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「街の灯ひとつ」のスピンオフ作品
前作の当て馬でもない、家族でもない、職場の同僚が主人公でした(安心安全!)
お互いがどうやって「好き」にたどりつくかがとても明確にわかるお話でした。
ノンケ同士の二人ですが、お互い一緒にいて一番自分らしさが出ているのがわかります。
2人とも器用さがなく、裏表のないところがとても好きです。
新の家庭内DVの過去が辛く、読んでいて苦しかったです。
「暴力」というテーマも感じ、築が被害にあった描写は自分が受けたようなショックを感じました。
利己主義であるはずの築が新のために全力をかけて守るのが胸打たれます。
こちらのあとに出たSSも「long hello」にあり
新のトラウマはすぐに解決できなくとも、きっと築が寄り添ってくれるだろうと思わせる希望がかかれています。
一穂先生はショートストーリーでおそろしいほどの回収をするので、参ってしまいます..。
二人に幸多からんことを、と願う作品でした。
街の灯ひとつのスピンオフ。
初鹿野がちらりと出てきます。
新は過去に父親からの虐待を受け、家庭を持つことを頑なに拒絶というか、恐れているかんじ。
人当たりもよく、性格も明るくて、優し過ぎて踏み出すことができないのかな?
築は独特な自分の世界を持っていて、人に対して冷めていて、我関せずを貫いているのに、新たとであって少しずつ変化していく。
くっついてからはどちらかと言うと築が不安がっているような。
人と関わってこなかったからなのか、でも、そんな築にホッとしたり。
読み終わる頃には築のことが可愛くて可愛くて、たまらない気持ちに。
遺伝子研究、義肢製作など興味深いお仕事の様子と絡めた読みごたえのある作品でした。
他の作品同様、テンポ良く、するする読ませてくれます。
痴漢騒ぎで知り合いになった二人がどんどん距離を縮め、
お互いをわかり合い恋愛感情が芽生える様子にほのぼのとさせられます。
内容もですが、表現もとても素晴らしかったです。
蚕の飼育や義肢の表現など
目の前で蚕が本当に育ち羽化しているのを見ているような気持ちになりました。
リアリテイのある表現によって、蚕の羽化と主人公の気持ちが育ってくるようにも思えて、じれったいけれども静かな芽生えにその成就を待ち遠しく思う気持ちにさせられます。
「窓の灯とおく」
築(受)は最低な登場をします。
痴漢に合っている女の子を見て見ぬふりをする(>_<)
対して新(攻)は、嘘をついてまで女の子を助ける。
相反する登場の仕方です…
痴漢にあった女の子が勇気を振り絞って声を出すと、痴漢は開き直って証拠を求める。新は見てもいないのに見たと嘘をつき、築に見てただろうと同意を求めるが築は見ていないと嘘をつく。
その理由が面倒に巻き込まれたくないと…最低の男です…なんだこの男は…から始まりました。
でも読んでいるうちに築は、人に対して不器用な男だと気づきます…
人と接するのが苦手で、人と接することの少ない研究職を仕事にしている。
でも決して、冷たく最低でない男とわかっていきます。
そして、嘘をついてまで女の子を助けようとした新に対して、心の中で羨望と持っていたのではないのかと思いました
だから、帰りに新に電車であった築は、寝込んでもたれかかってきた新に電車を降りるまで肩を貸します(^^)
本来なら相反する相手同士で距離を置くはずなのに、距離は縮んでいくばかり(^^)…部屋も向かい合わせでした(^^)
築は、最低な男で登場するけれど、蚕を押し付けられても最後まで面倒見ようと覚悟します。
蚕も一生懸命生きている…命を粗末にしない築はちゃんと愛のある人です…不器用で口が悪いけど…(^^)
新は、心の中に父親から受けた深い傷がありました。その傷を抱えても前向きに生きてきた。自分の中に父親と同じ血が流れていることを恐れます。
それでも、新は家庭を作りたいと望む…
新に惹かれ始めていた築は、新が好きな人と結ばれるように手を貸そうとすると話は進んでいきます。
築はツンです…デレはないけれど、ツンツンの中に優しさがあります
新はそこを判っていて、惹かれていったんだと思いました。
新の心の傷は簡単には癒えないけれど、その傷を理解し少しでも癒そうとする築がいる
そんな二人は、あーでもない、こーでもないと言い合いながら、人生を歩んで行くんだなと感じました
そして、一緒に歩んで行くことお互いの足りない部分を補っていけるのだと思います(^^)
「鍵の音近く」
築と新がお互いを思いやる気持ちにほんのりとします。
でも二人ともちょっとエッチが……
新が築に無茶を言い…築が…おいおい怒らないのか~やるのね~でした(^^)
一穂先生の本の中で私が一番好きな話です(^^)。
…でも…蚕は苦手です。
『街の灯~』では、葛井のことを、眼鏡で何故かぽよんとした小太りな人を想像してたもんで、こんな可愛いツンツン猫だったとは意外でした。
こちらの作品のほうが『街の灯』よりも、さらに良かった。
一穂さんの比喩には毎回感心するけど、引力の話には感銘を受けました。
似たくないと思ってる父親と、違う道を歩いて行こうとするのに、足に強力なゴムが巻き付いてて、遠くへ長く伸びるほど引っ張る力を強くなって、ちょっとつまずいたら引き戻されるという話。
からっと明るい新が子供時代ひどい目に遭っていたその詳細には胸が悪くなったけど、こんな劣悪な環境で育ったのに、まっすぐでしっかりした大人になってよかったなと思うばかりです。