すべてが澱んだ景色の中、アンタだけがクリアだった

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表題作カナさん

居酒屋の店員 廣瀬瑞紀
店の常連でバンドのギター カナさん(嘉那裕輔)

同時収録作品ワンマンストーリー

同時収録作品たべものではありません

同時収録作品月翳

同時収録作品外道

彫り師の弟子
刺青のあるアパレル社員 宇陀児

その他の収録作品

  • ワイヤー
  • 嘉那さん
  • あとがき

あらすじ

初めてカナさんに会ったのは、真夜中過ぎの居酒屋の便所。
バンドマンで、自由が服を着て歩いているような、ちょっと目立つ人だった。
俺はと言えば、不満はないけど希望もない、やりたい事も時間もない、カナさんとは違う世界を生きていた。
そんなオレがカナさんの小さな秘密を知ってから、だんだん世界が変わっていってーー…鮮烈な印象を残して駆け抜けて行ったカリスマとその周りの人間模様を描いた表題シリーズ他、レスラーBLや刺青フェチのイチャラブ等、ファン必見、著者のBL集大成!

(出版社より)

作品情報

作品名
カナさん
著者
トジツキハジメ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
竹書房
レーベル
バンブーコミックス 麗人セレクション
発売日
ISBN
9784812483206
4

(72)

(37)

萌々

(17)

(9)

中立

(3)

趣味じゃない

(6)

レビュー数
26
得点
283
評価数
72
平均
4 / 5
神率
51.4%

レビュー投稿数26

楽屋の落書き

レビュータイトルは一番好きなシーン。

居酒屋バイトのヒロセくんがカナさんと出会って、あっという間にカナさんはいなくなってしまう。それからのお話。

カナさんの置いていったテレキャスを弾きたくてカナさんのバンドメンバーに教えてもらう。
バンドマンになってヒロセが変わっていくわけでもなく、淡々とした日々で、そんなお話の最後の落書き。
こういうのってトジツキさんにしか描けない気がする。

同時収録も一言感想を

「たべものではありません」
たしかに美味しそうw

「月翳」
レベル高い。文豪の翻案作品と言われても納得しそう。

「外道」
これもレベル高いw
贅沢を言えばカラーで見たかった。

総評はトジツキワールド全開な1冊。
中古で購入。お布施したいので電子化待ってます!

0

人が遺す記憶の愛しさと哀しさ、そして影響力。

表題作の「カナさん」シリーズ。
バンドマンのカナさんと居酒屋のアルバイト・ヒロセが出逢い、運命が一瞬くっついたようにほんの短期間での(おそらく恋愛未満の)関係が切ない。
ヒロセはカナさんを「大事な人」とちゃんと認識しているけれど、カナさんはヒロセへの想いを表出する前にスルッと消えるように亡くなってしまう。
ヒロセに愛用のギターを遺してカナさんはこの世を去り、そのギターを持ってバンドメンバーに教えを乞うヒロセ。
カナさんはそこかしこで生きている側の人間に影響を与え続けています。
カナさんの存在が意識に上る度に喪失感もあるけれど、月日を経てその痛みを抱えながらも一歩ずつ前へと進んでいく生きている側の姿がフラットな目線で描かれていて読了後は温かな気持ちになりました。
過剰に演出されていない哀しみや、前を向く確かな力強さがこの作品を安易な「泣ける作品」から遠ざけているように思います。

表題作はバンドの持つ魅力やメンバー内の人間関係がシリアスではなくコミカルにも描かれているので、その辺りも読んでいて楽しい!




「たべものではありません」
「月翳」
「外道」
と他3編も各々持ち味が違って堪能しました。
そのなかでも「月翳」
月翳を読むうちに体に馴染んだものをそっと呼び起こされる感覚に陥り、懐しさといった類いの感情を揺さぶられたので、作品の時代背景がそう感じさせるのかな?と。
けれど、レビューで書いていらした方のお陰で気付きました。
私はJUNEの血脈を感じたから懐しさを覚えたのだと。
私がローティーンの頃に血肉となった物語の数々を呼び起こされました。本当に久々にこうした味わいの漫画を読んだ気がします。
読了後の余韻は静かに広がる波紋のように長く続き、胸に響き続けます。



短編集だと丸ごと「神!」と思えることがあまりないのですが、こちらは一冊通して神評価。
素敵な作品に出会えてとても幸せです。

4

だいっっすきなヤツ

トジツキさん作品の中でもだいっっすきな本です。
BL、死別、バンドものだけどパンクもしくはメロコア(多分)、プロレスだけど新日本プロレスじゃなくて大日本プロレス(多分)、文学、刺青…最高か!!!awesome !!!

物語が違えどセリフ、ナレがどれも秀逸です。小説のような詩のような。
求心力ある言葉の紡ぎ方。
トジツキさんの描く人物からは60kg、70kg?その体型なりの体重がキチンと感じられて好きです。
そしてその重みがおりなす絡みは…クソ萌える!
「ギシッ」に重力がつまってるんだ!
私の心のち◯こ完勃、精神の前立腺が震える。

表題作シリーズもっと読みたかった。
いやいや、もっと伸ばせるし掘り下げられるし広げられるしここからだし!
巻末の「外道」がホントにねぇ、ホント大好き要素満載。
ラブラブゲイカップル最高。
宇陀児くん可愛すぎ格好良すぎでしょうに。
絡み中の刺青エピソードが…鼻血ものです。

ここまで熱く語りましたが、ニッチすぎて萌えながらもいろいろ心配になります。
いや、いいと思います、こんな素敵な作品になって、ひと1人アホほど魅了してるんだから。
トジツキさんにはBL云々抜きで好きなものを好きなだけ詰め込んだモノを描いていって欲しい。
でももうそろそろBLも振り返って欲しい…待ってます!!!

