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まず、表紙と口絵に戸惑いました。
だって、これは誰?
ワーグナーじゃ無い。
…と読み出して驚愕ですよ。
だってだってワーグナーが、(以下ネタバレ)
ワーグナーが死ぬんですよ。
エイキはおかしくなって、そんなエイキを救おうとしてニコルが立ち上がる、という展開です。
攻め①が死に、攻め②と結ばれる…っていうのは他でもある話だけど、こういう読後感は初めてかもしれない。
まず、登場人物たちの立場、行動、心情が何とも現実離れしているように感じられるし、途中のニコルとエイキの関係は精神的SMで痛々しいし、いつの間にか5年たってるし、最早ワーグナーは完全に彼方になってるし。
エイキの気力を引き出すために暴君を演じるニコル。(でもそのために無関係の一般人も傷つける…そんな必要あった?)
(読者的には)急にニコルへの愛を自覚するエイキ。(ワーグナーをいつの間にか忘れる感じは分かる。)
エイキを労わる「憎まない女」、ダフネ。
テニスの描写があまり無いテニスの世界の頂点を競う物語であり、セックスの描写があまり無い男娼の物語である事。
なら、ストーリーが破綻していて読みづらいのかというと全くそうではない。
私は上巻より下巻になってからの方がより面白さを感じました。人間の、自分でも制御できない「心」そのものがより強い筆致で描かれているように感じたから。
五百香ノエル先生初読みだったのですが、本当に引き込まれました。さすがに凄いです。
錦織選手のバルセロナOP優勝を記念して読破、なんちて :-)
しかし、日本のチャンプという意味で、現代ではある意味リアリティを持って読めるように想います。
上巻は痛いほどの愛、若く傷付け合う愛だったけど、こちらは同じ痛みでも相手をひたすら想いながらも打ち明けられない自虐的な愛、執着愛がしっかりと描かれていました。
上巻で、絶対王者に恋し、戸惑いながらも最後には結ばれて一応の幸せを得たエイキ。
しかし、その後は男娼ながら恋してしまったことで主に呼び戻され、テニスからもすっかり遠ざかってしまう。
一方下巻最初で王者ワーグナーは不治の病を患い亡くなる。しかし死ぬまでエイキを愛する気持ちは変わらず、なんとか彼を救い出そうと、死の間際に妻にエイキとの関係を打ち明け、救出を遺言として依頼します。
その後、彼を救う荷を負ったのが、王者の弟子ニコル。美貌を兼ね備えた完璧なテニスの天才はエイキを愛していますが、王者の死に自暴自棄になった彼を救うため、自分の気持ちを偽って残虐な新王者として接します。
ニコルの一途だが自分を殺した愛が痛い。
物語は中だるみなく、エイキの心の変化が読者に自然な形で理解できるよう進みます。一気に読みました。最後は涙。相変わらずよかったです。
しかし、すれ違いながらもハッピーエンドはBLの典型パターンともいえ、衝撃だった上巻からすると既視感はありました。
しかしノベルとしての出來は素晴らしいのでやっぱり同じ評価です。
表紙向かって右が受けのエイキ。左が攻めの二コール。多分この時点でふたりとも20代半ばなんですが、しっかり指と指とを絡めております。
どうしようもなく萌えるんです、手つなぎ。普通大人の男同士って、親密な仲でもめったなことで手なんかつながないと思うんですよね。だから余計に、つないでてくれるとおおっ、となる。ベッドでも、へたに局部が合体してるより指を絡めあうシーンの方をエロティックに感じる。気持ちと気持ちが強く結ばれた証しのようで。
で、この2人なんですが、とにかくよく手をつないでます。もちろん物語後半で想いが通じ合ってから、なんですが。
2人はともにプロテニス選手で、四大大会で頂点を競う好敵手でもある。さらに受けのエイキにはもうひとつ裏の顔もあった。香港の「伝説の女衒」劉大人の最後にして最高の芸術作品。超高級男娼。
10歳で父親に売られ、エイキの思春期は性の泥沼にどっぷりつかりきっていた。いくら相手が世界のセレブで、贅沢し放題とはいえ、幼い子供が、自分の肉体を切り売りするしか生きるすべがないという状況がどれほどのものか。五百香さんの、ときに翻訳ものかと錯覚するくらい冷徹な筆致はグロテスクな現実をも淡々と暴きだし、かえって胸に迫る。
ありとあらゆる性技のほかに語学やマナーなど、高度な教育は施されたものの、彼の世界は閉ざされていてあまりに歪だった。家族とか友人とか恋人とか、あたりまえの人間関係の中で自然に身につけてゆくようなことを何ひとつ学べぬままに。
上巻で描かれていた彼の「帝王」ワーグナーとの初恋は、その歪なままで体当たりし、成就した次の瞬間に相手の死によって唐突に断ち切られる。
と同時に男娼としての傑出した才能も、テニスへの情熱も失われ、自ら破滅を望むばかりになる。
崖っぷちのエイキに手を差し伸べたのがワーグナーの愛弟子二コール。上巻で見た彼はエイキとは対照的にボンボンの甘ちゃんで、とてもBLの攻めが務まりそうなタイプには見えなかったのだけれど。
そんな彼が予想外に健闘するのです。本来のあまあまな自分を殺し、憎まれ役に徹して、すべてはエイキに生きる気力を取り戻させるため。再びコートで相まみえるため。
5年をかけてその目論見はほぼ成功し、エイキは表舞台にもどってくる。心身ともに前より健やかで強靭になって。一方ストレスをため込んだ二コールの方はインポになるは、血を吐くはでもうボロボロなんだけど、その深い想いはちゃんとエイキに伝わっていた。というか、くみ取れるまでにエイキが成長していた。なにより彼らにはテニスという共通の言語があるので、コートで打ち合えばお互いの気持ちはやりとりできる。ツアーファイナルの決勝での対決シーンはBLジャンルを超えた名場面といっていい。
トッププロ2人が、深夜にホテルを抜け出してマックでデートとか、肩寄せ合ってアニメのDVD見たりとか、エイキにとっては失われた思春期をやり直してるような感じかな。二コールも長い片思いがようやく報われて、心おきなく本来のあまあま路線に戻れそう。
表紙の2人の姿はとても象徴的。最初の恋人ワーグナーとは、たとえ彼が健在でも、その性格や信仰や妻の存在からいって、とても「ずっと2人で、手を繋いで、どこまでも歩いていこう」とはならなかっただろうから。手を繋ぐ人がそばにいる幸せ。「なるようになった」運命からの、ささやかなようでとても得難い贈り物でした。
上巻結構良かったんだよね~。
でもそのままの勢いで読むとダメだこりゃ。
ニコルがニコルレらしくないっつうか
エイキもエイキらしくなくなったっつうか。
最後は無理矢理っていうか。
ハラドキゲラウキと楽しかった気分が
意気消沈しちゃった。
面白いんだよ!途中までは……。
あとがきに、「下巻はスカッとする話」を
意識されて書いた……と先生が仰っていた気がするのですが
(間違ってたらごめんなさい)
スカッとよりも、パタッとというイメージでした。
ニコルとくっつくのはいいんだけど、ニコルらしく
くっ付いてほしかったな~というのが正直なところ。
エイキが落ちてるので、上巻の勢いはないのですが
まさに「なるようになった」感じです。
表紙のイラストのような穏やかな笑顔の場面がウインブルドンの二人の決勝戦
のテレビ中継だけというのが残念でした。
私はSHOOWAさん贔屓なのか?
特にニコルは素敵だなーと思いました。
(上巻のイラストのほうがいいとは思うけど。)