ファンタスマゴリアの夜

phantasmagoria no yoru

ファンタスマゴリアの夜
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神42
  • 萌×241
  • 萌18
  • 中立7
  • しゅみじゃない5

--

レビュー数
20
得点
435
評価数
113
平均
4 / 5
神率
37.2%
著者
砂原糖子 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
梨とりこ 
媒体
BL小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
価格
¥619(税抜)  ¥669(税込)
ISBN
9784344827530

あらすじ

元人気子役で現貸金業の束井艶が、永見と出会ったのは小2のとき。
小5の時に、永見に告白されるが、艶はフッてしまっていた。

そして月日は流れ、同窓会の時、成長した永見に会う。
永見は夢を叶え、自分の店を持ち、バーテンダーとして働いていた。

永見に惹かれながらも束井は離れていくが…!?

表題作ファンタスマゴリアの夜

永見嘉博 小学生からの同級生で今はバーテンダー 
束井艶 28歳 事故で子役を引退し今は貸金業者 

その他の収録作品

  • あとがき

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レビュー投稿数20

めちゃくちゃ切なかった

一気読みでした。
それもこれも冒頭の書きだしがとても気になる内容で、「これは一体どういうことなんだろう」と最後まで本を閉じることができませんでした。
そして幼少期から始まる苦しいまでの切なさ。
鎧をまとい続ける受けと、本音を隠すことが巧みな攻めの人物像がすれ違いの切なさをより引き立てていたと思います。

受けの艶(えん)はただ不憫というのではなく、不憫が生んだ歪みが描かれています。
大人になった現在の姿だけを見たら、分厚い鎧をまとったこんな人間よく愛せるなと思ったかもしれません。
しかし彼の孤独な幼少期から大人になっていく過程を見ると応援しかできなくなりました。
しかも仮面の下に隠されている優しさがたまに垣間見えて、余計たまらない気持ちになりました。
人の喜ぶ顔が好きという健気な本心も泣ける(ノД`)
ファンタスマゴリアな物語は切ないけど、それ以前に彼の両親が課した重荷もとても重大だと思います。
そこで苦しみもがく艶が本当に可哀そうでした。
彼を放っておくことができない永見の気持ちもよく分かる。

そして攻めの永見は、愛している人物は艶ただ一人というのが読んでいてそこはかとなく匂ってきました。
学生時代、艶の前で恋人をとっかえひっかえしてきたのに軽薄に見えない所が凄いと思います。
永見に本気だった子達にとっては可哀そうだけど、永見は結局艶至上主義だったんですよね。
その時にとり、友人という形は最良であって永見なりに艶をしっかり捕まえていたんだろうと思います。
後半になるにつれて永見の真骨頂を見ることができました。

お話のトーンは暗く読んでいて結構辛かったですが、こんなにも早く結ばれてほしいと願ったカップルはなかなかいないかもしれません。
走馬灯を使って艶の心情が表されていたり、2人の物語が展開されていく所がとても印象に残りなんともいえない余韻が残りました。
萌×2では足りない気がしたので神評価です。

4

読後の爽快感の素晴らしさ

物語は、ゴミ集積所でホームレスに捨てられたマネキンと間違えられる、束井の姿から始まります。
サスペンスドラマのような幕開けですが、話は一旦過去へと戻り過去と現在を行き来する構成に・・・区切り区切りに、年代だけではなく表題のファンタスマゴリア由来のタイトルもあり、とても素敵です。

小五の時、永見の告白をレイダーマンを観るためにあっさりふってしまった束井。
でもそれ以来、束井は永見のことがどんどん気になっていって、いつしか心の中を大きく占める存在となっていきます。
一方、束井への恋心を秘めたまま、嫌われない距離で束井を見守り、さりげなくかばったりもしてくれる攻の永見、かっこいいです。

同窓会を契機に、再会した二人。
永見は夢を叶えて自分の店を持ち、束井は父親の事業を継いで街金を営んでいるのですが。
この束井の街金に、束井が子役生命を絶つ原因となった大瀬良が現れてから、話が急にきな臭くなっていき、冒頭のシーンへと謎が解かれていきます。