5

シンプルにどストライク。

表題作と短編が三作収録されています。まずカバーから目を惹きつけられずにはいられません。あまり見掛けない鮮やかなブルーグリーン。描かれている男性は、表題作のカナさんです。

「カナさん」は居酒屋でバイトしていたヒロセが、バンドの打ち上げで御用達の常連、カナさんとトイレで出会うところからお話が始まります。カナさんはアマチュアバンドのギターボーカル。彼の存在がバンドそのものの在り方と、ヒロセの人生に静かに影響を及ぼしていく。

バンドもののコミックスは何作か読みましたが、トジツキハジメさんの描くこの作品の雰囲気が自分には一番しっくりきました。(SHOOWAさんの作品もツボだったけど。)アーティスト特有のピリピリ感もなく、破天荒さもなく、バンドを取り巻く環境もなんだか穏やか。だけれど、メンバー内の関係性がやりすぎ感なくきちんと描かれています。サポートで入って来たキヨがカワイイ。ゆーしくんとのやりとりでキヨがネコにデフォルメされちゃうシーンが可愛すぎです。

落ち着いたテンションなのにコミカルな部分もありつつ、テーマは切なくてしっとりと表現されている。で、読者をおいてけぼりにもしない。こういった作風はどストライク。同時収録されている「たべものではありません」はプロレスラーをモチーフにした『注文の多い料理店』のようなシュールなお話で、「月翳」は戦後直後の死者と生者の境界線に佇む男の幻想的なお話。ツボすぎです。あとがきによると、作家さまは最初、小説を書いていらっしゃったということで、どんだけ才能に恵まれてるんだと思いました。

最後に収録されている「外道」は見習い彫り師と歴代師匠が彫った墨を入れた恋人の、エッチシーンのひとコマ。わたしは完全に攻め視点で楽しませていただきました。コワモテの刺青男性が受けって最高です!「カナさん」を読もうか迷っていたところに、このお話関連でオススメいただき、背中を押していただきました。作家さまの萌えの集大成、しかも自分の萌えと全被りということで、出会えて本当に良かった一冊でした。

6

素敵

わたし、トジツキさんの作品を読むのは初めてだったのですが、読み終えての感想は「素敵だ…」の一言に尽きます。
今までトジツキさんの作品を読んでなかったというのも、大した理由はなかったので、どうして今まで読まなかったんだろう!!となんとなく悔しいという気持ちでいます。


アマチュアバンドメンバーを中心とした一連のお話………他の方もおっしゃっていましたが、表題とされている「カナさん」は特別に派手なことをしているわけではないけれど、やりたいことを思いっきりやって、すごく自由で、駆け抜けるように生きてて、「永遠じゃない人生」を謳歌しているのでした。キラキラしてました。巻頭作で亡くなってしまったのですが、存在感はずっと残りました。読み終わっても、です。
正直もっとカナさんがどんな人なのか知りたかった。だけどカナさんの周りにいた人達にとってカナさんはどのような存在だったのか、これは掴むことができるので、これはこれで深みがあるのかな、と…。カナさんという人間がどんなものだったのかということを想像することにおいての、深み…

キヨくんと、ゆーしくん、結局どうなったのかなあ??あのふたりはみててほっこりしました。


レスラー君のはなし………正直初見で「ビジュアル……」と思ったんですけど、読んでいくうちにぜんぜんアリになりました。
デスマッチプロレス?の世界は詳しくわからないですけど、ストーリーを読む上では特に嫌悪感はなかったです。主人公レスラー君はなんだか血生臭ーい世界に住んでるようでしたが、「胃袋掴まれてるから離れられない」だなんて感情に素直でかわいらしいなあと思いました。(笑)餌付けしてるカフェのオーナー君はさらりと、グロテスクな発言を飛び交わせていました。自分の作った食べ物が、他人の血となり肉となることに興奮する…なんだかわからなくもないです。(あれ、変態…?w)自分の仕業で人の体を作りかえているって考えると感覚的には確かに快感なのかも…(笑)

大戦直後を舞台としたお話………これ、わたし好きなタイプのお話ですね……。ふたりの間で恋愛がはじまっていたのかどうかもわからないといったストーリーです。でも、美しかった。若いふたりの間には他者には理解できないような世界があったのだと思います。
主人公が冒頭で「恋心に似た錯覚」と言ったそれは、若さ故の、大人になってからは持ち得ない、なにか特別な感情だったのではないかと思います。主人公はふたりでみた景色の記憶や、自分の中でキラキラとした高槻との「思い出」というものに、大人になってからも恋焦がれていたのではないかと、わたしはそう解釈しました。だから、大人になって訪れた思い出の場所は少し違って見えた……大人になってからも高槻に対しては特別な感情を抱いているのは間違いないと思います、けれど、主人公はきっと終盤に海辺を歩いたとき、高槻自身というより自分は今まで「思い出」に「恋」をしていたのだということを自覚したのではないでしょうか…。わたしの解釈です。人に依ると思います。
そんな、青年たちの間に秘められた、言葉にすることはなかったきらきらしていた感情を、うつくしいと思いました。


刺青のお話………これは、キャラクターに萌えさせていただきました…トジツキさんは、萌えるか萌えないかの絶妙なラインにあるフェティシズム(私調べ)を描くのが得意でいらっしゃるんですね(笑)でも、やっぱり嫌悪感はないのです。設定はずいぶんアブノーマルなはずなのに……ね(笑)。それから、画面がキレイです。わたしが細かい書き込みのある絵柄がすきなのもあるのですが、刺青がテーマであるこの作品ではトジツキさんの絵柄のパワーが最大限に発揮できていると思います。







とりあえず、一読してみて、すっかりトジツキさんの魅力にはまってしまったみたいです。絵柄も好きだし、言葉の選択もわたしにはまっているので、これから既刊のものをどんどん読んでいきたいと思いました(^ω^)

8

駆け抜けていった彼。

彼は優しくも残酷な形で人生の楽しさを教えてくれた。

大学卒業後、やりたいことも特にない平凡なヒロセがバイト先の居酒屋のトイレで出逢ったギタリストのカナさんは「人生は永遠じゃないんだぜ」と楽しそうに生きていた。
その眩しさに惹かれるヒロセの想いに引きずられるように私も目が離せなくなりました。

語り手であるヒロセはカナさんと共有した短い時間とその後、カナさんのバンドでギターを弾くようになってからの暮らしを詩でも読むかのように淡々と語ります。
さりげなく交わされる仲間同士の会話から零れるカナさんの記憶。
ヒロセもカナさんの表情や言葉を味わい尽くすように反芻します。

残された彼らが新しいバンドを楽しみ日々を過ごす、それだけの話がとても愛しく思える。

時間には限りがあること、人どんな状況でも楽しむことができるということを彼らに教えてくれたのはカナさん。

カナさんへの愛しさの名残の積み重ねで綴られる日々が静かに描かれています。
死ネタにつきものの激情や涙とは無縁に話は進みますが、それ故に切なさと優しさが力強く響くのです。

サポートメンバーのキヨの存在がとても良いスパイス。
ベースのゆーしのことが大好きな彼だけは他の3人とベクトルが違うので考えがニュートラル。
絶対的な存在であるカナさんに対する少々の抵抗が可愛い。
騒々しさも「生」を意識させます。

