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表題作追憶の庭

綿貫大和,大学生
閑野絢人,大和の祖父と同居していた翻訳家

その他の収録作品

  • 君のそばにいて
  • あとがき

あらすじ

「少し怖い人」だと思っていた彼は、思いのほか可愛らしい人だった――
大学生の大和は、亡き祖父の家で捜し物をしている。それは日本画家だった祖父の唯一の人物画。けれど、祖父の同居人だったその家の現在の住人・閑野の不摂生を見かね、家事もすることに。
涼やかな美貌の閑野と夏を過ごすうちに知らず惹かれて行った大和だが、閑野が祖父の愛人だったらしいことに気がついてしまう。
祖父に心をとらわれたままの閑野の姿を見るにつけ、大和は苛立ちを覚え――。

作品情報

作品名
追憶の庭
著者
栗城偲 
イラスト
梨とりこ 
媒体
小説
出版社
海王社
レーベル
ガッシュ文庫
発売日
ISBN
9784796401647
3.1

(24)

(3)

萌々

(5)

(10)

中立

(5)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
7
得点
70
評価数
24
平均
3.1 / 5
神率
12.5%

レビュー投稿数7

鬼籍の人に想いを馳せる

既読【蛍火】しか知らなかった作者ですが、本作で「栗城偲」という名前が自分にレコードされました。
古き良き静かな背景、そして想いが続く切なさ・・・好きですね、この雰囲気が。
本を閉じて、ほぅ・・と息を吐いた時、一瞬時間が止まったようなね(笑)。

若い主カップル「大和×絢人」よりも、大和の祖父「慶春(よしはる)」の遺された恋心に泣きました。
絢人の祖父に叶わなかった想いを断ち切る事もしなかった、その辛さを一生持ち続ける事を潔しとした慶春が、自分の真中にダイレクトに響いてきたんです。
作中にはかすった程度の泰然(絢人の祖父)の死は、慶春の心の節目になったのだろうか。
泰然への許されない愛、自分の家族への愛、上手く対せない慶春の不器用さが愛しく思えました。
そしてもう1つの静かな愛。
慶春と自分を重ねた絢人が、慶春に傾倒するのが解せるから、慶春の遺品の浴衣を抱きしめ隠れて泣く姿に、胸が締め付けられるのです。

【君のそばにいて】
鼎山(ていざん)・・・故人の愛猫の名前。
慶春が恋していた泰然の雅号。
死んでからも続いていく想いの象徴じゃないだろうか。
作者は、鼎山を語らせたかったとあったけど、自分は、鼎山を【吾輩は猫である】にしなくて良かったと思うんです。
鼎山の動きに、それぞれが悲しみや可笑しさを感受すれば良くて、それで本書の広がりがあるのではと。
鼎山の存在感がこれ以上だとキャラグッズも必要になるよ?(笑)
大和、鼎山に受け入れられているぞ。頑張れ。

沢山のエピソードに色々と考えてしまう。
レビューもだから書き切れないです。
お薦めと言われれば、どうかな?殆どの人にはお薦めしたいですけど。

5

お祖父さま……!!

 もともと栗城さんのおはなしがとても好きで、今回も迷わず購入しました。わたし的には、結構ヒットです。まぁ、他の人のレビューを読むに”一般受けするよ!”というはなしではないようですが…。あくまで個人的なヒットっす。

 はなしの内容はみなさん書いてくださっているような感じです。でも、わたし的には、”昔あるところに、親友のことを恋愛的な意味で愛していた男がいました。でも気持ちを伝えたら、その親友は逃げるように別の女性と結婚してしまいました。気持ちを消すことはできませんでしたが、時代も時代だったので自分もお見合いで出会った女性と結婚しました。妻はいい人で子どもも3人出来ましたが、どうしても家族を一番に愛することはできませんでした。ところがある日、妻に、自分にはべつの想い人がいてさらに相手が男性であることが知られてしまうのです。妻は子どもを連れて出て行きました。そして彼は、老いた今、絶縁されてしまった子どもたちがどこで何をしているかさえわからずに、一人で寂しく暮らしています。……”
 ↑こんな感じのイメージです。
いや、↑は話を下手に要約しているだけなので間違っているわけではないんですが…。
なんて書いたらいいんだろう…?
つまり、わたしの読解だと主人公はお祖父さまってことです。まぁ、お祖父さまの想いは結局叶わずなので、BL的にはアレなんですけど。