大瀬良と対峙する束井。
整形した大瀬良の顔が束井の顔に似せたものであったということに、彼の束井へのねじれた執着度合いを感じゾッとします。
立体駐車場で大瀬良の車に追い回される束井・・・もう、ハラハラドキドキで。
結果は・・・さすが、エンゼルの艶ちゃんでしたけれど(安堵)

早々に束井のピンチを悟った永見は、自分の店を売ってまでして大瀬良の情報集めの資金を作り、集積所の束井を救いにきてくれます。
「俺は、俺が大切だと思う人間の名誉を守りたかった。それだけだ」
・・・永見の男前なセリフに、クラクラ。
そして、二度目のHシーンは、本当に幸せいっぱいで。
二人の喜びがグングン伝わってきます。私にとっての幸せなHシーンベスト5に入りそう(笑)
ああ、ほんとよかった!!素直になった束井の可愛らしさは反則ですね(*'v^*)
ラスト、永見の横で笑んでいる束井。笑顔を取り戻せた束井の姿に、心からおめでとう!!と言いたくなりました。

もうですね。
この“ファンタスマゴリアの夜”は、ラストへ向かって場を支配していた負の札がすべて吹き飛ばされて、一面幸せカードになる爽快感がたまらなかったです。
二人の再会のキューピッドである外見フランケンの妻田や、二人のよき理解者になってくれるヒラメ兄の蜂木など、脇役のキャラもとても魅力的でした。
ああ、面白かった~!!

余談ですが、艶ちゃんがハマっていたレイダーマン。
これって、イノセンスの睦くんや高潔であるということの真岸が好きだった特撮ヒーローですよね。砂原ワールドの男の子達の心を虜にするレイダーマン・・・なにか懐かしくて私まで息子達と観たことあるような気になってしまい(笑)思わずニヤリとしました^^

3

長い長いすれ違い

約20年あまりの人生の歩みが丁寧に表現されていて良質の映画を見ているようなそんな感じでした。

人気子役だった艶。その人気を妬まれ若干9歳の同じ子役の男子に罠にかけられ子役を辞めざるを得なくなる。
月日は経ち艶は父の後を継いで金融業を営んでいた。ある時間違って出席で出されてしまった同窓会へしぶしぶ出席し、小学校からの同級生で唯一会いたい相手、永見に約10年ぶりに再会する。
再会してからふたりの止まっていた時が再び動き出します。

ふたりの関係を表すのに約20年あまりの長い月日を丁寧に描いています。
小学校時代の出会いから、中高校生時代のお互いへの重苦しい気持ちや葛藤、再会してからの関係と気持ちの変化。

艶を陥れた元子役の俳優は約20年経っても艶を羨み再び陥れようとしてマスコミも巻き込んでの事件が起こる。
それを永見が捨て身で助けようとするところは圧巻です。

その想いに艶も応えようと最後に同じような行動をします。これからはふたりで歩んでいくのだと。
長い長いふたりのすれ違いはようやく終わったのです。

永見が艶を本当に長いこと艶を想いつづけてきたその想いに圧倒されます。艶が永見から逃げて会えなかった間も想いつづけ、でもまた逃げていた艶も実は永見を求めていたのです。
そんな二人の物語り。絆の深さに心地良く酔いました。

3

読み応え完璧です!

タイトル良し!
ストーリー矛盾なし!
軽すぎず、でも重すぎず!
キャラはたってる!
胸キュンあり!
読後感良し!
コメディはなし…。
いやぁ〜久々に完璧なBLを読ませて頂きました〜。
ツッコミどころもなく、勢いだけじゃなくストーリーでも読ませて、かつ萌えもあり。
しかも私の好きなワンコ攻めの要素も入ってて…なんでしょうか?この満足感w
丁寧な文章で描かれていて、全てがキラキラ輝くファンタスマゴリアのようです!
これはBL初心者からベテラン?まで幅広くオススメ出来る作品です。

2

人生のエンディングと、新しい道

「ファンタスマゴリア」=幻影、走馬灯
作中では、束井と永見の思い出の品(ランプ)であり、束井の過去の栄光であり。
何より、束井の回想が大半を占める本編自体が走馬灯。
貸金業者のアコギな世界を描いていながら、静かな感傷があり、柔らかな味わいです。

