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表題作LOOP

州脇義国・大学生
有田英一・大学生

その他の収録作品

  • eternal

あらすじ

幼い頃から州脇義国のなかには、"宮澤"という若い男がいた。宮澤は過去に愛した女への未練と想いを昇華できず、現世の自分(州脇)のなかにとどまっていたのだ。そんなある日、大学で知り合った英一が、宮澤の想い人・文の生まれ変わりであると気づき、宮澤は州脇に「一ヶ月だけ体を貸してくれ」と頼む。その日から、宮澤は有田英一に執拗につきまといはじめるが…。

作品情報

作品名
LOOP
著者
木原音瀬 
イラスト
高宮東 
媒体
小説
出版社
オークラ出版
レーベル
アイスノベルズ
発売日
ISBN
9784872784213
3.6

(26)

(10)

萌々

(3)

(8)

中立

(3)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
9
得点
89
評価数
26
平均
3.6 / 5
神率
38.5%

レビュー投稿数9

読後は疲弊感しかない。

読み終わった時、暫く脱力して動けなかった作品。英田サキ先生の『神さまには誓わない』を読んでからあまり間をおかずに読んだのですが、輪廻転生ものとしては至極似ているようでいて、また違った衝撃を受けました。というか打ちのめされたという感じ…。おそらくこの作品では最後に「希望」というより「諦念」に近いものが提示されているからかもしれません。

『恋愛時間』の有田の弟・英一が主人公。レビュー前の印象では『恋愛時間』は陽、『LOOP』は陰といったイメージでしたが、『恋愛時間』も結構終盤はしんみりしてるんですよね。有田兄弟って、なんか背負ってるのかしら。。じゃないと物語にならないか。

大学生の州脇は幼い頃から宮澤という名の別人格を抱えていて、彼と心の中で会話するのが常だった。宮澤は同じ大学の有田英一が前世で恋人だった女の生まれ変わりだといい、彼(女)と少しの間だけでもいいから一緒に過ごしたいと、身体を貸して欲しいと要求する。女の生まれ変わりとされている英一は、州脇が繰り返すツンデレに戸惑い、ストーキングに悩まされ、次第に追い詰められていきます。

攻めの執着っぷりは木原作品の通常運転ですが、最後の方はもう、英一と一緒に修羅場を乗り越えたような思いでした。今まで読んできた木原作品の中で一番読んでいて苦しくなった作品のような気がします。何処にも逃げ場がないっていうか、救いがないっていうか…。

こういった形で同性愛を描くなんて凄い発想ですよね。最初は不思議な設定に思えてよく掴めませんでしたが、読み進めていくうちに話が見えてきて最後まで一気に読み終えました。ストーリー自体も凄いけど、着想そのものに感服です。漁師だった州脇の祖父の家で、英一と州脇が二人だけで過ごすエピソードが幻想的な映画のワンシーンのようで印象的でした。(二人には一応、蜜月もあるんです…)

前世で犯した罪の償いを来世で行う。でも幸いなことに記憶が無いからこそやり直しが可能なのであって、記憶を保持したまま生まれ変わってしまったらそれこそ"loop"。もし人が転生するのだとしたら、許すってことは忘れるってことと同義なのかもしれない。そう思った、ある意味怖いお話でした。

9

恋に狂うと恐ろしくなる

攻めと受けの関係が特殊で、過去と現在で同じ魂を共有しています。攻めが受けを見つけて、不幸だった過去をやり直したいと近づいて、ストーカーじみた行為をしてました。攻めは振り向いてもらえない受けを監禁して犯して、攻めのやっていることは純愛だけど方向を間違えて、大変なことになりました。ストーカーされて、あんなに怖がっていたのにどんどん惹かれていく受けは攻めの純愛を感じたからだと思います。この作品は暗くて痛いだけどちゃんと両想いになってよかったですね。

1

輪廻転生もの

輪廻転生もの。
攻めである大学生・洲脇の中には、多重人格のように、
前世の人格・宮澤が共存しています。
ある日、洲脇は飲み会の席で他学部の学生・有田と出会います。
有田は、前世で宮澤が横恋慕した女性の生まれ変わりで、
それに気付いた宮澤は、洲脇の身体を借りて有田につきまといます。

ずっとストーキングされて、精神的に参ってしまった有田は
『一度だけ抱かせてくれたらもうつきまとわない』
という宮澤の申し出を了承します。
長い時間をかけてようやく身体を繋げた時、
有田が何の気無しにつぶやいた『好き』という言葉に
宮澤は涙を流し、有田にあやされるようにして、消えてしまいます。
(ここで成仏するなんて、自分勝手すぎるww)