楽しさを見つけたヒロセに逢いにきたカナさん。
ヒロセといる時の彼は少し儚げで、それでいて楽しさへ導く姿に涙が出ました。

同時収録のレスラーと料理人の話、彫り師×アパレル青年イチャラブを描いた2編はコメディタッチ。
ガチムチのしっとり柔らかい体の線に昔の藤原カムイの絵柄を思い出しました。

もう一作【月翳】は体が弱く徴兵を逃れた高槻とその友人:内藤の始まりそうで始まらなかった話。

高槻は昔、2人で遊んだ海の近くに出征できなかった自責の念と共にずっと息をひそめて生きていた。
内藤を想い内藤と眺めた月、海、夜光虫の光をその瞳に留める為にとった彼の行動。
高槻は光を失ったのではなく失わないように瞼に閉じ込めた…内藤への想いと一緒に。
結局、どうにもならなかったこの話、月が照らす冷えた余韻が染みます。

表紙のカナさんと視線がぶつかって即決で手に取った一冊。
方向性は違うのに一冊まるっと独特な世界観で面白かったです。
絵柄を含め好き嫌いは分かれそうですが私にはドストライク!

14

読み返しか肝心!

代表作「カナさん」を含めた短編集です。

ここで評判だったので絵は好みじゃなんですが購入。
そして「あーハズレだー」と嘆き一回読んで放置しておりました。
そしてしばらくして2、3度読み返しての感想ですーー。

ん~じわじわくる。
カナさんの印象は想ったほど強烈ではなかったです。
自分の死を意識しつつもみんなとバンドして飲んで暴れてバンドして飲んで暴れて
いつもトイレで出くわす店員のヒロセ。
読み返すうちにヒロセにはまってゆきました(笑)
好きなんです・・無表情無感情なようでカナさんにハマってゆくヒロセがぁぁぁ。
トイレでよく吐いてるカナをどかで意識しながら気付かないふりをするヒロセ
カナがトイレで吐血しているのを見てよけいにカナさんを意識する。
カナさんはちょっとずるい人かな・・・・。バンド仲間には知られたくないけど
自分のことほとんど知らないヒロセならなんとなく甘えられる気がしたのかな?
誘われるままカンさんの体に溺れるヒロセ。その時も無表情なようで欲情するヒロセが
なんとなく怖いです。好きですけどね。
カナさんがでてくるのは最初だけであとはカナさん亡きあと残された人たちのその後が描かれています。
カナさんのいたバンド仲間に加わることになったヒロセ。カナと体系がそっくりなキヨ。
年下で小さくて甘ったれなキヨだけどヒロセにはやけに辛辣。
カナの存在がどれだけ大きかったか・・・・。どれだけかけがえい人だったかをヒロセは歩んでゆくなかで少しづつ消化していきます。
甘ったれなキヨはちょっと憎らしいけど可愛い。

「たべものではありません」
レスラーもの。まさかガチムチといえばあの人ーでは同じみな感じのレスラーものなのですが
ここで読めると思いませんでした。
料理上手な攻め(想いこみ)にうまぁく家畜されてゆくレスラー。
ちょいと怖いですが好きです。その猟奇的な攻め(想いこみ)


「月翳」
戦後。戦前の甘酸っぱい想い出を胸に一人は兵士に一人は胸囲が2センチたりないとお国のために役に立てないと嘆く男。
砂浜で二人でみた景色、やわらかい唇。すべては美しい景色とともに彼の瞳の中へ閉じ込めたまま。やっぱり明治大正昭和の男同志ってどことなくストイックというか好きですね。

「外道」
これが一番好きです。刺青を両肩にいれている強面坊主と彫師の弟子
ひたすらセックス事情の真っ最中、彫師の弟子の思考を覗き見れます。
強面坊主の刺青を眺めつつ刺青に欲情し彼にも欲情する。
ちゃらい顔して頭の中は坊主と刺青のことばっかですごく好きな作品です。
強面がネコで怖いそぶりを見せつつなんて可愛いんだ・・・。

3

これは、かなりアタリの方のトジツキさん

トジツキさんって絵はお上手なんだけど、ここ何年かは、現代のお話だとファッションの好みが合わなくて、この本も買おうかどうしようか随分と迷ってました。
でも、この表紙の彼がカナさんなら、いけるんじゃないかとようやく手に入れたわけですが、、
表題作は、表紙の彼のイメージ通りの、普通にロック系のバンドのお話で、趣味以上、プロ未満のバンド青年たちのお話は、普遍的で読みやすかった。
なかでもキヨ君の声が下野紘さんで脳内再生されて、これ、ドラマCDで聞きたい、でも、音にする以上は音楽が難しいか、とか考えながら読むのも楽しかった。
「たべもの~」
主人公の流血プロレスラー君は全然タイプじゃないけど、彼を肥育している一二三四君が不気味で素敵。
そして、アタリだったのが「月翳」
こういう絵で、こういうお話を読みたかったの。
最後に「外道」
まあ、これはこれで、服着ていないから、多分ファッション的には二人ともお好みじゃないタイプの子だろうけど、目をつぶっておこう。

3

信仰のような存在

表題のカナさんが一体どんな人物かというと、夢のような信仰のようなそんな存在。
死んでも皆の心の中根深く残っていて、重要なキーパーソンになっている…と。
凄く面白いなあと思ったのがそんなカナさんに序盤で惹き込ませておいて、後半は切なさの余韻が残るところ。
カナさんの死をきっかけにストーリーが展開していく、それがとてもリアルで、好きだ!!!!とかいう原動力で動いていくのがファンタジーならこれは廣瀬の生きる力が源のリアリティあるお話です。
表題作の「カナさん」だけでなく他の短編もとっても好きだなあって思えました。
「食べ物ではありません」はなんだか可愛くってほのぼのしてしまったし(トジツキさんの描く坊主の受けってふくふくしててほっこりするのです*´`)、「月翳」は年月の積み重ねで出来てしまった業の深さのようなものを強く感じました。
「外道」が地味に興奮したのは私だけでしょうか……刺青ってなんだか皮膚の上に生きているみたいでエロいですなあ。
そんなこんなで、色んなテイストの詰まった一冊。
目を引くミントグリーンの表紙で微笑んでいるカナさんの存在も相まって、とても印象に残る一冊です。
キラキラとした、青春みたいな話ではないし甘さもないけれどリアルな日々の結晶みたいなBLです。
ビターでわたしは何回も読み返してしまいました。

