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3カップルの短編集です。
表題作と「その後」は、コミックにするためか2010に描かれたものなので、今の絵柄に近いですが、そのほかの作品は2002・2003作品なのでちょっと違います。でも私はどちらも好きです。
三日月堂店主×郁巳
「プラチナローズブレンド」「ローズヒップセレモニー(前後編)」
年上×年下。店主の名前も年齢も不詳なところが良いなって思います。
ルーク×ジル
「もういいからオヤスミ(前後編)」
同級生。声楽校が舞台ですが、日本を舞台にした他の2作品と比べて異質な感じはありません。こういう男か女か微妙な頃って良いなって思います。
健人×向井和明「踏む青」「ゆずりは 橙 嫁が君」
息子×義父。恋人同士になる前から、長身の息子が義父を呼び捨てにしているところが萌えました。健人が他の男を抱く描写があるので、苦手な方はご注意ください。
「その後」3カップルのその後です。メインはルーク×ジルかな。
二人のみに終始せず、それぞれの話に、杏子、フィリップ、蕗子と印象的なサブキャラが登場しているのが良かったです。
こういう間合いとか雰囲気とか淡々とした感じとか、うまく説明できないのですが、自分は大好きです。でも合わない人には、ううん?って思ってしまうのも分かるような気もしています。ぼんやりとした明るい色彩が素敵な作品だと思いました。
「プラチナローズブレンド」
画材屋でオリジナルの顔料も作る三日月堂に、薔薇の花束で顔料を作って欲しいと郁巳がやってきます。
差し出した薔薇の花束はプレゼントするはずだったのに、できないまま彼の手元に残ったままなのです。
好きになった相手が同性、そのまま彼のところに行けなかったという静かな気持ち、できあがった顔料が切ないです。
「ローズヒップセレモニー」
宝石を顔料にしたいという男性も訪れるのですが、この宝石もどうやら別の思い出があるようです。
風に乗っていく顔料は、それぞれの思いのしがらみを超えて、簡単になくなってしまいます。それぞれの思いがきれいに飛んで行ってしまうところは切ないのですが、それでいてどこかさわやかでもあるのです。
「踏む青」「ゆずりは 橙 嫁が君」
料理研究家の和明は、血縁関係のない健人を溺愛しています。和明は母の再婚相手なのですが、健人は彼に叶わぬ恋をしているのです。
母が他界した今、二人は確かに自由かも知れないけれど、やはり父と子、そして母がいるのです。
母を中心に結びついている二人ですが、父子なのか、恋人なのか、危うさや一線を越えてしまったときの静かな描写がとても好きです。
大きな出来事ではなく、淡々とした毎日の中で登場人物達は恋愛しているのですが、多くを語らず、淡々と語られるような描き方が萌でした。
じっくりとした恋愛模様は何度読んでもきゅんとします。
カバー絵の、橙色を基調にした絵なんて、素晴らしく素敵です。
お話も、帯の惹句にある
「きらめく時間と、
過ぎゆく時間。
そして、恋。」
って感じで、雰囲気はたっぷりです。
ひとこま、ひとこまの、止め絵はとっても素敵ですが、
これって落丁?
って、思わず前へ戻ることがあったり
髪色の違いがハッキリしないシーンだと、
これってどっち?
って、思わず前へ戻ることがあったりと
全体に、あまりにも、スキなく美しすぎて、読んでいる私は招かれざる客のような気分です。
巻末の「その後」に関しては、もうだれの話か理解するのを諦めました。
義父って単語につられて読んでみたものの…
なんか無駄に難しいというか…浅いというか…キャラの考えてることがよくわかりませんでした。
雰囲気は出てる。でも、それに頼りすぎ…??読者に対して説明が足りなかったり、作家さんの思い描いてる恋愛観がうまく伝わってこない部分が多かったです。
そして、思いの外中身が薄いような恋愛でした。
■プラチナローズブレンド/ローズヒップセレモニー
変わった画材屋の変わり者の店主×客として来た美大生。どうして二人が惹かれ合うのかわからなかった…。
■もういいからオヤスミ
外国もの。音楽学校で寮が同室の生徒同士。優等生と元気っ子みたいな二人。声がキレイな優等生が声変わりして転校してっちゃうらしい。これも話の流れが難解です。なにがなにやら…。
■踏む青/ゆずりは 橙 嫁が君
表題作。
キャラや設定はともかく、話の構成がわかりにくいのは厄介です。読解力なくてでスミマセン…。
《個人的 好感度》
★・・・・ :ストーリー
★・・・・ :エロス
★・・・・ :キャラ
★★・・・ :設定/シチュ
★・・・・ :構成
約10年前に他社さんで描かれた短編集3作の収録です。
現在と絵柄の違いはあまりないのにちょっと驚きました。
うーん、全編お話の印象が薄いんだなあ。
せっかく面白そうな物語の舞台があるのに、
人物の感情や関係性が薄くて上滑りしている感じを受けました。
由緒ある寄宿学校の同室で、興味と規律への反抗心から
体を重ねている生徒たちのお話は、敵わない才能への羨望と嫉妬や
背徳感をもっと前面に出すと印象があったのですが、
出来事と気持ちが不調和だった気がします。
再婚した母の相手に恋をしていた青年と義父の
表題作では、愛情よりアットホームな雰囲気が強くて
これも関係性の中途さに目がいってしまいます。
ここはいっそ、体の関係までいかないで気持ちの動きをじっくり
描いた方がしっくりきたのではないでしょうか。
いかんせん寡作な作者なので、すわ新作かと期待していた分
感想がしょんぼり気味になりました。
「満員御礼」の下巻を早く読めます様に。