絶対言わない。ずっと一緒にいたい。…好きだよ 、亨が

  • 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作臆病者の嘘

相模亨・悠人の妹の元彼で人気急上昇中の映画俳優
藤枝悠人・代議士の父を持つ製紙会社の新入社員

あらすじ

妹の元恋人・亨に恋してしまった悠人。報われなくていい。
そう思っていたはずなのに。たった一つの嘘が悠人を苛んで……

社会人になって半年。サラリーマンとして働く悠人は、二つ年下で映画俳優として多忙を極める亨に何年も片想いをしている。高校時代からずっと、自分の気持ちをひたかくして得た、親友という居心地のいい関係。
報われなくていい。せめてそばにいられれば。そう願う反面、亨の優しさに触れるたび、過去についた“ たった一つの嘘 ”が悠人の心を苛んでいた。
しかし、告げるつもりのなかった想いを亨に知られた悠人は、ついに自ら罪を告白してしまい――。

作品情報

作品名
臆病者の嘘
著者
神江真凪 
イラスト
高峰顕 
媒体
小説
出版社
二見書房
レーベル
シャレード文庫
発売日
ISBN
9784576100517
3.3

(17)

(0)

萌々

(6)

(11)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
8
得点
57
評価数
17
平均
3.3 / 5
神率
0%

レビュー投稿数8

伝えられなかった言葉の影に

今回は受様の妹の元彼で人気急上昇中の映画俳優と
代議士の父を持つ製紙会社の新入社員のお話です。

好きだった攻様に偽りを告げた為に
彼への思いを押しこめていた受様が恋を実らせるまで。

受様には高校時代に攻様に出会って以来、
彼に長い片思いをしています。

二人は受様の二つ下で当時は中学生だった妹の
彼氏と彼氏の兄として出会います。

最初は妹を通しての付き合いでしたが
攻様が受様の通う高校を受験すると決めた頃から
二人だけでも頻繁に会うようになります。

やがて二人は親友とも言える仲になり、
このままの付合いが続くと思っていた矢先、
攻様が両親の離婚で町を離れる事になります。

別れを告げられた受様は
この時に攻様への恋心を自覚し、
攻様の事情を顧みない妹に憤った受様は
妹への出発の伝言を握りつぶしてしまいます。

結果、
受様は攻様に一つの嘘をつくこととなり、
この事が原因で妹と攻様は疎遠になるのですが、

受様は攻様の引っ越し後も彼と連絡を取り続け、
受様が大学入学で上京してからは
前以上に頻繁な付合いをするようになり、
製紙会社に就職した今も交流を続けています。

攻様は高校時代に
有名な監督にスカウトされて出演した
映画がきっかけで映画俳優となります。

仕事の有る間はほとんど会え無くなっても
攻様はスケジュールに余裕ができると
受様の部屋で過ごす事が多いかった攻様ですが

受様は攻様の知名度が上がるにつれ、
普通の会社員である自分と
攻様を取り巻く環境や状況の変化に
戸惑う事が多くなってきました。

もし攻様に受様の恋がばれれば
二人の関係も終わるだろうとは思っていても
受様から攻様と離れる事は考えられません。

そんなある日、
攻様と映画で共演した女優の熱愛騒動が勃発、
憤った受様は自棄酒を食らった挙句、
攻様に好きだと告白してしまいます!!

ところが攻様は驚くどころか
冷静に受様と恋人になると言い出して?!
攻様の真意は何処に?!

神江さんのお話は
大きな出来事で大変化というのではなく、
日常に有りそう(で無さそう)なささやかな煌きを
両手で掬って振るった様な繊細な優しさが
とても魅力的だと思うのですが、
本作もそんな魅力に溢れた恋物語でした。

本作の受様は自身のついた嘘で
がんじがらめになってしまっていたのですが

受様と妹、受様と攻様のやりとり他に
受様が知らなかった妹と攻様の事情が見えてくると
受様と攻様の関係は
非常にシンプルな形に落着いて

様々に張られた糸が綺麗にほぐれていくまで
受様と一緒にハラハラしつつ
大変楽しく読む事が出来ました♪

某通販書店で購入すると番外編小冊子付。
本編終了直後の二人の日常の一コマですが
攻様のヤキモチに気付かない受様が可愛いです。

今回は本作を読んで読み返したくなったので、
神江真凪さんの『First love』をお薦めします。

0

しっとりとして情景が浮かぶ様な・・

とってもしっとりとしていて・・とっても良かったのでは・・・

最初の方は結構悠人がそりゃ、もうグルグルと一人芝居をしてましたね~・・
もともと神江さんの本は結構好きなのであまり気にはなりませんでしたが・・昔付いた嘘に・・
罪悪感を抱えて、カラ回っていましたね。

