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表題作月とピエタ 下

茨木 陽介
美大生
百合川 月衣(るい)
美大の美術解剖学教師、32歳

その他の収録作品

  • 月とピエタ おまけ
  • 描き下ろしイラスト&あとがき

あらすじ

自分を曝け出せない美大生×変人講師 不器用な二人のたどり着く先はーー

「俺……先生が描きたい」

百合川への《特別な感情》を認めることができないまま、
卒業制作のテーマに行き詰まる陽介。

しかし、百合川のまっすぐな言葉に、彼をモデルに絵を描くことを決意する。

思い起こされる辛い過去の記憶
目を背けてきた自分自身の本当の気持ち

それぞれと向き合い、答えを出そうともがく陽介だったが
突然、周囲から百合川との関係を問われ……

自分を曝け出せない美大生×変人講師
不器用な二人のたどり着く先はーー

【描き下ろし】
コミックス描き下ろしイラスト&おまけ漫画
を収録!

作品情報

作品名
月とピエタ 下
著者
大地幹 
媒体
漫画(コミック)
出版社
KADOKAWA
レーベル
カドコミ【非BL】
発売日
電子発売日
ISBN
9784048116664
4.1

(57)

(38)

萌々

(6)

(5)

中立

(1)

趣味じゃない

(7)

レビュー数
6
得点
230
評価数
57
平均
4.1 / 5
神率
66.7%

レビュー投稿数6

罪悪感と救済

よかったです。すばらしかったです。
ただ正直なところ、上巻を読んだ時の期待感、昂揚感を超えてはこなかったです自分の中で。すみません。
理由としては、ストーカーから茨木を庇って百合川が刺されるくだり…上巻で伏線がはられていたし
カバー下の薔薇?はキリスト教において「神の愛・慈悲・殉教・勝利・復活」を象徴する重要な花で、赤い薔薇はキリストが受難の際に負った「5つの傷(両手・両足・脇腹)」と血を象徴するらしく、百合川は脇腹、茨木は手(しかも絵を描く右手)に傷を負うところも描かれたかったのかなと感じますが、ストーカー襲撃というテンプレ的でドラマチックな展開がなくても繊細な心の機微の描写でこの作品は十分成立する、駆け抜けてくれるのではとの勝手な期待感がありました。個人的な好みです。

例えば、茨木にとって絵を描くとはどういうことか、または百合川をモデルにして描くことによって自分の中での気づきや覚醒などがあればそういうところをもっと見たかったなと思いました。

茨木が八方美人でゲイに対する罪悪感が家族や周囲の差別によるものだという背景は説得力があるしそれだけでも刺激があると思いました。
ゲイへの罪悪感を背負わされているからこそピエタに怒られているようだと茨木が感じたこともよくわかるし、百合川を好きになることへの抵抗もわかる。
その強い罪悪感や抵抗感を払拭させるためのショック的な動機として百合川が自分を庇ってケガをする…わかるんですけどイージーではなかろうか、そう思わせるほどの繊細な作品だと思ってしまいました。

茨木がピエタに怒られているように感じたことは、無垢である百合川を汚すことになるとの思いでもあるのかなと。
百合も月も聖母マリア(純潔、処女性、無垢など)の象徴(上巻のカバー下、下巻の表紙)。
そして印象的に描かれた満月は死と再生、救済の象徴だとか。
こういうテーマに沿った象徴的な描写がステキです。

百合川が茨木の暴言を鵜呑みにしなかったこと、だとしても「君が私を嫌いな事と 私が君を好きな事は関係ない」「そんなに簡単に君の事を嫌いになれないよ」のセリフがすばらしい。

百合川は人間嫌いではないと言っていましたもんね。これ重要ポイントだと思います。
人間が好きなのに理解が難しい。だから知りたくて解剖学を学んだ。
自分と人は違う人間だし考え方も感情も違うし理解することは難しい。それを百合川は理解している。だから人に期待しない。
だから茨木への好意をフラットに伝えることができたし茨木へ何かを要求することもない。とても聡明な百合川が好きです。

2人の名前が対比しているんですね。
・百合 "川月衣←"百合"と"月.'が聖母マリアを意味("川"と"衣"にも意味があるようです)
・"茨木陽介←"茨"と"太陽"はイエスを意味(上巻表紙)。太陽は死と再生の象徴でもあるとか
ざっくりですが、間違っていたらすみません。
もっと他にも深い意味がありそうです。

個人の好みとしていろいろ言いましたが(すみません)作品としてすばらしいと思います。2人の変化、成長、恋愛も全て。

作家さまのポストがSNSでバズりましたが、私は先入観なく読んでよかったと思います。
作品を生み出して下さり出版して頂き読むことができてありがたいです。

0

恋愛の先にある人生につて

BLではないと言われたと作者が言っていたようだが、正直言読み手を選ぶ作品だとは思う。

BLと言うものが、恋を扱うものならば、この作品は青年の生き様生き方を描く話であるから、これが小説の媒体だとしたら、一般文芸だっただろうなぁと思うと、確かにBLではないかもしれない。(まあ個人的には男と男の友情以上の感情の物語はぜんぶBLでいいじゃね?と思っているので、この作品はBLでいいと思うけど)

上下巻通じてのざっくり内容と感想

物語は芸大に通う主人公はゲイである自分を押し隠している故に、表現することに関しても本当に表現したいもの表すことを押し殺してた。
そんな彼には気になる講師がいた。
たまたま隣に住んでいると言うことを知り近しくなっていく二人。講師は自分と他者と同じ様になろうと努力をしているが、大きく違うことを半ば受け入れつつも、主人公が自分を押し殺し周囲と馴染んでいることを肯定する。
講師の自己のあり方へ尊敬以上の気持ちを持ち欲をも強く感じながらも、しかし、主人公は自分を受け入れることができなかった。
その歪みが主人公、大きく揺らしていく。

昨今のBLの周囲のゲイへの許容度の高さもには、「まあBLはファンタジーだし、こうあって欲しいなと思うんだが、現実はどうなんだろうか…」と時折思ってがいたが、この作品は最近珍しい位ノンデリな人間が多い気がした。他人のセクシャリティに関わることをここまで無神経に話すものなのか?と。
でも、それは主人公がそのことについて非常に気にしているからこそだったのだと、主人公の日本ではやはり特殊と言っていい家庭環境故と2巻でわかったので納得は出来た。なかなかにきつい環境だと思う。
だから周囲の言葉に強く動揺するのも納得だった。
人は自分が知りたいと思ったことを強く受け止める傾向があるだろうから。

二人は物語では性的な関係は結んでいない。(キスはしてるが)
これは、この物語の主題が、主人公の恋愛ではなく、主人公が自分をどう受け入れどう肯定し、どう生きていくかと言う物語であるからだと思う。

BLは多様性に満ちたジャンルであって欲しいと思っているので、こういう物語がある事は素晴らしいなぁと思う。
そういう意味では神認定でも良いのだが、萌えると言うより考えるお話であった事、でも私は、その考えさせられる部分に共感できなかったし、痛く苦しい彼の人生に光が差し込んだと感じるのが難しかった。正確には、物語上ではそうあってるのはわかるんですけど、私の脳がキャッチできませんでした。
なので一つ星を減らさせていただきました。

恋愛の機微を読みたいと思っている方には、それはメインではないよとお伝えしなければならないなと思います。


0

「心に響きました。」

マジでみんなに読まれてほしい。

それだけです。

0

静かに沁み入る感動と美しさ

人に合わせてしまい自分の本心を出せない美大生の陽介は、断る事ができずストーカー被害にも合うほど。ある日変人と呼ばれる解剖学の講師百合川に、見透かされたような一言を言われ逆上してしまい⋯。

正反対な2人が夜の散歩を共にしながら、少しずつお互いの本質を知って惹かれ合っていくのがすごく静かで丁寧な描写でしっとり沁みる。
周りの評価を気にして自分を見せられなかった陽介と、他人にどう思われるかよりも自分の好きなものを一番大事にする百合川先生。それぞれの抱えてた思いを乗り越えて、一緒にいられる喜びがヒシヒシと伝わってくる感動よ。
自分を愛して受け入れる事で、相手を愛し受け止める事もできる。一人では得られない尊きもの。

Webの連載を読んでたのだけど書影がとても美しくて紙でも購入。上巻の陽介にバラの蔦と棘、下巻の月衣は百合。カバー下が上巻は百合、下巻がバラの花だったのも素敵だった〜。おまけのミミ子も可愛くて最高です!

1

陽介の過去

キスしそうになったことを「冗談だから」と言って誤魔化して逃げ出した陽介。同級生たちの同性愛者についての差別的発言に傷つきます。自分の気持ちを認められなくて、女性と関係を持とうとしても気になるのは百合川先生のことばかり。
そんな時に先生に偶然会い、実は誰にも恋したことがないけれど、自分への想いが好意なのではと伝えられます。「大切なものが周囲の目より価値があると思えるぐらい好き」と素直に言える先生に、陽介はまだ恋だと認められなくても先生をモデルに絵を描きたいと願います。

ヌードモデルになってくれて先生の身体を見て興奮し、結局ひとりでそれを慰め、やっと恋だと認めます。
そして、陽介が頑なに同性に恋することにおびえている理由がわかります。カトリックファミリーとして暮らしていた中、大好きだった兄に同性の恋人ができたことによって親が拒絶した過去。
同級生にからかわれて強く否定しまい、先生に顔向けできなくなったり、姉の結婚式で実家に帰って息苦しさを覚えたり、大切な人を傷つけて自分を苦しめているのは自分だと気づいてきます。

先生との待ち合わせの場所にストーカーが包丁を持って現れます。陽介を庇って刺される先生に包丁を掴みストーカーに立ち向かう陽介。大事な人を守るため、すべてをさらけ出して助け合うふたり。
このことによってふたりは強く結ばれます。周りの人に認められなくても自分を信じ、周りが見えていなかった自分に気がつかされたりもします。陽介は頑な過ぎたんですね。怒りと悲しみと愛をやっと解放できたようでした。

セックスはしていません。キスをするぐらいで。でもエッチなシーンはなくても十分に満足できる作品になっています。絵も巧みですし、物語運びも上手いです。
自分の好きなものに素直に!そんなメッセージが強く伝わってくる物語でした。

タイトルの「月とピエタ」聖母マリアのあの顔に衝撃を受けたのは自分への怒りとも思えたのでしょうか。カトリックの教えの元に同性愛者であることの苦しさは耐え難い苦しみだと理解できます。でも導いてくれる月に出会えてよかった!そしてピエタは美しいものの象徴であり、また「救済」でもあるから。

デビュー作かな?上手いなと思ったら、青年・少年漫画のコミカライズを描かれていたみたいで、BL漫画ははじめてのようです。これからもBL作品を描いてもらえたらいいなと期待しています!

2

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