君の過去も秘密も、全て愛そう

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表題作Clean a Wound

ミステリー作家 櫻田春三・36歳 
双子の兄 柳井一

その他の収録作品

  • 仕立て屋の恋
  • 部屋を飾る
  • good morning world

あらすじ

互いを愛し合いながらも生き別れてしまった双子の至と一。
だが至は入学した高校で、クラスメイトの「リョータ」と恋に落ちる。

嫉妬と失望に駆られる一だが、その数ヵ月後、
至は交通事故で帰らぬ人となってしまう。

失意の一に渡されたのは、至が事故当日に投函する筈の手紙だった。

届かぬ手紙に記されたリョータとの悲しい恋の真実、
復讐を誓う一が出会った謎の「先生」、
様々な人間の運命が交差する、衝撃のドラマがついに完結。

一と先生のその後を綴った描き下ろしも含めた、
松本ケンタロウ渾身のデビュー作!
(出版社より)

作品情報

作品名
Clean a Wound
著者
松本ケンタロウ 
作画
松本ケンタロウ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
東京漫画社
レーベル
MARBLE COMICS
発売日
ISBN
9784904101667
3.6

(25)

(9)

萌々

(4)

(6)

中立

(5)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
11
得点
84
評価数
25
平均
3.6 / 5
神率
36%

レビュー投稿数11

鮮やかな展開と独特のタッチに、もうやられた!

暗いのにどこか美しく、
シリアスで痛いのに救いがある。
期待以上でした。
松本ケンタロウさん、描きたい物語が
頭の中に明確にある方なのだと思う。
このストーリーセンスが
私の好みにカチリ、とハマってしまった。


物語はリョータの回想からスタートする。
高校時代のリョータと至(いたる)の恋の記憶。
次に視点は、至の双子の兄・一(はじめ)
切り替わり、心の闇に潜る。
そしてそこから一を拾った作家の櫻井視点、
ラストはまた一に還る。
この視点交代の展開がさりげなくも実に鮮やか!
そして、過去と現在を行きつ戻りつしながら
物語が進行していくという点が、
話に不思議なスピード感を与えていて
ぐんぐん引き込まれた。


絵は本当に「丁寧なラフ」という感じで
確実に好き嫌いが分かれるだろうと思う。
よく言えば「味がある」、
悪く言えば「雑」。
でも、見にくさはあるけど不快感は無かった。
と言うのも、根本的なデッサン自体には
あまり狂いが見られなかったように思ったから。
中村明日美子さんの
危うさ・妖しさを少し彷彿とさせる。
そして私個人的には、
山中ヒコさんの絵を見る時に感じる
簡素感と繊細さの同居のようなものも感じた。
ベタゴマに花と人物とか!
相当好きだ、この絵の世界観。

そしてコマ割りは実に巧みで読み易い。
大ゴマと小コマの使い分け・バランスが絶妙で、
心情変化、状況変化の波が
コマ割りでしっかり表現されていている。
だから、絵が苦手でもストーリーと
見せ方で受け入れられる人はいるはず。
しかし、絵が徹底的にダメな方の気持ちも分かる。
だからチャレンジは賭けの様なところもある。
そして登場人物の死が絡むので苦手な方は注意だし、
万人ウケするとは言い切り難い…
でも、それでも!引力と読み応えがあるのは確か。
「萌えだけじゃない作品が好き」という
方にはオススメしたい。


サスペンス風な展開、設定はシリアス。
でもその中にも癒しどころ(美作さん!)があり、
描きおろしには甘さもしっかり。
こんな作品に出逢えたことが
私はすごく、嬉しかった。

6

魅力ある作品

この本が発売した当時、まだ私はBL漫画を読み始めた頃でした。
まず表紙に一目惚れをして買い、内容も今まで読んだBL漫画とは一線を画したもので随分衝撃を受けたものです。

