電子限定かきおろし付
重いテーマで、重いお話なんですが、ハートフルな作品でした。
リアリティのあるお話で、ノンフィクション作品を読んだような感覚になるというか、人生について考えさせられます。
晴人は事故で臍から下の感覚がなくなり、車椅子です。
障害のある体の日常の大変さが伝わってきます。
排泄が困難なのですが、特に大の日の大変さを知って不自由なく排泄できる我が身の当たり前に感謝しました。
実は私も自分で摘便したことがあるんですが、排泄系の不具合って惨めな気持ちになるんですよね...。
それが晴人にとっては当たり前の日常だなんて、どれだけ憂鬱だろうと思いました。
「考えるな、心を無に」そう唱えて前を向くしかないのだろうけど、私が同じ目に会った時同じようにできるだろうか...。
以前骨折してしまったんですが、その時壊死するかもしれないと言われて、そうならない事を祈りながら、怯えながら3ヶ月過ごしました。
あの時でさえあんなに身に起きたことが現実と思えなくて、毎日朝が来るのが嫌だったのに。
私は弱いので、足はもう動かず、辛いリハビリの日々、自然排泄は不可能と言われたら...心を無になんて出来ないと思うし、死を考えてしまうと思う...。
車椅子の苦労も、知らなかった事を知れた。
私も車椅子だったことがあるので分かった気でいたけど、一時的な苦労では理解しきれないのだと分かった。
車椅子の時、映画館には行かなかったから、毛足が長い絨毯の上を移動したことはなくて。
ホテルの絨毯は経験があるんですけど、少し重くなるけどそれ程大変ではなかったんです。
同じ絨毯でも、数センチの違いが多大な不自由を生むのだと気付かされた。
氷山の一角かもしれないけど、障害のある生活の苦労を読むことができて為になりました。
そんな辛い晴人の日々を明るく照らして助けてくれているのが恋人の晃。
明るくて晴人のことが大好きな感情表現豊かな可愛い人。
成績優秀な営業マンなんだけど、晴人のために残業なしで早く家に帰ります。
にこにこしていて、そこに面倒くささや嫌気なんてなくて、自分がそうしたいからそうしているのだと伝わってくる。
価値観の違う相手のことを理解し、相手の気持ちになって互いが楽しめるように考えてくれる───人間性が素晴らしい。
芝先輩もいい人だったなぁ。
晴人は人に恵まれています。
これは晴人の人望なのかな。
どうしたらこんなに人に恵まれるのか教えてもらいたいくらいです。
病気になると、結婚していないことが障害になると気付かされますよね。
恋人では軽視されてしまう社会。
晴人が隠している“同意書”は一体なんの同意書なのか。
初めて見た時は何か分からなかったけど、読み進めていき晴人の自身の体への苦痛を感じ取るごとに、もしかして安楽死じゃないよね...?と嫌な想像が湧いてきました。
スイスでの安楽死のドキュメント番組を見たことがあるんです。
当たらないで欲しかったその想像は当たっていて。
でも、死ぬためじゃなくて寧ろ生きるためのお守りのような存在だったんじゃないかと思いました。
いつでも死ねると思えるようになったからこそ、やり残したことをやる気力が湧き、“もう少しだけ”頑張る力を与えてくれていたんだろうと。
そうしてもう少しもう少しと1日1日積み重ねているうちに、どん底からは浮上できていたりするんじゃないかと。
晴人の口からもお守りだと語られていたので、あぁやっぱりと思いました。
晃は確かに晴人が事故にあって不自由な体になったことで自分の夢を諦めたのかもしれないけど、いつも自然と考えてしまうのは晴人のこと、晴人にどうしてあげたいか、どうしてあげればいいかで。
諦めたものへの名残惜しさは0ではないかもしれないけど、それより晴人との人生の方が大切で価値のあるもので、後悔はないと言っている。
後悔はないと言い切れる出会いを、羨ましいと思ってしまった。
こんなに辛い目にあっている晴人を羨ましがるなんておかしいし、晃だって好きな人との人生とはいえ苦労の多い道を選んでいると思うのに。
世の中のどれだけの人がこんな人生を変える出会いができているんだろう...って。
「知ってると思うけど、好き!!!!!!」が胸に刺さって、うまく表現出来ない気持ちになりました。
そしてまた、あの困ったような表情で笑う写真が切なくて。
自分のせいで晃に夢を諦めさせてしまったと後悔している晴人にとって、晃の口から出た「これからだってチャンスはある」という言葉は、自分といてもまだ諦めてはいないのだと知れて、「一緒に行こう」は生きる希望になる言葉の1つだったんじゃないかと思う。
自分といることで何かを捨てようとするなら一緒にはいられないけど、そうではないと思えるなら───だって本当は大好きなんですもん。
約束はできなくていいと思う。
あの夢を話してくれたことが大事。
晴人が生きる希望がこうやって1つまた1つと増えていけばいい。
エピローグが...!
