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金子秋成(運送業 昔はかなり悪さをしていた)×雨宮智鶴(高校生 秋成の妹と付き合っている)
高校生の智鶴は悪ガキグループの一人でそこそこモテるタイプなのですが、男友達といる方が楽しいと彼女を持つ友人をバカにしていました。ところが後輩の金子沙綾が告白してきた際、友人のひやかしなどにも煽られ付き合う事になってしまいます。沙綾から家に誘われた智鶴は、そこで沙綾の兄・秋成とはち合わせしてしまうのですが、兄弟に憧れを抱いていた智鶴は秋成と会うのが楽しみになり懐いていきます。そんな智鶴を遠ざけようとしていた秋成も、気持ちが抑えられなくなり結局は手を出してしまいます。
付き合っている彼女の兄と恋愛関係になってしまうという話です。修羅場がある訳ではなくドロドロした話でもないのですが、二人とも罪悪感を持ちつつでも会いたいという想いを抱えながら関係を続けているということで、かなり切ない雰囲気の作品だったと思います。最初智鶴に告白してきた沙綾の態度が鼻につきイラッとさせられたので、いずれ智鶴と兄が付き合うようになってもこれなら罪悪感は少ないだろうと思っていたのですが、読み進めて行くと意外に沙綾が普通の良い子だったので逆に「どうするの!?」と結構気になってしまい、二人が沙綾の事を考えて身を引こうとする決断にも「やっぱりそうなっちゃうよね…」と否定する気持ちが起こらなかったのも、読んでいて余計切ない気持ちになりました。
結局男二人は決断したにも関わらず煮え切らない感じになっていたところを、沙綾が(むしろ気を利かせて)決着をつけることで収まるところに収まるという流れになるので、結果的に沙綾は二人が出会うきっかけを作り、また最終的にはくっつける役目まで負っているので、考えてみればかなりの貧乏クジを引いていますね。不憫な子です(苦笑)。(…何だか沙綾メインの感想になってしまいましたね)
BL作品の愛情表現(セリフや行動)を読んでいて、こんな事ありえないよな(百歩譲ってもかなり稀だよな)と頭の隅で思いながらも萌えたりする訳ですが、この作品に関しては妙にリアルでいちいち照れくさくなってしまいました。特に秋成のセリフや行動がヤバかったです。この作品に限ってはそういう点に遭遇する度に“萌え”よりも“照れ”を感じてしまい、何となく落ち着かない気分になってしまいました。
私が松田美優さんの本を始めて読んだのは、松田さんが原作をした『かなしいどうぶつ』の連載終了後。
松田さんの作品って、原作も含めて全部で6冊だけなんですよね。
この作品も既に10年前のもの。なので、背中に風神雷神の彫り物を背負っている前科持ちの秋成も、慰謝料をふんだくるためガン付けられてわざと殴られるやんちゃな高校生の智鶴も、微妙に古い。
でもねぇ……何故か惹かれるんですよ、松田さんの小説に。
『甘いお話』ってありますよね?
同じ様に『苦い恋』というのもあります。
松田さんの書く恋は、多分『痛い』というのに一番近いと思うのですけれど、痛さに伴う『可哀想感』がないんです。むしろ、そんなものを潔く拒否している。「こんなことになったのは自業自得だ」と心のどこかで解っている様な気がするんです。
一番近い言葉を探せば『からい』でしょうか。
痛くて、つらくて、熱くて、ヒリヒリするのだけれどでも止められない。
今作でも、智鶴は彼女の異母兄である秋成と惹かれ合い体の関係を持ちます。
秋成は父親ですら疎んだ自分を受け入れてくれた義母と異母妹を大切にしたいと強く思っています。
智鶴だって、初めは押し切られた形で始まったカレカノ関係ですが、次第に彼女として可愛らしいと感じる様になっています。
2人とも止めたいのよ、関係を。
でも止められないの。どうしてそんなに惹かれるのか、全く解らないままに。
ああ、これが恋だ。
このお話は(なんと!)予想外の出来事があり唐突に終わります。
その唐突感から「今後も二人の関係は危ういのだろうな」という予測が滲み出ちゃっている。
やはり「からい」と思うのです。
そしてこの辛さは癖になります。
電子版挿絵なし、あとがきなし。
2020年12月現在、Kindleunlimitedで読めます。
松田先生ならではのヤクザ崩れのオラオラ系✕悪ガキ男子高校生のカップリングですが、暴力シーンがないのでこれが一番甘くて読みやすい雰囲気。
11年前の作品なので、受けの服装とかが微妙に古いのだが、そんな、長めの茶髪に制服のズボンを腰履きしてるようなチャラい男子が、オラ系に組み伏せられてアンアン言ってると思うと可愛い。