5

表紙何度見ても素敵

なんだかんだで作品いつも買っている。

すごく好きなポイントがはまる時がある作家さんですが
色々な方面へ思考が向いているのか作風が結構変化する。

カナさんはとても魅力的です。
カナさんあっけなく亡くなりますが、亡くなったあとも
カナさんあっての作品となっている見せ方がグッときました。

バンドやる人に興味持った事もないですし音楽は殆ど聞かないので
設定としてはピンとこないです

それでも、空気感を感じることが
できるので素晴らしい。

感涙していたら、なんとカナさんをこえる作品がまだあった。

月翳
BLじゃないのかもしれないし
バットエンドと言われるかもしれない。
これが現代設定だったら
心動かなかった。

時代設定ありきでの
作品。小説で読みたかったな。
さらに深く感じられた気がする。

3

リアルよりの話が好きな人に

他の方もおっしゃっているとおり、表題の「カナさん」が出てくる話は1話のみ、あとは同設定のお話が3作、短編が2作収録されてます。

個人的にカナさんの性格が好みだったので、萌え作品としました。
掴みどころのなく、さっぱりした性格の受けが好きな人におすすめ。カリスマ性のあるタイプなのですが、それを表現するのが上手だなと思いました。懐かないかんじとややデレたときのバランスが良かった。
攻めは朴訥とした雰囲気だけど、トロくはないタイプ。

全体を通しての感想として、現代の風俗が比較的リアルに描かれているところが好みでした。また、脇役などの登場人物も、ちゃんとキャラクター設定があるんだろうな、 というところもお話を魅力的にしていると思います。

BL要素は薄め。一般的なBL作品よりも群像劇みたいな要素が強いように思えます。
そういうのは一般向けの作品で楽しみたい、という方には少し不向きかなと思いました。

6

廣瀬とカナさんの話は「神」評価ですが・・・

続けて二度読みしましたが・・・評価とコメントの難しい作品でした。
「カナさん」は、お話が始まってすぐに亡くなってしまいます。
だけど、その後もカナさんは大きな存在感があって、ストーリーは続いていきます。

私は、廣瀬とカナさんの出会いの一話目が、凄くインパクトがありました。
居酒屋のアルバイト店員と常連客という、ただそれだけの関係だった二人。
いつもトイレに籠るカナさんを、ただの飲みすぎだと思っていた廣瀬ですが、
カナさんが吐血している事を知って、今まで以上に気にかかるようになります。
そしていつもの様にトイレに様子を見に行って、
やはり吐血しているカナさんに「黙ってろ」と言われ、キスされて・・・

二人はただの顔見知りで。廣瀬はカナさんのフルネームさえ知らなくて。
その程度の関係の人と、目の前で吐血された直後にキス出来る?
カナさん自身も「ビビる奴はビビる」と言ってますが、
恋人や親しい知人なら「うつる病気じゃない」って知ってるかもしれませんが・・・
二人がキスした時点では、廣瀬は何も知らなかった訳だし。

でも廣瀬は、そんな事どうでもいい程、
無意識のうちにカナさんに惹かれてたんでしょう。
カナさんが亡くなったことを人伝に聞いた廣瀬。
「カナさん」
「カナさん」
「カナさんは、もう来ない」のところで、もう号泣です・・・

廣瀬は一度も泣くこともなく淡々としてますが、それが余計に痛かったです。
じつは「神」評価をつけたかったんですが・・・
カナさんが死んでから出てきたキャラの、清成が私はどうもダメで(笑)
祐史と清成カップル(?)がどうしても好きになれませんでした。
で、トータルの評価で中立としました。

余談ですが、要所要所で出てくる廣瀬の黒猫が、凄く効果的だと思いました。

4

芸術的?文学的?

面白いとは思ったけど、
自分の好みじゃなかったみたいです。
ごめんなさい。
人が死んでしまう話も苦手です。
カナさんの死をどうとらえていいのかわんなかったです。。。
ヒロセは淡々としてて読んでるこっちもあんまつらくはならなかったけど。
芸術的とか文学的とかそーいう感じでした。
外道はわかりやすくHしてる話で一番萌ましたww
糖度が低いって感じ?
ラブラブしてればいいってわけでもないケド。。。
私にはまだはやかったかな苦笑

4

運命の赤い糸

どこか現実じみていて、でも違う世界なのも確かなトジツキ作品の詰め合わせです。
表紙は表題作シリーズの重要人物カナさん。カナさんが絡めるあの赤い糸が、どこへ行ってどこにあるのか、確かなところを知りたいです。

【カナさん】
ヒロセは、カナさんが言うようどこかつまらなさそうで、アルバイトをサボったり不真面目な仕事態度なわけではないけれど(ちゃんとトイレの掃除をしていますしね)、目は確かに死んでいて元気がない。いや元気がないというのはくたびれてるとかそういうのでなくて、抑揚がないというか覇気がないというか…ほんとうにカナさんとは正反対の存在です。
そんな“つまんなさそう”なヒロセがカナさんには執着して、頭のなかがエロいことでいっぱいになって。カナさんの病気のことも知っていてそしてそれを黙っていて。秘密を共有して(カナさんのことですから、共犯者だからなっなんて冗談めかして言ったりもするんでしょう。すこし意地悪な笑顔で。その意地悪そうな顔にまた、ヒロセは惹かれるんでしょう)まっしぐらになる。
ヒロセもカナさんのことを懐く猫のように捉えているようでしたが、カナさんもまたヒロセのことをそんな風に感じていたのかなと思いました。つまらなさそうな目をしていたヒロセが、一所懸命になってくれていることを実感していたはずです。でなければテレキャス、置いていかない。
思い出は美化されてゆくものです、二度と会えなければ尚のこと、昔のきれいなまま、そこから更新されることもなく、良い思い出ばかりが残っていく。ヒロセはそれでも、テレキャスを握ってカナさんの幻影を見て、そして歩くのですね。カナさんがヒロセに遺したテレキャスだけが、ヒロセにカナさんを感じさせてくれるものだから。
まさか自分がバンドマンになるなんて、ヒロセ自身思ってもいなかったはずです。

【ワイヤー】
ある意味でヒロセにとってカナさんというのは聖域なんでしょうね。
テレキャス持っていることをやっかまれても、怒りはしないのに“カナさん”という存在には固執する。だから清成の子供っぽい威嚇には動じないのに、清成が冗談でカナさんを演じてみせたときには引くよりも怒りに近かったのだろうと思います。
カナさんがいたこのバンドはとても素敵なものだったんですね。宗久くんも、清成のお目当て祐史くんも、人としてしっかりしているし嫌味のない人たち。カナさんが浴びるほどお酒呑んで騒いで楽しんでいたんですから、それを周りでフォローできる人たちじゃなきゃ駄目ですものね。

【ワンマンストーリー】
鼻がピスピスなっている清成かわいい。
犬猫子供と同等扱いで済ませてしまう祐史くんは確かにズレています(笑)肝心な、肝心な抵抗とかそういうのをしないと!許しちゃうラインがおかしいです(笑)寛容とか、それとも少し違うような…なんでしょう、でもたしかに清成のことをなんとも思っていないからこそ放っておけるというか…。
まさか恋愛のたぐいのベクトルが自分に向かっているだなんてこと、思ってもいないんでしょうね。清成がんばれ、とりあえず甥っ子レベルからは昇格したいところだ!

