――何度も想像した、おまえのネクタイをはずすこと

  • 紙書籍【PR】

表題作春の雨に濡れてゆけ

実家の寺を継いだ元商社マン 大越
大越に昔から淡い想いを募らせていた早乙女

その他の収録作品

  • 恋がめばえたひのこと

あらすじ

東大出身、人望厚く、度胸も申し分なし
憧れのお前が俺を覚えてるなんて……

大人になった今、簡単に想いを告げることはできない――
そんな気持ちを見透かしたかのような大超の言葉!?
不器用なリーマン2人の、大人な青春ラブストーリー

出版社より

作品情報

作品名
春の雨に濡れてゆけ
著者
日の出ハイム 
作画
日の出ハイム 
媒体
漫画(コミック)
出版社
廣済堂出版
レーベル
Hug comics
発売日
ISBN
9784331900031
3.8

(25)

(12)

萌々

(3)

(5)

中立

(5)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
13
得点
92
評価数
25
平均
3.8 / 5
神率
48%

レビュー投稿数13

雨音のように さざ波のように

タイトルが素敵だなと思った。
それは日の出ハイムらしく、どこか粋で風流だ。
そして表紙のネクタイ・・・ではなくスーツ・・・ではなく!!(笑)
ええと、とにかく大人になってから互いの気持ちを自覚する同級生たちって、ホントいいよね萌えるよねという事が言いたかったわけで。

秘めた想いが再熱するパターンで、一番に思い出したのは富士山ひょうたの『純情』だったが、彼らよりはこちらの方が穏やかで優しい。
例えるなら『純情』の2人は、水をかけられ一旦燻ってしまった火種が、再会と共に一気に大炎上してしまった印象があるのだが(だからお互い少々痛い目をみた)、大越と早乙女の場合は小さいながらも、たゆたうようにゆらゆらと燃え続けていたような、そんな風な関係に見えた。
多分読む方によってはこの独特なモヤっと感に、ちょっとパンチが足りないぞ!と思うかもしれないけれども、随所に入るモノローグは切々と早乙女の心情を訴え続け、読むたびに私はそのハイムさんの言葉選びのセンスにキュンとさせられてしまうのだ(*ノ∀`*)

また早乙女の心の声が大越へ聴こえているんじゃないのか?と思わせるようなエピソードが、作中何度も登場するが、それは霊能力やテレパシーなどという類の話ではなく・・・恐らく聴こえているんじゃなくて共鳴しているんじゃないのだろうかと、思ってみたり。
いやそれもそれでかなり不思議な状況なんだけども、言葉がなくても人というのは相手の事を死ぬほど見つめていれば、結構色々解ってしまうものだから(行きすぎるとヤバい世界に行ってしまうが)、まあそれくらい互いが静かに相手を想い続けていたという事なのかもしれない。
早乙女の想いは大越へ控えめな雨音のように近づき、そしてさざ波のように静かな波紋を広げる。
だからそんな2人が抱き合うシーンはとても熱っぽい。
決して派手さはないんだけども、それが逆にすごくエロかったなあ・・・。

それからこの2人の間には、男同士によくある対立心や競争心といったものが非常に少ない、というのも特徴だ。
早乙女は中学生の頃から今もなお、ナチュラルに大越への憧れを抱いている。
でもだからと言って女々しいのかというと、そうでもない。
大越の事を肝の据わったサムライのようだと称し、また自らもそう在りたいと自身を成長させようとする早乙女の姿は正に男だ。
ああ、こういうのが男惚れって言うのかな。
日の出ハイムという人は、刀を持っていなくても“サムライ”を描き続ける人なんだなあと、今回改めて感じ入ってしまった。
ラストシーンには急に降り出した春雨に、濡れて行こうぜと笑う大越がいた。

「風流だろ」

ああ正に。

5

ゆったりが好き

中学時代の同級生と、就職先で再会して、そこから始まる恋の物語。

雨音のように、さざ波のように、広がって、とどく想い。

こうやって、穏やかに通じ合う恋って、いいなぁ。

日の出さんのコミックスって、ちょうど1冊分に、過不足なくきっちりと理想的に構成されているのに感激する。
こんな風に丸々1冊で1作品、しっかり味わって、ちゃんと余韻を味わえるコミックスって、実はなかなか、ありそうでいて、ない。
きれいな描線、印象的なセリフ、洗練された画面構成
少女マンガの理想型だと思う。
恋愛へいたる感情の動き、思いが通じ合っての思いやりに溢れるセックス
BLマンガの理想型だと思う。

