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表題作君よ知るや南の獄 上

ウィリアル・ハワード少佐
椿清隆中尉

あらすじ

戦争が終わった。しかし、「南の島」にはまだ地獄が待っていた。部下のため、そして自らのプライドのために身体を捧げた男の物語は、一人の男の歪みながらも純粋な愛ゆえに悲劇となる。
ゲイ・コミックの巨匠にして、世界的なゲイ・エロティック・アーティスト・田亀源五郎が描く、2003年~2006年に『G-men』誌上に連載された、SMマンガの傑作長編がついに単行本化。上下巻同時発売。

作品情報

作品名
君よ知るや南の獄 上
著者
田亀源五郎 
媒体
漫画(コミック)
出版社
ポット出版
シリーズ
君よ知るや南の獄
発売日
ISBN
9784780801095
4.2

(9)

(4)

萌々

(3)

(2)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
5
得点
38
評価数
9
平均
4.2 / 5
神率
44.4%

レビュー投稿数5

初読みには良い作品だと思います。

いつかは読んでみようと思っていた田亀作品。
今年に入ってポツリポツリと電子版が配信され始めましたので、そろそろその時が来たぞと。
初読みに上下巻合わせて4,000円を超える本作をチョイスするのはなかなか勇気がいりましたが、レビューを拝読するにこちらがハードコアポルノに免疫のない初心者がヌルい気持ちで手を出すには一番良さそうだったのでエイヤと購入です。
ちなみに電子版はモザイク修正です。作者のHPでサンプル確認できます。
解像度は申し分なし。タブレット閲覧にも耐えうる画質で作られています。値段が値段なので有難い。

もともと体毛もガチムチもおっさん同士の絡みもオールオッケーなので、あとはどこまでハードな責め苦がオッケーかってところだったんですが、うん、これぐらいなら全然イケる!
作者自身もあとがきで書いてらっしゃいますが、BDSMとしてはライトな分類と思われます。
あまりに読みやすかったので調子に乗ってその後、田亀作品で最もハードコアだと評されている「禁断」に手を出しましたら、エグいのレベルが桁違いで死にかけました。
調子に乗ってはいけません。

本作を読みやすいと感じるのは、ひとつは、主人公の椿中尉が貫く軍人らしい自己犠牲の美学が最後まで無駄にならないから。
中尉が耐えていることで助かっている人間が最後まできちんと居続けるというのは真っ当な感覚で読んでいる読者にとっては非常に有難い。
もうひとつは、椿中尉に陵辱の限りを尽くしているハワード少佐がBLで言うところのいわゆる「鬼畜ヤンデレ執着攻め」の枠内にギリギリなんとか収まっていると思えるから。
悲恋モノとして読み終えられる読後感は悪くなく、時代が違えば2人は普通に愛し合えたのだろうかと同情の念すら抱いてしまう。
ゲイポルノでありながらも、JUNE〜BL黎明期あたりの世代の好む要素が意外と本作にはあると感じます。

ただこれ、私は合冊版を買ってどこが巻の途切れ目かあまり意識せず一気に読み上げましたので上下ともに神評価を付けますが、上巻だけだとおそらく気分の悪い内容だと思います。
下巻も揃えた上で、結末までしっかり読破されることを強くオススメ致します。

5

我が愛しの上官どの

2回も読み返してしまいました。
個人的に好きなので神を連発している作家さんです。
今回はなんといっても漢を感じさせる作品でしたね。
どんな行為を受けても、どんなにされても折れない椿上官
泣ける(´д`、)アゥゥ
アメリカ軍の捕虜になっている日本兵。
過酷な状況下の中に彼等はいたのです。
そんな時、一人の部下が高熱に浮かされる。助けるための治療薬を貰うために懇願に行ったのが始まり。
靴を舐めるところから始まり最終的には犯されてしまう。
仲間のためにと懸命に耐える姿が痛々しい。
そのうえ、他の米兵。あまつさえ、仲間である日本兵たちにまで犯されるという屈辱がつづくわけです。
個人的ひとつ疑問なのは、米兵はさておき日本兵たち。
こいつらの言うことを聞く理由がみえない。
タバコだの酒だのなんだの。。。。。ある意味なんなん?
と思ってしまう場面がちょこちょこありました。
言うことを聞く必要性・・や、あれか・・・見たものの脅しってやつですか?
ん~・・・・
堅い心で頑なに。
苦悩に満ちた画が続きます。
下巻とまとめて読んだほうが面白いかも

2

心に残るゲイ・ポルノグラフィー

(上下巻の感想をまとめて記載していますので、下巻のネタバレにご注意ください)

