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表題作シンプル・イメージ

永倉航
元気な学生
浅名千晶
無気力コピーライター

その他の収録作品

  • シンプル・デイズ

あらすじ

片想いに疲れ、かたくなになっていた浅名は、コンビニでバイトをしている永倉に出会い、彼の人懐こい笑顔と性格に惹かれていくが…。
出版社より

作品情報

作品名
シンプル・イメージ
著者
砂原糖子 
イラスト
円陣闇丸 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
ISBN
9784344812901
3.6

(32)

(7)

萌々

(8)

(15)

中立

(2)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
10
得点
114
評価数
32
平均
3.6 / 5
神率
21.9%

レビュー投稿数10

海の香りを感じる作品

砂原糖子さんのデビュー作が、ルチル文庫より復刻版で登場。
復刻版には「シンプル・デイズ」という、商業誌未発表作品も収録です。

主人公は傷心で都会から海辺の町へ逃げてきた、
無気力美人のコピーライター浅名。
そんな彼の頑な心を溶かす王子様は、年下のサーファー永倉。

特に派手な展開があるわけではないですが、徐々に気持ちを近づけていく二人の姿が、
穏やかな海の日差しのように描かれています。

「デビュー作には、その作家の全てが詰まっている」
と、よく言われますが。それを実感した作品でした!

グルグルと悩み、自分の世界に閉じこもる受け。
そんな受けを外界に連れ出す攻め(ある意味、理想の王子様)。
攻めによって受けが前向きに変わっていくような流れ……
砂原作品の原点・醍醐味が、この作品に詰まっています。

5

デビュー作と思えない完成度

大好物の年の差もの。そして年下攻め。
砂原さんのデビュー作だそうですが、面白かったです。
特に目新しい感じもなく、些細な日常をひたすら繰り返すという手法ですが、それゆえに緻密な心理描写に作品世界に惹き込まれる。
同じありがち設定でも、心の揺れ動きで差が出るというか、個性が出るもんだなぁ……と。

年の差にぐるぐる悩んだり、諦め癖がついてる受の懊悩もいいですが、対照的な攻の底抜けな明るさもいい。
しかもこの攻の家庭環境は複雑なんですが、そんなことはひとつも表に出さないのがまた……。
そのくせ受以上に愛情に飢えてて、心の底では「帰る場所」を必至に求めてあがいてる姿に身もだえしました。
年上受相手に、大人ぶろうと一生懸命なところもきゅんきゅんします。

作品を通して特にドラマチックな展開があるわけではないです。
まるでタイトルの「シンプル・イメージ」のように、無駄を省いたゆえに浮き上がってきた、キラリとした心の動きに注目です。

1

受けのおねだりに萌える

砂原先生のエロが好きなんですが、デビュー作にしてエロがエロい。素晴らしい。

失恋と同時に仕事を辞め、都心を離れて海岸沿いのマンションへ引っ越してきた浅名。フリーランスのコピーライターとして細々と仕事を続けていた彼は、毎日のように近所のコンビニに通っているうちに、店員の一人と顔見知りになる。屈託のない、九歳年下の明るい永倉と親しくなっていくのだが…。

ストーリーはスタンダードな年下攻めモノだと思うんですけど、攻めより大人なはずの受けの、揺れまくる恋愛心理がメインに描かれています。アラサーとはいってもまだまだ若いっす。そりゃわたしも十代、二十代前半くらいまでは三十歳は大人だと思いましたが、今じゃこの浅名は頑張って大人しちゃってるように見えました。オッサンだなんてとんでもない。

浅名はなんだかんだ後ろ向きな性格。恋には一途で、心が伴わないセックスを好まず、潔癖で頑なだったんですよね。けれど、惚れた相手に崩されてからは、感じやすくってすぐにイっちゃう身体になってしまうという…。最後に収録されている「シンプル・デイズ」にサラッとぶっ込んでくれています、ホットな濡場を。こういう受けは実にけしからんです。←もっとやれ的な。

浅名が恋に落ちちゃった相手は、えートコのボンなんですが、浅名に隠していることがあったりして、ちょいちょい浅名はショックを受けるんです。でも永倉は彼に嘘をついてしまうくらい真剣で、浅名の仕事の元パートナーである砥綿に猛烈にジェラシーしちゃいます。その後のエッチのまぁエロエロしいこと。

仕事終わりに砥綿と飲んで帰ってきた浅名。マンションの外で砥綿が浅名の髪を梳くところを見ていた永倉が、部屋に入ってから浅名の気持ちを確かめようと、砥綿が髪を触った部分にチュッチュするシーンに萌えました。永倉が早熟すぎてちょっとビビるけども、若さゆえの万能感がカッコイイ。その反面、表には出さない必死さにハラハラさせられたりして。

嫉妬から先行きが不安になったり、喧嘩したり…。恋愛に大人の分別は全く役に立ちません。やっぱり、心理描写をしっかりと踏まえた上でのエロが熱いんだな〜、って思わせてくれたお話でした。

1

心をくみ取ってくれる幸せ

全編に海の香りが漂う良作でした。表紙のイラストからみると、まさか攻めが高校生だったとは思わなかったんですが、航本人も子供だか大人だかわからない、境目の人だったので“高校生じゃ幼すぎるしなー”と思わずに読めました。周囲の人間関係を考えると、大学生あるいはフリーターの設定ではちょっと無理が出ちゃうんだろうなとも思いました。(どんだけ大人好きなんだ私)

もう一人の主人公浅名(30才)が流され侍で、「自分はどこ?自己アピールしなくていいの?」って言いたくなっちゃうくらい「自分が引いて上手く回れば、我慢くらいなんのその」な人なので、3歩進んで2歩下がる状態。でも、私もどちらかというとそんなタイプなので、なんだか結構入れ込んで読んじゃいました。「どっちでもいい」という考え方は、時として相手任せで無責任な感じですが、「あなたの意見を尊重します、私はどちらも嫌いではないので」という意味だとすれば、遠慮深いともとれます。遠慮が美徳とは思いませんが、自分の意見に絶対の自信を持てない場合、こうなっちゃっても仕方がないですよね。

55ページで「自分は…淡白とは違うのかもいれない。  欲しがる勇気がないばかりに、諦めるのに少し長けているだけだ。」って言っています。私の心の代弁者だと思った台詞です。

そして、航の超能力並みに浅名の心を感じ取る力をすごく嬉しく感じました。顔色を読むってやつですよね。全てを見透かされるのは怖い気もしますが、なかなか自分を出せないタイプの人間にとったら、輝ける存在だと思います。

航の将来を考えても、まだまだ多難だと思いますが、幸せになって欲しいなと思うカップルでした。

2

これがデビュー作とは

砂原糖子さんのデビュー作らしいです。デビュー作とは思えないぐらい完成度が高かった。
丁寧で透明感のある文体、緻密な心理描写、優しくてもろいのに、芯は強い登場人物etc、砂原糖子の源泉を堪能しました。

主人公(受け)は30歳らしくない30歳でした。仕事はできるし、セックスの経験値もそこそこあるのに、恋愛に関してはダメダメだ。ウジウジと年齢を気にし、焼き餅をやき、しかもその感情をうまく相手に伝えられず。こんなオトナに惚れてしまった高校生が可哀想だw
ただ、だからこそ、相手が高校生(攻め)だというのに、二人のシーンではぜんぜん年の差を感じなかったです。攻めは爽やかな好青年でした。心の疵はありますが、それを隠して処理する能力がある。こんな高校生もある意味やだw
でも、カップルとしてはお似合いです。
『シンプル・デイズ』は蛇足だと思ってしまったけど。

2

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