「天使」と呼ばれる人気子役だったが、ある事故でバッシングを受けて以来落ち目となり、芸能界を引退した束井。
仲良くなった永見は、祖母に亡くなった娘の代わりに女の子の格好をさせられていた。
大人に求められる虚像を演じていたという共通点から、惹かれ合ったのかもしれません。

子供の頃、永見の告白に応えられなかったことへの後悔。
大学を中退し、父の貸金業者を継がざるをえなかった出来事。
自分と違って夢を叶えた永見との再会。
カネの取立てに容赦ない束井ですが、回想のなかには、自分の部下や客、永見に対してどこか感傷があり、マネキンのように整った容姿ながら情を捨てきれない人間臭さが魅力です。

そんな束井の事務所をかつてのライバル子役・大瀬良が客として訪ね、メディアやヤクザも絡んでの騙し合いに発展。
スリルある展開ながら、子役のなれの果て二人の争いには経年の虚しさも感じられて少ししんみり。

永見は束井に昔フラレているため、あくまで友達として力になろうというスタンス。
何かあったら絶対に助けるし、実際に大瀬良からも全力で守るけど、自分の気持ちは抑えよう抑えよう…としている所に萌えがあったと思います(*´▽`*)
実はずっと前から両想いで、子供の頃の他愛ない誤解が尾を引いている関係なので、
恋愛物としてはオーソドックスな展開。
しかし束井の人生を追う物語としては、永見との関係を含めあらゆる鬱屈が終盤で一気に晴れ、ようやく夜が明けたようなラストが爽快です。
Hシーンは2回程度ですが、忍んでいた想いが一気にあふれるような熱さがあって、
再会した大人同士ならではの甘さと幸福感にあふれていました♪♪

夜の世界を描いていますが暗いだけではなく。
束井や部下の人情が表れるシーンや、永見の経営するバーでのやり取り、
芸能界に戻れば?と言われた束井の意外な答えなど笑
ところどころホッと息をつけるところに登場人物の日常を感じられる作品でした。

12

走馬灯のようにかけめぐる…

冒頭いきなり歓楽街のゴミ置き場で気を失って倒れているところをホームレスの老人にマネキンと間違われるシーンから始まるというこの物語。

タイトルのファンタスマゴリアは【走馬灯】のことだそうで、まさにくるくるまわる走馬灯のように過去と現代を行ったり来たりして物語は進んでいきます。
元人気子役として華々しい表舞台に立っていた束井は今は親の後をついで街金屋…。
そんな束井と幼馴染の永見が小学2年で出会ってから小中高を友人としてすごす過去と、同窓会で再会してからの現在が交互に描かれています。

互いにお互いを想っているのにすれ違う心がどうにももどかしくてせつなくて、読んでいて何度も胸がきゅっとしました。
これはとてもよい両片想いものだなぁと。
何度行き過ぎても何度でもまためぐり合う…ふたりの関係自体がファンタスマゴリアにリンクされていて…
現在と過去を行き来する展開が、この何年越しものすれ違う想いをさらに強調するかのようでした。

バーテンダー×街金業者ものですが、裏社会もの的なダークさはそんなに感じず、繊細でせつない印象を受けました。
Hシーンは2回ですが、どちらも甘く熱く色っぽくてとてもよかった…!!

そしてぐいぐい引き込まれるストーリー。
束井が子役をやめざるを得なくなった事故に大きく係わった元子役の大瀬良が、現在の束井の前に再び現れることが束井にとっても大きな転機となるのですが…
大どんでんがえしのどんでんがえしという感じで、最後まで気を抜けない展開でした…!

7

光と影が紡ぐ物語

砂原糖子さんは気になる作家さんのお一人だったのですが、
数ある作品から今作を選ぶにあたって
”ファンタスマゴリア”という耳馴染みのないタイトルと
挿絵が梨とりこさんだったことが決め手となりました。

小さな街金の社長束井艶と、バーテンダー永見嘉博の
切なくもスリリングな展開を含ませる同級生・再会もの。
幼少期のふたりの出会い、青春期のすれ違い、
大人のなってからの再会とすれ違いの果ての着地、が
今作のキーアイテムとなっている光と影が物語を紡ぐ走馬灯=
”ファンタスマゴリア”を追いかけるようにして描かれています。

