「卑怯ですね」 「君より大人だからね――ごめんね」

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表題作フリップ・フリップ・スローリー

萩原 康太
23歳,図書館司書(補)
八月一日 尋一
34歳,文化人類学非常勤講師

その他の収録作品

  • 書き下ろし

あらすじ

「なんと読むのだろう」それがきっかけ――。

閉塞的で目新しい物もない田舎町。
図書館に訪れた、人目を惹く静かな男。
司書の萩原は、自ずとその男を目で追い、彼が本棚の端から順番に本を借りているという法則に気づく。
きっかけは些細で、けれど確かな興味だった。
次第に几帳面に見える男・八月一日の素を知ることになり――。

オオタコマメの紡ぐ、センシティブラブストーリーが一冊に。

【描き下ろし15Pあり】

作品情報

作品名
フリップ・フリップ・スローリー
著者
オオタコマメ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
一迅社
レーベル
gateauコミックス
発売日
電子発売日
ISBN
9784758024679
4.3

(98)

(54)

萌々

(27)

(13)

中立

(3)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
23
得点
420
評価数
98
平均
4.3 / 5
神率
55.1%

レビュー投稿数23

台詞回しの妙

著者のはじめましての作品はDom/Subユニバースでした。
まだDom/Sub作品がそう多くない中で繊細ながらも
Dom/Subの世界観を明快に描かれ、次回作も楽しみだなぁと
思った記憶があります。

そんな印象が残ったまま読んだ本書。
今作も感情の機微や台詞選びなど繊細さはそのままに、
人肌の心地よさが伝わってくる味わいあるお話でした。

物語の舞台は小さな田舎町。
図書館司書の萩原は利用者として訪れる男・八月一日に興味を惹かれます。

人目を引く外見で、端から順に本を借りてゆくどこか不思議な空気を纏う男。
気付けば目で追っていた。

ある日、バス停で八月一日を見かけた萩原は車に乗らないかと声をかけ…。


第一印象は大人の恋だなぁ、と。
といってもセクシャルな、という意味ではなく。

大人だけれど、純粋さも、繊細さもあって、
熱はあるけれど勢いで踏み込みすぎるようなこともなく、
変に予防線を引いてしまったり、伺いながらじわじわと
距離を詰めていく二人にああ、ちゃんとした大人同士だな、と感じてしまった。
そう、大人って臆病なんですよね。

田舎でゲイとして生きることの息苦しさや家族との関係、
恋愛感情の板挟み感が伝わってきてほんのり切なかったです。

八月一日は家族や友人に本人の意志に反して性的指向を知られ、
地元で生きづらくなってしまったという経緯があるのですが、
そんな八月一日の傷を癒してくれる萩原くん、包容力に溢れておりました。

まっすぐ純粋で、見た目は地味だけど、23歳にしてこんなに
人間力が出来上がっているなんて、将来が有望すぎでは?
過去のトラウマですっかりひねくれてしまった面倒くさいおじさんな
八月一日とはまさに割れ鍋に綴じ蓋でぴったりでした(笑)

派手さはないけれど、二人の人物描写がゆっくりと、
丁寧に描かれているのがとてもよかった。

台詞の一つ一つにもその人の体温や人柄が感じられ、
二人の言葉のキャッチボールが面白く、文字を読むことに小説を
読んでいるようなわくわく感がありました。

お色気は控えめです。
八月一日は常に艶めいてはいるけれど。
濡れ場といえるのは最後の描き下ろしくらい。
初めてで緊張している萩原を大人の余裕で導いてやる
八月一日の色っぽさの何たることでしょう。
都会で相当場数踏んできたんかなぁ…なんて不埒な妄想を掻き立てます。
萩原の言葉に16歳の頃の八月一日が救われてよかった…。

今作は主要二人以外にも登場人物がいるのですが、
脇役たちの人柄も魅力的揃いでした。
主に萩原の家族になるのだけれど。
中でもお父さんの人柄が底なしに温かく、脇役にしておくには
もったいないと思わせる程に人間味が滲み出ていました。
読後、カバー下のやりとりを読んだ時にも
息子のカミングアウトに対する父の返事が優しすぎて
涙腺にじわりときてしまった。

