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もどかしいけど、もどかしいけどエロい。あまりにもどかしいので萌評価にしちゃおうかと思ったんですが、大変印象深い作品でもあったので、神にしました。
老舗旅館の次男・千秋と隣家の商店の一人息子・侑央のお話ですが、旅館の長男・荘一(故人)の存在を無視しては語れない、ややこしい関係になっております。
家人から大切に育てられ、期待され、仕事もでき、性格も申し分なかった荘一。
男は二人要らないと、明らかな区別をされて育ち、独力で生きてきた千秋。
小さい頃から荘一のことが好きで、恋い慕ってはいたものの、思いを打ち明けることもできずにいた侑央。
その侑央のことが千秋は好きで・・・
まず印象的だったのは、舞台が京都なので全編京都弁でお話が進んでいたところです。
正直申し上げて、関西系の親戚がいるわけでもない私にとって、京都弁のニュアンスまで推し量ることができないもどかしさはあったし、なかなか読みすすまなかった原因の一つでもあったんじゃないかと思うのですが、“京都”の雰囲気十二分に感じることができましたし、二人のまったりした会話の裏に潜む思惑やら戸惑いやらをよりいっそう感じられてよかったです。もし、これが標準語仕立てであったら、エロさも半減していたかもしれないと思いました。
もう一つが“着物”です。
荘一の葬儀の際の喪服から始まり、季節ごとの着物の数々とその着こなしや崩され方が華を添えています。
侑央は凛としてたおやかな色気を放ち、千秋のおしゃれは、大人の男をより際立たせているのです。
そして、(あとがきでかわいさんが言っている)“喪服未亡人”侑央が兄に片思いをしていることを知っている“狡くて、酷い男”(帯にでかでかと書かれているほどの…)千秋が、いかに侑央を絡めとっていくかが一番の読みどころだと思うのですが・・・
頭脳派の千秋なので、何につけ抜け目がなく、そこに持ってきてなかなか辛辣な言葉を吐くものだから、侑央ばかりが責められているように思えて、“弱っているところにつけこんだ”様なシチュエーションなのですが、
私としては千秋ほど努力家で辛抱強く、真面目でいいヤツはいないんじゃないかと思うわけです。
エッチシーンのほとんどは、千秋から無理強いされているような状況なのですが、彼が侑央を脅すような態度の裏に、糸を引くような甘さを感じ取れるのは私だけではないと思います。
この甘さこそが「いとし、いとしという心」なんだと思いますが、どうでしょう?だから悩むこと無いじゃない、甘えちゃえばいいじゃないって侑央に言いたくなっちゃいます。
いやー、読み応えがありました。
全編、京言葉で展開されています。
それがこの作中の人の内面の薄暗さや老舗の古い慣習にあっています。
かわいさんの作品では多いですが、受け攻めの両方からの視点で読むことができます。
この辺りもお気に入りな点です。
攻めの千秋は細面の整った容姿で、京都の高級旅館井筒屋当主・荘一の弟。
東京の大学へ進み、そのまま都内の大手銀行へ就職した29歳。
受けの侑央は紙専門の家業を手伝う、冴えた美貌の28歳。
千秋兄弟とは隣同士の幼馴染。
万事、控えめな性格で、昔から荘一へ叶わぬ想いを抱いていました。
話は荘一が早世し、千秋が東京から戻ってきたことから始まります。
長男の荘一への讃え方とは違い、まるで空気のように、目に見えないもののように扱われてきた千秋。
常に曖昧な笑みをたたえ、自身の置かれた立場やそれに対する憤りをすべてその下に追いやってきた千秋にとって、侑央だけは兄に渡せない譲れないたった一つのものでした。
もちろん荘一は侑央のことは幼馴染であり商売繋がりのある相手というもので、恋愛感情などというものは微塵もなかったとしても。
太陽と月のように、決して生きる世界が交われない兄弟の狭間に置かれていたのが、侑央でした。
千秋の井筒屋での処遇については、繰り返し書かれています。
自身のことでないのに、ひじょうに読み手を物悲しくさせるかわいさんの手法には脱帽です。
千秋が家族と井筒屋に対し、「可愛がられへんってことはそういうもんやで」というくだりは同調してしまいました。
高校時代の千秋と侑央の関係は侑央目線で書かれていますが、わたしは、荘一だと思っていていいと優しく手で侑央の目を塞いだ千秋の想いに切なくなりました。
この作品は完全にわたし、千秋目線で読んでしまっているようで(苦笑
切ないですが、読み応えがありますのでオススメです。
京都はまったく詳しくないですが、はんなりとした攻め受けの京都弁のニュアンスは伝わってくるので、攻めを京都弁といえばあの方の声で…!と脳内変換しながら読みました。
物腰柔らかで腹黒な攻めと、大人しくてこう…押しに弱いと言いますか…そんな受け…
とても好きなカップリングでした…!