長く切ないすれ違いを含め、見どころはたくさんありますが、
永見の一途な束井への想いには
萌えと共にしっかりとした読み応えと満足感を得ることができました。
元々わたしは
攻め(今回の場合永見)に厳しめの目線で物語を読む方なのですが、
永見には最初から最後までずっと好感が持てました。

特に、人気子役からの転落という苦い過去を持つ束井を
学生時代同級生たちのからかいから守るために
自分がゲイであることを飄々とカミングアウトするシーンがすごく良かった。
大人になってからも、窮地に陥った束井の元へ駆けつけたり、
自分の夢を犠牲にしてまで奔走するヒーローのような姿が、とても素敵。
(助けられる束井の方も、弱弱しいヒロインではなく、男らしさに溢れているところもgood!)

又、トイレの個室での束井の”遊び”に嫉妬心を燃やし
長年友達でいようと必死だった永見がついに束井の体に触れ、
ひとつになる展開には、萌えを感じました!
手探りで余裕のない、想いだけが先走って爆発したような感じが
個人的にすごく好みで。
勿論、お互いの気持ちを通わせた後の愛に満ちたベッドシーンも
素晴らしかったです♡どちらも必見!

エンターテイメントとしても、スリリングな展開が用意されていて
殊に終盤は、物語から目を離すことができません。
束井にとって因縁の相手である大瀬良という存在、
その彼が子供時代から抱えていた執念のような闇が印象的でした。

大瀬良を含め、
脇役たちがそれぞれしっかりとした個性を持って描かれていることも
物語を楽しむことのできる要因のひとつ。
特に束井の部下であり、保護者のような妻田は
陰の立役者といった感じで、すごく良かったな♪

小説だからこそ一層楽しめるストーリー展開と読み応えが
ぎゅっと詰まっており、幅広くおすすめできる一冊。
とっても面白かったです!

6

まさにファンタスマゴリア

元人気子役の今は街金の金貸しをしている束井と、幼い時だった故に告白を受けてもそれに答えられず、それでも側にいた氷見の、束井の回想を中心にして10年後の再会から事が動くお話。
大雑把にどんな話かと問われればこうなのかな?

非常に静かにまさに”ファンタスマゴリア”(走馬灯)のようにクルクルと過去を見せながら展開していく話はまるで糸が絡め取られていくように、終盤に向けて全てが回収されてとても綺麗なフィニッシュを迎えました。
なかなかに「お見事!」と言うべきか。
そこに一辺の不安もなく、ようやくという安堵感があります。

氷見という男の優しさと思いやり、これが懐の深さを見せてすっぽりと包みこむようです。
初めての束井との出会いの時、彼は時々女装しています。それは祖母の為。
中学校の時、修学旅行で束井がからかわれた時に自らヤリ玉になって代わりとなる。
そして再会後、束井の為に私財を投げ打って彼を助けようとする。
彼のさりげなさと、いざという時の男前な態度。
押しつけがましくなく、さりげなく、嫌味でなく、彼の魅力が彼視点でなくとも充分に現れていました。

束井という男、彼もまた投げやりなようでいて仕事柄鬼にならざるを得ない時もあるのだが、基本、良い人なのだろう。
小学5年という幼い時の告白に振った形になってしまったが、それまでと変わらない氷見に慢心していたというわけではない。
いつか、という気持ちがありながら氷見のゲイ告白にチャンスを逃してすれ違ってしまっただけなのです。
きっと、父親が亡くなるということさえなければ、10年も開いてしまうことはなかったのかもしれないが、彼が氷見に遭いたいと思った時のまたもやのすれ違いが、彼を氷見から遠ざけてしまったのかもしれない。
そして彼は強くなったのです。

束井が子役を辞めるきっかけになった事故に関わった大瀬良という男が、またもや、クライマックスで彼に関わって、再びの大きな転機の一因をになうとは!
その絡ませ方も、彼が街金をやっているがゆえのありえなくはないものだと思えます。
この辺り、面白い見どころでもありました。

出会った時からの彼等は運命の番だった、と言ってしまうとつまらない。
しかしそう思えるほどの、内容の濃さに圧倒されました。
まさにファンタスマゴリア、読み応えも充分にありました。

