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表題作宵巫女の愛舞

池森彰威・久則の会社の同僚28歳
神島久則・自動車メーカー勤務・神社の息子28歳

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

拝殿に足を踏み入れた男には神が宿る。巫女は神と契らなければいけない――。そんな言い伝えのある神島神社に例祭で、サラリーマンの久則は妹の代理で巫女を演じた。そこへ同僚の池森が現われて……!?

作品情報

作品名
宵巫女の愛舞
著者
藍生有 
イラスト
嵩梨ナオト 
媒体
小説
出版社
白泉社
レーベル
花丸文庫black
発売日
ISBN
9784592851110
3.2

(14)

(0)

萌々

(6)

(6)

中立

(1)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
4
得点
43
評価数
14
平均
3.2 / 5
神率
0%

レビュー投稿数4

裏切られっぱなしの一冊(良い意味で)

 離島で巫女ものとくれば、それはもうおどろおどろしい土俗と因習の世界。たいてい巫女が受けで、神事の名の下に神に身を捧げるはずが、欲に狂った島民の群れに襲われたり、もっと恐ろしい人外の魔物の生け贄にされたりと散々な目に遭い、そこを命懸けで救い出してくれた攻めと手に手を取って島を出てゆく・・・のがお約束だと思ってました。沙野風結子さんの「輝血様と巫女」とか、矢城米花さんの「茨の呪縛」とか夜光花さんの「不確かな抱擁」とか、最近読んだ砂床あいさんの「神々の婚淫」もそうだったし。
 
 でも本作では誰も死にません。大蛇も触手も襲ってきません。受けの久則は島の神社の息子で神職ですが、普段は本土で普通にリーマンやってます。年に一度の大祭で、妊娠した妹のピンチヒッターとして、急遽巫女役が回ってきますが、(28の男の巫女姿はさすがにきびしい)と内心思いつつも滞りなく巫女舞を務めあげ、あとは神殿の結界の中で静かに一夜を過ごすだけ・・・のはずでした。

 そこへ業務連絡と祭り見物を兼ねてやってきた同僚の池森。日頃から誰に対しても調子よく、典型的なタラシのチャラ男で、カタブツの久則には苦手だった相手ですが、なんとその馴れ馴れしさであっさり結界に足を踏みこんできちゃうのです。結界に入った男には神が宿るとされ、巫女はカラダでおもてなししなければなりません。久則もちろん焦りますが、入ってきてしまったものは仕方ありません。わりとあっさり観念し、緋袴を脱いで白衣の裾をからげて、池森に「乗っかる」という大胆きわまりない選択をします。
 
 乗っかられた池森の方も面食らっていたのは最初だけで、そこはタラシの本領発揮、すぐさま全面協力体制に入り、経験不足で立ち往生する久則を手とり足とり導いて美味しく頂いてしまうのです。

 ことほどさように、巫女ものにしては異色の、生命の危険を伴わない、一種ゆる~い感じの結ばれ方をした2人の関係は、祭りが終わって本土へ帰っても即ラブラブとはいきません。池森の側は結構ボルテージが上がってて、あれやこれや積極的にアプローチしてくるのですが、なにしろ久則がカタい。おまけにニブい。島での一夜はあくまで神事としての認識しかなく、かってないほどの強烈な快感も、池森に神が宿っていたせいだと思い込んでます。池森の自分に対する執着も、単なる巫女フェチとあっさり切って捨てる始末。池森、不憫です。
 
 島の神社の息子として厳しく育てられ、とても世間が狭い久則に対し、幼いころから世界を放浪して、コミュニケーション能力を磨かざるを得なかった池森。単なるチャラ男ではなく、人の気持ちを酌むことに長けていて、好きになった相手はちゃんと大切にできるイイ男だと思います。

 結局、次の神事で別の男に再び結界に踏み込まれそうになったとき、ようやく久則も池森への感情を認めることができるのですが、そこまでの展開がなんとももどかしい。でもそれも生真面目な久則らしいといえます。そもそも、そのクソ真面目さがなければ、2人が結ばれることもなかった。そう、
「結界に入った男には神が宿る」も「巫女がカラダでおもてなし」も、ただの言い伝えで、真に受けて実行に移したのは久則ひとりだったんです。

 最後まで邪悪な人も人外も出てこない、さわやか過ぎる読後感の巫女もの、これはこれで新鮮で、楽しく読みました。かねてより複数プレイの大家と聞いて一棒一穴主義の私は敬遠していた作家さんですが、もっと早く読めば良かった!作家さんやファンの好みも当然あるとは思いますが、10作に1作でいいから、こういう1対1でじっくり愛し合う作品も書いてほしいなあ。

 
 

 

2

受けと攻めの会話のズレが面白いです。

花丸文庫BLACKのレーベルでは、いつもは特典ペーパーが付かないということもあり、
初めは古本で購入しようと思っていたのですが、発売前に特典ペーパーが付く
ということで、いつもの書店で予約して新本で購入しました。

花丸文庫BLACKでの藍生 先生は双子モノと複数モノ専門、担当
というイメージが強いですが、今回はBLACKのレーベルにしては、
恋愛描写が優しすぎるような感じがして、性描写も濃厚ではなく、
あまりブラックっぽくないように感じました。

