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表題作二月病

桐井千夏,高校3年生
木ノ下蒼司,同級生で親友

その他の収録作品

  • 花嵐
  • あとがき

あらすじ

一九九八年二月、突然おそった出来事が、親友だった彼らの運命を変えた――。
それは幸せだったのか、不幸だったのか。


高校の同級生で親友の蒼司に突然告白された千夏は、恋よりもずっと一緒にいられる道……
友人であることを選び、やんわりと蒼司を拒絶する。
その翌日、蒼司は学校に現れなかった。
千夏が自宅や携帯電話に連絡を入れると知らない男が電話に出た。
しかし異国の言葉で聞きとれない。
不安に駆られた千夏は蒼司の家を訪ねるが、そこに彼の姿はなく――。

(出版社より)

作品情報

作品名
二月病
著者
尾上与一 
イラスト
黒沢要 
媒体
小説
出版社
蒼竜社
レーベル
Holly Novels
発売日
ISBN
9784883864072
3.4

(57)

(16)

萌々

(19)

(4)

中立

(9)

趣味じゃない

(9)

レビュー数
19
得点
177
評価数
57
平均
3.4 / 5
神率
28.1%

レビュー投稿数19

このヒリヒリ感を刮目せよ!

尾上さんの作品は「二月病」は私的に一番ウルッときました。
「蒼のかたみ」「天球儀の海」より泣けました。

受の蒼司は親友で女子にモテモテな攻の千夏にずっと叶わぬ思いがあり、ずっと諦めようとしていたが、卒業前に思わず千夏に吐露しちゃう。
千夏は蒼司の想いに全く気付いておらず、それを知っても「蒼司が女だったらいいのに」とやんわり断り、このまま一番の友人でいようと収める。
が、翌日、蒼司が学校に来ない。
千夏は昨日の事が気になり、蒼司に連絡するが音信不通、実はこの時蒼司は殺人事件に巻き込まれ、監禁されていて、それを知った千夏は蒼司を助ける為に、開放条件の鉄塔のボルトを外し続ける。
殺人事件に巻き込まれ、犯人グループに監禁され、いつ殺されてもおかしくない状態の蒼司。
蒼司の命を護る為、誰にも相談出来ず一人で立ち向かおうとする千夏。まぁ、若田さんていう助っ人が出てきますが。
二人の行く末はいかに?っていうお話。
他のレビュアー様が書いておられるようにはっきりいって、話の筋的に疑問点が多すぎです。犯人グループの設定があまりにもボンヤリしすぎてモヤモヤしますし、ツッコミ所満載なんですが…。
しかし!!!!!それを軽~く凌駕してしまう蒼司と千夏のお互いの恋がんもぅ凄いんですよ!!
納記帳に書かれた蒼司の想い、それを読んで自分の一番に気付く千夏。
毎日ボルトを抜いて監禁場所に行き、語られるお互いの激情。
もう涙がポロポロ出ちゃう。女の子だもん。
明日死ぬかもしれない。やはりこのヒリヒリ感のある状況で恋愛からませないとここまで盛り上がらないですよね~。
もうとにかく読んでない方は読んでみてください。泣ける。
騙されたとおもって読んでみてください。騙されたと思って。
大事なことは二回。

じつは私的ですが、この「二月病」を読んでる途中で、丁度香川にうどんを食べに行きまして…。タイムリーでした。
高速に乗り、坂出に下りて「がもう」でうどんを食べながら、「あーこんなとこで二人はうどん食ってたんかー」と思ってジーン。
車で次のうどん屋に移動しながら坂出の景色を眺めながら「あーこの辺りを千夏はバイク走らせてボルト抜いたんかー」と思ってジーン。
八島水族館に行ったらすぐそばがお遍路のお寺があり、「あーこんな山の上まで二人で歩いて蒼司は祈ったんかー」と思ってジーン。
帰りに瀬戸大橋渡りながら旦那に倒れた鉄塔を教えてもらい、「この鉄塔かー。オイオイこの鉄塔だけ電線が瀬戸大橋の上に伝ってるじゃねぇの。電線緩んだら車の上に落ちるし。これ倒したの確信犯じゃねえのよ。うわー。でも千夏頑張ったんだねー」と思ってジーン。
隣の旦那は「????」でしたが。あっはっは。

尾上さんの個人サイトSSにて彼らのその後が書かれています。
貧しいながらも幸せそうにしている二人にホッとしました。
本編とSSの間の長い物語もいつかは発表したいとおっしゃっているので、その「いつか」を熱望いたしております。



10

待望の大型新人、ついに登場!!

