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BLの黎明を告げる作品にして、最高傑作!
この界隈で伝説とされる作品だから読んでおいて損は無いだろう、くらいの軽い気持ちで読み始めたら見事にハマりました。
ドイツのギムナジウム(寄宿学校)が舞台、トーマという少年が自殺するシーンから始まります。
キリスト教(多分カトリック)の話なので 友愛、家族愛、性愛など、様々な“愛”が出てきますが、中でも1番印象に残ったのはやはりトーマの無償の愛。
愛する人を救うために自分の身を捧げる、濡れ場の需要が高まる最近のBLでは滅多にない魂レベルの愛。ひたすらに美しいです。
終わり方としては、最初読んだ時には「えっここで終わっちゃうの!?」と少し物足りなく感じましたが、読み返すうちに いやこれでいいんだ、ここで終わるのが1番美しいと思うようになります。
この作品は確かに少年愛について扱ってはいるけれど、だからといって現代のBLと一緒にしてしまっていいのか?とは思う。同じテーマでもこの作品だけは全くの別次元にあるような感覚。
「パタリロ!」の魔夜峰央先生が自身の娘さんにこの作品を読むよう教育していた理由がよく分かります。
傑作で、この作品がなければ半分以上の現代BLは存在しないはずです。萩尾望都先生の心理描写はもはや天下無敵です。人の心臓(読み:こころ)を読むそのものです。
BL入門授業ではぜひ読んでほしい作品です。歴史的にも、美学的にも。
Chill-chillに入っていないのですが、Fantagraphicsさんの公式英語版も持っています。大判サイズで、少し高級感があって、非常に快適です。やはりこういう系は英語で読んだ方が、雰囲気に合う気がします。
古典を読むこころづもりで読まないと最後まで読みきれないかもしれません。
それでもチャレンジして欲しいからレビュー。
冒頭いきなりトーマの自死のシーン。
誰からも愛される彼が何故そんな事をしたのか?
ユーリはトーマとどんな関係だったのか?
トーマに瓜二つなエーリクが登場し、物語は進みます。
流石、掴みはばっちりです。
ミステリーやリドルが好きならこれだけで充分読めるでしょう。
その後はキリスト教での愛が描かれます。性愛よりは家族愛、隣人愛、無償の愛。
このあたりの描写は冗長で古典的なので初読の時は挫けポイントでしたw
ユーリの翼について、最後の方にわかります。
この先はネタバレかもしれませんが、こんな古典に今さらネタバレもなかろうという事で書いちゃいます。
悪魔の誘惑に負けたのではなく、自ら選んだ負い目から、あの複雑な行動になったんだと納得。
サイフリートの論文の概要をバッカスが語り、彼の傾向はわかります。
そしてエーリクとの対話でトーマの愛を理解したユーリはお茶会に参加。
ここは何度読んでも名シーン。
ユーリはヤコブ館の二階のはしで何があったのかエーリクに話します。
彼はいつかサイフリートさえ許すんだろうな。
もう一人の主人公オスカーも救われています(彼の過去は「訪問者」で読めます)
あ、読後は必ず冒頭に戻ってトーマの手紙を読んでください。
手紙のバックの絵はあのシーンだと判ります。
構成も流石ですが、やっぱり時代を感じる部分はあります。
それでも紛うことなき金字塔。
24年組が流行った世代と私自身が違う世代なので所々感覚のズレがありますがトーマの身を投げ打ってまで伝えたかったユーリへの無償の愛には感動します。悲しいとか切ないとかじゃないただその純真な想いは神々しく、トーマという人間の他社に与えることのできる強さを持つ存在に心が震えるのです。
今どきのBLならユーリとエーリクとでハッピーエンドになりそうですが、でもあれでよかったと思います。ユーリにはトーマへの愛を胸に抱いて生きていってほしいです。
味の出る作品なのかもしれない。
けれど
結局のところ、誰が救われたのか。。はたして誰も救われて居ないのか。
先日、風と木の詩でもそうでしたが、この位の時代の作品だからなのでしょうか
どーなのか・・と思うのですが
読後に胸がスッキリしない。
もちろん、悪い意味ではないのだけれど
巻末でハッピーエンド!とスッキリ読めてしまう作品に慣れすぎたのかもしれない。
スパっと終わらないからこそ胸に残るのであり、語り継がれるのかもしれないと思う反面で、最終的にはハッピーエンドを望んでしまう自分がいる。
難しいところ。
話は、自分を想って死んでしまった少年。
事故か自殺か。それは何故に。。。それを基盤として
若い少年たちの~なお話なわけで。。。
夢中で読んでしまったのだけれど、よくよく考えればこういう解釈もと
思うところもあるように書きながら思ってしまう。
このあと、あのキャラクターはどうしただろう。
このたと、このキャラクターはどうしたのだろう。
思いを巡らせてしまう。
傑作と言われる理由はきっとあるはず
もう一度読み返すべきか否か