今回の受けは、生真面目さと天然ぶりがとても面白くて良かったです。
52ページで、攻めが本拝殿に踏み込んだ時の、受けの嘆きぶりがとても伝わってきて、
その光景が目に浮かんで面白いと思いました。
また、攻めの言葉を真に受けて「では、世話になってもいいだろうか」と言ったり、
127ページ前後の攻めと受けの遣り取りをはじめ、攻めと受けの会話のズレが
良い具合になっていて、面白かったです。

攻めは受けに対して強引な所もありますが、196ページ前後にあるように、
神様の存在や神事を否定せず、狭い世界観に囚われてしまっている受けの視野を
荒療治で広げるのではなく、受けの考え方や環境に悪影響が無いように上手く丁寧に
優しく視野を広げて攻めは受けの固くなりすぎた心を上手く解かしていくところに、
また、受けの背負っている物を解放しようと、受けを包み込むような攻めの愛情が
伝わってきて、好感を持ちました。

受けと攻めは反対の生活環境と性格で、会話などズレていても、
上手く嚙み合わさるように展開していくのが良かったです。

あとがきで、「いつもBLACK牧場に放牧ありがとうございます」という
先生の表現が面白かったです。
そういえば似たような台詞を他の作品の後書きでも読んだ覚えがある、
と思い出しました。

今回の評価は、あまり迷うことなく「萌×2」評価です。
物語の内容や展開、人物設定など、十二分に萌えて楽しく読むことが出来ました。

ただ、今回は、受けが攻めに対して「好きなのかな」と思い始めた段階で、
これから受けの気持ちを育み始めるという所で物語が終わったのが心残りでした。
受けが気持ちを自覚して、攻めと相思相愛な関係になるまで読みたかったです。

これからが良い所なのに、これから面白くなるっていう所で終わっているので、
可能であれば続編を書いて頂けると良いなと思いました。

1

ようこそいらっしゃいました

島の神社を背景にしたリーマン同士のラブで、blackにありがちな神社の仕来りや
島の言い伝えのシリアス展開ものかと思ったら、若干ファンタジー風な祟り的な
事象は過去にあったと言う程度のもので、主人公で受けになる久則が島に
縛られている内容でも無く、逆に女系が跡継ぎで、自分には居場所が無いと
思ってしまう類の話。

たまたま祭事で妹の代わりに巫女姿で舞を奉納し、
一晩神の社で過ごす予定が、会社の同僚で攻めになる池森が、巫女と神しか
入ってはいけない場所に侵入してしまい、島の人でない人間が社に入ると
その人に神が宿るので、巫女はその人と閨を共にしなければならないと言う
昔からの決まりに沿って、同僚の森池と一夜を共にしたことから始まるような
オフィスラブでもあります。

代々島を守る神社の息子として、自分が本当にしたかった事も家のために諦め、
それなのに跡継ぎは妹で、居場所がない、心もとない気持ちになった時に
池森の言葉に思いに救われ、前向きになるような同僚同士のラブで楽しめました。
神の社に侵入してしまった池森に文句を言いながらも、神が宿るとされているからと
形式に則り池森に、いらっしゃいませと、言っている姿が久則の真面目さを
感じさせながらも何処かコミカルでした。

1

神職について違和感なく

花丸ブラックではありますが、そこまでエロモード全開とは感じなかったですね。(腐ってますね・汗)
藍生さんの作品は『ショコラティエの恋の味』しか読んだことがないためまだ傾向がイマイチ掴めませんが、本来複数だとかが多い作家さんなのかな?

*********************
受けの久則は、自動車メーカーのサラリーマンで28歳。
離島出身で、海の守り神を祀る神社の長男であり神職資格も有しています。

攻めは久則と同期で、女子社員から絶大な人気をほこる池森。
スキンシップ過多でありながら嫌味でない、得な人柄。
*********************

生真面目な久則が、大事な会議がありながら休暇をとり実家へ戻った理由。
それは実家の神社が執り行う祭祀の例祭手伝いのためでした。
手伝いのためであったはずが妹の妊娠が発覚し、急遽巫女を引き受けることになります。
ただ、巫女と言ってもその家系の者ならば男子でも良いとされていて、後ろ暗い部分はありません。
久則自身も以前は巫女を務めていたため、舞の練習をせねばならないとはいえ気軽に引き受けています。
ただ、それは池森が現れるまでだったのですが。

久則は長男らしい責任感の強さと真面目さ、そしてある意味男前な性格です。
そして池森はというと、まさに正反対。
育ちも性格も考え方も真逆なふたりです。
ただ、池森の方はそういったものも面白いと感じられる性格で、序盤のコミュニケーションからとってみても、彼が久則を普段から良く見ていて好意を持っていることは察させられます。

チャラ男攻めは大好きですが、わたしの好きなチャラ男とは若干タイプが違うかな(苦笑
チャラ男でもある程度の節度や遠慮が欲しいのですが、池森はゴーイング マイウェイなのです。
久則を最終的に落とす時もなぜ先に舐めさせたのか、よーわからん!(苦笑
まあ、それが正しい?チャラ男だとは思うのですが。

こちらの作品、驚くのは神職について作者さんがすごく調べてらっしゃること。
今は色々な媒体で神職について知る方も多いとは思いますし、わたしも用語などは知るものが多かったです。
きっとそんな方にも違和感なく読めたのではないでしょうか。
イラストも作品にピッタリでしたしね。

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