【嘉那さん】
夢だったのか、本当か、定かではないけれど嘉那さんが出てきてくれてよかった。テレキャスをただ弾かなくなるだけじゃなく、嘉那さんとやりとりしてから新しいギターを持つことができてよかった。
嘉那さんがいたから廣瀬の目は少し生き生きした。嘉那さんはもう居ないけれども、それでも廣瀬はつまらないとはならなくなったはず。
楽屋の壁の隅の方に書いた名前、嘉那さんの横に(清成は祐史くんの横に)添えられた名前がもしかすると大きくなるのかもしれないですね。
カナさんというのはもう居ない人だから、全体的に喪失感が漂うのかと思いきやそれほどむなしさのない、どちらかといえば淡々と進むシリーズでした。

【たべものではありません】
レスラーとコックの話。トジツキ先生の これが!!私の!!萌え!! を詰め込んだと思しき内容。個人的に、レスラーはアリですが発展がないので はてな? という感じです。

【月翳】
トジツキ先生が持っていらっしゃるノスタルジックな視点の作品。ほの暗く、物悲しく、ぼんやりしている。あとがきでこれはもともと小説であったと書かれていましたので、納得。漫画も素敵でしたが、小説としても読みたい。

【外道】
モノローグではひたすら宇陀児くんへの愛と彫り物の素晴らしさを語り続け、コマ内ではひたすらラブラブエッチをしている可愛らしいお話。
坊主で人相悪めな受け、が非常においしいのでこの作品で単行本が締めくくられているのは嬉しいです。何度も読んでしまいます。ボウズラブ、ジャスティス!!

詰め合わせのなかのどれかは必ず、心に掛かるものがあるのではないでしょうか。
死ネタが苦手でなければ、カナさんシリーズにもきっと、惹かれると思います。

4

見る人によってはいい話…かも

個人的に、カナさんという人物は
カッコ良すぎると思います。

そのカッコ良さを残したマンマだから
余計に深く感じるというか……。

ただ、カナさんがカッコイイだけに
カナさんの話がもっと読みたかったよ。と。

その他短編については、
マンガだと伝わりにくい話ばっかりだったと思う。
良い話のような、切ないような、とっても表現しづらいっつうか。

多分最近の傾向的には受けるんだろうな。
でも、私は伝わりにくい話って実はあんまり
好きじゃなくて……。
この本は限りなく中立に近い萌って感じです。

もう少し上手く解り易くまとめてくれると
読みやすいんだけど……。
小説向きの話な気がします。

3

まさかの?!

なんとなく読み始めて、面白くなってきたかなと思っていたら
まさかここで死ネタきましたかーっ!!
それも主役だと思われる人物が?!

だけどその存在感はいつまでも残っていて
それが夢なのか?猫とシンクロしてる部分もあったりで
いつまでも在り続ける存在なのかな。
気が付けば結構はまってしまうお話でした。


●月翳●
後半の方にあったお話
戦時中のお話だけど、これもこの時代のあり方なのかなと切なくなる部分ありで
結構読み入ってしまいました。

●外道●
最後に入ってたお話だけど
ヤクザものかと思いながら読んでたら、まったく関係ないお話だった。
最初から最後までエッチしてるお話です。
なんだかんだでラブラブですvv

5

きっかけはラフ画

トジツキハジメ先生の本は初です。
きっかけはアンソロジー Figの付録にあるラフ画でした。
トジツキハジメ先生のイラストが表紙で、初めはSHOOWA先生?って思ったんですが…(苦笑)
ラフ画を見てこの人の作品、読んでみたいと思ったところにカナさんが発売になり全員サービスもあるとかで買いました。

死んじゃうカナさん。語り継がれるカナさん。受ですが、生き方がかっこいいです。
さすが、バンドマン!なんて思いました。
でも、カナさん足りないです。もっと、カナさんの過去の恋愛とかいろいろ知りたいです。
カナさん come back!って感じです。

そして、ゆーしくん好き好き言ってるキヨが可愛い。
カナさんには似てないなーと思って読んでいたら、あーそうゆう事!と納得。

5

愛とは言わない

多分この一冊は、Love抜きのボーイズラブと言う奴です。
愛を綴る前に何かに首根っこをつかまれて押し倒される、
そう言うBoysLiveの中にある数コマの描写集です。

性を描いたシーンからLoveが伝わらず、それ以外の些細な
コマの切れ端からあざとい欲の薫りが伝わるのはこれいかに。
視点を変えればこの一冊、作者さんから読者に対する
言葉攻めのオンパレードでございますよ。
そこを乗り越えれば極楽浄土が待っていると言う保証は
出来かねますが、天国への階段の入り口は見えるやも
知れません。

10

何度も読み返してしまう、死と日常の話。

物語は「死ネタ」。
しかもセックスをした相手が亡くなる。
死ネタの中でも、私が一番避けてる展開です。
でもあらすじやレビューを見て
どうしても気になって手に取った。
読後は嫌悪感など全くなく。
ただ、読んですぐにはレビューが書けずに
日ごと読み続けてました。
読むごとにじわじわじわじわ、きた。


表題作『カナさん』シリーズ。
ただの知り合い程度だったのに、
一晩で一線を越えて体の関係を持った
ヒロセとカナさん。
恋愛とかそういうのが語られることなく
カナさんは消えたように死んでしまう。
普通だったら葬式だとか
その後の感傷だとかが描かれるんだろう。
でも物語はただ続く。
カナさんが死んでからのほうがストーリーの大半。
マイペースで感情が表に表れにくい
ヒロセの視点で描かれる日常が
私はとても好きでした。

カナさんのテレキャスを持っていることで
周囲には色々言われるけれど、
仲間である祐史や宗久や清成にも、
きっとヒロセはカナさんとの
この関係を語っていない。
ただ、カナさんが亡くなって、
 自分自身で考えて、
 やりたいと思ってバンドを選び、
 自分の意志で楽器を決めるまでに至る。
カナさんを通して
自分のやりたいことを見つけたヒロセ。
それが大きな山場は無く、
ただ日常として描かれるけど、
そこには彼なりの欲の発見と
決意があるように感じた。
ヒロセはこれからも自分自身で選択をして
進んでいくんだろうと思える、
静かな明るさのある余韻を残した結び方。
カナさんとの関係は恋愛云々では
なかったのだろうけど、
忘れたくない人がいるのは
自然なことだと思える
「萌えよりツボ」系の秀作だと思う。


1冊中、約2/3が『カナさん』シリーズ。
シリーズ4作のうち、3作がヒロセ視点。
他1作がGt.キヨ視点。
Gt.キヨ→Ba.ゆーしへのラブ話。
年下はあまえんぼが似合う。
わんこ?にゃんこ?