その時の自分が抱いていたBLの世界観を根底から覆された気分でした。

双子として生まれた兄の一(はじめ)と弟の至(いたる)。
苦しい子供時代の中で、お互いがお互いを必要とし合って生きてきた。
一は至を守りたくて、至はそんな一の傍にいたくて。
けれど親に捨てたれ、孤児となった二人はそれぞれ里親に出され離れ離れになります。
大人になったらまた一緒に暮らそうと至と約束をする一。

二人は手紙のやり取りをすることでお互いの存在を確かめ合っていましたが、高校二年となったある日、至がリョータという同級生と親しくなったのをきっかけに、至に変化が起こります。至が全てだった一にとってそれは受け入れがたいことでした。
彼は次第に至からの手紙を読まなくなり、返事を返すこともできなくなりました。
そしてしばらくして至は不慮の事故で亡くなります。至から送られた未開封の手紙を読み、リョータが至を裏切ったことを知った一は彼を激しく憎みます。そして変わっていく至の姿を受け入れらなかった自分自身をも酷く責めました。

至を死に追いやったのは誰だ。

この間の一の心の叫びは痛々しさ同時に悲しさも孕んで、答えのない問いかけを繰り返して自分を苦しめているようでした。
至の死後、一の心にあったのは自身への呵責と至を傷つけたリョータの存在、そして至は自分を恨んでいるという思い。

リョータを探す為に上京した一はひょんなことから物書きの櫻田に拾われ、住み込みで働くことになります。美しいものを愛するという櫻田は一のことを一目で気に入り、一の過去や至のこと全て知ったうえである協力を申し出ます。



前半は一と至の過去。後半は櫻田と一の出会いからその後を描いています。ほぼ半分を使い過去編を描いているので土台がしっかりとしています。決して無駄なページはなく、一にとって至の存在がどれだけ大きなものだったか。至のことを引きずり続けるリョータの罪の意識を余すことなく伝えてきます。

特に見て欲しいのは後半です。櫻田の家に転がり込んだ一ですが、彼を気にかける櫻田や家政夫の美作さん。暗い感情しかなかった一も少しずつ穏やかな心を取り戻していきます。ラストも素敵でしたが、これは前半を読んだからこそ得られる感動です。

お話自体大好きですが、絵柄も大好きです。独特な絵や、荒さの残る絵は元々好きでしたが、松本ケンタロウさんの線の細いタッチ。一見雑味を感じるようにも見えますが、登場人物の表情や手の仕草が魅力的で、滑らかに描かれた肢体は耽美にも感じます。
白と黒を多様したモノクロの世界観。背景の少ないシンプルなシーン。
そしてなにより魅力的なのは、一瞬の静寂から瞬く間に変わる空気の変化を描くのが絶妙に上手いのです。

当時の私にとってBL漫画は辛いことのない(エロもある)楽しいファンタジーでした。
しかしこのような読み手の感性を揺さぶる苛烈さや美しさを描いたものもBL漫画としてあるのだという事実は自分に大きな影響を与えました。この作品は今でも大事にしていますし、思い出深い作品でもあります。

それとこの作品よくよく考えてみたら年の差でもありましたね…!
年の差大好きです。絵柄・話・傾向まで三拍子揃っていたとは。

収録作の「仕立て屋の恋」も年の差です。
こちらは短いですが、客である少年に抱く仕立て屋の静かで凶暴な熱情がたまりません。

描き下ろしの二作は一と櫻田のその後。
ちょっとしたエロシーンもあります。実に良いです。

5

うん、好き。

すごい癖のある絵ですけど自分は好きです。表紙見た瞬間にビビビと来てしまいまして…。なんかカップルが特定してないっていうかごちゃごちゃだけど、最後まで読めばちゃんと繋がりますよ。高校時代の良太かっけーし。至かわえーし。「仕立て屋の恋」もよかった。なんだこの子供は!?ってな感じ。オーラむんむんだし。最後の方におまけみたいな感じで一が髪切ったver.があるんですが、それがまた可愛い。やっぱ男は短髪だよね!!