有田は自分に執着していた宮澤の消失には気付かず、
そのまま洲脇を愛するようになります。
後に残された洲脇は途方に暮れますが
二人きりの旅行に出た先で有田を抱いてしまい、
洲脇もまた有田を愛するようになります。

ここでメデタシメデタシとならないのが木原さん。
有田が、洲脇と身体を繋げる度に
宮澤との前世の記憶を夢として見るようになります。
有田には、夢の中の自分を監禁し強姦する男・宮澤が、
洲脇と似ているように思え
夢への恐怖、洲脇との触れ合いの不快感が重なって
洲脇をまだ愛しいと感じているにも関わらず、
一方的に関係を断ちます。

有田から別れを告げられた洲脇は諦め切れず
かつての宮澤のように、有田をストーキングするようになります。
そして終いには、有田を無理矢理連れ去ります。
過去の過ちを完全になぞっていく二人……。

抱かれる度に有田が見る夢の場面はどんどん進み
夢の中の女は、とうとう宮澤を殺し、自分も殺されます。
死ぬ間際に、自分の中に僅かだけれど
宮澤に対する愛情があったことを自覚して…。
夢の中の女が死ぬことで、有田の中からは洲脇を疎む気持ちは消えて
愛しさだけが残ります…。

宮澤の有田への執着以外はいずれも
愛するようになる根拠が薄い気もしますが、
最近『理屈で説明出来ない恋』と『十分な根拠を持った恋』を
等価とみなす感覚になってきたので、さほど気になりませんでした。

有田が、おぼこい割に妙な色気があるので、
洲脇がつい手を出してしまったのも、わかる気がしますw

1

これが木原音瀬だと再確認

元々木原さんの作品が好きで何冊も読んでいるのですが、このLOOPは輪廻転生もので、ファンタジー要素が強いっぽいなと思い、持ってはいたんですが読んでいませんでした。
最近は木原作品から少し離れて、たくさんの違う作家さんのBL小説ばかり読んでいたのですが、最後まで読んで「これこれ!これこそ木原音瀬」と思いました。
片方が好きなる。両思いになる。そのあとまた片思いになって執着して両思い。
好きだけど嫌いになって好きになって、好きなのに嫌いになって、でもやっぱり別れられなくてハッピーエンド(???)
こういう流れが木原ワールドだと思いました。

女性の堕胎の話もあり、執着あり、ストーカーあり。
洲脇がそこまで執着するほどなぜ英一を好きになったのかよくわからず、英一が見る夢を頑なに洲脇に話さなかった理由もわからず。
全ては輪廻転生のせいということなのでしょうかね。
最後は前世で成し遂げられなかった運命を現世で遂げてもいいのではないかという諦めにも似た英一の決断。
最後の描きおろしのお話は、英一が感情を失ってしまったような雰囲気で読みました。

何度も読み返したい作品ではないかもしれないです。

1

木原作品の中では凡作

輪廻転生が根底にあるわけですが、正直言ってつまらん。
木原先生作品だということを差し引いても…というか、木原作品だからまだ読めたほうです。

州脇の中には「宮澤」という前世が内包されていて、
その宮澤は前世で愛していた女、文の生まれ変わりである英一に触れたいがために、
州脇に一ヶ月間、体を貸してくれと頼む。
中身は宮澤、表はイケメン州脇の状態で、英一とセックスにまで及んだ後、
宮澤は想いを遂げて消えてしまうわけですが、その後の展開が惰性すぎて「なんだかなー」。

木原先生作品は好きと嫌いは紙一重、追うものがいつか追われ、追われる側が追うようになる恋愛のパラドックスが常にあるわけですが、これはその立場の逆転が雑すぎる。
肉体関係だけでこうもあっさり恋愛に発展するのか?
それとも輪廻の影響?
輪廻の影響にしては説得力に欠ける。

輪廻転生モノといえば、BLの金字塔、「炎の蜃気楼」がありますが、
あのような時間を越えた息苦しさがまったくといっていいほどない。
もう一つ、輪廻転生が好きな人にお勧めしておきたいのは、三島由紀夫の「豊饒の海」から
「天人五衰」にいたるまでの壮大なシリーズです。
輪廻ということであれば上記二作ぐらいの覚悟が必要なんじゃないかと思うんですが。

3

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