その他短編が3作。
ずーっとベッドの上の『外道』が、
かなりゲイゲイしく笑いどころもあるのに
かわいらしかった。
最初読んだときはピンと来なかったのに、
読み重ねてどんどん萌えるように。
『食べ物ではありません』がラブ未満コメディ調。
『月翳』はシリアス文学調。
この二つはそんなに好みではなかったけれど
其々が全く違う方向性で面白かった。


王道過ぎるBLより、一癖あるストーリーが
好きだと言う方にはオススメです。
「死」の捉え方は決して暗くはないのですが、
「死ネタ」が苦手な人はちょい注意。
あらすじの通り主役級存在感の人物が死ぬ。
でもレビューとか見て気になったら、
読んでみてほしいなーというのが正直な気持ち。


個人的には1冊丸々一つのお話しのほうが
好みではあるのですが、
表題作はずっしりした印象で読み応えもあり。
私にとっては静かな衝撃でもあり、
スルメ系でもあり、
これからまた何度も読み返すと思います。

7

もう一人の私が欲してる

非常に狭き門を潜り抜けて、やっとの思いで辿り着いた境地、という感覚で読みました。
四つの物語が描かれている一冊で。
それぞれに、非常に個人的な萌えポイントを刺激するお話です。
この本一部がものすごく好きか、丸々ダメかが普通な感覚、という気もします。


「カナさん」
私は昔からバンドマンが大好きで。
そういう意味でも、お話の内容的にも、本当に私のドツボねたでした!

好きな事に命を捧げて生きているカナさんと、生きる目的を見つけられない流されヒロセくん。
いつもの呑み屋のトイレへ行く度にバッタリ出くわす二人。
カナさんは客で、ヒロセくんはトイレ掃除をしにきた店員で。
カナさんの体調が少しづつ悪くなるのを、一人目撃してしまうヒロセくん。
秘密の共有から急接近していきます。

ヒロセくんちには黒猫がいて、カナさんはその猫に行動が似ていて可愛い。
しかもカッコ良くて、羨ましくて、嫉妬してしまう部分もあって。
大好きで憧れのカナさん。
そんなカナさんと出会って近づいて。
ある日、ふっ…と、消えてしまった。
カナさんの置き土産(ギター)がきっかけで、ヒロセくんはバンドに仲間入りします。
パンクやるには、超地味でマイペースすぎるキャラですが(笑)
カナさんは一話目しかいないのに、その存在感は四話までずっと続きます。

正直、ヒロセくんはこれからどうなっていくのか、心配ではありますが。
ラストの空気から、非常に低体温な感じでマイペースに生き抜いてくれる気がします。
しかし、バンドメンバーだけあって、個性豊かな面々。
全員が素敵なキャラすぎて、ギュッと抱きしめていたいお話でした。


「たべものではありません」
タイトルの真意は、読み進めてはじめてわかる『食』にまつわるお話。
デスマッチレスラーの雫と、カフェ経営者の二三四。
二人は大学からの親友。

いつも雫の食生活の心配ばかりする二三四は、まるでもうすぐ食べる家畜のように雫との会話をしだす。
普段過激なステージに立つわりに、二三四の食肉ジョークにドン引きする。
しまいには、レスラーは精神的なゲイとまで言われ…。
なんだか、意識しはじめてしまう?

BL漫画の新境地?
どちらかといえば、ゲイ向け漫画。
でもH無し、みたいな感じです。
いやあ、面白い!
格闘技興味ない私でも読める。
流血なのに楽しそう!

食べる、の二三四の発言は、昔観た怖い韓国映画(301 302←という1995年の映画)を思い出して、背中がヒヤリとしました。
実はカフェレストラン経営の二三四は、非常にサディスティックな人のようです。
あ~、面白いかった。


他に、

「月翳」
戦中戦後を生きた二人の男のそれぞれの生と性。
あの夏の想い出を閉じ込めたものは…。

「外道」
アパレル関係なのに、タトゥーを彫られる美しい肌の、一見任侠風な男と。
タトゥー萌から彫り師になった男のベッド上のお話。



ラブとエロと萌えの調和がとれたお話を欲する、ありのままの自分と。
こういう個性とか深みとか濃厚な感覚を欲する、もう一人の自分がいる。
それぞれは、両極端であり、どちらも私自身で。
とにかく好きです、この本。
上手く伝えられない自分の言葉の未熟さが悔しいな。

絵はリアル男子な感じで、美形男子の世界からは程遠い。
だから、苦手な人も多いかも?
私も、これをすんなり読めた事に、自分でも驚いたくらいです。
あっでも確か、トジツキ先生の本は他にも読んだ気が?
とにかく、大好きな、個性的なお話達でした。

11

全体的に興奮した!