 「この作品を書くために小説家になった。」という言葉を時々目にしますが、一作目にして、この作者のこの作品への熱い思いが全編から感じられ。

 読後は、「久しぶりにいい小説よんだなあ…」という充足感でいっぱいになりました。
 五條瑛さんの『プラチナビーズ』の雰囲気が少しあります。
 BL小説というよりはJUNE小説に近い気がします。
 だからなんでしょうか。新作なのに懐かしく。けれど、今までに読んだことのない発想と独特のキャラクターと少し硬めの文体と個性的な言葉選びと。
 「小説を読んでいる。」という喜びをタイトルから最後の一行まで遺憾なく、感じさせてくれます。
 もちろん、好き嫌いはあるかと思いますが。
 あえて内容には触れません。
 騙されたと思って。
 ぜひぜひご一読をお願いいたします。
 特に、「なんかパンチのある作品よみたいな。」とか「甘々はなんか食い足りなくなってきたなあ~。」とか「昔のジュネに載ってたみたいな小説よみたいなあ」という方には激おススメです。
 ドラマCD化超絶希望!できれば映画も舞台もいいと思います。
 骨太作品、万歳!
 早く尾上さんの新作よみたいなあ。

5

心奪われる二人の恋

これから先、二月が来る度に、閏年が来るたびに、その地の名前を聞いたときに、鉄塔を見るたびに、異国の地でひっそり暮らす二人を思い出すのかと思うと、本当に不治の病みたいだ。いつまでも心の奥底に残るようなお話でした。
至って普通であったはずの二人の日常がある日崩れて、緊張の中で少しずつ千夏の気持ちがはっきりしてくる。蒼司の為にボルトを運ぶ千夏や蒼司の恋する気持ち、恐ろしい現実もどこか美しく見える。文章や挿絵を通じて、恐怖や焦り、どうしようもない恋の熱の交じる二人の世界が恐ろしいほどリアルに感じ取れました。
普通の高校生だった二人が、あんな目にあった二人が、やっと気持ちが通じ合った二人が、あれからどうやって生きているのか……とか、そんなことをこれからもずっとふとしたときに思い出すのだろうと思います。読み終えた後にもう一度冒頭を読んで、やられた!と思った。すごすぎる。

3

純愛、そしてテーマ性

あらすじは割愛させていただきます。

まず軽いネタバレですが、メリーバッドエンドです。そして、ひたすら低いテンションが続きます。
苦手な人は苦手だと思います。

しかし、テーマ性を以て伏線が張られているために分かりやすく、物語が進むにつれ受け攻め双方の愛情がだんだんとかみ合っていくさまが丁寧に描かれています。

細かい設定が曖昧という感想も多いようですが、恋愛モノとして読むには十分な情報はあり、基本的には学生の主人公視点で進むためそこまで違和感は感じませんでした。
とても良いラブ・サスペンスとして読めました(・ヮ・)

2

怒涛の恋愛

すごい作品です。始まりからジェットコースターのように激しく揺さぶられる物語。冒頭は卒業間近の高三男子2人のシーンからはじまり、親友同士の片方が片方にいきなり告白して振られます。

その夜からが超展開。振られた受けの蒼司がとんでもない事件に巻き込まれ、命も危険な状態に。言葉は柔らかいけどかなり無神経な振り方をした攻めの千夏は失いそうになって初めて自分にとって蒼司がどんなに大切な存在だったかを思い知るのです。

この事件がドラマチックすぎて現実離れしている、と突っ込むのは野暮な話でこの話は「自分の今まで持っていた物全てを捨てて愛する人を救えますか?」というのがテーマだと思うので、迷いなく愛する蒼司のために自分の全てを捧げる千夏はカッコいいです。幼稚なお坊ちゃんだったのに愛を知った途端に大人びて男らしくなりました。千夏は愛というものがどんなものか全くわからなかったけどそれは自分のすぐそばにあったのでした…って童話の青い鳥みたいで深い。

四国を舞台にした物語でお遍路さんの風習が重要なエピソードとしてうまく生きていてとても魅力的です。若い2人の怒涛の恋愛を間近で見届けた語り手の若田は巻き込まれてしまって気の毒としか言いようがないけど。

どこかお芝居のような現代のお伽話のような戯曲のような…とにかくよく出来たお話です。読む価値あり。

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