穏やかで、優しくて、きれいで、
そんな素敵な物いっぱいで、
これぞ、究極の少女マンガとしてのBL、
BLは少女マンガの到達点なんだと、再認識できる作品でした。

4

一貫して「爽やかな趣き」がある


個人的に肩入れしたものには、とことん高評価を与えてしまうという質なのですが…
私は、この作品が好きでございます。二冊持ってるくらい(笑)
タイトルから、受けである早乙女、攻めの大越、彼らのセリフやモノローグ、ひとつひとつの言葉まで、余すところなく大好きです。
と、ラブコールはここまでにしておきまして…

うーん、なんというか、大越の人間が出来すぎている…
ここで言う人間ができてる、というのは、日常生活での他人への気遣いとか、細やかな気配りが人一倍できる、というようなことではなくて、まあ名前の通り、俗世を飛び越えてしまっているというか…(笑)
包み込む愛というのでしょうか。早乙女の気持ちに勘づき、自分自身も愛情を内包しながら、付かず離れず見守っている感じ(でもやっぱりその眼差しにも愛は溢れている)にほのぼの、じりじりさせられました。これこそが萌えなんだね。
早乙女も、その名に相応しく乙女、なんだけど全く女々しくはなく、見た目クールビューティなんだけどワリとおっちょこちょいってのが非常に愛しい。全然ウザくない(そこはやっぱり社会人である人物の年齢にも関係しているのでしょうが)。
大越と向き合って話す時などは、普通に友達として接しているのに、彼の背中を見る目には恋情や羨望が混じっている……健気で、一途で、綺麗だなァと思いました。
彼らなら今後も、何も間違わず、寄り添っていけるのじゃないかなと思わせられました。運命の人ってこういうことでしょうかね。

また、他作品から、古典(特に近世…?)に造詣が深いようであらせられる作者さんですが、この作品では、それが全体を通し「爽やかな趣き」として表れているのではと思いました。舞台は確かに一貫して現代ではあるのですが、私はそのようなものを感じました。

レビューだからもっと全体を包括して書きたいのですが、論点が妙に局所的になってしまいすみません。
この作品、神をつけさせていただきます。

4

神だあ・・・

お、お寺??
ひょっとしてつるりんが出るのかなーwktkと、
しょうもない理由で、軽く買いました。
そうしたら大当たり・・・当たってしまいましたww

何というか、ふつうクライマックスの部分で入るセリフが、
そこら中にごろごろ転がってる感じというか、
なんであんなにさらさらと名セリフが出てくるんでしょうか。
いろいろな場面からこの作家さんは人間できてんなーと感じました((-w-((

主人公の早乙女は、大越のことを常々すごいすごいと言ってて、
ご自分の魅力がわかってないのかこの野郎!!という無自覚タイプ。
ですが、全然いやな感じではありませんでした^^
そして、何と言っても器が大きい大越はそんな早乙女くんをほんと大事に思ってて、
すごく深さを感じました。
でも、大越自身は、気持ちが自分→→→→←←早乙女、ぐらいに思ってそうで
ちょっと心配ですが、きっと通じてると信じてます・・・!

そんな二人の高校生時代、大人になってあんなに人間できてた大越の、
早乙女の寝顔を見たときの表情がいかにもまだまだ少年、って感じで、よかったですww

一番最後の番外編(??)では、主人公の知られざる惚れられた瞬間が描かれていました。

ほんと、お話のなかですが末永くお幸せに・・・と思ってしまいましたww

3

緩やかに恋をして

『●▲年越しの恋愛』と言うフレーズが物語の
演出上用いられる事がありますが、評者が
観た範囲の限りそれらの場合離れていた
●▲年間の事がまるっと無視されている感じ。
単なる空白期間なんでしょとツッコミを入れたく
なる事もあります。
でもこの二人の場合は違ったのですね。
初めて感じたときめきを離れていた時間を
遣って恋の寸前にまで熟成させ、大人に
なってからほんの少し暴走する。
そのまま疾走しきってしまっても良いのだけど
又歯止めをかける。
今度は踏み切れない躊躇い故にではなく、
きちんと心が通じているという安心感故に。

肉体描写メインだった頃からこの方の作品は
心を繋ぐ瞬間に深みがありました。
その深みをゆったりと紙幅をかけて展開した、
そんな一冊です。

2

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(コミック)一覧を見る>>

PAGE TOP