1

迷ってるなら読んでみて欲しい

【作家×双子の兄(大学生×双子の弟)/仕立屋×華族】

タイトルそのままの英語は見つけることは出来ませんでしたが「a clean wound(清潔創、スパッと切れた切り口)」がありました。
…痛そう・゚・(PД`q。)・゚・
紙とかナイフで切った感じを思います。
紙で切ると地味に痛いですよね(´・ω・`)
はい、タイトルからも想定される通りの話でした…救いはあります。
ちゃんと光は射すのですが…【闇】が濃いです。
それだけにラストはホッと一息。

■clean a wound/部屋を飾る/good morning world■
櫻田 春三(ミステリー作家)柳井 一(双子の兄)/鷲尾 良太(大学生)×柳井 至(故・双子の弟)

互いを愛し合いながらも生き別れてしまった双子の至と一。
だが至は入学した高校で、クラスメイトの「リョータ」と恋に落ちる。
嫉妬と失望に駆られる一だが、その数ヶ月後に至は交通事故で帰らぬ人となってしまう。
失意の一に渡されたのは、至が事故当日に投函する筈の手紙だった。
届かぬ手紙に記されたリョータとの悲しい恋の真実、復讐を誓う一が出会った謎の「先生」…辿り着いた結末は?

時間軸がバラバラなので少し分かりづらいですし、何より白黒絵が…何というか独特な感じで…好みはわかれるだろうと思います。
でも内容がね…心理描写がね…本当に良かったのです。
中の絵を見て本を閉じないで読み進めてほしいです←失礼
登場人物の悲しみ、怒り、憎しみ、寂しさ、後悔…そういったものが心に迫ってくるんです。
どうなるんだろう?どうなってしまうんだろう?って追われるように読み進めて…最後に見えた一筋の光。
先生の言葉遊び、好きだなぁ(´・ω・`)
リョータのその後は描かれてないけれど、色々なことに無気力になっていた彼がバスケットゴールに1人シュートを決めている姿は…一に気持ちをぶつけられたことで一区切りがついて前に進み始めようとしているのかな?って思った。

本編が重たいので描き下ろしで和みました。
…と見せかけて、カバン1つで出ていけないぐらい部屋にお気に入りのものを増やそう…ってあたりで涙腺刺激。・゚・(´□`*)。・゚・

あと、ものすっごい脇役の台詞なんですが「お互いが1人で立てなければ支え合う事なんてできないんだよ」が非常に印象に残りました。

■仕立屋の恋■
立花(仕立屋)×西城 成明(華族)

時は大正…日本人の父と英国人の母を持つ立花は、その見た目から差別をされることが多かった。
そんな中、能力を買われて華族・西城家の跡目である成明様の服を専属で仕立てる仕事を請ける。
一針一針に込められた仕立屋の歪んだ想いは…?

成明様、聡明だなぁ。
あの年でアレだけ聡明だと先が楽しみですね。
立花の歪みにゾワッとなった。
想いが煮詰まるとあんな感じ?
雰囲気がもう何かねー…凄いの。
表題作にも言えることなんだけど、実際に読んで味わってとしか言えないです。
私の言葉ではゾクリと感じたあの瞬間を言い表すことは出来ないから…。

0

引き込まれてしまう!

友達に薦められて読ませていただいた1冊ですw

すごく癖のある絵でした。
ですが、お話的にすっごくあった絵だと思います。
読みにくいところがないわけでもないですが(ストーリー的にも時間が前後していたりするので・・・)引き込まれるところがあり、のめりこんでいきました。

双子の弟の死によって苦しむ人たちのお話。。。
途中まで、完全にリョータ×至中心の話だと思っていました
あれーなんで作家さんが出てくるの??って思った私!
よくよくちゃんと表紙見たら作家先生×一でしたね^^

お話は泣きたくなるくらい切なくて、痛くて、悲しいお話でした;;
どちらかというと耽美もののような複雑さ。
そこがよかったですw

2

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