5

内面も男前なふたり

タイトルが秀逸。
ファンタスマゴリアってなに?と興味を引くのと同時に、梨さんの美しく少し排他的なイラストの雰囲気がマッチしていてとっても素敵。
わたしの中の砂原さんのイメージとはかなり違いましたが、良い意味で裏切られた感じです。

受けの束井は人気子役だった過去があるものの、今は親の仕事を継ぎ貸金を営む28歳。

攻めの永見は念願だったバーを営む、束井の同級生。
同窓会で再会するまで疎遠になっていました。

小学生の頃、永見は祖母のために時折女装をしていたのですが、束井は彼をありのまま受け止めているんですよね。
そんな束井のことが永見は大好きで小五の時に告白するのですが、束井は見たいテレビ番組があったがためにスルーしてしまうんですよね。
なんともリアルに子供らしい(苦笑
そんな束井のこともずっと永見は想い続けてきました。

ファンタスマゴリアとは走馬灯のことだということですが、この作品の書かれ方は過去へ飛んだり現代へ戻ったりとクルクル回ります。
永見の想いも時に流されつつもまた束井へと戻り、束井が過去に人気子役から転落した原因も回りに回って再び束井の足元へ現れます。
そのストーリー展開に不自然さはなく、流れるように進みます。

そしてこの作品は、攻めも受けもあまりに男前です!
こういう主人公達ってめずらしいかなって思います。
束井のキラキラしたものに囲まれた幻のような過去と、あまりに現実にまみれた現在。
その現在の自分がすべて本意でなかったとしても、それでも束井は周りの人間を守るためには泥をかぶることを厭わない。
永見も学生時代から自分のすべてを束井のために投げ捨てることを厭わなかったし、それは再会を果たした現在も変わっていませんでした。

久々に女々しさのないBLを読みました。
暗い話や陰湿さもあるにはあるのですが、キチンとラストには救いがあり読後気分が良かったです。
子供時代に我が家にも走馬灯がありました。
温まると回り始めます。
この作品はまさに走馬灯ですね。

5

ノスタルジックな夜の光と影、そして朝。

ファンタスマゴリアって何?と思った人も多いと思うが、私もその一人。
そのタイトルのちょっと不思議な響きが気になっていた作品は、
ファンタスマゴリア……「走馬灯」がキーにもなり、
全体の雰囲気を作ってもいる作品だった。

くるくると回るファンタスマゴリアのように、
8歳で出会った束井艶と永見の物語は、
現在と過去が入れ替わりながら回りながら進んでいく。

全体には明るくない物語なのだけれど、
このファンタスマゴリアの光のような、
ノスタルジックな色合いの雰囲気がある。

          :

艶は、かつて一世を風靡した子役だったが
8歳の頃のとある事件をきっかけに引退を余儀なくされ
その後20年、人形のような美しい容姿はそのままに、今や街金の若社長だ。

一方小学校から高校まで一緒だった幼なじみの氷見は、
今はゲイも集まるバーの店長。
10年ぶりに再会した二人は……。


出会いは小学生の低学年。
小さな心に抱えきれない痛みと、埋められない欠損を持った二人は
健康な子どもの社会には居場所を見つけられず、
お互いといる時にだけ、息をつける関係……。

10代を経て、大人になって再会した後の波乱の顛末。
ヤクザにも関わりのある艶の仕事、
過去が絡んで事件が起こる……。


人生の裏側で様々なものを背負って生きている二人の、男前ぶりに惚れる。
先代から仕える艶の部下や、おねえのバーの客など脇役も魅力的。

そして、黒いスーツを着て、人生斜に構えて生きているような
艶の可愛らしさに胸がキュンとせずにはいられない。
氷見に関わりのある男達を、彼が心の中で
「ひらめ」だの「もじゃもじゃ」だの密に呼んでいる様や、
自身の気持ちと欲望を認めてからの率直さもいい。


最後事件は悪事は露見し正義は勝つ!というような結末で、
明るく爽快で、ちょっとユーモラスな読後感となっている。
何度も回るファンタスマゴリアのように、
長い時をかけて再会し、ついに想いを伝え合った二人に訪れた
朝の陽の光を感じさせるラストでした。

5

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