元々王道モノは(特にビジュアル面で)あまりお描きにならない漫画家さんなので好き嫌いは分かれるかと思いますが、本作は作者の萌えと才能と画力がたっぷり詰まった作品集です。

表題作『カナさん』とそのシリーズは、一言で言ってしまえば「死ネタ」ですが、その死によって大袈裟な変化が立ち現われるということはありません。ひたすら淡々と流れていく日常と地に足をつけて生きる人間達がまさに淡々と描かれています。
喪失からの脱却や分かりやすい希望はありませんが、かと言って絶望が横たわるわけでもない。ただ時折ちくりと痛む毎日と、彼等の発言や意識の一つ一つが現実性を帯び、ほんのりと切ない。何回も読み返したくなる作品群です。

『たべものではありません』(レスラーもの)と『外道』(刺青もの)は比較的ゲイゲイしく(笑)読者を選ぶような感もありますが、それらの特徴とお話がうまく絡み合い、なんだか可愛くてにやにや読めてしまいます。

また、あとがきにもありますが、終戦後の日本を舞台にした短編である『月翳』は作者が高校生の頃に小説として書いたものを漫画に描き直したお話だそうで、なにそれすごい!えええすごい!と唸ってしまう、これまた切ないというか、ぼんやり哀しいというか、そんなお話です。

何よりトジツキハジメ先生はあとがきが面白い!
先生の萌えが少し斜め上をいっているので、ぴったり当てはまる人にはたまらないと思います。レスラー語りは声を出してぐふっと笑いました。

6

作者の萌えと才能が堪能できる1冊。

一番この本を読んで感じたのは、
作者のトジツキさんはこういうものがとても好きで萌えるんだなぁ~!
ということw
インディーズのバンドとか。
猫とか。
格闘技のデスマッチとか。
ボウズ頭のガッチリ体型に立派な龍の刺青とか。

趣味に走って思いのままに描いているように見えて、
戦争を絡めたシリアスなお話も入れてあることで、幅と深みも感じてしまう。
そして、その題材とストーリー展開のユニークさには唸ってしまう。

万人受けはしないと思うのだけれど、
好き嫌いは別にして、
凄いなぁ、
なにか心に響いてくるものがあるなぁ、
そんな風に感じるところが何かしらあるのでは…?


わたしの心には迫ってくるものがありましたよ!
特に、
この作品を描けるトジツキさんの才能に心撃たれました☆
色んな温度で「生きる」ことについて問いかけてくるような、
そんな作品群がとても素敵でした。

そしてそこで生きるキャラクターたちも、
その纏う雰囲気とか仕草とか、ちょっとした表情とかが、
たまらなく魅力的でした。
(最初はそうは思わなかったのですけれど…w)

死を題材にしているものは苦手でして、
我が家の本棚に置いて、繰り返し何度も読みたいかと言われると、
それはちょっと……なのですが(すみません…)、
こんな素敵な作品が読めて嬉しい、良かった、と心から思います。

美術館に行って、
素晴らしい作品を見ることができて感激する、
そんな感覚に近い気がします。

色んなものを読んでみたいなぁ~と思われる方は是非、
お手に取ってみてくださいませ。

6

乙女度0!リアル男子系がお好きなら読んでみる価値あり。

表題作がバンド系ということで、好きな分野なので気になって購入しました。

『カナさん』
こっ…これは!ミュージシャンは若くして死ぬの典型ですね。
だいたい伝説の人ほどマジで早死ですよね。戻ってきて欲しい人、いっぱい居ます。
死んでなお、人の心を掴んでいるその魅力って何なんだろう。

本作のヒロセもカナさんに魅了されて心を掴まれて…という関係です。
死んでなお、ヒロセの心の中にカナさんは生きています。
死んでいる人に縛られている人を見るのは辛いものがありますが、
本作のヒロセはそんな次元ではなく、縛りを超越しているところが良かったです。

そして私のお気に入りカプ(?)はカナさんの後任のキヨとゆーし君です。
キヨはゆーし君のことが超ラブなんですが、
ゆーし君のほうがキヨのことを「犬猫子供と一緒」「キスされようと舐められようと何も思わないって」とか言っちゃうところが最高です。チンコしまえとか言ってるとこもいい。でも世話しちゃうところがいい。
ゆーし君の、ツンでもない、過剰な愛情でもない、相手のことを適当にかまってしまう人の良さが好きです。
あと、宗久とキヨの二人、すぐケンカしちゃうところとか好きでした。
欲を言えばもっとライブなどの動きのあるシーンやプレイスタイルを見たかったというのはあるかも。

『たべものではありません』
こちらはBLらしいBLって感じの作品ではなかったかも。エロもありません。
しかもレスラーさんが血みどろで、内容的にはおよそ乙女向けではない(笑)
でもレスラーさんがカフェ飯屋の友達に徐々に絡め取られている感じが良かったです。

『月翳』
戦前~戦後のお話しです。
個人的には文学的な表現の強いこの作品、かなり好きでした。
こちらはエロ要素はないですが、むしろそこがいい。

『外道』
一番BLしてて、一番あんまり何も考えずに楽しめた作品でした。
エロ補充~!な作品で、良かったです。一生ヤってればいいと思うイチャイチャな二人でした♪


全体的に乙女度0。だがそこがいい!!女っぽいキャラクターが一人も居ないです。
そこがこの作品の最高なところであり、私好みなところでした。

内容的には死ネタもあるので好みは別れると思います。
それに女の子が好きそうなキラキラした男子も出てきません。
リアル男って感じのキャラをお好みの方にはお勧めの一冊です。

9

ちょっとアウトロー的でリアル

人生太く短く、読んでいる途中で思い浮かぶ言葉、陳腐な言葉だけれど
何故か自分の中ではこの作品の表題を表すときにはそんなイメージが浮かぶ。
アマチュアバンドマンのカナさんと特にやりたい事も興味も無い面白みに欠けている
居酒屋のバイト、廣瀬くんと出会いと呆気ない別れ、カナさんと出会って
ほんの少しの時間を共有した後、廣瀬くんの生きてきた世界が少しずつ変わりだす。

展開程、後味の悪い感じはないが、リアルさが伴って心に残るものがあります。
表題のタイトルにもなっているカナさんの生き方に個人的には共感出来るところが
あまりないのですがそれでも死ぬ時に後悔したくないと言う気持ちはすんなり入り込む。
個人的にはもっと生きる事、生きている事に貪欲でもがいている方が好きなので
単なる個人的な好み嗜好の問題だけで言えば苦手な作品なのですが、
ネコみたいに我が道を行っているカナさんに惹かれる部分もあってかなり複雑。
ハッピー、アンハッピー以前のリアル感情を感じる作品はお子様思考の私には不向き。

4

彼が遺したモノ

トジツキ作品、今回もよかったー!!
ここに込められたものはその解りやすいいわゆるダイレクトな「恋愛」ではないのかもしれないが、
幾分June的なものを現代的に表現したような…印象も受け
なおかつ、文学的な秀逸な短編小説や短編映画を見せられているような、
自分の中に様々な感情を呼び起こし、彼等が自分の中で息づいているようなそんな感覚さえ呼び起こす。
まさに自分にとっての「神」作品

やりたいこともなくただ生活している居酒屋従業員の廣瀬が、そこの常連でバンドメンバーのカナさんとトイレで頻繁にあうことから彼が気になりだしていく始まり。
皆には隠すようにトイレでは吐いているらしいカナさんの姿に彼をもっと知りたいと思う。
血を吐いているのを見ても引かなくて、仕掛けられたキスも拒否しなかった彼に誘いをかけるカナさん。
カナさんが遺したモノを廣瀬は引き継いで、彼は目標を見つける。