なので、途中まではそれなりに片想いの切なさとか・・酔っ払ってポロッ出てしまった告白で・・
自爆してる悠人を感情移入無く読んでましたが・・

後半の亨が動き出したあたりから、結構面白くなってきました・・
それまでは、亨の存在自体が、悠人の回想とか、心情とかで、表現されていましたが、
実際亨も出てきますが、あまりにも無口で亨の心情はあまり出てこなかったのですが・・

動き出した亨はとっても良かったですね~。
分かってしまえば、「お互いが大切で、傍にいられれば、名称なんてこだわらない」と言う感じです。

親友から恋人へと移り変わりますが・・恋人へとなった亨が結構、強引で好きなキャラでしたね~♪

神江さんの作品を読んでいて、いつも思うのが情景を表す言葉がとても綺麗で、
読んでいてその情景が浮かぶ様な気がしてきます。
今回も素敵な情景が浮かんできました。

挿絵の高峰さんなんですが・・最近の私のお気に入りなので、とっても嬉しかったです。
コミックはまだ出されてないみたいですが・・雑誌で連載中とかで・・コミックになるのが
とっても楽しみです。

0

嘘は恋愛のはじまり

今回のお話は、悠人が五年以上も抱えている、ある “嘘” がお話全体を巡っています。
が!
私はこの “嘘” については、重要度は低かったかなぁと思います。悠人が何度も何度も思い出しては、罪悪感に駆られる嘘。
それは、要するに恋人たちの伝書鳩としての役目を放棄した…というものです。悠人本人はぐだぐだと思い悩んでいるのですが…言っちゃ悪いですが、ほんとうに下らないことで悩んでいるなぁと思うんです。だいたいその内容も、嘘として弱すぎる。
五年前、亨と付き合っていた妹に亨からの伝言を伝えなかった…ということなのですが、何故それで五年も悩むのかの理由付けが弱いと思うんです。引っ越してしまう亨がこの街にいる最後の日を知らせる伝言とはいえ、本人達があとで電話等で連絡を取ってしまえば、簡単に発覚してしまう嘘です。
どうやら引越しの前から関係がギスギスしていた恋人たちだったようですし、悠人もそれは知っている。もう二人の別れの危機かと思えるような状況での “嘘” ですから、二人の関係にもさほど影響していないはず。
だから彼の罪悪感に相応する悪行とは、イマイチ思えないんです。

そもそも何故それほどまでに悠人が己のついた嘘に拘っていたのかが、曖昧です。彼は自分の嘘のどこに罪悪感を抱いていたのでしょう。二人の関係に決定的な打撃を与えたと思っている? 亨の気持ちをムゲにしたと思っている? それとも根本的に、たった一つだけの嘘、というものに固執しているだけ?
彼の思いの正体が定まらないのですが、読み進めていく内に、“嘘” でなくてもいいのだなと思いました。

悠人が嘘に固執するのは、亨との間に築いた関係を壊さないための拠り所としているからだと思うんです。妹の彼氏として出会った亨へ、どんどん膨らんでいった好意。でも恋人の彼氏として、友達として、先輩として…色んな形で育った亨との関係に対し、恋愛感情という新たな思いが育つのを食い止めるために必要だったもの、それが嘘なのだと思います。
始めは “妹の彼氏だから” でしたが、二人が離れ離れになってからはそれが効かない。だから、理由付けとしては弱いけれど無いより良い、と “たった一つだけの嘘” を持ち出したのではないかな。それでも弱いものは所詮弱いですから、寝ている亨にキスをする等の行動が出てしまう。
その度に自分を責めて、ストッパーにしている嘘をどんどん自分の中で深刻化させている。そして、ほんとうは大した嘘でもなかったのに、肥大した罪悪感で雁字搦めになっている。…そういった印象を受けました。

彼がそうして守りたがってしまうくらいに二人の関係は良いもので、しっとりした空気は読み心地良かったです。
でもね、傍から見たらまるっきり恋人同士にしか見えないんですよ。“好きなのを隠している” という言及が無ければ、プラトニックカップルに見えてしまうほどです。(実際、そうした分かりやすい表現が出てくるまではカップルなのだと思っていました… orz)
のちのちに亨の口から、彼もずっと悠人が好きだったと教えられるのですが…だったらどうして亨から明確なアプローチが無かったのかな?なんて思ったりしました。あまあまな空気こそ出していますが、決定的な進展を悠人に任せてしまっている姿はどうもスッキリしません。後半のすれ違いは、彼が一言 「好きだ」 と言ってくれないせいと言っても過言ではありませんよ!
無口なクールキャラなのは解りますが、ここはちょっと…ひっぱりすぎだろうっ! (机バシバシ