ちょっと超えられない壁かなぁ・・・と思ってた田亀作品。
今回『美術手帖』(2014年12月号)BL特集をきっかけに、思い切って手に取ってみました。
田亀さんの漫画家としての属性が、BL作家ではなくゲイコミックス作家だということは疑う余地のない事実。
にもかかわらず、数あるゲイコミックスの中で何故田亀さんの作品はBLにもカテゴライズされているのかが、以前から不思議だったんですが、『美術手帖』のインタビュー記事によれば、『小説JUNE』を手始めに、BL雑誌のお仕事も多数なさってるんですね。
BL作家としても認知されているのはそういう経緯があってのことなのか・・・と漸く納得。
ただ、実際に読んでみると、田亀作品がBLとして認知され、女性に読まれる理由は、それだけじゃないような気がしてきました。

さて、この作品の舞台は、第二次世界大戦終結後間もない時期、南方戦線のG島にあった捕虜収容所です。
捕虜の一人である日本人の元中尉・椿は、病気の部下を助けるため、薬と交換条件に、敵軍の将校・ハワード少佐に凌辱の限りを尽くされます。
やがて椿は、ハワードとの関係を知った米軍兵士たちや、味方の捕虜たちにも犯されることに――

何らかの弱みを握られて不本意に凌辱されるというストーリーは、BLではおなじみ。
ただ、とにかく凌辱と恥辱がハードなんです。激しい暴力やスカトロもあり、女性好みのロマンチックな要素はひとかけらも含まれていません。
というかそれ以前に、受けの椿が毛むくじゃらのクマ系!な時点で、大多数の女性読者は後ずさりしてしまいそう(笑)
どんなにガチムチであっても女が見て美しい肉体を描く、というのがBLの明快なお約束(キワモノBLは例外として)ですが、この作品に描かれているのは、正真正銘、男にとってソソられるエロい肉体。
BLとゲイコミの間にある超えられない溝を、改めて思い知らされた気がします。

もっとも、B地区がとても綺麗に描かれていること、B地区責めシーンが多いことは、BLとの共通項かなと。
B地区責めの強調は女性向けならではなのかと思ってたので、これは私にとってささやかな発見でした。

しかし、一番意外だったのは、この物語のラスト。
ほぼ最後まで、100%ポルノグラフィーのつもりで読んでいたんですが、最後の最後、一気に作品の色彩を全て塗り替えてしまうほどの衝撃のラストが待ちうけていました。
決定打は、収容所での出来事から49年、死の床にあるハワード元少佐の吐いた、
「人は皆、自分が生まれ育った時代に縛られている 考え方も…生き方も…」
という言葉。
この言葉によってハワードと椿の、それまで見せられてきた苛烈な支配従属関係とは裏腹の秘められた想いが巧みに仄めかされ、この作品がポルノグラフィーから純愛の物語へと昇華を遂げた気がします。
もしも平和な時代に出会っていたら、きっと二人はお互いをいたわりあい、愛し合うことができた・・・
戦場の勝者の驕りと敗者の怨念、人種差別、極限状況で爆発する鬱憤のエネルギー。そうした戦中戦後ならではの異常な空気をSMを描く上で最大限に利用した上に、その時代ならでは価値観を逆手に取って、この凌辱の物語を悲しい純愛の物語に塗り替えるとは!
もう、狡い!と言いたくなるほど巧妙に、シチュエーションがフル活用されているんです。

男性向けポルノグラフィーは即物的で、たいていの場合ストーリー性は放棄されている、というイメージを持っていましたが、これはポルノグラフィーでありつつも、しっかりとメッセージを持った作品だと思います。
おそらく、こうしたストーリーへのこだわりが、田亀作品が女性読者に支持されている最大の要因なんじゃないでしょうか。

正直萌えるという感覚は湧きませんでしたが、愛なきSMに思えた終盤までと、いきなりその印象を全て覆されたラストとのギャップは嬉しい不意打ちで、この不意打ちをまた別の作品でもう一度味わってみたくなりました。

ゲイコミとしては絶対値で神だと思います。BLとしての評価ということで、萌×2で。

4

毛の嵐

評価不能。(MAX:萌萌萌:神に近い)
ゲイコミ界の巨匠体験2作目。

今でこそショタからガチムチ、ピュアからヤンデレまで節操なしのわたしですが、昔はショタなんてあり得ない!攻めならまだしもガチムチ髭受けとか無理~!と頑なだった頃も確かにあった。
あったはずなのに…と自分を振り返るとハッキリしているのは、田亀源五郎さんの、バリタチ大学生が教授によって奴隷にされていく(SMのパートナーになる)のを描いた『PRIDE』と出会った日を境に、わたしの腐歴が紀元前と西暦に別れたってことでしょうか。
本物のSM世界の洗礼を受け1年くらい撃沈していたんですが、立ち直った後は何でもアリな体に。田亀作品に調教されちゃった…
同じ作者さんとはいえ、腐女子は進入禁止の完全なるゲイポルノなので心して臨みました。(前置きなげー)

