文庫版イラスト&書き下ろし付き
小説
初めての作家さまでしたが、今ハマっている設定なのと北沢きょう先生のファンタジーの挿絵が大好きなので迷わず予約購入していました。
文庫にしては結構なボリュームでしたが、面白くてページを捲る手が止まりませんでした。
この作品って2021年に電子版で出てたんですね。電子版は滅多に購入しないので存じ上げませんでした。書籍版には表題作の電子版にブライアン視点の書き下ろし「秘密」が収録されていました。
読み終わって直ぐに思ったのはこの続編が読みたいってことでした。
実はタイトルからは明るいコメディタッチなお話を想像していました。確かにクスッと来る場面も多かったんですが、圭輔が召喚されるキッカケとなったデュナン王国の成り立ちに闇を含んでいるんです。
圭輔の前にデュナン王国に現れた人物が悲惨な人生を送ってて、ハッキリいって胸糞悪くなるんです。でもきっとブライアンと始祖王ルオークとの違いを強調する為だと思うんですね。ブライアンが魅力的なんですよ。
この、オレ様ブライアンなんですが実は苦労人で、とても情が深い人物なんです。でもオタクでコミュ症気味の圭輔はそんなブライアンの機微まで感じ取れないのと、デュナン王国の闇を知ってしまった故に迷走するんです。
でもこの迷走がデュナン王国の危機を救って、すれ違っていたブライアンと圭輔を再び結び付けるキッカケになりました。
魔力ゼロで異世界から来たオメガの秘密が解き明かされて行く過程と、後ろ盾の無かった圭輔がひょんなことから強力な後ろ盾を得るまでの異世界人としての活躍が凄く面白いのですよ。
そして書き下ろしの「秘密」では、ブライアンの悲痛な思いと国王としての決意を知ってホロッと来ました。
ブライアンの異母弟のダレンがとても気になるのと、圭輔の後ろ盾のあの方がどんな活躍を見せるのか、そして異世界から来たオメガだけが成し遂げられるあのことの結末が知りたいので、ぜひぜひ続編をお願いいたします。
Ωバースのエロエロ要素を盛り込みつつ、異世界ファンタジーとしても面白くて読み応え抜群の一冊でした!
ただ、BL的にモヤっとする部分があり〝萌×2〟評価に……
粗筋から、異世界召喚でΩになった主人公がスパダリαな王様にひたすら溺愛されるお話かと思いきや、過去に召喚された異界人の手記を辿りながら魔石とデュナン国の秘密に迫る、ストーリー重視のお話でした!
ぶっちゃけ、予想外のシリアス展開に驚きです
メインストーリーはそこまで重くないのですが、200年前に主人公同様、別世界から召喚されて魔石を作った賢者・シアンの手記がめちゃくちゃ闇でした……
もう、手記で語られるシアンの運命が過酷すぎる……
国の始祖・ルオークと、その従者のアレンとのドロ沼三角関係のような内容が語られ、オメガバース黎明期特有のΩ蔑視や、差別描写がてんこ盛り。
兎に角、始祖・ルオークが胸糞すぎるので、逆転特大ホームラン級の〝ザマァ〟が無いと気が済まねぇよ…!
と言うわけで、ラブコメBLとして気軽に読むにはヘビーな内容ですが、その分、ストーリーと世界観に厚みが出ていて凄く面白かったです。
ただ、サイドが暗い分、メイン2人には甘々溺愛で居てほしいところ、そうでもなく……笑
主人公の「発情!?男とセックスなんて冗談じゃない!」と言うノンケ感は大変好みでしたが、自分の気持ちに全く気付かないので、めちゃくちゃ焦らされました笑
そして、攻め様には妻子がいます。
政略結婚で正妃に対して「愛情は無い」そうですが、ラストも主人公と番にならず、あくまで〝愛妾〟ポジションのまま……。
折角、後継者問題で悩まないオメガバースの世界なのに、妻子持ち設定必要だったのかな…?
異世界召喚ファンタジーとしては凄く面白いのですが、BLとしてはモヤっとする終わり方で残念でした。
先生のXによると、続編を執筆中とのこと……!
続編では、このモヤっと部分が解決すると良いなぁ
▶︎挿絵…8P(北沢先生による王様の肉体美に拍手)
※こちらは電子発売済みの同作に、書き下ろし(攻め視点)5Pと挿絵を追加した書籍版です。
最近流行りの異世界召喚ものといえば…な定番のおいしい設定も取り入れつつ、そこに独自設定が施されたオメガバース要素が加えられていて面白かったです。
お話はすごく面白いのだけれど、それと同時に評価が難しい作品だなあとも思います。
とある事情から女性絡みの性的なあれこれに対して苦手意識を通り越して拒絶反応がある、天涯孤独の日本人・ケイスケ。
彼が異世界へと召喚されるところから始まる物語。
現在枯渇しかけている貴重な金魔石を求め、金魔石を作ることが出来る大賢者となり得る者を召喚したデュナン王国ですが、現れたのは魔力が0のケイスケだった…
しょっぱなからなんてこったなんですよ。
国を治める王様ことブライアンに魔力0のケイスケが保護を求め、王の庇護の元デュナン王国で暮らしながら、はじめてのバース性・金魔石の謎・デュナン王国の過去に迫っていきます。
この世界では魔力が乏しく低い者をオメガと呼び、魔力が高い者はアルファである確率が高い…と、ここでオメガバース設定を持ってくる展開に、そう来るか!と面白く読み進めました。
てっきり主人公たちの恋のお話なのかと思いきや、同時進行で過去に金魔石を作ったとされる者の手記を元に、ケイスケよりも200年ほど前に召喚された「彼」の人生を追っていくことに。
1冊で2度おいしいお話ではあるのですが、この「彼」の人生がわりと過酷なものなので、もしかしたら人を選ぶ内容かもしれません。
ケイスケとブライアンの誤解と思い込みによるなかなか噛み合わないもどかしさと、手記に描かれた過去を追うのは楽しかったですし、受けが攻めの胸と乳首を開発したり、ソックスガーターその他フェチ要素もあります。
読み始めは攻めの言動にうーん…?と思いきや、受けが無意識に攻めを振り回すタイプでこれまたそう来たか!でした。
なんだかんだで健気な攻めだったのかな。
…が、強い萌えを感じたか?と思うと首を傾げてしまうところがありました。
ストーリーは面白いのです。でも、私はメイン2人よりも手記の「彼」の過酷な人生の最後のパートナーとのお話の方に惹かれましたね。
「彼」の最後のパートナー視点のお話が読んでみたくなりました。すごく愛が深い人なのではないでしょうか。
ブライアンとケイスケのBLな部分に関しては、もうひと息なにかドンと萌える起爆剤が…ラブがもっとほしかったです。
誤解と思い込みによる噛み合わなさももうひと工夫ほしかった。序盤からあまり愛が見えないのでなおさら。
1番気になったのは文体。終始説明的・口語体のように見えてしまい、読みやすくはあるのだけれど少々気になります。
ストーリー展開の面白さは4、萌えは2.5、文体の癖を総合してこちらの評価になりました。