カナさんが逝っても廣瀬も皆も決してセンチメンタルに浸ったりしない。
でも、きっと見えないところで涙をいっぱい流したのかもしれない。
廣瀬は最初の登場の頃、目が死んだ魚のように生気がなかったのだが、ギターをやり始めて相変わらずぼんやりした雰囲気はまとっているものの、目が優しくなり生きてきているように見えた。
【ワイヤー】に於いて、助っ人のキヨが参加するのだが、メンバーのユーシがちょくちょく彼をカナさんと間違える。
そこに見える密かな廣瀬の複雑な想い。キヨに向かって「似てないと思う」と言うあたり、彼なりの精一杯の主張のようにも見え、ここで廣瀬の本気が見てとれた。
【ワンマンストーリー】これはユーシを大好きな猪突猛進で一途なワンコになるキヨの姿が愛らしいのです。ちょっとリラックスタイムというところでしょうか?(鼻水たらしてるキヨがかわいいよ♪)
【嘉那さん】これはひょっとして廣瀬が本物のメンバーになる話だろうか。
テレキャスの弦がよく切れるようになり、夢でカナさんがテレキャスを返せと言ってきたという話。
ラスト、ライブハウスの壁のサインに自分の名前を書き足す。
廣瀬が、そしてキヨが・・・この一連のシーンに胸が熱くなった。

何がどうすごいのか、上手く伝えられない。
ただ、一人の男が遺したモノを通して、なおかつ男の存在はなくならない。
それがやけに格好イイのだ。
テレキャスからカナさんの音楽と音とひととなりが想像できる。
また廣瀬が選んだデュッセンバーグも堅実な彼の人柄があらわれているようだ。
彼等がどんな音楽を奏でるのか、聞いてみたい気がする。

【たべものではありません】
デスマッチをするレスラーと彼の給食係(?)の話。
まるで、レスラーを食べる為に彼の体を自分のつくる食べ物で自分の好みに変えているという、実にディープで奥深い偏執的愛情がゾクっとさせる。
まるでタコ坊主のような(爆)坊主頭マッチョというのが、日頃B系男子で登場する男子の延長線上のようで、違和感がないのですw

【月翳】
これは11年に出た「蝶尾」のようなJune的世界観のある作品ではと思われる。
体が弱く兵隊に行けなかった男と、生きて帰ってきた事が恥ずかしく彼に再会するのをためらっていた男の物語。
時の流れと時代が違えてしまった二人の接点は、青春のあの海辺の1ページで終わってしまったというのだろうか。
やりきれなさと後悔が残る思いが実に切ない。

【外道】
ドジツキさんの描く男の肉感的裸体が惜しげもなく前面に出た作品。
まるでゲイビを見ているようです♪
刺青が好きで本当は自分に彫りたかったのに出来なかったために彫り師になった男の執着する相手。
坊主頭に龍の刺青しかもツンデレでカタギ・・・トキメク!!萌える!!
これがまた色気がムンムン(違う意味で)

表題で人の死を介した話しであるにも関わらず、決して重苦しくはない。
しかし同時掲載がとてもユニークでバラエティに富んだラインナップ構成になっていることで、この本の魅力が倍増しするのです。
以前も「物語は死で終わらない」という話がありましたが、この作者さんの描く死はとてもポジティブなものがあってよいのです。

7

物語の引力

竹書房からは二冊目になるトジツキハジメさんの短篇集。
大きく分けて四つのお話が収録されています。


◆【カナさん】【ワイヤー】【ワンマンストーリー】【嘉那さん】
下北沢の居酒屋でバイトする主人公(廣瀬)の前に
「神(紙)は死んだ」という一言とともに現れたバンドマン「カナさん」。
自由奔放に生きる彼との出会いが廣瀬を変える。

死をきっかけに動き出す生の物語。
無気力に生きていた廣瀬が、バンドに入りギターを覚え、自分のやりたい事を見つける。
カナさんの人物像も、彼との情交も描写としてはごく僅かだが、廣瀬が生きる原動力として確かに物語の根幹を生す。
冒頭の「神は死んだ」に対する廣瀬の答えが全てを物語っていると思います。
これからもカナさんは廣瀬やバンドメンバーの中に居続けるであろうラスト。
全然しんみりしないけど、死者の存在は確かに意識されており、そこに何気ない日常が共存する。今を精一杯生きる、と言葉にすると陳腐だが大事なメッセージをカナさんから受け継いでいるような彼らが素敵でした。

『ワイヤー』『ワンマンストーリー』は、ベーシストの裕史に恋するギタリストのキヨがメイン。
裕史に首尾よく甘やかされるキヨは、襲い受け?ワンコ攻め?
「入れたいけど…」という台詞に惑わされました!!笑
もっとこの二人の話が読みたいな~~可愛いお話でした。


◆【たべものではありません】
レスラーBL!
体格のいい短髪坊主受(多分)の造形がすごくトジツキさんっぽい。
料理上手な同居人にすっかり胃袋を掴まれ、家畜のように飼いならされ…?
コミカルなやり取りの中に垣間見える狂気に、ゾクッとすると共にクスッとも笑える不思議な味わいのコメディです。あとがきの熱いレスラー萌え語りも面白いw


◆【月翳】
一番好きなお話でした。
病弱で徴兵を免れた友人と、生還したことが恥で長年会いに行けなかった主人公。
別の学友のツテで友人の所在を知り、数年ぶりに訪ねて行く。そこで思いもよらぬ事実を目の当たりに。
会えない年月が残された者を蝕み、狂気が美しい思い出を押し潰し…
主人公にとっての光まで失われてしまったような最後の頁が暫く頭から離れませんでした。


◆【外道】
刺青に興奮する彫師と、刺青短髪坊主(実はアパレル系!)のラブイチャ。
一番ガッツリエロがありました!ちょっとゲイビっぽいw
ホリ師だけに…?のオチがツボ!


麗人で既読の作品も多いですが、こうして一気に読むと短篇集なのに映画を数本見たような充足感が(コメディ二話が息抜きになってはいますが)。
短い頁数のなかにも登場人物の人生観が透けて見えたり、彼らのこの先の人生をもっと見ていたいという気持ちになったりと、読者を物語世界に引きこむパワーが凄いと思います。
エロ薄なこともあって萌えはあまりないですが、この引力を評価して「神」で!

5

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