかったかなぁ……

文章は非常に緊迫感があります。
これはを読んでいて面白かった。
ただ、キャラクターの造形が今一つピンと来ないんですね。
これね、多分ヴィジュアルがあると違うんだと思うんですよ。
ドラマだったら激しく燃え滾ったかもしれない香りがするんですね。

申し訳ないことに私、ヴィジュアルではなく字面と文章のリズムから萌えを補給するタイプの者なので、この手のお話は乗り切れんのです。
作品の良し悪しではなく『謝った部分に手を出してしまった』感であっぷあっぷしております。

4

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