 はなしのカップルは、そのお祖父さまの孫(攻)とお祖父さまの元親友で想い人の孫(受)です。

 叶わなかった恋が孫の代で成就するっていうのは全然珍しいはなしではないですが、なんか今までのヤツと受ける印象が違うのは、お祖父さまの存在感(たまゆまま様ちょっと言葉借ります!!)がハンパないからだろうなぁ。
 でも別に文章でしつこくお祖父さまを書いてるわけじゃないんですよ…?


 なんか、ぐちゃぐちゃと書いてしまいましたが、おすすめです!!
 せつなくて綺麗なはなしです。ストーリーは綺麗すぎるかもしれませんが、文章や挿絵がその綺麗レベルについてきてるので、綺麗な一冊になっています。

 ぜひ読んでみてください。

5

せつない恋の向こう側。

出会いはある意味、偶然。
祖父の同居人・閑野と絶縁状態になっていた孫・大和。
接点がなかったはずの2人が絵を生業としていた祖父を通して近づいていく。
それでも、最初は同じ空間にいるだけの接点のない他人のような。
それが少しずつ気持ちがめぐりめぐって。

せつない片恋が静かに漂っているようなお話でした。
祖父に叶わぬ想いを抱く閑野。
その祖父が秘めている閑野の祖父への深い深い想い。
どちらも実るものではなく、ただ自分の中で抱えていくしかないような想いで。
閑野の想いはやんわりと断ち切られ、やがて死がそれを更に遠くへやり。
投げ出され。
それらが時には涙となって閑野の頬を伝う。
それに引き寄せられるように恋をしていく大和。
閑野が大和と出会うことで新しい恋に目を向けられるようになっていき、ちゃんと現実世界で生きていけるようになってよかったです。
個人的には祖父の絶交宣言が非常に印象的でした。
恋をしながら、それでも相手のことを思い、幸せを願い。
自らに彼のそばに行くことを赦さない、そんな宣言。
そんな宣言をしておきながら、猫にその彼の名を付けかわいがる日々。
静かにただ想い続けるだけのような恋。
成就することはなかったけども、この恋もすごくステキだなと思えました。

「君のそばにいて」
その後の2人が閑野視点で書かれているわけですが。
…閑野ってこんなかわいい人だったんですね。
いや、大和もなんですが。
本編では閑野はわりとしっかり者というか落ち着いた印象が強くて。
それがなんというかちょっとしたことでちょっとずつかわいいというか。
なんかこれだけ読むと非常にかわいいひとのように見えるのですよ。
ちょっとした戯れ?に対する悲鳴の上げ方みたいなのもかわいいし。
とにかくかわいいんです!(笑)