攻めのオラ系も、前科持ちだし背中にスミも入ってていかつい感じなのだが、受けを前にすると余裕がなくなって、致してる時も喘ぐのがかなり萌えた。二人とも、恋愛となると見た目に反してピュアなので、そのギャップがかなり良い。
この作品の肝はやはり、受けの彼女で、攻めの妹の沙綾。沙綾に悪いから…ということで、お互い求めあっているにも関わらず、もうやめよう…となるのだが、最後にどうしても離れがたくなって、ドライブからのラブホに連れ込まれる一連のシーンが切なくて、すごく好き。
松田先生の書くお話って、いい意味でどこか「本当にありそう」な感じがするのいい。
初めてなのにガレージで襲われたりとか、彼女(妹)が下の階にいるのに、2階の部屋で慌ただしく抱かれちゃったりとか、別れを決意した最後の逢瀬の場所が、そこらへんの普通のラブホ……というようなシチュが、現実感があって生々しいのが、上手いなあと感じる。
切ない涙の別れだった割に、沙綾との結末は意外にあっさりしてたのが、ちょっと惜しいかな。ラストは、ページが足りなかったような尻切れトンボ感。
攻め母に関する伏線?も回収されず、ラストシーンでのお母さんのリアクションも?な感じ。
私がお母さんの立場だったら、娘の彼氏と息子が仲良しだったら、普通に微笑ましいだけな気がするんだけど。沙綾に隠して関係を続けてたとしても、傍目にはそんな仲には見えない関係性なのに、そのへんちゃんとしてから付き合おうとするの、二人とも真面目だなーと思う。
この先、沙綾に新しい彼氏でもできない限り、スッキリと良かったねーとは思えないカップルなので、ラストの唐突感は仕方ないのかな。そんなところも含め、松田作品らしくて私は楽しめました。
2009年作品。
松田美優先生といえばレイプとか暴力とか、キツいイメージなのですが。
主人公はチャラめな高校生・智鶴(ちづる)。
ルックスはいいんだけど、本人的には女の子とイチャイチャよりも男同士で遊んでる(エロ的じゃなくてほんとにワチャワチャ)方が気楽で面白い。
だけど、ある日高1の女の子・紗綾から告白されて、仕方なくカレになった…
さて、智鶴が本当に恋をするのは紗綾の兄(母親違い)の秋成なのだ。
紗綾と清くて可愛いお付き合いをしながら、どうしようもなく惹かれるのは背中に大きなタトゥーを入れ、刑務所に入ったこともある元ヤクザで今はトラック運転手の秋成。
紗綾の家に遊びに行って、秋成の部屋で際どい戯れをする時。
わざと車で送ると言う秋成とあてのないドライブをする時。
智鶴の感じるときめきがこちらに移ってしまいそう。
秋成もいかつい男のはずなのに、優しくて余裕で、色っぽい。
ある日、秋成の同僚が事故死する。暗い気分を家に持ち込めず車の中で落ち着きを取り戻そうとする秋成を包み込む智鶴。智鶴の胸で涙する秋成。ここで潮目が変わった気がする。
後戻りのできないほど想いが募る智鶴に。
智鶴を愛おしく思って手離せないと感じ始めている秋成に。
それでも紗綾というストッパーがあるはずだったんだけど。
紗綾ちゃん、身を引きます。
兄と智鶴がくっついたことまで悟ったのかどうかは不明だけど。
ラストシーンは秋成が開き直る?
松田先生作品だからヤバい展開になるんじゃ?と後半怯えつつ読んでたんだけど、ラストに向けてかなり甘々です。
加えて、好きな男に抱かれる高校生の溢れる心と感じる快楽、可愛く思っている子を抱いてしまう男の抑制と優しさ、強さ。
2人がラブホテルでセックスするシーンの描写が素晴らしいです。
この甘さ、良い方に期待を裏切られた!
面白かったです。
オラオラでいかつい攻めの妙な気弱さはツボにくるし、高校生受けのチャランポランな面もツボにくる。
ストーリー展開も濡れ場の描写もツボでした。
前半は神展開。
受けが彼女と付き合うようになったいい加減な成り行きも好きだし、そうやって付き合いはじめた彼女を「可愛い」って思っちゃう部分も好きだし、なのに彼女の兄ちゃんに出会って強烈に惹かれてしまうって展開も好きだし。
このお兄ちゃんと最初にセックスするシーンまでのハラハラドキドキは半端なかったです。
ただ後半が。
妹が自然と「自分の彼氏と兄の関係」に気づいてしまうところやラスト近くでの物わかりの良さ、ラストでの母親の態度などなどに、不満さを感じました。
母親と攻めがデキてるかのような伏線(寝言)はなんだったんだろな。
もうさ、グチャグチャのドロドロのひどいお話にしちゃったほうが良かったと思う。
てゆか私はそれを望んでいましたw
お話がまろやかに着地したこと、それがモッタイナイと思いました。