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まず表紙からして最高。柔らかい光の入り方が美しい。ひと目見たときからワクワクしました。
収録されている2つの中編、どちらも超好みです。感想の言語化が難しい緒川千世先生の作品の中でも特に難しい、でも本当に大好きな、感覚的にフィットしてくる一冊。頑張って書きますが、読んだときの感動は全然表現できないと思います。
キャラの心情のリアルさと少し非現実的な状況のバランスが絶妙で、それが独特の空気感を出しています。扉絵もどれも素敵。瑞々しく美しく、切ないけどとても優しいお話。
<王子の箱庭>
譲様が強くて最高。序盤のすれているのも、後半の甘え始めるもどちらも大好きです。大変な思いをしてきた彼に、もう一度居場所ができてよかった。
岩瀬が譲様に執着しているだけでなく、彼の幸せを真剣に考えているのが素敵。ちゃんと今の彼も尊重していて、昔も今もどちらの彼にも夢中で、大事にしたい様子がいい。
ふたりの距離が徐々に戻っていく・新しく出来上がっていくのが楽しかったです。両親との電話はじんわりします。後日談がふたりとも好きすぎる。
<断熱線上の鼓動>
同室なのに距離をはかりかねる高校生の姿がもう最高です。
白線やヘッドフォンや呼び方といった印象的なモチーフはもちろん、視線や表情に距離感が表れていてもどかしく、表現・演出力の高さに舌を巻きました。アキの子供時代の話が、何気なくて自然で、描写として好きです。
BL初コミックスながら、既に表情や台詞回しやポージング、カメラワークが神すぎます。おそらく何年経っても色褪せない、心に残る一冊です。
どちらも薄暗い雰囲気の作品。
①王子の箱庭
本編のみだとメリバ?かな?と思いますが、ラストの“箱庭”ですくわれます。自分の足で再び立ち上がることができてよかった。ただ、両親とのあれこれは、ちょっと釈然としない感じもある
緒川先生の受ってワガママなのに儚いという不思議な魅力(と色気)がある
②断熱線上の鼓動
不安定なオトシゴロ
両片想いのサンプルのような作品。攻がなかなかゲスい。攻×モブ女があるので地雷な方は注意です
表題作 萌2
元ぼっちゃん(受)×元執事(攻)
倒産し家を追い出され、身体を使った詐欺で命を繋いできた受が、やり手の社長となった元執事(攻)に監禁されるお話です。
過去に囚われたままの攻めに狂気を感じますが、お互い両思いなのでなんだかんだハピエンのお話でした。
同時収録 中立〜萌
ルームメイトの2人のお話。
ゲイで人見知り(受)
×
受の熱い視線に当てられたヤリチン(攻)
お互い両思いでありながら、受もいる部屋に女を連れ込みまくる攻。拗れまくったルームメイトの2人でした。攻が受の前でいちゃついたりヤったりしてるので個人的には地雷でした...
監禁ものが苦手な方はご注意を。
かく言うわたしも監禁ものは苦手で、数年前に読んだきり読み返していませんでした。
「監禁!」というだけで心のシャッターを閉じてしまったせいで、初読のときには見えなかったものが読み返したことで見えてきました。
初読時よりは萌えました。
【王子の箱庭】(3話)【王子の中庭】(描き下ろし) 萌
生まれたときから父の会社が傾くまでの12年の相田、甘やかされて育った元お坊ちゃまの譲(ゆずる)。
おとぎ話のような生活が終わってから8年、当時の世話係だった岩瀬が成功して、屋敷を買い取ったという話を聞いた譲は…。
お金の無心に、屋敷に乗り込んでしまいます。
わがままなお坊ちゃまを体で稼ぐビッチにするのに、8年は十分すぎるほど長い時間で、変わり果てた譲を「譲様」と呼んで傅く岩瀬が怖い。
「昔の形」に拘る岩瀬の偏執っぷりがとにかく怖いんだけど、途中で「あれ?」ってなる。
譲だけが欲しいのかと思ったら、譲の両親まで呼び寄せたことで「ほんとに昔の形に拘ってただけ?譲に、じゃなくて?」という戸惑いが発生します。
でもこれって、幼かった譲の夢を叶えてあげようとしていたんだなあ。
前回は気付かなくて、むしろ譲が訪ねてくるまで探していた様子もないから、本当に執着してるの?っていう部分で疑問を禁じ得なかったんですよね。
「すべては譲のため」
そこがきっちり裏付けも取れれば萌えます。
譲の方は、もっと複雑。
反発心から始まったものの、絆されて、でも肝心なところで手を離されて。
結局居心地が良く感じ始めていたのも、別の感情が生まれてきつつあったのも自分だけだったんだなあっていう現実を突き付けられたようでつらい。
かと言って昔の純粋な自分には戻れないところまで落ちている現実も切ない。
譲が言った「またみんなでこの家に戻ってこられたらいいな」という一言を支えに生きてきた岩瀬もまた狂ってるけど、そこまで狂うほど譲を大切に思っていたんだな。
【断熱線上の鼓動】(前後編) 中立
寮で同室になって、親しくなって、一度は想いが通じ合った秋(シュウ)と千歳。
でも今は、彼らの部屋の真ん中には白いテープが貼られて…。
「同性同士」という壁を越えられない相手に対して、受け入れてもらえない当てつけに、女子を寮に連れ込みまくって目の前で抱く。
これがね、もうほんとに無理なんです。
頑張る方向が間違いすぎてて。
しかも絶対に秋が部屋にいるときに、わざと自分だけが呼んでいた「アキ」という名前の女の子を呼んで致すっていうのがね、ひねくれすぎじゃないかと。
呼ばれて行って、秋がいるのに平気な女子も凄いなって思うし、普通だったら3人くらい「アキ」が続いた辺りで周囲も気付きそうなものなのに。
それにしてもアキちゃんのいっぱいいる学校でした。
地雷多めの方にはかなり厳しい1冊。
もし未読の方で、緒川先生の作画は好きだけど地雷は多い方という方がいらっしゃったら、この作品はあんまりおすすめできないかも。