4

絵に秘められた想い

今回は祖父の遺作探しに受様宅に通うマメな大学生と
攻様の祖父と同居していた儚げ美人な翻訳家のお話です。

攻様視点で2人の出会いから恋人になるまでと
受様視点で回想を交えた後日談を収録。

攻様の祖父は高名な風景画家でしたが
つくす祖母を顧み無かった為

子供達世代は父はいないモノとして育ち
長じてからは名字を変えて生きる程
全くの絶縁状態でした。

そんな関係だった為
祖父の葬儀にも受様の父以外は出席もせず
葬儀の喪主も血縁関係のない
同居人が務めた程です。

この人物こそ今回の受様になります♪

攻様の父は多くの弟子を抱えていましたが
受様は最後の同居人で最後を看取り、
通夜と葬儀を取り仕切っていました。

受様は祖父に全ての遺産を残されました為
攻様の父に何かしら渡したいと告げますが
攻様の父は頑なに拒否します。

それらのやり取りを見た攻様は
受様がどんな人物なのかと興味を惹かれますが
興味のない父に問う事は出来ずに
そのまま祖父の名も忘れかけた攻様ですが…

芸術学部の女子との合コンで
風景画家の祖父が唯一描いた人物画が
「謎の人物画」と呼ばれている事を知ります。

しかも
芸術学部の准教授が祖父の大ファンで
何とか「謎の人物画」を見られないかと
指三本分での交渉を持ちかけてきます。

三万と合コン相手の気を引く為に
祖父宅に向かった攻様は受様に

自室以外は出入り自由と
許可をもらってアトリエに入りますが

そこは色々な絵や書籍で雑然としている上に
厚い埃をかぶっていてとてもとても
目的のブツを探せる状態では有りません(泣)

しかもならばと向かった母屋の仏間も
足の裏までまっ黒にする程で攻様はまずは
掃除から始めなければなりませんでした。

そんな攻様の様子に
受様は掃除のバイトをしないかと持ちかけます。

なんで受様がしないのかと
疑問に思いつつも探し物には一石二鳥と
バイトを引受けた攻様ですが

通い続けるうちに「謎の人物画」のモデルが
受様ではないかと思われてきて?!

祖父の絵を鍵にして
謎の多き祖父と受様の関係を探っていくうち
年上美人の受様にハマってしまった
好奇心旺盛な大学生のお話になります♪

元々が祖父の情報が少ない上に
受様がかなりな天然さんなので
攻様の推理は斜めに走っていたのですが

攻様の誤解がとけて2人がまとまるまで
ミステリアスな受様の言動に
攻様と一緒にドキドキ&ハラハラで
とっても楽しく読めました。

短編は受様視点なので
攻様視点の本編の裏側的な回想を交えつつ
本編終了後を描いたお話になります。

本編ではかなりしっかりしていた攻様ですが
攻様目線だと年相応に可愛いくて
ほのぼのな2人がとっても良かったです♪

今回は美術業界繋がりで栗城さんの既刊
『ココロノイロ』をおススメします。

1

主人公よりも他が気になり

ゆったりと時間が止まったような雰囲気のお話。
梨さんの挿絵がとてもマッチしていました。
攻め、受けが前後編のような感じで、両視点で楽しめます。

攻めの大和は、いわゆる普通の大学生。
しかし風景画家だった祖父の顔も見たことがなく、このたび祖父の通夜へ参列し自分達家族・親戚達が祖父と絶縁状態だったことを知る。

受けの閑野は大和の祖父の同居人であり、最期を看とった儚い雰囲気の青年。
親類が拒否した葬儀の喪主をつとめ、遺産を残され、ひとり(猫も)残された家に住んでいる。

閑野は自分が望んだものは手に入れられず、望まなかった遺産は手にする寂しい人間だなと感じます。
大和は大学の准教授に依頼されあらためて祖父の自宅を訪れるのですが、こちらは俗っぽいと言いますか閑野とは正反対の時間軸を生きているよう。

閑野は遺品わけをしたいと考えていたので大和を家へあげますが、この行動から彼の時間が少しずつ動き出していくのだろうと思います。

あるのかないのかわからないけれど大和が探すことになる、祖父が唯一描いたという人物画を中心にお話は展開していくのですが、わたしとしてはこの主人公カップルよりも大和の祖父の晩年の孤独が悲しかった。
自分が年齢を重ねたから思うのかもしれませんが。
祖父は家族への愛情表現が下手で心にそっと過去の愛した男を住まわせていたわけですが、そういう胸にしまっておきたい人の一人や二人いてもおかしくないと思うのだけど…
死の床にあっても見舞わず一緒の姓を名乗ることも拒否したという子供達を、そこまで駆り立てたものは何だったのかとそちらの方が気になってしまいました(苦笑

2

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