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最近仕事で疲れていたので、泣けるようなおとぎ話をー、と思い、手に取ったこの本。
ーー結果、残念ながら全く泣けませんでした。
感動しなかったからではなく、色々考えさせられるお話だったので。
個人的に、ひちわゆか先生の作品は、何と言うか、物凄く醜く歪んだ悪意と、逆にとても純粋で綺麗な想いが混在している話が多くて、読んでいて酔いそうになります・・
この本も例外ではなく、二作品載っているのですが、どちらの作品もメイン二人はどちらも根は純粋で、狂おしい程に相手を愛しく想い続ける気持ちは伝わってきます。
が、いかんせん二人を取り巻く周囲の環境が歪みまくっているので、二人の関係もそれに囚われて歪なモノになってしまい、ただ単に「好き、大好き」という感じではなく、憎悪も愛情も憐憫も混ぜ合わさった複雑な感情になっています。
もっと違う出逢いがあったらとも思いますが、この歪んだ環境があったからこそ出逢った二人なので、これはこれで幸せな形なのかも。
こう書くと暗いお話と思われてしまいそうですが、表題作の「昼となく夜となく」は、私の想像通りなら、二人の関係は素晴らしく幸せな終結を迎え、これぞハッピーエンドだと思います。ーこの終わらせ方も心憎い演出ではありますが。
それにしても、何ともタイトルが秀悦。
いつかこんな相手に廻りあいたいと思わせるこの作品は、やっぱりおとぎ話なのかもしれませんね。
あらすじを読んだ時はどんなイロモノかと思いましたが、ファンタジーで切ない世界観に惹かれました。
ただ、場面展開や描写が分かりづらくて冒頭シーンを何回も読み直したのと、受けが攻めに惹かれた流れがよく分からなかったり、お父さんのネタバラシも本当にその理由で?とイマイチしっくりきませんでした。
魔物に優しくしないとバチが当たる的なものがあったのかなかったのか。。
もう少し濃厚な愛憎劇があるのかと思いきや、そこまでの激情もなく。。
ところどころ引っ掛かってしまい、受けにも攻めにもあまり共感できませんでした。
とはいえ、ラストシーンはやはりうるっとくるものがありました。
永遠の命より大好きな人のそばにいられることこそが幸せですね。
表題作しか読んでいないので、それのみの評価です。
ファンタジーというよりおとぎ話という方がしっくりくる感じでした。
『宝石を食べる不老不死の化け物』という名称から受けるおどろおどろしいイメージとはまるで違うカズナ(受)。
そして、カズナに復讐を誓うく鷹倉(攻)は、手を尽くして探しだしたカズナを引き取り、あの手この手で苛めたり、挙げ句強姦したり。
ただ、その中で鷹倉は憎む相手であるカズナに惹かれて行くんです。
真実を知った鷹倉の慟哭、カズナの健気さ。そして・・・
う~ん、正直なところ読みながら『なんでこんなの読んでんだろう・・・』と思っちゃうくらい合わないな~って感じだったんですよ。
それがラストで!
このラストについては、いろんな捉え方があるでしょうが、私はこれぞ『究極のハッピーエンド』だと思っています。まさしく『おとぎ話』だなあ、と余韻に浸れます。
とにかく、何よりもラストが素敵でした。そこまでの個人的ハズレ感が大逆転です。
ただ、大変申し訳ないんですが、文章が合わないというか読んでていちいち引っ掛かる感じで気になりました。古い作品だからかなあ。それがちょっと残念です。
もう1編の収録作『11月の花嫁』は、表題とはまったく趣きの違う作品です。何故この2つを抱き合わせにしたのかと思うほど。耽美繋がり(?)しか思い当たりませんが、それにしてもやっぱり『・・・違う』と思ってしまいます。
暗いこと自体は別にいいんですが、これはどうしてもダメでした。気持ち悪いだけ。文字通気分悪くなりましたよ。こういうのは心底ダメです。まったく入り込めませんでした。
こちらだけなら確実に『しゅみじゃない』ですね。『読後感が悪い』というのはこういう作品のためにある表現かと思ったほど。
もともと『耽美』『JUNE(的なもの)』が、もう読みたくもないレベルですごく苦手・キライなんです。
表題作もラストまでは『・・・なんだコレ』でしたが、ホントにラストだけは好き。もう一度読みたいとは思いませんが。
ひちわさんとは、基本的に相性がよくない(キライじゃないけどほとんど合わない)んです。すごく好きな作品もあるにはありますが、例外です。
評価は、もう開き直って『表題作のみ』です。足して二で割って『中立』ではどうもスッキリしませんので。
宝石を食べ、自身を得たものに繁栄を約束すると言われる魔物、カズナ。
復讐心からカズナを捜す男、鷹倉。
おとぎ話のようなカズナの存在を主軸に置き、
ストーリーにもおとぎ話的な要素が盛り込まれてはいますが、
地に足のついた描写と予想のつかない展開で、しっかりと読ませてくれます。
印象的だったのは宝石を食べる時の描写。
シュワシュワ弾けるダイヤモンド、キャラメルに似て『歯にくっつく』琥珀。
文章のいい作家さんって、食べ物の描写がすてきな人が多いんですよね。
特に二人きりのディナーの、輝くような描写には、なんだか涙が滲んでしまいました。
カズナがどんなに喜んだか、鷹倉がどんなにカズナを喜ばせたかったか。
文字では殆ど書かれてはいないその時の二人の気持ちが、
キラキラ輝く食事風景からめいっぱい伝わってくる。
一気に読み進めた終盤では、じわじわと、胸がいっぱいになりました。
まさしくおとぎ話のような終演…なのですが、
この描き方、心理描写、さりげなく散りばめられたキーワード、ひちわさんだなあ…!
最初から読み返すとまた新たな発見や、裏にある様々な思惑が見えて感動。
同時収録作は、表題作とは全く別の短編。打って変わってかなりダークなお話です。
好き嫌いが別れるかもしれませんが、こちらも印象的でした。
大好きな一冊ですが、2作合わせて見るとちょっとイレギュラーな雰囲気でもあるので、
もし初めてひちわゆかさんを読むなら、
個人的には『今宵、雲の上のキッチンで』の方が読みやすくてオススメかも?
でも迷いなく「神」をつけたい作品です。
人外系ファンタジー好きさんにはおススメの一冊。
まったくの純愛系ストーリーではないにもかかわらず、
ひどく純情な恋愛を感じてしまう不思議さがありますね。
「昼となく夜となく」
一人の復讐を誓った男と、宝石を食べて生きる青年の話。
文章が雑というか、場面転換のはっきりしない描写に
キレかけながら読み進めていたんですが、
古典的なお伽話のストーリーに従いながらも、最後は人間感情の美しさを
引き出しています。
カズナの、長い長い年月で見た「人間観」はなかなか含蓄もあって面白い。
「11月の花嫁」
ひちわゆかさんて、昔語の中でストーリー展開しちゃうのが好きなんですかね?
コンセプトはありがちながらも面白いんですよ。
これで心情変化を丁寧に書いてあれば文句ない。
どちらも設定はかなり面白いのでおススメです。
ゆえに息切れしかけたような文章の詰めの甘さが気になる…惜しい。