攻めがもうもう受け一筋で受けの小さな変化にもすぐ気付いて見逃さない所とか…
攻めの思い通りにはならないと受けが抵抗していても結局思い通りにされてしまうような…
攻めはまさに受けのことが愛しくて愛しくてたまらないのだと…
活字が少し苦手なので、本の厚みが結構あるな…と思ったんですが、京都の雰囲気がよく味わえたし思ったより読みやすかったです。
何よりメイン二人に魅力を感じたので!
かわい有美子先生は作家買いしている作家さんです。今作は、リアルタイムで追いかけていたわけではなく、完結してから購入し、たまたま2巻の方が先に届いて1巻が届くまで待ちきれなかったので、レビュータイトルのような読み方をしてみましたが、結果的に大正解でした。
というのも、2巻の前半は、攻めと受けの高校時代のお話なので、幼馴染みとしての関係性(攻めは幼い頃から狙ってたわけですが受けにとっては)から1巻前半での危うい関係性に変化していく過程を詳しく書いてあり、ここから読んだことで1巻でのお互いの心情がつかみやすくなったと思います。
そもそも、今作を後まわしにしていた原因は、攻めの性格がよろしくない、いやいや受けの方が狡いよという感想を色んなサイトで時たま見かけたからでした。基本的にあまり歪んだ人は好きではないので、もしやこれはどちらも応援できないパターンなのでは・・と思い、今まで購入をスルーしていました。でも、高校時代を読んでから1巻を読むと、攻めの気持ちも受けの気持ちも理解でき、キャラとして嫌いになることはなかったです。
2巻の後半は、1巻の最後で少しだけ受けが攻めに振り向きかけた後の話になっているので、1巻の後に読むのをおすすめします。
また、情景描写がくどいという感想も時たま見かけましたが、情景描写の美しさはかわい先生の十八番(だと私は勝手に思っている)なので、むしろストーリーに彩りを添えている感じで私は好きでした。
ちるちるユーザーの人のオススメで手に取りましたが、大正解でした。
まるでドラマを見ているかのように、京都の老舗の跡取り達が家業と古都の伝統を守りながらも、新しい時代の変革を入れつつ奮闘していく毎日が描かれていて、非常に味があり、楽しめました。古都の文化風俗や伝統を大事に思う気持ちや、関わってくる色々な職人さん達へのリスペクトも表明されたこだわりのある文章で、読んでいて気持ちよくなりました。人物設定やストーリーも練られているので、ドラマを見たかのように、読了後強く印象に残りました。
兄弟ものとしても共感できる部分が多かったです。老舗旅館の跡継ぎの長男と家庭内で格差をつけられて育った次男の千秋の捻くれっぷりがツボでした。家の諸事情に振り回されたり、千秋が想いを寄せる幼馴染の侑央も長男への想いの吹っ切れができずで、なかなか可哀想な役回りですが、めげずに計算高く既成事実を積み重ねていく千秋の逞しさが良かったです。純愛ストーリーと言いにくい話ですが、恋愛感情はドロドロ生々しい部分もセットになる事も多いので、これもアリかなーと。
子供時代や高校時代の三人のエピソードも楽しめました。しんみりした人生模様が味わえる一冊でした。それにしても、長男がああなってしまったのは、若くして跡を継いだ事について、想像以上の重責があったんだろうなーと考えると辛くなります。まさかの続巻もあるようで、続きが気になります。
京都弁オーバーな気もしますが、愛嬌かと。あとがきを読んで、「喪服未亡人萌え」がお題でこの作品が生まれたようで、BLも奥深いです。