やっぱり著者様の作りだす空気感や台詞回し、好きだなぁ。
次はどんなだろう?次回作も楽しみです。

9

目が印象的でした

この作家さん、私は初めまして、でしたが、目が印象的ですね。
じっと見つめられる感じがしてドキドキしました。

田舎の恋。最近も田舎が舞台の話を読みましたが、田舎は噂好きで隠し事ができない感じ。そして閉鎖的。
やぶみさんは自分がゲイということが知られてしまい、親に勘当同然で東京に行ったけれど、父親の死をきっかけに田舎に戻ってきた。親と生まれ故郷を嫌いになり切れないんですね。優しい人です。
ここに住むのも東京にもどるのも、ほんの些細なきっかけで決まりそうな微妙なバランスだったんでしょう。
自分の境遇と似たような康太と出会い、前を向いて歩けるようになって良かったです。

BLを読んでいて、運命の相手というか、性格、考え方、人間性の相性ってあるんだなと思います。今まで止まっていた時間が大切な人との出会いでうまく回り始める感じ。
そういう作品が多いのがBLの魅力の一つだと思います。

書下ろしのえっちも良かった。二人のことが田舎で噂になるかもしれないけれど、親の理解もあるし、今度は二人で乗り越えられると思います。

5

書店で絵に惹かれました

こちらの作品は全然事前にチェックしていなかったのですが、たまたま書店で複製原画が数枚展示されていて、そちらを読んで惹かれて購入しました。
絵も綺麗でストーリーも優しいお話で本当に書店で見かけて購入出来て良かったです。
最近は通販で購入することが多いので決まった推し作家さんの作品ばかり読んでいましたが、こういう出会いもあるのでリアル書店に足を運ぶのも良いものです。
田舎町の図書館で司書をしている萩原と、そこに通う八月一日という変わった名前の目を惹く男性。
最初は図書館での顔見知りみたいな関係から、ちょっと気になって萩原が声をかけて送っていく友達のようになってから、ゆっくり距離が近づいていくようにみえたけれども・・・というところから、話が展開していってというお話で、なんとも言えない読後感でしたが、先生のストーリー展開がおじょうずなので物凄く自然にふたりの関係の変化を寄り添って見守ることができました。
ミニシアターで上映されるような映画を1本観たような気持になりました。
あまり詳しく説明しすぎると面白味が減ってしまうと思うので、できれば内容調べ過ぎずに読んでいただきたい作品です。じんわり心が温かくなりました。

3

大人の傷を癒す救済ストーリー

素晴らしい、こういうのが読みたかった…
静かに静かに二人の気持ちが向かい合って少し離れて溶け合う、その過程を丁寧に描いている、けど全くくどくなくてシリアスすぎない日常感に溢れている。どこかにいそうと感じさせる二人を美しくみずみずしく描き切っていて没頭しました。若いあの頃誰かに言ってもらいたかった、こういうふうに気持ちに寄り添って欲しかったという尋一さんの思いに等身大で寄り添おうとする萩原くん。展開が自然で大げさな感じがしない、でも漫画らしい美しさ。繊細なタッチで紡がれる大人のラブストーリーでした。表紙裏も感動する。二人が肌を重ねる場面も美しくて涙が出そうになりました。初めて読んだ先生ですが大好きど真ん中でした。何度も読み返したい作品です。BLだけど自分の中の穴も埋まるようなそんな癒しの救済ストーリーでした。

2

読後の余韻がいい

フリップ・フリップ・スローリー
オオタコマメ
2022年10月発売

紙コミックにて購入
カバー下、あり
あとがき、あり

図書館司書の萩原康太(はぎわらこうた、23才)が勤務する図書館に頻繁に本を借りに来るようになった八月一日尋一(やぶみじんいち、34才)。2人が出会い徐々に親しくなっていく過程が凄く自然です。
  
2人とも落ち着いた性格なのもあり、割と淡々と物語は進みますがラスト近くの展開に胸がざわつきました。八月一日のちょっと諦めたような冷めた気持ちで生きる姿勢が分かる。そしてそれは間違った生き方ではないんだけど本心からそんな生き方をしているのかと問われたらまたちょっと別かなと。荻原の若さと純粋さ、ちょっと人生諦めた感がある八月一日だからこそおきた化学反応。2人が出会い混ざり合って、新たな人生が始まった。これだけしっかりと心の動きを丁寧に描いたお話をよく一冊にまとめ上げたものだと感心しました。激しさはないものの、読後感がとてもいい作品でした。書き下ろしもとっても良かったです。

2

この作品が収納されている本棚

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