ふう。
悠人にとっての “嘘” の意味合いをすっごく考えさせられました。ぐるぐる考え抜いたこともあり、ラストの両思いエチには大分胸を打たれてしまいました…!
亨…、中盤は曖昧なことしか言わなかったくせに、絡みになると積極的過ぎてたまりません。薄めの絡みですが、無口だった亨が少し饒舌になっているので、なんというか……良い! ←

0

嘘に囚われて臆病になって

相手の事を「好き」だけど言えなくて、5年間自分がついたウソに囚われ続けた正に臆病者の主人公の話。
「嘘」というより、その気持ちも含めて「隠しごと」だったような気もします。
しかしながら、主人公・悠人の気持ちや取った行動は、実際身に覚えのある自分自身の体験と重なって、何だか切なくて共感を呼びました。
シチュエーションは違っても、こんな経験や感情を持った人というのは少なからずいるのではないでしょうか?

妹の彼氏だった亨と、兄妹含めた3人でつるむことが多かった学生時代。
亨も妹もまだ子供だったから、家庭に悩みのある亨は、同性の兄の悠人といて話を聞いてもらうほうが居心地はよかったでしょうね。
両親の離婚による引っ越しで離れてしまっても、亨との友人関係は続いて現在まできていて、友達でもいい、その関係を壊したくないっていう気持ちは理解できます。
しかし、俳優である亨には色々しがらみもあるわけで、そんな時に見たスキャンダル記事に、悠人はとうとう抑えきれなくなって・・・

この告白場面で、衝撃を受けました!
亨「友達でいられないなら、恋人になればいい」「一緒にいられらば、どんな形でもいい」
いや、自分の気持ちがとうとう露見してしまって、絶望している悠人にこの返しは残酷で、優しくないと!
苦しんで泣いている悠人なのに、そこんとこわかって、どうして優しい言葉にしてあげられないんだ!!
まるでどちらが年上かわからないほどの亨の不遜な言葉。
読者としては、第三者なんで、それが亨の気持ちだってわかるんですけど、悠人の壊れそうな気持ちを壊してしまうもの言いは、、、と、思わず感情移入が激しくなってみたり。
その後の電話でも「もう、うんざりだ」って・・・ええーっ!それって酷いよ。
勘違いするよね。

でも悠人は強かったんですよ。
ちゃんと、自分の気持ちに向き合ってケジメをつけようとする前向きの姿勢。
これで、マイナスを返上して同じスタートラインに立つことができるんですよね。
最後の最後まで、亨は悠人に「好き」って言葉を言ってあげなかったので、悠人がかわいそうにも思いましたが、本当、亨も不器用すぎるよ。。

そんなで、俳優と一般人というカプでしたが、その二人は実に普通で平常のままで、飾りのない素直な部分が前面に出ていたので、とても好感が持てました。
亨も不器用だけど、悠人も鈍感なのかな?どっちもどっち?

0

長所は地味なこと、短所も地味なこと

いやー、地味なお話でした。
読み終えて改めてあらすじを考えてみると、一冊ぶん引っ張るプロットだと思えなかったのですが、面白かったです。
するすると読みやすくて綺麗な文章で紡がれる、地味ながらツボを押さえたお話にキュンキュンさせられました。神江真凪さんの作る物語世界、やっぱり好きだなァと思いました。
しかしこの攻め、セコいですな!w 相手に言わせようとしないで自分から言えよ!と思ったのは私だけじゃないと思う。とくにラストを読んでからはそう思いました。
受けが昔ついたという嘘もたいした嘘じゃないので苦笑しました。どうにでも言い訳のきく嘘だろうに、いつまで罪悪感を引っ張ってるんだ、と。どんだけ繊細なハートの持ち主なんだ、と。
ただ、この手の地味さや焦れったさや繊細さは私好みです。同じプロットで他の作家さんが書いたら地雷だったかもしれないなとも思いましたが、神江真凪さんだからイイ。
どこがどうとは上手く説明できないんだけど…やっぱ文体がキモかなァ。主役ふたりの性格も、焦れはするしアホやなとも思うんだけど、素直に応援しながら読めるんだよね。

0

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP