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小説


タイトルからライトなお話なのかな!と思ってましたがとんでもない。めちゃくちゃ心に沁みる愛のお話でした…何度も泣いちゃったよ。電子版です。
15年間続いた戦争、そこで戦い続けた救国の英雄リシャール。本編は彼の一人称で物語が綴られています。そのお人柄通り、あたたかくのんびりお話が語られていて。15年間続いた戦争のこと、仲間達が次々と戦死していき、最後に生き残ったのが自分だから救国の英雄なんて呼ばれている、ただのおっさんだ、なんて。
ちょこちょこ「ん…?」と首をかしげちゃうところがありました。彼の主観で語られるので、そういうものなのかなと思って読んでいましたが、番外編で答え合わせできました。仲間がみんな死んでいったのは、リシャールがあまりに強いため、常に前線に送られていたからだと。
15年間、ずっと死と隣り合わせ。昨日笑いあった仲間が今日は死んでいる。
そんな経験を積んできた彼が、まともなわけないんですよね。
そんな彼を現世に繋ぎ止めた、それはもうでっかい愛と執着でがんじがらめに捕らえたウィリアムに盛大な拍手を送りたい。
彼にとって身近すぎる「死」から、彼を遠ざけたウィリアム。ウィリアムはリシャールのために生まれてきたんだとしみじみ思ってしまいました。一生しあわせでいてくれ…。
他者視点で語られる番外編では、リシャール視点の本編ではわからなかったウィリアムの姿が見られたり、リシャールの関係者が出てきたり。天国のような街に住む猫さまたちが、可愛かったり。
置き手紙には「あかーーーーん!!!」って盛大につっこんでしまいました。リシャールさん!それ、一番だめなやつですよ!と。
それに対するウィリアムの行動がまたすごかった…
泣いて笑って、また泣いて。心あたたまるお話でした。いいひとたちばかり…!
これからのリシャールは、老衰で亡くなるまで、ずっとしあわせなんだと信じられるお話でした。
すごく、すごく面白かった…!
小説家なろう で、全部読んでいまして、今回書籍になるという事で購入しました。
まず、表紙がいい。宇良たまじ先生がいい仕事してます。
リシャール(受、フラグ建築士)に振り回されるウィリアム(攻)。
今回の書籍に収録された「青と白と猫の街」にリシャールがウィリアムに置き手紙を書くシーンがあり、
「いや、それあかんやつ!」と思わず叫んでしまいました。
受に振り回される攻っていいよね。
現場からは以上です。
題名とあらすじ、そして序盤を読んだ段階では、ここまで胸が苦しくなるような深いシーンが多々ある作品だとは予想していませんでした。
申し訳ない……。
BLによくある「年下イケメン×くたびれたおじさん」だと思ったら大間違いで、ストーリーも、攻と受が互いに向ける愛情も、とても深いです。
攻・ウィリアムは金髪碧眼の美青年で、公爵家の長男で国王の甥で、見習い騎士の中でもずば抜けて強く、一見非の打ち所がない完璧な男です。
しかしその内面は、ウィリアム自身も自覚しているとおり、女性に好まれる性格ではありません。
唯我独尊、傲岸不遜な変人。
ウィリアムを愛する実の両親からですら、そう評される男。
自分がやりたいように好きなように生きる。
そのためには権力も金も惜しみなく利用する。
心から愛情を向け慈しむ対象は、リシャールだけ。
受・リシャールがこれまた……。
序盤を読んだ段階では、単に自己評価が低い人かと思っていました。
ところが実は、あのウィリアムすら翻弄してしまう、とんでもない人物……。
常に死と隣り合わせの戦場の最前線で15年間戦い続け、その影響で生死の捉え方も価値観も思考回路もぶっ飛んでいる。
危うい。
とにかく危うい。
ちゃんと力いっぱい捕まえておかないと、すぐにその命をあっさりと捨ててしまいそうな。
意図的にではなくとも、結果的に命を落とすことになりそうな展開に無防備にフラフラと歩いて行くような。
そんな危うさを常に持っていて、ウィリアムの心痛が心配になるレベルです。
まさか王女から侮辱されて、その場で瞬時に自死しようとするとは。
同情を引くとか、謝ってほしいとか、そんな考えなど微塵もなく、単にシンプルに自分の命を終わらせようとしただけ。
ウィリアムが止めていなければ即死だった。
あのシーンで、リシャールの危うさが目の前にドン!と示された気がしました。
騎士団長のザイル視点や、ウィリアムの両親視点の場面があり、それを読むとひしひしと、ウィリアムとリシャールはお互いが相手でなければならない運命の相手なのだなと思いました。
他人に興味を示さずただ自分がやりたいようにやってきたウィリアムが、唯一興味を示し愛する相手がリシャール。
危ういリシャールを、権力と金を惜しみなく使って守り、更にその若さと強気な性格で全力でリシャールを囲い込むウィリアム。
リシャールと出会えなかったら、ウィリアムは一生人を愛することなんてなかったかもしれない。
ウィリアムと出会えなかったら、リシャールはどこかでフラッと命を捨てたかもしれない。
二人だから、愛を知って生きている。
リシャールがどれだけ過酷な経験をしてきたか、それによって恐らくどこかのネジが飛んでしまっていることにも、胸が痛くなったりしましたが。
ウィリアムなら、リシャールがいつか迎える死が老衰以外のものにならないよう、全力で愛し守っていくと信じられるので、途中途中切なくなりながらも安心しました。
あと、表紙のイラストがとても綺麗でかっこよくて良かったです!(実は年下攻もおじさん受もあまり好きではないので、表紙のイラストが違ってたらこの作品を読んでいなかったかも)
すごい大作でした。
表題作(1話目)はリシャール視点で独特な文体で。
一冊この調子だったらキツイなあと思ってたら、団長ザイル、騎士ウィリアム、ウィリアムパパ公爵視点もあり。読み進むにつれて本当のリシャールやウィリアムのことがわかっていって。
1話目は戦争を終わらせた男リシャールが終戦後を生きるところからです。
何も欲しがらず、死んでいれば良かった。いや死ななくて良かった、と思いながら淡々と日々を過ごし。綺麗なものが好きだった。自然の滝や湖や。でも右足が動かなくて遠くまで歩けず馬にも乗れない。だからか美しいウィリアムを見てしまう。そんなことが綴られ…。
なんかもうたまらないんですよ。
リシャールが教官を務める騎士見習いのウィリアムとの仲が進むところとか。主人公はリシャールかもしれないけど、ウィリアムの圧倒的な深い愛の物語かもしれない。
自分を大切にしないリシャールを身の回りから住処から何もかもを整えて囲い込んでいくウィリアム。リシャールにどんなに好きと伝えても全く伝わらない。
一冊を通して色んな出来事がありリシャールもウィリアムもだんだん変わっていくんです。
リシャールが守り愛したこの国、王、王族。リシャールの守りたいものを全て守ろうとするウィリアム。そうしないと安心してリシャールが生きられない。もう特に最後の章が感動の嵐です。
リシャールが戦時中に瀕死の状態が長引いたせいか、話し方や考え方がもしかして…?でもギリギリ障害ではないという設定で。
世間知らずの自覚はあるけど、あれ?俺はおかしいのか?って思うところ、それがめちゃくちゃせつない!
人生の半分近くを戦争の最前線にいたから、戦後の暮らしが幸せってニコニコしてて。
与えられる権利も使える権利も何にも利用しなくて。でもいざ国に危機が?って時には暴走してしまって。
リシャールにウィリアムがいてくれて良かった。ウィリアムにもリシャールがいてくれて良かった。
私もリシャール友の会に入りたいです。
ザイル団長やウィリアムパパ視点も2人を知る上でとっても良かったです。
まず。
表紙を見たとき、どっちが若い男で、どっちがおっさん騎士?と思ったのが第一印象でした(笑)
金髪の方が「若い男」で、手前の黒髪の方が「おっさん騎士」。よくよく見ると、髪の毛の上の方が白みがかっていて、それは光に当たってる光沢感のせいではなく、実は白髪だったりします。
挿絵の方では年相応に描かれているので、ちゃんと"おっさん"です^ ^
のんびりと穏やかな性格のリシャールが魅力的に描かれており、おっさんなのに可愛らしいリシャールを視覚的に楽しむことが出来ました。
因みに。
表紙では愛おしげにリシャールを見つめるウィリアムですが、公爵家の長男らしい美しい見た目とスペックの持ち主であるにも関わらず、中身は破天荒なやんちゃ令息です。問題児の側面を抱えたこの男のリシャールへの執着と溺愛は変態的です。
いい意味でも悪い意味でも貴族の子息っぽくないウィリアムは、リシャールが絡むとちょこっとアホになります。リシャールのことを何度も「エロい」と連呼しては大騒ぎする始末……(笑)リシャールを性的な目でしか見られない男のトチ狂いっぷりをどうぞ最後までご覧下さいませ。
ヤバい男に好かれたリシャールの身の安全やいかに!?…と、心配になりますが、そこは心配ありません。何せ、リシャールは「若い男に恋するおっさん騎士」。つまりは相思相愛な関係だからです。
「若い男に恋するおっさん騎士」だと少し心許ない感じがするのは、ウィリアムの強烈なキャラクターのせいかなと思います。ウィリアムの執着独占欲があまりにも存在感が強く、「おっさん騎士に執着する若い貴族騎士」と言い換えた方がしっくりくるかも知れません。
周りの人たちを巻き込んでリシャールを囲い込み、リシャールを自分だけのモノにしようと画策する公爵家の長男は、両親にも、叔父である国王にも、上司の騎士団長にも誰にも手がつけられませんが、リシャールがウィリアムの良いストッパーになってくれているところもあり、何だかんだでお似合いのカップルです。
ウィリアムは変人だけど、リシャールも相当な変人。ただ、リシャールの変人っぷりは、彼本来のキャラクターというよりも、戦争によりそうならざるを得なかった部分の方が多いんですよね。
リシャールから何気なく発せられるセリフや思考は、戦争の最前線を知っているからこそ出てくる言葉で、すごく心に響きました。彼の戦うことへの向き合い方や亡き仲間たちとの繋がり、平和な世界になったことへの幸福感……セリフ1つ1つがすごく重いです。
救国の英雄である彼にしか分からない激戦地の景色や悟りの境地は、ラブコメ感の強い物語をキュッと引き締める効果もあり、ただの歳の差ラブコメBLではないことを実感できると思います。
色んな登場人物たちから見たリシャールやウィリアムのキャラクター像によって、2人の恋愛模様がどんどん面白くなっていくワクワク感は、この作品の醍醐味です。彼らが結ばれる過程より、結ばれる過程の舞台裏のあれこれに大爆笑でした!
嫌な登場人物もいないので、ずっと楽しさが続くストーリーは格別でした。
国家レベルで皆に見守られながら幸せを築いていく2人の愛は、戦争が終わった平和のシンボルのようなもの。末永く続いていくことを願います(*´︶`*)