あとがきを読み終わったあとだったので完全に油断していて......涙腺が...!
第三者な上、苦労を味わっていない私が、軽率に「悲劇ではない」と言っていいものではないと思う...けど、私は悲劇には感じませんでした。
角度を変えると悲劇になったかもしれない、他の人ならそうなったかもしれない。
晴人に晃がいてくれてよかったと思いました。
しかし、当事者の晴人や晃が悲劇だと感じるなら、それが答えだとも思うんです。
晴人たちも悲劇じゃないと思っていてくれて、同じ気持ちでよかったです。
穏やかに、仲良く、変わらずに過ごしていること、この時までもう少しを積み重ねてくれたことに胸がいっぱいです。
素敵な作品でした。
障害者になるということ
排泄が、入浴が、歩くことが、落とした物を拾うことが、働くことが、見た目を保つことが、いろいろなことができなくなる。人の何倍も時間がかかる。尊厳が保てなくなる。心が壊れて、死にたくなる。
時間や金が解決してくれる訳でもない。もう戻らない自分の体。言葉通り「どうしようもない」現実。そんな現実がやってきた時、耐えられるだろうか?
その現実を、主人公がどう生きたのか、繊細に描いてくれている。ごくたまに出会う、BLというジャンルの枠に当てはめるにはもったいない秀作。
衝撃的なお話でした。
まさかそんな…。あらすじや表紙からは甘々ほのぼのだと思っていたのに。
現在→出会い→友達→お付き合い開始→現在と。
どうするべきだったか?今は正解なのか?
問い続けますね。
一緒にいたい一人にしたくない、巻き込みたくない夢を叶えて欲しい。
好きだからこそなところが追い詰めますね。
先輩がいてくれて良かったです。
無理してないつもりでも尽くされる方の負担がありますよね。
諦めた夢が叶ったとしたらな小旅行も良い体験でした。
あとがきの後の短編で晴人が!晃が!
とても考えさせられるお話でした。
事故で大怪我で自由をなくし生きてる限り体がひどい後遺症に苦しみ続ける。なんて残酷なのか。
誰もがそうなるかもしれないという意味でも、BLとしても重みのあるお話でした。
私事ですが10年前に事故に遭い怪我は数年で治っても、鬱になり治らずずっと薬を飲み続けています。
仕事もこれまで通りは難しく、これまでなかった恐怖症も出て。
晴人のことが事故後に何年も苦しみ続ける被害者としても読んでて衝撃的なお話でした。
自分にとって彼は自分に新しい道、視点、守りたいものをくれた人であるのにそれが彼にとっては自分のせいだと思ってしまうというすれ違いが見ていて心にくる。自分がこの漫画に入っていたら絶対同じこと思うだろうなって共感できるからこそ心にくるものがある。
BLのラブラブ系よりも内容重視の物語。
ほんとに染みるお話。
何気ない一コマのようだけど彼らには長い時間をかけて作り上げた希望なのだなと思った
事故により大きな障害を持つことになる晴人と彼を支える晃のお話。
苦労や辛いこと大変なことがありながらも、私は理想的、希望的なお話だと感じました。
突然の事故で地獄のような日々を送ることになる晴人。
尊厳死に救いを求める気持ちはとてもよくわかる。
それが「お守り」というのも。
障害だけでなく、大病や持病や慢性疾患、人間関係や経済的なこと…人によってはさまざまな困難があるわけで、そんな人にとってはいつか死によって解放されると思いながら、晴人のようにそれまではしたいこと、できることをする…それが人生でもあると思います。
晴人は自分のことだけでなく晃の夢や人生を犠牲にしていると苦しむのもわかる。
前半の晃はやたらテンション高く、したくてしていることだろうけど少し無理していませんか?と思わせる演出にも感じましたし。
それでも晃が誰と何をして生きていきたいか…選択するのは本人ですもんね。
そんな晃を気遣い、晴人のことも理解してくれる芝先輩の存在が大きい。
芝先輩のような人がいるといないとでは全然違う。
晴人は小説家としての才能があり成功し、愛するパートナーと共に生き、夢を叶える。
決して悲劇ではない。
大変な苦労がありながらも努力して、しあわせな人生を送った物語だと思います。
BLとしては、パートナー制度や家族ではない見舞い者の病院での扱いがリアルでよかったです。
タクシーの運転手さんと晴人のエピソードが秀逸でした。
晴人はもともと引きこもりタイプだし、自分の大変さで視野が狭くなっていただろうからバリアフリー的なことが障害のある人にとって便利で当たり前であることがあるとこの時初めて知ったんですもんね。
障害だけでなくいろんな悩みを抱える人にとっていいヒントになるシーンだと感じました。