1945年、G島の日本人捕虜収容所で起きた一つの事件。それは、部下の命を助けようとある日本兵が薬を盗もうとしたことが始まりだった。

その日本兵、椿中尉が主人公になります。もちろんガチムチ熊受け。
収容所の責任者であるハワード少佐に捕まってしまった椿中尉は、そのハワード少佐を始め、他の米兵、果ては仲間であるはずの日本兵にまで上下巻を通して陵辱されまくっています。
流石、SM志向の作者さんが全力で己のフェティシズムを追求しているだけあって、強烈。目を覆わんばかりの陵辱の数々が、読者と椿中尉を待ち受けています。

いや、確かに陵辱描写も凄いんですが、それよりも目がいってしまったのは、椿中尉の全身をくまなく覆う見事なまでの体毛なのでした。
胸毛からギャランドゥまで一体化、ケツ毛なんて当たり前、穴どころか尻や肩(初めて見た)まで生えてます。ふっさふさ。もっさもさ。
毛の無い所はもはや背中と手のひらくらい?
他の外国人も日本人も体毛が薄いのに、椿中尉だけが毛むくじゃらってどういう塩梅なんだ。笑
一本一本自ら手描きしたというその毛たちは、予想以上に手間がかかり作者を苦しめたようですが、きっちりラストまで手を抜いていないところが天晴れ!
執念のような入魂っぷり(毛フェチらしい)が凄まじい。
毛についてどれだけ語るのか自分。

爽やかなユーザーさんが多いちるちるでこんなコアな作品のレビューを挙げるのもどーなんだと思いつつ、この毛の凄さをどうしても書き残しておきたかったのでありました。

3

地獄の黙示録

全てに容赦がない作品。
ゲイポルノですので要注意、っていうか値段も半端なければ、その残酷さも半端なければ、体毛も半端ないという、
ハンパない嵐なんです!
この本は上巻だけで挫折してしまってはラストの行きつく先があっての話なので、必ず上下巻揃えて読むのをお勧めします。
なので、購入して読むこと自体に覚悟が必要かもなんですね。

ストーリー的には、凌辱強姦の典型場面として、南のG島での米軍捕虜収容所が舞台。
戦争というバックボーンは人を狂気に陥れるのに最適な場所です。
ここの登場人物達も、必ずしもゲイなのではなく、全く女性のいない環境において、娯楽もなにもない環境において、生贄を見つけて凌辱することでそれがうっぷん晴らしとなる、そこでサディスティックに目覚めていくという手順がとられているような気がします。

その生贄に選ばれたのが、部下を大勢死なせ、自分の責任に感じ、捕虜となった生き残った者達を何とか生かして還らせたいと望む中尉なのです。
同じ房の部下がマラリアで苦しんでいるのを助けたいと、キニーネを望んだの発端です。
薬と引き換えに与えられる屈辱は、次に其れを知った米兵達から、やがて同じ日本人捕虜の知ることとなり、同胞たちからも蔑まれ凌辱され、という
それにひたすら耐える日本人中尉への行為まみれで一冊終了します。

沢山の人間が中尉を犯しますが、それぞれに、それぞれの立場において、彼を犯そうという気持ちを起こす源は少しずつ違うのです。
それが明らかになるのが下巻ですので、この上巻だけで投げ出してはいけない・・・というくらいにマワされ続けます。
ここで、一歩下がってこの中尉を見ると、彼はひたすら犯されることを耐えて享受している姿に一種のマゾヒズムを見ることができるのです。
部下を死なせた罪を自分で被る、その罰を凌辱として受け入れる。
これもマゾヒスティックな部分ではないか?と考えれるのですよ。
では、犯す方はサディスティックかというと、中尉を犯すことで目覚めてはいっていると思います。
はっきりと愛が見えるSMではないので痛さが先立ってしまうのですが、プレイとしてのSMと凌辱としてのSMの違いであることは、はっきりと線引きしておかなくてはいけないと思います。

田亀氏が毛フェチを自称されているので、その毛の表現はちょっと尋常じゃありません。
しかも一本一本植え込むように描いてますから、その労力を思うと、これもマゾヒズムなのでは?とww
もう中尉、人間じゃねー領域の毛深さです♪
その体毛を生かして魅せるために外人さんには体毛がないのかな?と思いますよ、コレは!
しかしね、軍医はアバラが浮いてるので、収容所っていうのが、よくわかるんですが、他の人達みんなモリモリ・ムキムキしてるんですよね。
栄養状態いいのかな?
そんな不思議もありますがw

この本を読む時は空腹時をお勧めします。
読むだけで、ものすごーく腹いっぱいになります!

3

この作品が収納されている本棚

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